だるまさんがころんだ
だるまさんがころんだ(達磨さんが転んだ)は、こどもの遊びの一種。(この節で説明)
概説[編集]
鬼ごっこの変種のひとつである。鬼が「だるまさんがころんだ」という掛け声を唱えることから、この名前がついた。鬼を一人立て、その鬼が他の参加者をすべて捕虜にすることを目的とする。また、鬼以外の参加者は、次の鬼になることを回避しようと、鬼に触れた後により遠くへ逃げることを目的とする。他の鬼ごっこに似た遊びとは違い、基本的に鬼は自陣から動かない。唱える言葉は「だるまさんが転んだ」の他にも、地域によりさまざまなバリエーションがある(「10を数える方法」参照)。近頃はこれより派生した「だるまさんの一日」という少し違う遊びがある。
ルール上、他の遊びと異なり「動くこと」でなく「動かないこと」を求められるゲームであり、座ったままあるいは寝たままでのゲーム参加も可能なので、介護の場や特別支援教育でも活用されることが多い。その場合は鬼へのタッチが困難になるため、「既定の回数生き残った者の勝ち」「誰が最後まで残れるか競う」等、独自のルールになる場合も多い。
進め方[編集]
地域や場面、コミュニティにより様々なルールがあるため一概に言うことはできないが、概ね『鬼は参加者の方を見ずに「だるまさんが転んだ」等と唱え、終わり次第振り返って参加者の動向を見る』『参加者は鬼が見ていない場合のみ行動を許される』『鬼が見ているタイミングで動いた者は鬼に捕まる』『生き残った参加者が鬼に何らかのアクションを取ったところで全員解放され、1回の遊びが終了する』の4点を基本とすることが多い。以下に実例を示す。
- 遊びを始める前に鬼の自陣を決める。普通、木や電柱、ブロック塀など、地面に建つ柱や壁のようなものを使うが、グラウンドの真ん中などでも行うことはできる。鬼以外の参加者は、この自陣からある程度以上離れた場所で遊びを始める。
ゲーム開始時に鬼以外の参加者が「はじめの一歩」または「はじめの第一歩」と叫び、スタートラインから一歩だけ前に出てよい場合もある。 - 鬼は自陣の方に向かい、参加者に背を向けた状態で「だるまさんがころんだ」という掛け声を唱える。他の参加者の行動は見ることができないが、唱え終わるまで振り返って周囲を見渡してはならない。
唱える速度や調子を変えてタイミングをずらすことは一般に駆け引きや遊戯の一環として許容される傾向にあるが、反則とする場合もある。 - 鬼以外の参加者は鬼が背を向けて掛け声を唱えている間だけ行動でき、鬼に向かって近づく。
- 掛け声を言い終わった鬼は振り返って参加者の動向を確認する。この間、他の参加者は身動きをとってはならない。
- 鬼が動いている者を見つけるとその者の名を呼び、捕虜として自陣に呼び寄せる。捕虜となった者は鬼の陣内に移動[注 1]する。『動いた』という判断基準に関して厳格なものはなく、グループ内での取り決めによるところが大きい。
特に鬼が『だるまさんが転んだ』と唱える速度やタイミングをずらすことが許容されている場合は、静止するために制動をかけている状態や何らかの理由で空中にいて着地のために動かざるを得ないとき、その他やむを得ず最低限の動きをしていると判断できるときなど、明確に止まろうとする意思を見せていれば動いていても対象から除外する傾向にある。ただし『一度制動をかけたがバランスを崩して動いてしまう』など新たな動きを取った場合や、行動の結果必要以上に鬼へ接近した場合はやむを得ずとも対象に含める場合が多い。
逆にタイミングや速度のずらしが認められていない場合は言い終わるタイミングを考慮するべきとして上記のような例も許されない場合が多い。
捕虜は、他の者が鬼に捕まらずに鬼にタッチする(触れる)まで、逃げることはできない。 - 2~5をゲームが終了するまで繰り返す
- 他の参加者すべてが捕虜となった場合は鬼の勝ちとなる。多くの場合最初に捕虜となったものが次の鬼となり、最初の状態から遊びを再開する。
逆に、参加者のうちの誰かが鬼にタッチした場合は、捕虜を含めた鬼以外の参加者は鬼の自陣から逃げる行動をとる。
また、ローカルルールとして、鬼に触れるのではなく、鬼と捕虜をつないでいる手を「切る」という動作とする場合がある。切る動作を行ったものは行動と同時に「切った」と宣言する。鬼と捕虜との間だけではなく、捕虜同士の部分でも「切る」ことが許される場合があり、その際、鬼より遠いほうの捕虜グループだけが逃げることができる。
次のゲームへの準備[編集]
多くの鬼遊びでは次の鬼を決める場合、「最初に鬼に捕まった者」「再びじゃんけんで決め直す」「希望者を募る」など単純な手順で選定される傾向にあるが、「だるまさんが転んだ」においては1ゲームが比較的短く終わるため、次の鬼を決める手順もゲーム化されている場合が多い[注 2]。以下に実例を示す[注 3]。
- 鬼は「ストップ」「止まれ」など叫ぶことによって、逃げる者の行動を止められる。
- 捕虜などの行動を止めた後、鬼は指定された歩数や秒数、または自分が履いている靴を蹴り飛ばした距離など、限られた範囲内で逃げた参加者を捕まえる行動をとれる。[注 4]
- 前項の行動により次のゲームの状況が変化するが、この点についてルールにより大きく分ければ2つのパターンが存在するため、以下に分割して示す。
- 1回1回のゲームが分離しており、毎回鬼を決め直す場合は、鬼がタッチする参加者は一人であることが多い。この場合、許された行動範囲内でタッチできる者であればだれでも良いとする場合と、指定された歩数・秒数を消化しきる[注 5]までタッチが許されず、行動を終えた段階で手の届く範囲内の参加者をタッチする[注 6]とされている場合がある。
- 鬼が全ての参加者に触れることができると鬼の勝ちと見做されて鬼役が交代する場合は、鬼は行動が許される範囲において次々と参加者をタッチしていく。これにより無事全ての参加者を捕まえた場合は、最初に触れられた者が次の鬼となる場合が多い。逆に全ての参加者にタッチすることができなかった場合は鬼を交代せずに次のゲームを始める。この際、捕まった者はゲーム開始と同時に解放される場合、ある程度のハンデを持たされる場合、そもそも最初から捕虜となる場合がある。
だるまさんの一日[編集]
上記のように、派生した遊びである「だるまさんの一日」と呼ばれるゲームも存在する。
基本的なルールとしては当該グループで行われる「だるまさんが転んだ」に準じて行われることが多いが、掛け声が『だるまさんが○○(「ご飯を食べた」、「寝た」等何らかの行動が入る)』となり、参加者側は通常と異なり停止ではなく『○○』に入る行動の演技を要求される。
従って、指示にもよるが必ずしも静止する必要はなく、あくまで演技であるため意に反した行動[注 7]をとる必要はない。
こうした違いがあるため、鬼は『動いた者』ではなく『指示した行動の演技に見えない者』を捕まえていくことになるが判断基準として難しく、どちらかと言えば如何に上手く(あるいは面白く)演技をするか、もしくは鬼が如何に意表を突いた指示を出すかという遊びになることが多い。
禁則[編集]
遊びを円滑に進めるため、いくつかの禁則を設ける場合がある。これらの禁則はそのコミュニティの性質などによってローカルルールとして設けられるものがほとんどである。これらの禁則を破ったものは通常、鬼と交代させられたり(鬼以外)、最初からやり直し(鬼)となる。指名や数の指定に関する場合は他の参加者に再考を促されるか、指定権が他者に移譲されることも多いが、場合によっては口論の原因となることがある。
- 禁則の例
- 鬼以外の参加者は、鬼の自陣から見えない障害物に隠れてはならない。
- 鬼は、掛け声を唱えるときに、周辺の鏡やガラス窓の反射を利用して様子をうかがってはならない。
- 鬼以外の参加者は、鬼が掛け声を唱えるときに鬼から離れる方向へ移動してはならない。
- 鬼は、まばたき・呼吸などの不随意な動作をもって「動いている者」と認定してはならない。
- 鬼以外の参加者は、事前に決めた範囲外へ逃げてはならない。
- 鬼に触れた者が鬼の進む歩数や秒数を決められるルールでは、「小股一歩」や「0.1秒」、離れているのに中股五歩など、確実に逃亡者の誰にもタッチできない数を指定するのは反則に当たる。
- ただし、鬼が上級生や教師だった場合はその運動能力に期待して明らかに無理がある指定でもそのままカウントが始まる場合もある。本人に意思確認を取る場合もあるが、このような状況の場合は鬼が参加者の挑戦を受ける傾向にある。
- 鬼が「ストップ」「止まれ」と言った位置から動いてはいけない。
- だるまさんの一日において、演技をしながら鬼の方向へ進んではいけない。似たルールとして『現在位置から動かずに演技をすること』とされている場合も多い。
10を数える方法[編集]
遊びの際に唱えられる「だるまさんがころんだ」は、ちょうど10音であるため、10をすばやく数える方法としても使われる。
地方や年代によっては他の10音の文章に置き換えられる場合や10音でない言葉に置き換えられる場合もある。それを受けて、遊びの名前そのものが、その文章に置き換えられている場合もある。以下に例を示す。
- 「坊さん(ぼうさん、ぼんさん)が屁をこいた」(近畿地方)
- 「練兵場の兵隊さん[注 8]」(大阪市中央区、法円坂、森ノ宮一帯)
- 「インディアンのふんどし」(関東地方)
- 「インディアンのくろんぼ」
- 「兵隊さんが通る(った)」
- 「くるまん(の)とんてんかん」(宮城県)
- 「乃木さんは偉い人」
- 「インド人の黒ん坊」(九州中国四国地方・石川県)
- 「寿がきやのやきうどん」
- 「ひみなこと(5文字と短いためか、唱える回数が決まっていない)」(和歌山県)
- 「お母さんの貼箱」(新潟県三条市一部地域)
- 「羊たちの沈黙」
題材とした作品[編集]
みんなのうた だるまさんがころんだ | |
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歌手 | 斎藤こず恵 |
作詞者 | 山本正之 |
作曲者 | 山本正之 |
編曲者 | 小山田暁 |
映像 | 静止画+アニメーション |
映像制作者 |
矢口高雄(静止画) 南家こうじ(アニメ) |
初放送月 | 1978年8月 - 9月 |
再放送月 |
1979年8月 - 9月 2013年8月 - 9月 2020年10月9日・11月6日(リクエスト) |
その他 | 2012年3月28日の『発掘SP』(VOL4)で放送。 |
音楽[編集]
- 『みんなのうた』(NHK)で1978年8 - 9月に放送。題名の「だるまさんがころんだ」を含めてきっちり10文字(小文字は数えない)で収まる言葉を10個あげ、それで100まで数えたことにしているが、「アビニオンの坊さん」など難解なものも含まれていた。
- 映像内の一枚絵は矢口高雄、アニメーションは南家こうじが作成した。南家は本作が『みんなのうた』初登板で、現在に至るまで多数のアニメを製作、その一方で矢口の『みんなのうた』担当は最初で最後。
- 『おはよう!こどもショー』(日本テレビ系列)内でも放送されたことがある。
- 再放送は1年後の1979年8月 - 9月だけだったが、「みんなのうた発掘プロジェクト」で映像が寄せられ、2012年3月28日深夜の『みんなのうた発掘スペシャル』(VOL4)で33年振りに再放送、その後2013年8月 - 9月には定時番組でも再放送、また2020年10月9日と同年11月6日には『みんなのうたリクエスト』でも再放送された。
- 発表当時、斎藤の歌はフィリップスからシングルレコードとして発売。キャニオンレコードからは、前田友美によるカバー版が発売された(1978年11月発売『NHKテレビ みんなのうたより ゴールデン・ベスト20(第2集)』G15G-0002が初出)。日本コロムビアからは、大和田りつこによるカバー版が発売された。
- 「だるまさんがころんだ」作曲:山口恭子(オーケストラ作品、オーケストラ・アンサンブル金沢委嘱初演)
漫画[編集]
- 「神さまの言うとおり」作中に「だるまさんがころんだ」を題材としたデスゲームが登場する。
- 「放課後さいころ倶楽部」作中に「だるまさんがころんだ」を題材としたボードゲームが登場する。
テレビドラマ[編集]
- 「イカゲーム」作中に「だるまさんがころんだ」(原語版では「むくげの花が咲きました」)を題材としたデスゲームが登場する。
他国での類似の遊び[編集]
英語圏[編集]
だるまさんがころんだと似た英語圏の遊びに、レッドライト・グリーンライト(Red light, green light)がある。遊び方にはいろいろな変種があるが、基本的には参加者は鬼から離れたところからスタートし、最初に鬼に触った人が勝ちとなる。ただし動くことができるのは鬼が後ろを向いて「グリーンライト」(青信号)と言ったときだけで、鬼はいつでも突然振り返って「レッドライト」(赤信号)と叫ぶことができ、このときただちに静止しないと、その参加者は失格になる。
「ある言葉を言っている間だけ動いて良いというルールで、そっと鬼に近付いていく」という点で、日本のだるまさんがころんだによく似ている。一方、顕著な違いとして、日本のだるまさんがころんだでは鬼にならないことが参加者の目的であり、参加者らは鬼でない「みんな」の中にとどまろうとし、敗者が次の鬼となるのに対し、レッドライト・グリーンライトでは鬼になることが参加者の目的であり、参加者は「みんな」と違う特権的な信号灯役になろうとし、勝者が次の鬼となる。
アジア[編集]
- 韓国での掛け声は、「むくげの花が咲きました(무궁화 꽃이 피었습니다)」。日本統治時代に成立したとされる[1]。
- 香港での掛け声は、「一二三、紅綠燈(信号機)、過馬路(道路を横断)、要小心(気を付けて)」
- 中国での掛け声は、「一、二、三、(我们都是)木头人(木頭人。(私たちはすべて)『木の人形』の意)」
その他[編集]
- フランスでの掛け声は、「1、2、3、太陽」(Un, deux, trois, soleil)
- スペインでの掛け声は、「1、2、3、イギリスのチョコレート」(Un, dos, tres, chocolate inglés)[注 9]。
- イタリアでの掛け声は、「1,2,3,星(stella)!」
- イスラエルでの掛け声は、「1,2,3,塩魚!」(דג מלוח)
怪談との関連[編集]
壁の方を向いて「だるまさんが転んだ」と唱えている間は参加者の様子が全く分からないという性質から「見ていない間に背後で何かが起きているかもしれない」という不気味さが想起されるためか怪談と結び付けられることも多い。パターンは何種類かあるが、唱え終わって振り向くと参加者が消えていた、あるいは振り向くと見知らぬ不気味な参加者が紛れ込んでいるなど、「目隠ししている間に何かが起きた」といった形で語られるケースがほとんどである。
また、都市伝説においては「入浴中、目をつぶって洗髪している姿勢は『だるまさんがころんだ』に見えるため、この時に心の中ででも『だるまさんが転んだ』と唱えてしまうと遊びに参加しようとした何者かを引き寄せてしまい、顔を上げると鏡に何らかの怪異が映り込む」とする話もある。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ 単に鬼の近くで観戦することも多いが、鬼へのタッチではなく鬼と捕虜の鎖を切ることで1ゲームが終わる場合は鬼を起点に手や小指などを繋ぐ。グループの年齢や男女構成により連動して変化する傾向にある。また、捕まった時点で鬼側のプレイヤーになり、鬼と一緒に参加者が動いていないかどうか監視し、指摘する例も多い。
- ^ ただしこれもローカルルールや状況に依るところが大きく、特に『鬼がゲームを跨いで捕虜を増やしていく』とするルールの場合は『捕虜がいない状態で鬼がタッチされた場合は鬼の負け』と見做され、他の鬼遊びと同様の手順で選定されることがある。
- ^ 「鬼になった回数をマイナスポイントとして累計し、最終的な戦績を比較する」などのローカルルールもある。
- ^ 歩数・秒数については、「事前に決めておく」「鬼以外の参加者によって多数決」などで決められる。また、鬼にタッチした(切った)者や前回の鬼、あるいは最初に相談して決められたリーダーなど、特定の人物が独断によりその場で歩数などを指定するルールもある。また、歩数についても、「大股○歩」「中股○歩」「小股○歩」など詳細に決められる地域もある。大股小股の判断は鬼にゆだねられるが、参加者の多くから批判を浴びた場合はやりなおしとなる。ただし「助走をとる」「小股と指示されたのに大きくジャンプする」など、明らかに剥離している場合を除けば遊戯の一環として許容される傾向にある。
- ^ 概ね鬼の陣地から離れるように進むものとされるが、指示された範囲が「中股100歩」「100秒」など明らかに過剰な場合や、次の鬼を免れるために自分から明らかに距離が開く歩数を指示した参加者など特定の者を狙い撃ちするために、途中で引き返したり、ぐるぐる回るなどして歩数や秒数を消化する行動は許容される場合が多い。
- ^ 最終的な到達地点から足を離さないことを原則とすることが多い。倒れ込んだり、タッチした後にバランスを崩して移動してしまったりするのは許容される傾向にある。
- ^ 例えば「服を脱ぐ」はその場でも実行できるが服を脱ぐ演技で良い。ただし往々にして自ら脱ぎ始めるお調子者などは出たり、演技でも恥ずかしがる者が出るときもあるので『トイレに行く』などのいわゆる下ネタも含めてこの手の指示を禁止、あるいは暗黙の了解として避けるものとされている場合もある。
- ^ 縄跳び歌の「郵便屋さん」も同様に「兵隊さん、お入り」と歌われる
- ^ 2007年のスペイン・メキシコ映画『永遠のこどもたち』には冒頭でこの遊びが出てくる。
出典[編集]
- ^ Q.韓国の「ムクゲの花が咲きました」という遊びは日本の「だるまさんがころんだ」が起源?、もっと!コリア、2014年4月29日。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- だるまさんがころんだ-ルール
- ウィふり調査団 『だるまさんがころんだのかけ声は?』調査
- “とうよみ”. 昔の遊び研究所. 2013年10月2日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2015年8月9日閲覧。