木質ペレット

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木質ペレット(写真はホワイトペレット)

木質ペレット(もくしつペレット)は、丸太、樹皮、枝葉や製材時に発生する端材などを一たん顆粒状に破砕し、それを小粒の棒状に圧縮成型した固形燃料[1]木質バイオマスの一種。ペレットストーブ、ペレットボイラー、バイオマス発電吸収式冷凍機などの燃料として用いられる。

概要[編集]

燃焼している木質ペレット

木質ペレットは燃焼によってCO2を発生するが、化石燃料の燃焼とは異なり炭素循環の枠内でその総量を増加させるものではないため、統計上は排出しないものとして取り扱うことができる(カーボンニュートラル)、不要物を原料とするなどCO2排出量削減の観点と、近年の原油価格高騰に対抗するコスト削減の観点から急速に注目を浴びている。形状は直径6 mm - 8 mm 程度、長さ10 mm - 20 mm 程度の円筒形のものが多い[1]。原料となる木材種や使用部位によりホワイトペレット、バークペレット、全木ペレットに分けられる[1]。使用部位は木質部とは限らず、樹皮もペレット化できるほか、樹木自体もさまざまである。木ではなくからつくることもできる。原料によって外観は異なるが、ほとんどの場合はかなり堅く、原料中のワックス成分によって表面の手触りはつるつるしている。

木質ペレットには一般的に接着剤は使われておらず木材自体に含まれるグリニンによって顆粒状に成形されている[1]。そのため湿度の高い環境で保管したり強い衝撃や圧力を加えると崩れてしまい不具合を生じる[1]

規格[編集]

木質ペレットの品質成分などの基準について日本工業規格 (JIS) では定められていない。このため多くの製造業者・自治体は一般財団法人日本燃焼機器検査協会が定めた「木質系バイオマスペレットの基準 (JHIA N-5651) 」に沿って製造を行っている。この基準では原料寸法発熱量水分灰分塩素硫黄酸化物の各含有率などが定められている。またその第一項に「1、適用範囲・この基準は、有害物質に汚染されていない樹木を原料として生産された木質系バイオマスペレット(以下、ペレットという)でペレット燃焼機器に用いるものについて規定する。ただし、原料となる樹木が、海水中で貯蔵されたもの 、又は他の目的で使用され廃材となったものには適用しない。」との項目があるため、建築物解体廃材などの廃棄物を原料にせず、製材過程でできたおが粉や鉋くず・樹皮を原料にするケースが多い。

全木(混合)ペレット

おおまかに分けて以下の三つがある。

  • 木部ペレット(ホワイトペレット)
    樹皮を除いた木質部を主体とした原料を用いて製造したペレット[1]。火力が強く、灰が非常に少ない(1.0 % 未満)。
  • 全木(混合)ペレット
    「全木ペレット」は樹皮を含む木材(樹皮付丸太)を原料として製造したペレット[1]
    「混合ペレット」は樹皮と木部を任意の割合で混合した原料を用いて製造したペレット
    灰分は1 % - 2 % となっており比較的少ない。
  • 樹皮ペレット(バークペレット)
    樹皮を主体とした原料を用いて製造したペレット[1]。比較的火力が弱く、灰が多い(8 % 未満)。頻繁に灰掃除する必要がある。

製造[編集]

ペレット成型の一例
(リング状金型プレスの断面)

現在普及している製造設備はペレット流通量の多いアメリカ合衆国ドイツ及び北欧諸国からもたらされたものが多く、大型機械による大量生産を主眼としているため、流通に消費されるエネルギーと経費を減らしたい、或いは地産地消を謳う日本の施策とは相容れない面がある。そのため日本の流通形態や地域の特色を生かした製造方法を確立する事が必要不可欠であり、自治体民間企業大学などの研究機関が連携し様々な方法が研究されている。近年は国産の製造設備が開発され、商業利用に堪えられる性能・価格を持つものが増えてきた事で、より一層の普及が期待される。

代表的な製造方法(国産機フラットダイ式生産設備の例)
固形や樹皮は粉砕し粉状にし含水量を調整する。次にペレタイザーと呼ばれる原料に圧力を加え固める装置で成型する。木にはリグニンという成分が含まれているが、これに圧力を加えるとリグニンが溶け接着剤の役割をし、同じく木に含まれるセルロースヘミセルロースが接着される事で成型できる。このとき含水量が20 % を越えると固まらず、5 % を下回ると固まりにくいため10%前後に調整される。
製造時のエネルギー消費(国産機フラットダイ式生産設備の例)
発熱量5,040 kcal/kg のホワイトペレットを製造する際、ペレット1 kg 当たりに必要な電力量は0.1375 kWh。ペレット発熱量の約2.35 % となる。一方外国製大型機械では1.3 - 2 % 程度なので、まだ国産機の効率は良いとは言えない。

歴史[編集]

ペレット製造は間伐材や樹根の消費拡大のために何度か普及が試みられてきたが、いずれも失敗に終わってきた。しかし2000年代に入り、地球温暖化問題、原油価格高騰、廃棄物処理経費の増大などの背景もあり、徐々に普及が進み始めている。とりわけ寒冷地での普及が顕著で、日本のペレット先進地である岩手県原油価格高騰で痛手を被る北海道でペレットストーブの販売量が急速に増えている。機器の購入に助成金を出す自治体が増え、一般家庭でも導入しやすくなった事も増加の一因とされる。本州以南の地域では家庭用よりも温室や乾燥用など農業用での大規模利用が多く、また自治体も支援をおこなっており、価格の低下が見込まれている。

課題[編集]

品質の不安定さ[編集]

ペレットは木を原料とするため、寒帯林温帯林亜熱帯林、また針葉樹広葉樹かにより出来上がる製品の品質に差が出る。このためストーブメーカーなどが顧客の使用するペレットがどこで作られた物か聞き取りをし、空気量やペレット供給量などを設定しなければ想定通りの燃焼を得られないケースがある。また製造規格や認証制度の信頼性が低く、品質不良の粗悪なペレットが出回っていることもあり、安定運用の障害になっている。[2]

持続可能性[編集]

林業界とEUはバイオマス発電を推進してきたが、森林擁護団体からこの政策を批判する公開書簡が出された。木質ペレット製造業者は木くずなどの廃棄物を活用してペレットを製造していると主張しているが、ペレット製造工場のドローン空撮写真によると、伐採直後の丸太が積み上げられた様子が撮影されている。[3] また、米国の環境保護団体ドッグウッド・アライアンスによると、木質ペレット輸出量が世界一である米国では、木質ペレット生産のために森林伐採が行われ、生物多様性への悪影響が指摘される。米国は効率的なプランテーション林業のために、成長が早い松の植林を推奨している。そのため単一植物による人工林と化し、多様性が失われている。 [4] [5] こうして製造された木質ペレットは輸出品となり、その輸入と使用は結果的に森林破壊につながっている。日本でもバイオマス発電等での木質ペレットの調達の多くを多くを輸入に頼っており、2021年の輸入量は前年比53.7%と大幅な上昇を見せている[6]

製造過程の公害[編集]

木質ペレット製造施設が大気汚染や騒音などの公害を引き起こしており、喘息や心臓発作、睡眠障害の原因となっている。そうした施設は低所得地域に集中しており、人種差別を強化する土壌となっている。 [4]

CO2の排出[編集]

木質ペレットは全ての工程においてCO2を排出する。木質ペレットの生産・加工・輸送・発電すべてを総合したCO2の総排出量は石炭火力発電を上回る。気候変動を抑制するには、木質バイオマス発電への投資をやめ、真に持続可能なエネルギーへと転換する必要があることが指摘されている。 [7] [5] [4]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h 広がっています 木質ペレットストーブ・薪ストーブのある生活 上田市、2020年2月5日閲覧。
  2. ^ 輸入木質ペレットの「品質不良」が原因(?)で、大規模バイオマス発電所のトラブル相次ぐ。北九州では火災発生。背景にアジアからの燃料認証の偽造問題も(RIEF) | 一般社団法人環境金融研究機構
  3. ^ Forest advocates press EU leader to rethink views on biomass and energy
  4. ^ a b c 持続的可能だとうたわれるバイオマス発電の裏にある矛盾した現状 | NPO CROSS
  5. ^ a b 欧州で議論が続く管理再生林を利用した産業用木質バイオマス燃料 | ブライトイノベーション
  6. ^ “ウッドショック”の二の舞か、バイオマス発電燃料「木質ペレット」輸入急増で懸念|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社
  7. ^ Wood Pellets: Green Energy or New Source of CO2 Emissions? - Yale E360

関連項目[編集]