西武8500系電車

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SeibuRailway mark bw.svg 西武8500系電車
「レオライナー」
西武8500系(西武球場前・2016年9月)
西武8500系
西武球場前・2016年9月)
基本情報
運用者 西武鉄道
製造所 新潟鐵工所
製造年 1985年
製造数 3編成12両
運用開始 1985年4月25日
投入先 山口線
主要諸元
編成 4両編成
電気方式 直流750V
第三軌条集電方式
最高運転速度 50 km/h
車両定員 先頭車 71人(座席28人)
中間車 80人(座席32人)
自重 先頭車 11.0 t
中間車 10.5 t
全長 8,500 mm
全幅 2,430.8 mm
全高 3,290 mm
主電動機 三相交流かご形誘導電動機
HS36632-01RB
主電動機出力 95 kW × 1
駆動方式 直角カルダン方式差動装置付)
歯車比 6.833 (6:41)
制御方式 VVVFインバータ制御
制御装置 VF-HR105
制動装置 回生制動優先電気指令式電磁直通ブレーキ HRDA-1
保安装置 ATS(点制御による多情報変周式車上パターン式)
備考 各データは2002年4月現在[1]
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西武8500系電車(せいぶ8500けいでんしゃ)は、1985年昭和60年)4月25日に営業運転を開始した西武鉄道山口線AGT新交通システム車両

本系列は大手私鉄が保有する唯一のAGT路線用車両で[2]、「レオライナー (LEO LINER) 」の愛称を有する。

本項では形式名を決定していたものの、発注の直前で中止となり、計画のみに終わった未成車両である7000系電車についても記述する。

概要[編集]

山口線は西武園遊園地(現・西武園ゆうえんち)の遊戯施設「おとぎ線」として[3]1950年(昭和25年)8月[4]軽便規格(軌間762mm)の非電化路線として開業したものである[3]。その後1952年(昭和27年)7月[4]に「おとぎ線」を地方鉄道法に基く地方鉄道として認可申請し、山口線と改称した[5]。軽便規格当時の山口線は終起点となる遊園地前駅多摩湖線西武遊園地駅に隣接)・ユネスコ村駅狭山線狭山湖駅から徒歩連絡)ともに既存の各路線と接続しておらず、運賃体系も西武鉄道の他の一般鉄道路線とは異なるなど、依然として遊戯施設色の強い路線であった[3]

1980年代以降、山口線は運行開始から30年余りを経過し、施設ならびに運用車両の老朽化が問題となりつつあった[6]。また、1979年(昭和54年)4月にはユネスコ村に隣接して西武ライオンズ球場(現・メットライフドーム)が西武ライオンズ(現・埼玉西武ライオンズ)の本拠地球場として開場しており[5]、多摩湖線西武遊園地方面から西武球場へのアクセス改善が求められたことから、折りしも更新時期を迎えていた山口線を遊戯施設的な路線から西武球場方面へのアクセス路線として更新・整備することとなった[6][7]

施設更新に際しては既存路線における鉄輪鉄軌条方式とは異なり、コンクリート製軌条とゴム製タイヤを用いたAGT路線として整備されることとなった[6]

本系列は1985年(昭和60年)1月から同年4月[8]にかけて、4両編成3本(12両)が新潟鐵工所において新製され[8]、第1編成(8501編成)から順にV1 - V3の編成番号が付与された[9]。なお、本系列の形式称号「8500系」は製造初年が「1985年」であることに由来する[10]

当時のAGT車両の制御方式はチョッパ制御サイリスタ位相制御が主流であった中、本系列は西武に在籍する車両のみならず[9]、AGT車両としても日本国内初となるVVVFインバータ制御を採用した点が特筆される[注釈 1]。また、他のAGT路線においては、自動列車運転装置 (ATO) による自動運転(無人運転)を行う例が多く見受けられるが、山口線においては西武における他の路線と同じく保安装置に自動列車停止装置 (ATS) を用いた[注釈 2]手動運転(有人運転)方式を採用しており、イニシャル・ランニングコストを抑制した[9]。また、山口線はAGT転換当初からワンマン運転を実施しており、本系列の各種設備もワンマン運転に対応したものとなっている[9]

7000系の製造計画[編集]

AGTへの転換計画当時は7000系[注釈 3]を導入する予定であった。この7000系は、設計図や完成予想図まで製作し、形式名まで決定していたものの、発注の直前になりこれを中止し、最初から設計をやり直してVVVFインバータ制御方式を採用(7000系はチョッパ制御で計画していた)し、また車体のデザインをより斬新にしたものに変更の上で、塗装もライオンズカラーを採用したもの(7000系の車体塗装は白を基調として、窓回りを黒とし、車体裾部に赤系の帯を入れたもの)に計画を変更して新製・導入されたものが本系列である。これにより7000系は未成車両となった[注釈 4]

車体[編集]

外観・内装[編集]

外観は類型的なAGT車両としての特徴を有し、全長8,500mmの普通鋼製車体に1,100mm幅の片開客用扉を1両当たり片側1箇所ずつ車体中央部に備え、扉両脇に配置された側面窓は上部に内折れ式の開口部を有する二段窓構造である[9]

前面形状は上下に傾斜を付けた直線的なデザインで[9]、非常扉を向かって左側に設けた左右非対称形状となっており[7]、前面腰板中央部には埼玉西武ライオンズの球団マスコットであるレオを象った立体型ペットマークが装着されている[7]。前面窓右下には編成番号であるV1 - V3のロゴが貼付されている。前照灯は角型シールドビームで、同形状の後部標識灯とともに一つのケースにまとめられた。前面窓中央内側には手動式の行先表示幕を備える[9]

車体塗装はアイボリーホワイトをベースに、側面腰板部に青・赤・緑の3色帯が入った「ライオンズカラー」が採用され、西武球場を始めとした系列レジャー施設へのアクセス路線用車両であることを示している[7][9]

車内はオールクロスシート仕様で、青色モケットのボックスシートが1両当たり10 - 12脚装備されている[7]。また、乗務員室後部の座席は先頭方向を向いて設置されており、前面展望ならびにワンマン運転対応を考慮して開放的な設計とされた運転台仕切り壁の構造も相まって展望席の様相を呈している[9]

冷房装置は室内機・室外機が別構造(セパレート構造)とされた三菱電機製CU-24S(冷却能力10,500kcal)を各車1基搭載し[1]、床下に搭載された室外機から車内前後2箇所に設置された室内機に冷風が導かれる[7]。なお、補助送風機としてラインデリアを併用しており、天井高さの関係で車内側面肩部に各車4基設置されている[9]

運転台[編集]

乗務員扉を備えた全室式の乗務員室とされているが、前述のように乗務員室と客室を仕切る壁が前面展望ならびにワンマン運転対応を考慮した開放的な設計となっている点が特徴である[9]

運転機器は主幹制御器(マスター・コントローラー)とブレーキ制御器を一体化したワンハンドルマスコンを西武において初めて採用した[11]。その他ワンマン運転関連機器に加え、自動放送装置が搭載されている[9]

開放的な運転台のため、悪質な乗客等にいたずらされることのないよう、運転操作時以外はカバーをかけられるようになっている。

主要機器[編集]

前述したVVVFインバータ制御やワンハンドルマスコン式運転機器のほか、補助電源に従来の電動発電機 (MG) に代わって静止形インバータ (SIV) を初めて採用するなど、西武において前例のない新技術を数多く採用した。本系列において運用実績の蓄積が行われたそれら新技術は以降の新形式車両に順次反映され、その設計に際して本系列は重要な役割を果たした形となった[11]

主制御器[編集]

日立製作所製のGTOサイリスタ素子を使用したVVVFインバータ制御器VF-HR105を中間車に1基ずつ、1編成当たり2基搭載する[1]。同主制御器はユニットを組む2両分の主電動機を制御する1C2M制御方式で、定速制御が実装されている。

主電動機[編集]

日立製作所製の三相交流かご形誘導電動機HS36632-01RB(出力95kW)を各車に1基ずつ車体側に搭載し[1]、前後2軸を駆動する[12]。駆動方式は直角カルダン式で、カーブ区間走行時における内輪差(外側と内側の車輪の回転数差異)を吸収するため差動装置が組み込まれている[12]歯車比は6.833 (6:41) である[1]

制動装置[編集]

常用制動を回生制動優先とした電気指令式電磁直通ブレーキHRDA-1である[12]

台車[編集]

ステアリング機構付平行リンクユニット形1軸空気ばね台車で、1両あたり2台装着する[9]。ゴムタイヤについてはブリヂストン製とフランスミシュラン社製のものを併用している[7]

集電装置[編集]

東洋電機製造製の第三軌条集電装置PT-68M-A(先頭車)・PT-68P-A(中間車)を前後台車に左右各1基、1両当たり4基搭載する[1][7]

補助機器類[編集]

HB-1200電動空気圧縮機(CP・容量1,230l/min)を西武球場前方先頭車 (Mc1) に、東洋電機製造製SVM45-441A静止形インバータ(SIV・出力45kVA)を西武遊園地方先頭車 (Mc2) にそれぞれ1基ずつ搭載する[1]

導入後の変遷[編集]

1993年平成5年)4月[13]より山口線[14]ならびに本系列[15]の愛称が「レオライナー」とされたことに伴って、先頭部のレオを象ったペットマーク直下に「LEO LINER」のロゴが追加されている[16]

2000年代に至り、製造後15年以上を経過して制御器ならびにSIVのGTO素子の劣化が進行したため[7]2001年(平成13年)より制御装置をIGBT素子を使用したVVVF制御器に、SIVについても同様にIGBT素子を使用したものにそれぞれ換装する修繕工事が[7]、8521編成(V3編成)を皮切りに順次施工された[16]。同時に車体の修繕や車内自動放送装置の更新も施工されている[7]。前述のように本系列は2両1ユニット方式で編成を構成しており、更新工事は編成単位ではなく1ユニット(2両)単位で施工されたことから、更新過程においては同一編成内に更新済ユニットと未更新ユニットが混在する例が見られた[7]

また2007年(平成19年)度以降、車椅子乗車への対応および混雑時の乗降をスムーズにする目的で、先頭車へのつり革・握り棒の新設と一部座席の撤去・立席スペースの拡大といった車内改良工事が開始され、2009年(平成21年)度をもって全編成への施工が完了した[17]

編成表[編集]

凡例 
Mc …制御電動車、M …電動車
CONT…制御装置、SIV…補助電源装置、CP…電動空気圧縮機
 
号車 1 2 3 4
形式 8500
(Mc1)
8500
(M1)
8500
(M2)
8500
(Mc2)
搭載機器 CP CONT CONT SIV
編成呼称 V1 8501 8502 8503 8504
V2 8511 8512 8513 8514
V3 8521 8522 8523 8524

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 1998年(平成10年)に本系列に次ぐVVVF制御車としてゆりかもめ7200系が新製されるまでの間、本系列がAGT車両における唯一のVVVF制御車であった。
  2. ^ 他の路線が鉄軌条(レール)上より制御信号を読み取る連続制御方式を採用するのに対し、コンクリート軌条を使用する山口線においては軌条上に設置された地上子より制御信号を読み取る点制御方式が採用されており、装置そのものの互換性はない。
  3. ^ 7000系の形式名は、1990年に5000系の代替を目的とした新型特急車両の投入計画があった際にも、部内では仮称として「7000系」と付けられていたが、こちらは正式に形式名を決定していた本項に記述の7000系とは異なり、形式名は仮称のままで本決定には至らず、計画自体もこの7000系と同様に中止となった。なお、5000系の代替の新型特急車両の計画は、この車両の計画中止より2年後に10000系の計画として復活しているため、この7000系→8500系への計画変更と類似した事例となった。
  4. ^ この7000系はAGTへの転換計画が始まった頃に自社の広報誌などで公開され、また7000系の設計図や完成予想図は当時の西武鉄道の車両関連の資料として現在でも所蔵されており、2015年の横瀬での自社主催のイベントでは来訪者向けに7000系の完成予想図も公開されていた。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g 小林尚智 「私鉄車両めぐり (169) 西武鉄道」 (2002) p.266
  2. ^ 山崎公之 「輸送と運転 近年の動向」 (2002) p.33
  3. ^ a b c 益井茂夫 「西武鉄道 路線・駅の移り変わり」 (1992) pp.141 - 142
  4. ^ a b 高嶋修一 「西武鉄道のあゆみ -路線の役割と経営の歴史過程-」 (2002) pp.108 - 109
  5. ^ a b 高嶋修一 「西武鉄道のあゆみ -路線の役割と経営の歴史過程-」 (2002) pp.106 - 107
  6. ^ a b c 『私鉄の車両6 西武鉄道』 (1985) pp.80 - 81
  7. ^ a b c d e f g h i j k l 小林尚智 「私鉄車両めぐり (169) 西武鉄道」 (2002) p.259
  8. ^ a b 小林尚智 「私鉄車両めぐり (147) 西武鉄道」 (1992) p.279
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m 小林尚智 「私鉄車両めぐり (147) 西武鉄道」 (1992) pp.266 - 267
  10. ^ 楠居利彦 「2011西武電車最新ガイド」 (2011) p.35
  11. ^ a b 御菩薩池秀次 「車両総説」 (1992) pp.45 - 46
  12. ^ a b c 『私鉄の車両6 西武鉄道』 (1985) pp.166 - 167
  13. ^ 『歴史でめぐる鉄道全路線 大手私鉄 14号 西武鉄道』 (2010) pp.24 - 25
  14. ^ 路線図・停車駅 西武鉄道Webサイト 2012-02-21閲覧
  15. ^ 8500系(レオライナー) 西武鉄道Webサイト 2012-02-21閲覧
  16. ^ a b 焼田健 「西武鉄道 現有車両カタログ」 (2002) p.204
  17. ^ “2009年度 設備投資計画” (PDF). 西武鉄道Webサイト. (2009年5月18日). オリジナル2015年4月2日時点によるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20150402154151/http://www.seibu-group.co.jp/railways/news/news-release/2009/__icsFiles/afieldfile/2009/11/18/090518.pdf 2012年2月21日閲覧。 

参考文献[編集]

  • 鉄道ピクトリアル鉄道図書刊行会
    • 「特集 西武鉄道」 1992年5月(通巻560)号
      • 御菩薩池秀次 「車両総説」 pp.43 - 47
      • 益井茂夫 「西武鉄道 路線・駅の移り変わり」 pp.136 - 149
      • 小林尚智 「私鉄車両めぐり (147) 西武鉄道」 pp.250 - 280
    • 「特集 西武鉄道」 2002年4月(通巻716)号
      • 山崎公之 「輸送と運転 近年の動向」 pp.30 - 42
      • 高嶋修一 「西武鉄道のあゆみ -路線の役割と経営の歴史過程-」 pp.97 - 112
      • 焼田健 「西武鉄道 現有車両カタログ」 pp.188 - 204
      • 小林尚智 「私鉄車両めぐり (169) 西武鉄道」 pp.229 - 266
  • 鉄道ダイヤ情報交通新聞社
    • 楠居利彦 「2011西武電車最新ガイド」 2011年2月(通巻322)号 pp.7 - 35
  • 町田浩一 『私鉄の車両6 西武鉄道』 保育社 1985年7月
  • 曽根悟 監修 『歴史でめぐる鉄道全路線 大手私鉄 14号 西武鉄道』 朝日新聞出版 2010年11月

外部リンク[編集]