怒羅権

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怒羅権
設立 1988年
設立場所 東京都江戸川区葛西
活動期間 1988年 - 現行
活動範囲 東京都区部多摩地域神奈川県大阪府福井県福岡県
構成員数
(推定)
推定数百名
友好組織 東北幇住吉会関東連合

怒羅権(ドラゴン[1])は、日本首都圏を拠点とする中国残留孤児の2世3世や中国人からなる準暴力団[2]である。暴力団対策法の適用外にあたる集団だが、刃傷暴行・拳銃所持・殺人・強盗・覚醒剤密輸・危険ドラッグ密売・みかじめ料徴集などの凶悪犯罪が多い。90年代は暴走族から発祥したが、逮捕者には30代以上が多く、50代で逮捕されている者もいる。構成員らは蛇頭東北チャイニーズマフィア(東北幇)などと連携し国際犯罪とも関係している。

「怒羅権」とは「日本人に対する怒り、団結、権利」を意味する[3]。中国残留孤児帰国者の一時入所施設「常盤寮」があった東京都江戸川区葛西で1988年に結成された[3]

関東連合と並んで、暴力団対策法の適用外にあたる不良集団、いわゆる“半グレ”の顕著な例と言われる[4]警察庁の把握によれば首都圏の各地に複数のグループが存在し、総勢は数百名とも言われる[5]。2013年に「準暴力団」に指定された[6]

怒羅権は、未成年のうちは凶悪犯罪を起こしても少年法で守られる。成人してからも、日本の暴力団であるヤクザ暴力団対策法で厳しく規制されて弱体化しているのに対し、怒羅権は暴対法で規制されていない。また、来日中国人の犯罪者・犯罪組織や国際犯罪とも繋がりをもつが、怒羅権構成員は日本国籍者や一般永住者であるため、犯罪で検挙されても日本国外への退去命令や強制送還などの処分となる事はほぼ無い。

マスコミにおいては、怒羅権などの在日中国人犯罪は本名と国籍が伏せられて報道される事が多い。警察庁の通訳捜査官である坂東忠信は、「中国人犯罪への報道について言論弾圧としか言えない状況が出ている」「中国人の犯罪とわかっていても、せいぜいアジア系外国人としか報道されない。これは異常である」と指摘している[7]

情勢[編集]

勢力[編集]

暴走族グループは、東京都江東区、江戸川区[8]を縄張りとし、葛西怒羅権、深川怒羅権、府中怒羅権、王子華魂、赤羽華龍のようにいくつかの暴走グループがある。葛西怒羅権は2009年に金属バットで無関係な少年らの顔を殴る事件を起こしている[9]。怒羅権は刃物を所持しているため、他の暴走族から「包丁軍団」と言われている[10]包丁の他、ナイフ鈍器でもって[11]、敵対する暴走族を襲撃している。

1990年代は怒羅権の凶悪犯罪が多く、五星紅旗を掲げ、武器を所持して警察(交番パトカー[12]を襲撃する事件を繰り返している。脱退しようとした構成員[13]や暴力団員[14]、通行中の一般市民を殺害する事件なども起こしており、1999年6月に発生した殺人事件でメンバー1人が現在も逃亡中で、全国に指名手配されている[15]

組織[編集]

東京や横浜、大阪、福井、福岡にもグループが存在する[16]。東京都内でクラブの実権を握り、それらクラブでイベントを開くギャル界やサークル界への影響力を確立、久田将義(2013年)によれば、とりわけ東京渋谷の闇社会における影響力には関東連合のそれを凌ぐものがあるという[10]

暴走グループは成人となるとマフィア的性格を帯び、東北グループ(東北幇)を形成する。通称「大偉(ター・ウェイ)」と「小偉(シアオ・ウェイ)」と呼ばれる兄弟関係を中心にいくつかのグループに分かれている。大偉グループ(約200人)や金山(キンザン)グループ(約130人)[17]などがある。

構成員は日本国籍の者や一般永住者であるため、犯罪により検挙されても日本国外への退去命令や強制送還などの処分とはならない場合がほとんどである。

活動[編集]

中国人の経営する店へみかじめ料を要求して刃物で恫喝[18]、パチンコの裏ロム、ハイウェイカードやクレジットカードの偽造[19]振り込め詐欺[20]偽装結婚不法就労[21]覚せい剤の密売、窃盗(自動販売機、車上狙い、貴金属)などの犯罪行為を行っている[22][23]。02年9月には、住吉会系暴力団の幹部が歌舞伎町の喫茶店で中国人に射殺され報復とみられる事件が相次いだ[16]

怒羅権の元リーダー、佐藤威夫こと「大偉」は、残留孤児二世として来日し日本国籍と日本名を持つが、日本で高級車と貴金属の強盗・自動車部品密輸・カード詐欺などの犯罪行為を行い、覚せい剤密輸で一年間収監された。大偉は、人民解放軍や地方政府や銀行の上層とも繋がりを持ち、現在中国に戻り事業を起こしている[23]。 怒羅権のメンバーは日中貿易など合法的なビジネスにも手を伸ばしている[24]。合法的な商売であっても客の取り合いなどで暴力事件を起こしている[25]

他勢力関係[編集]

歌舞伎町で新興の福建グループ(三弟グループ)[26]が上海グループと抗争し共倒れると、東北グループが勢力を拡大。住吉会と対立し、2002年には射殺事件を起こすが、後に和解し協力関係を築く[27]。ある中堅幹部は2009年に受けたインタビューにおいて、山口組住吉会稲川会、および工藤会などの暴力団組織の関係者らとの自身の繋がりを示唆している[23]関東連合とは友好関係にある[10]

事件[編集]

  • 2007年、貴金属卸売店や貴金属加工会社など3軒が襲撃され、約2億円相当の金品が奪われた連続強盗事件で、日本人と中国人4人が逮捕された。4人のうち2人は容疑を認め、2人は否定している。否定している1人は、怒羅権のリーダーと見られている[28]
  • 2009年、企業を恫喝する不当要求行為をした構成員2名が、警察に検挙された。
  • 2010年6月から9月にかけて、競馬の勝ち馬情報を教える詐欺行為で、11人が逮捕された。うち数人が怒羅権のメンバー。23件、約1300万円の被害が確認されている。メンバー1人が現在も逃亡中で、指名手配されている[29][30]
  • 2010年10月27日、怒羅権幹部の中国人留学生が、偽造身分証明書を用いて不正に携帯電話利用契約をし、携帯電話販売店から契約破棄と電話機返還を要求された。留学生は、返還に応じるとして販売店経営者を都内の路上に呼びだした。経営者が従業員5名を伴い、車で待ち合わせ場所に行くと、留学生が鉄パイプで車を襲撃、経営者らを殴打した。留学生は逃走したが、翌年6月、警察に検挙された。
  • 2010年11月7日、後輩の男子生徒に「1時間以内に5万円を用意しろ」と脅し、目隠しして両手を縛り車で監禁暴行して金を奪ったとして、警察は怒羅権の元総長の少年ら4人を逮捕した[31]
  • 2011年4月1日、都内路上で、怒羅権の最高幹部が刃物を振り回し、通行人2名を負傷させ逃走する事件が発生。同年12月逮捕された。
  • 2011年7月6日、怒羅権構成員が、路上で住吉会系暴力団組員の男性を中華包丁で切りつけ、耳を切り落とすなどの傷害容疑で逮捕された[32]。現場には複数の怒羅権構成員がおり、警察は他のメンバーも関与した疑いがあるとみて捜査。
  • 2012年1月11日、警官に対して拳銃発砲した殺人未遂罪や窃盗罪など10の罪で広島刑務所に服役していた中国人が、管理の不備をつき脱走。男は怒羅権メンバーと見られており、脱走後は怒羅権の支援者らと接触した可能性がある[33][34]。1月12日には民家へ空き巣に入り、翌1月13日、広島市西区天満町で逮捕された[35]広島刑務所中国人受刑者脱獄事件)。容疑者については、怒羅権構成員ではないとする見方もある[36]

出典[編集]

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  1. ^ 違法ハーブ販売 飲食店経営の男逮捕 「怒羅権」メンバー?』 2012年6月6日 MSN産経ニュース
  2. ^ 「怒羅権」メンバー逮捕へ 警視庁 傷害容疑 男性に因縁、耳切断』 2011年7月6日 MSN産経ニュース
  3. ^ a b 「中国残留孤児2世中心の暴走族グループ「怒羅権(ドラゴン)」摘発」毎日新聞1990年12月20日夕刊
  4. ^ 怒羅権(ドラゴン)、関東連合…半グレ集団が台頭したワケ』 2012年11月18日 メンズサイゾー - ライブドアニュース
  5. ^ 全国的グループになっている怒羅権小野登志郎 2013年4月5日 WEBRONZA
  6. ^ “フィリピン版「怒羅権」? 危険ドラッグ欲しさにひったくり 不良少年グループの実態とは”. 産経新聞. (2014年8月23日). http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140822/crm14082220590016-n1.htm 2014年8月24日閲覧。 
  7. ^ 『新・通訳捜査官』坂東忠信著 経済界新書 2012年
  8. ^ 「東京はおそろしい」 茨城の少年グループ襲撃、暴走族8人逮捕 (1/2)』 2009年3月9日 産経新聞
  9. ^ 元「親衛隊長」らが暴走族復活へ“指導” 「怒羅権」OBらを逮捕』 2009年4月21日 産経新聞
  10. ^ a b c 単純に準暴力団と片づけられない怒羅権久田将義 2013年4月5日 WEBRONZA
  11. ^ 実話マッドマックス」 2004年11月号[要ページ番号]
  12. ^ 「パトカー襲い仲間を奪還、暴走族30人」 産経新聞 1998年11月27日
  13. ^ 「リンチ殺人の主犯格逮捕」 産経新聞 1999年9月9日夕刊
  14. ^ 「暴走族、暴力団組員を襲う」 産経新聞 1999年4月22日朝刊
  15. ^ 警察庁指定重要指名手配被疑者(警視庁手配):吉屋強
  16. ^ a b 緒方健二 (2009年10月18日). “『シリーズ「在日華人」』「非合法ビジネス、日本人取り込む――第7部〈犯罪底流〉」”. 朝日新聞. http://www.asahi.com/special/kajin/TKY200910180105.html 
  17. ^ 【明解要解】残留孤児の2世・3世がマフィア化 同胞からみかじめ料取り勢力拡大 (1/3)』 2008年9月1日 産経新聞
  18. ^ 「店の権利売れ」 日本刀を振り回した中国人ら逮捕』 2009年5月21日 産経新聞
  19. ^ 『来日外国人犯罪の検挙状況(平成18年)』「第2 来日外国人犯罪組織等の動向と犯罪インフラの状況」」”. 警察庁 (2006年). 2009年12月17日閲覧。
  20. ^ 中国マフィア「振り込め」と接点 資金源確保狙い? 警視庁など捜査 (1/2)』 2009年1月21日 産経新聞
  21. ^ 立川で違法マッサージ店経営 中国人を逮捕』 2009年3月17日 産経新聞
  22. ^ 「中国人マフィア最大勢力の幹部逮捕 覚醒剤の使用容疑」 産経新聞 2008年5月30日
  23. ^ a b c カネになる…中国人と組む暴力団——第7部〈犯罪底流〉 (1/2)』 2009年10月18日 朝日新聞
  24. ^ 商談相手を酒瓶で殴打 都内最大の中国マフィア幹部逮捕』 2008年11月7日 産経新聞
  25. ^ 「おれは八王子のボス」 エステ店の女性脅し頭にガラス刺す 中国残留孤児グループ幹部ら逮捕 - 産経新聞 2011年11月28日
  26. ^ 『平成15年警察白書 』「第1章 組織犯罪との闘い(3)来日外国人等によって構成された犯罪組織」”. 警察庁 (2003年). 2009年12月17日閲覧。
  27. ^ “歌舞伎町中国マフィア肥大化”. 東京新聞. (2003年12月10日朝刊) “歌舞伎町 中国マフィア肥大化 暴力団と結束、150人規模の結団式”. 産経新聞. (2003年12月8日) 
  28. ^ “1億2千万円強奪容疑 不良グループ「怒羅権」リーダーら4人逮捕 山梨の貴金属連続強盗”. 産経新聞 (MSN産経ニュース). (2011年5月19日). http://web.archive.org/web/20120116175213/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110519/crm11051912070016-n1.htm 2011年5月19日閲覧。 
  29. ^ “競馬の勝ち馬情報詐欺で怒羅権メンバー逮捕 - MSN産経ニュース”. 産経新聞 (MSN産経ニュース). (2012年9月1日). http://web.archive.org/web/20120416034052/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110901/crm11090118160024-n1.htm 2012年9月1日閲覧。 
  30. ^ 向島署 詐欺事件被疑者の公開手配:警視庁
  31. ^ “「5万円用意しろ」と脅迫→千円しかなく激怒…後輩を監禁、強盗容疑で元暴走族総長ら逮捕”. 産経新聞 (MSN産経ニュース). (2012年4月5日). http://web.archive.org/web/20120921131110/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110405/crm11040513270006-n1.htm 2012年4月5日閲覧。 
  32. ^ 「怒羅権」メンバー逮捕 耳切り落とした疑い』 2011年7月6日 テレビ東京
  33. ^ “【広島脱走事件】李容疑者は中国残留孤児不良グループ「怒羅権」のメンバーか 支援者と接触の可能性も”. 産経新聞 (MSN産経ニュース). (2012年1月12日). http://web.archive.org/web/20121031172024/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120112/crm12011215030016-n1.htm 2012年1月12日閲覧。 
  34. ^ “脱走の凶悪中国人“怒羅権”メンバーか…恐怖に包まれる広島 - 政治・社会”. ZAKZAK (ZAKZAK). (2012年1月12日). http://web.archive.org/web/20120119034929/http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20120112/dms1201121534018-n1.htm 2012年1月12日閲覧。 
  35. ^ “脱走容疑の中国人受刑者逮捕 広島市内で身柄確保”. 朝日新聞 (朝日新聞社). (2012年1月13日). http://web.archive.org/web/20120113093714/http://www.asahi.com/national/update/0113/OSK201201130098.html 2012年1月13日閲覧。 
  36. ^ “李国林と怒羅権の実像とは”. 朝日新聞 (朝日新聞社). (2012年1月26日). http://astand.asahi.com/magazine/wrnational/2012012400004.html 2012年1月26日閲覧。 
  37. ^ 第8回 難航する六本木「フラワー」襲撃事件の闇久田将義 2012年10月5日 MSNドニッチ!
  38. ^ 六本木襲撃、実行犯特定 怒羅権元リーダーら4人に逮捕状』 2012年12月20日 MSN産経ニュース