半グレ
“半グレ”(はんグレ[1])とは、「暴力団に所属せずに犯罪を繰り返す集団」を指す語[2]。“半グレ集団”とも[3]。語源は「グレる」の“グレ”であり「愚連隊」の“グレ”であり、また黒と白の中間にあたる灰色の“グレー”、「グレーゾーン」の“グレ”[4]。暴力団に詳しいジャーナリスト・溝口敦の命名とされている[5]。語の初出は同ジャーナリスト著『ヤクザ崩壊』(2011年・講談社)[6]。
情勢[編集]
ノンフィクションライターの小野登志郎は、1991年の暴力団対策法施行ならびにその後の暴力団排除条例施行が“半グレ集団”勃興の誘因であったものと推測する[5]。日本の各地にその例が見られ、様々な局面において暴力団と対峙する勢力となり、時に暴力団を圧倒してきた[8]。東京の「関東連合」がそうした“半グレ集団”の典型とされている[9]。ほか、中国残留孤児の2世ならびに3世を中核構成員とする「怒羅権」や、大阪の繁華街・ミナミで傷害事件などを繰り返しているアマチュア格闘技団体(「強者 つわもの」[10])などが“半グレ集団”の例に挙げられてきた[11]。
特色[編集]
メンバーには暴走族上がりの者が多く、振り込め詐欺や闇金融などといった独自のビジネスを展開する集団もあると見られているものの、実態は定かとなっておらず、社会問題化するに至った[3]。「暴走族の元メンバーやその知人らが離合集散しながら緩やかなネットワークで行動を共にするグループ」(2013年・朝日新聞)[12]。振り込め詐欺や闇金融のほか、貧困ビジネス、解体工事や産廃の運搬業、クラブや芸能プロダクションの経営、ならびに出会い系サイトの運営などが大抵のメンバーのいわゆる「シノギ」(資金獲得活動)となっている[13]。
暴力団との顕著な違いとして、暴力団に籍を置いていないがゆえに暴力団対策法の適用を受けないこと、活動の匿名性や隠密性、メンバーの年齢層の若さ(年長でも40歳代まで)、ならびに、人員供給の拡大傾向が挙げられる[14]。少数ながら暴力団系のグループも存在してはいるものの、大半は暴力団と距離を置いているため、暴力団対策法の規制を受ける暴力団とは違い、有効な法規制を受けない状況となっている[15]。
対策[編集]
2013年には「関東連合」や「怒羅権」などの“半グレ集団”が警察庁によって新たに“準暴力団”と規定され、その実態解明を企図した取り組みが同庁の号令のもとで始動するに至っている[16]。定義は「暴力団と同程度の明確な組織性はないものの、構成メンバーが集団で常習的に暴力的な不法行為をしているグループ」[17]。先立つ2012年に東京で発生した関東連合関係事案「六本木クラブ殺人事件」がそのきっかけであったという[18]。
出典[編集]
- ^ 『What’s with the police purge on dance clubs?』 ジェイク・エーデルスタイン 2013年4月7日 ジャパンタイムズ (英語) ― “The investigative journalist Atsushi Mizoguchi coined a term for these outlaws: hangure.” ― “ハングレ” (hangure)
- ^ 『"半グレ"って知っていますか?』 2012年10月29日 NHK『クローズアップ現代』
- ^ a b 『半グレ集団 とは』 朝日新聞 2012年10月22日 コトバンク
- ^ 『暴力団』 : “暴走族と愚連隊” (p.33) 溝口敦 2011年 新潮新書 ISBN 978-4-10-610434-3
- ^ a b 『暴力団でないアウトロー「半グレ」の実態』 小野登志郎 2012年12月19日 WEBRONZA
- ^ 『New breed of ‘criminal elements’ emerging from the shadows』 マーク・シュライバー 2012年12月9日 ジャパンタイムズ (英語)
- ^ 『ハード・ノンフィクションの巨匠、溝口敦著 『溶けていく暴力団』 第三章「飛んでる半グレ集団」全文公開!(1/8)』 溝口敦 2013年11月4日 現代ビジネス
- ^ 『暴力団』 : “暴力団が怖れる集団” (p.172) 溝口敦 2011年 新潮新書 ISBN 978-4-10-610434-3
- ^ 『関東連合が典型の「半グレ集団」ITに疎い暴力団に魅力感じず』 溝口敦 2012年1月17日 NEWSポストセブン
- ^ 『半グレ「強者」また逮捕 ミナミで警察官に公務執行妨害』 2013年1月29日 MSN産経ニュース
- ^ 『半グレは「準暴力団」 警察庁、組織や資金源の実態解明へ』 2013年3月7日 MSN産経ニュース
- ^ 『朝日新聞』 2013年3月20日・朝刊 - 『半グレに関するトピックス』 朝日新聞デジタル
- ^ 『暴力団』 : “半グレ集団とは何なのか?” (p.157) 溝口敦 2011年 新潮新書 ISBN 978-4-10-610434-3
- ^ 『暴力団』 : “暴力団との四つのちがい” (p.158-164) 溝口敦 2011年 新潮新書 ISBN 978-4-10-610434-3
- ^ 『暴力団』 : “暴力団が怖れる集団” (p.173) 溝口敦 2011年 新潮新書 ISBN 978-4-10-610434-3
- ^ 『「半グレ」は準暴力団 警察庁、取り締まり強化を指示』 2013年3月7日 日本経済新聞
- ^ 『半グレを「準暴力団」と規定 警察庁 東京、大阪で暗躍か』 2013年3月7日 MSN産経ニュース
- ^ 『「準暴力団」とは何だ』 緒方健二 2013年4月9日 WEBRONZA