煙突

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酒造場の煙突
醸造業煉瓦作りの煙突
千葉県香取市

煙突(えんとつ)とは、工場、事業場、事務所、家庭などから燃焼等の過程で排出されるガスを屋外に導くための長い筒状の突起物。

概要

煙突は高熱による上昇気流の原理で排気を上方に導き上空に排出させる。歴史的にみると本格的な煙突が登場するのは記録上は14世紀のヨーロッパであるとされる[1]

煙突の高さが高いほど、排出ガス中に含まれる大気汚染物質濃度は、地表に到達するまでに拡散されることから、排出ガス濃度そのものの低減対策(脱硫脱硝集塵など)に加えて煙突の高さを高くする対策が広く推奨されてきた。ただし、煙突の高さを高くしても大気汚染物質の総量削減効果がないことに留意する必要がある。

煙突からのばい煙の拡散は、排出ガスそのものが持つ熱による浮力、煙突頂部から排出されるときの吐出速度によるモーメント力、外気の風速気温などにより、一定の高さまで上昇したのちに、有風時には風下側に流れる。そのときの煙流の上昇高さ(ΔH)に、煙突そのものの高さ(H=実煙突高)を加えたものを有効煙突高(He)と呼ぶ。

世界の煙突の高さ

330mを越えるもの(およそ上位20位まで)、および各国で最も高い煙突などの特筆性のあるものを掲げた。日本の煙突は、200m以上で資料等で確認出来たもののみを掲載した。

名称
画像 高さ

都市
竣工年
備考
エキバストス第二発電所 419.7m カザフスタンの旗 カザフスタン エキバストス 1987年 世界一高い煙突
インコ・スーパースタック
 (Inco Superstack
381m カナダの旗 カナダ サドベリー 1971年 世界一高い独立塔煙突
ホーマーシティ発電所
 (Homer City Generating Station
371m アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ホーマーシティ
 (Homer City
1977年  
ケンネコット大煙突
 (Kennecott Smokestack
370.4m アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 マグナ 1974年  
ベリョーゾフスカヤ発電所
 (ru:Берёзовская ГРЭС
370m ロシアの旗 ロシア シャルイポボ
 (Sharypovo
1985年  
ミッチェル発電所 367.6m アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 マウンズビル
 (Moundsville
1971年  
トルボヴリェ煙突 364m スロベニアの旗 スロベニア トルボヴリェ 1976年 ヨーロッパで最も高い煙突
エンデサ発電所
 (Endesa Termic
356m スペインの旗 スペイン アスポンテス
 (As Pontes
1974年  
フェニックス精錬所
 (Phoenix Copper Smelter
351.5m  ルーマニア バイア・マーレ  
シルダリヤ火力発電所 350m ウズベキスタンの旗 ウズベキスタン シルダリヤ 1975年  
テルエル火力発電所 343m スペインの旗 スペイン テルエル  
プロミン火力発電所 340m クロアチアの旗 クロアチア プロミン
 (Plomin
 
ヴェスターホルト火力発電所
 (Power Station Westerholt
337.5m ドイツの旗 ドイツ ゲルゼンキルヒェン 1997年 2006年12月に爆破解体。
爆破解体された独立建造物としてはもっとも高い。
マウンテニア発電所 336.2m アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ニューヘイブン
 (New Haven
1980年  
クチュルガン発電所
 (Kuchurgan power station
335m モルドバの旗 モルドバ ドネストロフスク
 (Dnestrovsc
 
エキバストス第一発電所 330m カザフスタンの旗 カザフスタン エキバストス  
ペルムスカヤ発電所
 (ru:Пермская ГРЭС
330m ロシアの旗 ロシア ドブリャンカ
 (Dobryanka
1987年 2本
レフチンスカヤ発電所
 (ru:Рефтинская ГРЭС
330m ロシアの旗 ロシア レフチンスキー
 (ru:Рефтинский
1980年 2本
TETs5 330m  ウクライナ ハルキウ(ハリコフ) 1981年  
Zuevska発電所
 (Zuevska thermal power station
330m  ウクライナ Zuhres
 (Zuhres
 
東マリツァ発電所
 (Maritsa Iztok Complex
325m  ブルガリア スタラ・ザゴラ 1977年
1980年
同国で最も高い煙突・建築物の一つ
ピルドプ精錬所
 (Pirdop copper smelter
325m  ブルガリア ピルドプ
 (Pirdop
同国で最も高い煙突・建築物の一つ
Ugljevik発電所
 (Ugljevik Power Plant
310m ボスニア・ヘルツェゴビナの旗 ボスニア・ヘルツェゴビナ Ugljevik
 (Ugljevik
1985年 同国で最も高い煙突・建築物
ブッシュハウス発電所
 (Buschhaus Power Station
307m ドイツの旗 ドイツ ヘルムシュタット
 (Helmstedt
1984年 同国で最も高い煙突
Chvaletice発電所
 (Chvaletice Power Station
305m  チェコ Chvaletice
 (Chvaletice
1977年 同国で最も高い煙突・建築物
SASOL III合成燃料工場
 (Secunda CTL
301m 南アフリカ共和国の旗 南アフリカ共和国 セクンダ
 (Secunda
1979年 同国で最も高い煙突・建築物
リブニク発電所
 (Rybnik Power Station
300m ポーランドの旗 ポーランド リブニク 1974年 同国で最も高い煙突の一つ。
ヤヴォジュノ発電所
 (Jaworzno Power Station
300m ポーランドの旗 ポーランド ヤヴォジュノ ? 同国で最も高い煙突の一つ。
ベウハトゥフ発電所
 (Bełchatów Power Station
300m ポーランドの旗 ポーランド ベウハトゥフ ? 同国で最も高い煙突の一つ。
コジェニツェ発電所
 (Kozienice Power Station
300m ポーランドの旗 ポーランド コジェニツェ
 (Kozienice
? 同国で最も高い煙突の一つ。
Kawęczyn発電所
 (pl:Elektrociepłownia Kawęczyn
300m ポーランドの旗 ポーランド Warszawa-Kawęczyn
 (pl:Kawęczyn-Wygoda
? 同国で最も高い煙突の一つ。
Novaky発電所
 (Novaky Power Plant
300m スロバキアの旗 スロバキア Nováky
 (Nováky
1976年 同国で最も高い煙突
Orot Rabin発電所
 (Orot Rabin
300m イスラエルの旗 イスラエル ハデラ
 (Hadera
1997年 同国で最も高い煙突
プロヴァンス発電所
 (Provence Power Station
300m フランスの旗 フランス ガルダンヌ
 (Gardanne
1984年 同国で最も高い煙突
ビシュケク火力発電所 300m キルギスの旗 キルギス ビシュケク 1989年 同国で最も高い煙突
東京電力鹿島火力発電所 231m 日本の旗 日本 08茨城県神栖市 日本一高い煙突
中部電力尾鷲三田火力発電所 230m 日本の旗 日本 24三重県尾鷲市
東京電力常陸那珂火力発電所 230m 日本の旗 日本 08茨城県東海村 常陸那珂レインボータワー
中部電力西名古屋火力発電所 230m 日本の旗 日本 23愛知県飛島村
東京二十三区清掃一部事務組合豊島清掃工場 210m 日本の旗 日本 13東京都豊島区 1998年
JFEスチール千葉工場Ⅰ 207m 日本の旗 日本 12千葉県千葉市
大王製紙三島新工場 207m 日本の旗 日本 38愛媛県四国中央市 1984年? エリエールタワー
関西電力姫路第一発電所 204m 日本の旗 日本 28兵庫県姫路市 2005年 天気予報を兼ねたライトアップが施されていたが2011年3月の東日本大震災以後、節電のために休止している。
中国電力大崎火力発電所 200m 日本の旗 日本 34広島県大崎上島町

煙突に関連する逸話

  • 煙突に関する逸話としてはサンタクロースが挙げられるが、これは聖ニコラウスが貧しい少女の家の煙突から金貨を投げ入れたという逸話による。
  • ドイツでは、ヒトラーが政権をとった1930年代に「煙突掃除法」が制定された。これは、「煙突掃除職人を生粋のドイツ人に限る」という内容で、各家庭が「ナチスに反抗的かどうか」の監視も兼ねていた。戦後、西ドイツでは条文が改正されて形式上は外国人も参入可能になったが、東西ドイツ統一後も煙突掃除業界によりドイツ国内が7888の「煙突掃除区」に区分され、事実上、各家庭が掃除を頼む時は地域の職人に依頼しなければいけない状態が続いていた。しかし、EUの圧力により2008年に法改正が行われ、既得権益が解体され、自由化が行われた(出典:MSN産経ニュース2008.11.19 18:54)。
  • イギリスなどの煙突掃除夫たちの「陰のう」付近にが多発していた(当時は陰のうのしわの中にすすがたまって腫瘍ができるので「すす病」と呼ばれていた)ことをきっかけとして、東京帝国大学山極勝三郎教授と大学院生の市川厚一が660日にも及ぶ、ウサギの耳へのコールタール塗布実験により、1915年、世界初の皮膚癌発症実験に成功した。

煙突に関連する俗語

次のものを俗に「エントツ」と呼ぶ。

脚注

  1. ^ 管野浩編 『雑学おもしろ事典』 p.211 日東書院 1991年

関連項目