怪談

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怪談(かいだん)とは、怖さや怪しさを感じさせる物語の総称。日本古来のものを限定して呼ぶ場合もある。中でも、四谷怪談皿屋敷牡丹燈籠の三話は日本三大怪談とされている。

怪談(スリラーや怪奇ジャンルの作品)は日本国内では通常「夏の風物詩」とされるが、近年は真冬の時期に放映や作品発表が行われるケースもある。

歴史

元来、に関する物語、幽霊妖怪怪物、あるいは怪奇現象に関する物語は民話伝説、あるいは神話の中にも多数存在する。

今昔物語集』(「霊鬼」)など、平安時代末期(1120年頃)の古典文学にも多数の怪談が収録されているが、それらを題材にしてまとまった形で残っている物では『雨月物語』(1776年)が有名である。また、四谷怪談(1727年)や番町皿屋敷(1700年代末)のように歌舞伎の題材にも取り上げられ、ひとつのジャンルを構成していた。現在の感覚における古典的な怪談はこれらに基づく物である。また、落語にも怪談物があり怪談噺と言われる。

小泉八雲(ラフカディオ・ハーン、Lafcadio Hearn)は古くから伝わる日本各地の怪談や奇談を収集し、自らの解釈にしたがって情緒豊かな物語に仕立て上げ、『怪談 (kwaidan)』(1904年)として一冊にまとめた。

また、明治末期には、当時欧米で流行していたスピリチュアリズムの影響を受け、日本でも「怪談ブーム」が到来し、文学者たちが「百物語」を催したり、盛んに怪談の執筆を行っている[1]。また、現在では「民俗学の原点」とされている『遠野物語』についても、話者の佐々木喜善・著者柳田國男ともに「怪談愛好者」であり、「怪談ブーム」の副産物として登場したものともいえる[2]

戦後は、新倉イワオが1968年に日本初の心霊番組を企画制作。後に昼のワイドショー『あなたの知らない世界』などによって1970年代の怪談ブームをリードした。新倉はその後も番組企画本など合わせて50冊余りの怪異譚を蒐集した著作を世に送り、大人が怪談を嗜むことを許容する社会環境と後年の素地を築いた。また、1970~1980年代に活躍した中岡俊哉による児童向け怪談、1970年代にブームとなったつのだじろうの『うしろの百太郎』『恐怖新聞』などの恐怖漫画によって子供時代に恐怖・オカルトの洗礼を受けた世代が成長して、現在の怪談需要を支えている。

木原浩勝中山市朗は、自らが体験者より収集した怪異譚の人名や地名を意図的にぼかすことによって取材ソースを秘匿し、「実話怪談集」というスタイルにまとめ、江戸奉行・根岸鎮衛による随筆「耳袋」になぞらえて『新・耳・袋~あなたの隣の怖い話』(扶桑社、1990年)として出版した。この仕事は長く忘れられていたが、1998年に復活刊行され、2005年までの7年間に刊行され続けた『新耳袋』全十巻(メディアファクトリー)により「怪談」という日本古来のエンターテイメントの復権がなされることとなった。

『新耳袋』の休眠期に当たる1991年~1997年には実話怪談集『「超」怖い話』(勁文社)が安藤薫平樋口明雄の手によって編まれた。これは1998年の新耳袋復活と勁文社倒産の後も平山夢明加藤一に引き継がれ、竹書房から刊行されている続刊は、新耳袋と並んで近代実話怪談のひとつの潮流となっている。

近年では、タレント現代における代表的怪談話者である稲川淳二による怪談は1993年頃から始まった[要出典])による現代の生活様式に合わせた怪談が語られている。また前述の新耳袋の著者である木原・中山は、新宿ロフトプラスワンにおいて定期的な怪談のトークライブを続けており、11年目を迎えた2007年には通算50回を超えた。

また伝統的な怪談の会のスタイルとして、百物語が挙げられる。

怪談と都市伝説が混同されていることもあるが、現状では明確な公的な定義は共有されていない。

怪談の例

怪談を扱った作品

落語(怪談噺)

小説

映画

テレビドラマ

  • 生きている小平次[怪談四夜」(1956年7月5日)
  • 怪談 姐妃のお百(1956年8月21日)
  • 生きている小平次[東芝日曜劇場](1957年8月4日)
  • 東海道四谷怪談(1961年7月7日)
  • 牡丹灯籠[講談ドラマ](1962年7月4日)
  • 怪奇ロマン劇場(1969年、NET、全24回21話、※時代物と現代物が混在)
  1. 生きている小平次
  2. まぼろしの女
  3. ゆきおんな
  4. 美しき亡霊
  5. 椿屋敷の怪
  6. 愛しき妻の宴
  7. 四谷怪談〔前後編〕
  8. 湖畔の妖女
  9. 牡丹灯籠〔前後編〕
  10. 八つ墓村
  11. 水の中の顔
  12. 白鷺
  13. 怪談乳房榎〔前後編〕
  14. 白髪鬼
  15. 尼と幽鬼
  16. 幽霊が呼んでいる
  17. 怪談蟻地獄
  18. 呪われた唇
  19. 首の恋
  20. 妖館の少女
  1. 怪談 蚊喰鳥
  2. 怪談 牡丹灯篭~鬼火の巻~
  3. 怪談 牡丹灯篭~蛍火の巻~
  4. 怪談 宇津谷峠
  5. 怪談 皿屋敷 お菊の亡霊
  6. 四谷怪談 稲妻の巻
  7. 四谷怪談 水草の巻
  8. 怪談 首斬り浅右衛門
  9. 怪談 宵宮雨
  10. 怪談 笠森お仙幽霊茶屋
  11. 怪談 耳なし芳一
  12. 怪談 乳房の呪い
  13. 怪談 雪女
  1. 怪談 累ヶ淵
  2. 番町皿屋敷
  3. 謎の幽霊御殿
  4. 妖怪血染めの櫛
  5. 髑髏妻の怪
  6. おんな怨霊舟
  7. 怪談悲恋の舞扇
  8. 女の冷たい手
  9. 怪猫美女屋敷
  10. 怪談夕霧楼
  11. 釘を打つ女
  12. 怪談首斬り
  13. 変幻 玉虫屋敷の怪
  • 怪談(1972年、毎日放送・歌舞伎座テレビ室製作、毎日放送系列放映、全10回)
  1. 四谷怪談
  2. 牡丹燈籠
  3. 蚊喰鳥
  4. 雨の古沼
  5. 怨霊まだら猫
  6. 累ヶ淵
  7. 地獄へつづく甲州路
  8. 怪談 大奥あかずの間
  9. 新撰組 呪いの血しぶき
  10. 雪おんな
  • 日本名作怪談劇場(1979年、東京12チャンネル・歌舞伎座テレビ製作、東京12チャンネル系列放映、全14回)
  1. 怪談 蚊喰鳥
  2. 怪談 大奥(秘)不開の間「呪いの部屋に潜む二百年の怨念」
  3. 四谷怪談 哀しく燃える女の炎
  4. 怪談 吸血鬼紫検校
  5. 怪談 佐賀の怪猫
  6. 怪談 利根の渡し
  7. 怪談 玉菊燈籠
  8. 怪談 夜泣き沼 地獄が招く炎の女
  9. 怪談 牡丹灯篭
  10. 怪談 死神
  11. 怪談 鰍沢
  12. 怪談 奥州安達ヶ原
  13. 怪談 高野聖
  14. 怪談 雪女
  • 傑作怪談シリーズ(1981年8月、フジテレビ系列、全4話)
  1. 魔界・番町皿屋敷 血にまみれたお菊の怨霊が呼ぶ呪いの恐怖!
  2. 怪談かさねヶ淵 暗い沼に人魂が走り恐怖の因果に女達が狂う
  3. 怪猫佐賀騒動 亡霊は夜に狂い、生き血を吸った猫が女を襲う
  4. 大奥悪霊の館 眠った死霊はよみがえり、女の血を呼ぶ恐怖の夜
  • 傑作怪談シリーズ2(1982年8月、フジテレビ系列、全4話)
  1. 怪談牡丹燈籠 恋の怨念に狂気の死霊が妖しく身もだえる
  2. 髑髏検校 悪霊吸血鬼大奥連続怪死事件
  3. 怨 血を吸った彼岸花が死霊を呼ぶ
  4. 悪霊桜子姫 妖しい女の怨霊に殺人鬼がよみがえる恐怖の夜
  • 怪猫有馬御殿 妖しく光る猫の眼!! 血も凍る女の館 恐怖の夜!!(1983年8月12日)
  • 怪談妖蝶の棲む館 美女の裸身に舞う蝶は白い肌の亡霊を呼ぶ(1983年9月2日)
  • 夏の怪談シリーズ(1984年7月、フジテレビ系列放映、全5話)
  1. 怨みの黒猫屋敷
  2. 新妻地獄
  3. 呪われた花嫁
  4. 大奥妖霊の墓
  5. 真夜中の鬼女
  • 怪猫恋ヶ淵 闇に光る無数の猫の目!美人姉妹の恨みをはらす母娘猫(1987年8月13日)
  • 夏の夜サスペンスをあなたに 新・四谷怪談 前編・後編[東芝日曜劇場](1987年8月23日)
  • 怪談!妲妃のお百 海坊主の怨霊に憑かれた女[傑作時代劇](1987年8月27日)
  • 四谷怪談(1991年7月29日)
  • 四谷怪談[月曜・女のサスペンス](1992年7月27日)
  • 怪談 KWAIDAN
  • 怪談 KWAIDAN II
  • 怪談 KWAIDAN III 牡丹燈籠
  • 怪談百物語(2002年、フジテレビ)

近代怪談

脚注

  1. ^ ちくま文庫から刊行されている、東雅夫の怪談文芸アンソロジーを参照
  2. ^ 水野葉舟『遠野物語の周辺』(国書刊行会)収録の横山茂雄による解題「怪談への位相」より。

関連項目

関連人物