国際単位系
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国際単位系(こくさいたんいけい、仏: Système international d'unités、英: International System of Units、略称:SI)とは、メートル法の後継として国際的に定めた単位系である。略称の SI はフランス語に由来するが、これはメートル法がフランスの発案によるという歴史的経緯による。SI は国際単位系の略称であるため「SI 単位系」というのは誤り。(「SI 単位」は国際単位系の単位という意味で正しい。) なお以下の記述や表(番号を含む。)などは国際単位系の国際文書第 8 版日本語版[1]による。
国際単位系 (SI) は、メートル条約に基づきメートル法のなかで広く使用されていたMKS単位系(長さの単位にメートル m、質量の単位にキログラム kg、時間の単位に秒 s を用い、この 3 つの単位の組み合わせでいろいろな量の単位を表現していたもの)を拡張したもので、1954年の第10回国際度量衡総会 (CGPM) で採択された。
現在では、世界のほとんどの国で合法的に使用でき、多くの国で使用することが義務づけられている。しかしアメリカなど一部の国では、それまで使用していた単位系の単位を使用することも認められている。
日本は、1885年(明治18年)にメートル条約に加入、1891年(明治24年)施行の度量衡法で尺貫法と併用することになり、1951年(昭和26年)施行の計量法で一部の例外を除きメートル法の使用が義務付けられた。 1991年には日本工業規格 (JIS) が完全に国際単位系準拠となり、JIS Z 8203「国際単位系 (SI) 及びその使い方」が規定された[2]。
なお、国際単位系 (SI) はメートル法が発展したものであるが、メートル法系の単位系の亜流として「工学単位系(重力単位系)」「CGS単位系」などがあり、これらを区別する必要がある。
SI 基本単位
国際単位系は 7 つの基本単位を組み合わせて組立単位の定義を行う。
SI基本単位は秒 s、メートル m、キログラム kg、アンペア A、ケルビン K、モル mol、カンデラ cd で、対応する次元はそれぞれ時間、長さ、質量、電流、熱力学温度、物質量、光度である。
量 | 基本単位 | 定義 | |
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名称 | 記号 | ||
時間 | 秒 | s | セシウム133原子の基底状態の2つの超微細準位(F = 4, M = 0 および F = 3, M = 0)間の遷移に対応する放射の周期の 9 192 631 770 倍の継続時間 |
長さ | メートル | m | 1 秒の 1/299 792 458 の時間に光が真空中を進む距離 |
質量 | キログラム | kg | 国際キログラム原器(プラチナ 90 %、イリジウム 10 % からなる合金で直径・高さともに 39 ミリメートルの円柱)の質量 |
電流 | アンペア | A | 無限に長く、無限に小さい円形断面積を持つ 2 本の直線状導体を真空中に 1 メートルの間隔で平行においたとき、導体の長さ 1 メートルにつき 2 × 10−7 ニュートンの力を及ぼしあう導体のそれぞれに流れる電流の大きさ |
熱力学温度 | ケルビン | K | 水の三重点の熱力学温度の 1/273.16。温度間隔も同じ単位 |
物質量 | モル | mol | 0.012 キログラムの炭素12に含まれる原子と等しい数の要素粒子を含む系の物質量。 モルを使うときは、要素粒子 (entités élémentaires) が指定されなければならないが、それは原子、分子、イオン、電子、その他の粒子またはこの種の粒子の特定の集合体であってよい |
光度 | カンデラ | cd | 周波数 540 × 1012 ヘルツの単色放射を放出し、所定方向の放射強度が 1/683 ワット毎ステラジアンである光源のその方向における光度 |
かつて、これら単位は原器と呼ばれる単位の基準を作る事で定義されていたが、現在では質量以外の単位は物理法則を用いて定義されているため、定義が変わらない限り常に一定である。ただし実際に物理現象を計測しなければ得られないため、測定技術の向上による若干の「変化」があるが、それでも定義されている基準が変化しているわけではない。
また、厳密に定義の方法で計測することが困難、あるいは不可能なものもあるため、現実には必ずしも定義の方法で単位を得ていないものもある。例えば電流については、定義の方法では充分な精度が得られず、また安定した状態を維持することが困難であるため、電圧と電気抵抗の値を実現することで電流の値の実現に代えている。
質量に関しては、現在においてもキログラム原器を基準としているため、経年によって基準が変化してしまう。そのため、質量を物理法則を用いて定義する方法が検討されている(アボガドロ定数を用いる方法などが挙げられている。たとえば、1 キログラムがケイ素原子何個分かで定義する。ケイ素を使うのは純粋な結晶を作りやすいため)。
上の表の中には、単位の定義の中に別の単位を用いているものがある。例えば、メートルの定義には秒の定義が前提とされている。単位の定義に求められるのは何より実用性、すなわち現在の社会生活に必要かつ十分な精度を持ち、定義値が容易に実現できることである。このため、定義の独立性は意味を持たない。
なお、基本量の次元の記号には、サンセリフ立体を用いる[3]。
次元と記号 次元 時間 長さ 質量 温度 物質量 電流 光度 記号 T L M Θ N I J
固有名称を持つ SI 組立単位(表3)
国際単位系 (SI) では、すべての物理量の単位は 1 つか複数の基本単位の累乗の積で表現できる。そのうち、よく使われるものについては、SI組立単位として固有の名称とその記号が与えられている。
SI 接頭辞(表5)
SI基本単位の前につけて用いることがほとんどであるが、MN(メガニュートン)や hPa(ヘクトパスカル)のようにSI組立単位に対しても用いられる。
接頭語 | 記号 | 10n | 十進数表記 | 漢数字表記 | short scale | メートル法への導入年 | 国際単位系における制定年 |
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クエタ (quetta) | Q | 1030 | 1000000000000000000000000000000 | 百穣 | nonillion | 2022年 | |
ロナ (ronna) | R | 1027 | 1000000000000000000000000000 | 千𥝱 | octillion | 2022年 | |
ヨタ (yotta) | Y | 1024 | 1000000000000000000000000 | 一𥝱 | septillion | 1991年 | |
ゼタ (zetta) | Z | 1021 | 1000000000000000000000 | 十垓 | sextillion | 1991年 | |
エクサ (exa) | E | 1018 | 1000000000000000000 | 百京 | quintillion | 1975年 | |
ペタ (peta) | P | 1015 | 1000000000000000 | 千兆 | quadrillion | 1975年 | |
テラ (tera) | T | 1012 | 1000000000000 | 一兆 | trillion | 1960年 | |
ギガ (giga) | G | 109 | 1000000000 | 十億 | billion | 1960年 | |
メガ (mega) | M | 106 | 1000000 | 百万 | million | 1874年 | 1960年 |
キロ (kilo) | k | 103 | 1000 | 千 | thousand | 1795年 | 1960年 |
ヘクト (hecto) | h | 102 | 100 | 百 | hundred | 1795年 | 1960年 |
デカ (deca) | da | 101 | 10 | 十 | ten | 1795年 | 1960年 |
100 | 1 | 一 | one | ||||
デシ (deci) | d | 10−1 | 0.1 | 一分 | tenth | 1795年 | 1960年 |
センチ (centi) | c | 10−2 | 0.01 | 一厘 | hundredth | 1795年 | 1960年 |
ミリ (milli) | m | 10−3 | 0.001 | 一毛 | thousandth | 1795年 | 1960年 |
マイクロ (micro) | μ | 10−6 | 0.000001 | 一微 | millionth | 1874年 | 1960年 |
ナノ (nano) | n | 10−9 | 0.000000001 | 一塵 | billionth | 1960年 | |
ピコ (pico) | p | 10−12 | 0.000000000001 | 一漠 | trillionth | 1960年 | |
フェムト (femto) | f | 10−15 | 0.000000000000001 | 一須臾 | quadrillionth | 1964年 | |
アト (atto) | a | 10−18 | 0.000000000000000001 | 一刹那 | quintillionth | 1964年 | |
ゼプト (zepto) | z | 10−21 | 0.000000000000000000001 | 一清浄 | sextillionth | 1991年 | |
ヨクト (yocto) | y | 10−24 | 0.000000000000000000000001 | septillionth | 1991年 | ||
ロント (ronto) | r | 10−27 | 0.000000000000000000000000001 | octillionth | 2022年 | ||
クエクト (quecto) | q | 10−30 | 0.000000000000000000000000000001 | nonillionth | 2022年 |
SI 単位と併用される非 SI 単位(表6)
日々の生活で広く SI とともに用いられているため、CIPM により国際単位系と併用することが認められている非 SI 単位である。これらの使用は今後ずっと続くものと考えられ、SI 単位によって正確な定義が与えられている[4]。このうち、天文単位(au)は2014年3月の第103回CIPMによって、SI併用単位に採用されたものである。その記号は、au と定められた(2014年3月以前の記号は、ua であった)。
時間
これらの単位はSI接頭辞とは併用されない(1 kh などとはしない)。
平面角
- 度 (°):1°= π/180 ラジアン (rad)
- 分 (′):1′= 1/60°= π/10800 ラジアン (rad)
- 秒 (″):1″= 1/60′= 1/3600°= π/648000 ラジアン (rad)
その他
その他の非SI単位(表8)
様々な理由により特定の分野で使用されている非 SI 単位である。ただし、これらの単位を使用するときは対応するSI単位による定義を明示しなければならない。
引用
- ^ 国際文書第 8 版国際単位系 日本語版 (2006)。
- ^ 国際標準化機構(ISO)による ISO 1000 を翻訳した物。ISO 1000 は2009年に ISO 80000-1 に置き換えられ、JIS Z 8203 も2014年に ISO 80000-1 を翻訳した JIS Z 8000-1 に置き換えられた。
- ^ 国際文書第 8 版国際単位系 日本語版 (2006) p. 15, 1.3 量の次元。
- ^ 国際文書第 8 版国際単位系 日本語版 (2006) p. 36, 表6 SI 単位と併用される非 SI 単位。
関連項目
- SI組立単位
- SI併用単位
- SI接頭辞
- 数量の比較
- 単位の換算
- 単位の換算一覧
- 物理量
- 尺貫法
- ヤード・ポンド法
- メートル条約
- 自然単位系
- ISO 1000 - 国際標準化機構 (ISO) で、SI units and recommendations for the use of their multiples and of certain other units(国際単位系及びその使い方)の文書名で公表されている。
- ISO/IEC 80000 - 国際標準化機構 (ISO) および 国際電気標準会議 (IEC) で、Quantities and unitsの文書名で、量及び単位それぞれについて具体的に公表されている。
参考文献
- [1] 「SIパンフレット」『国際単位系(SI)は世界共通のルールです』 (独)産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2015年12月改定
- 独立行政法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター『国際文書 国際単位系 (SI)』(第 8 版日本語版)、2006年 。
外部リンク
- SI brochure — 国際単位系の利用案内書。国際度量衡局 (BIPM) による。
- International System of Units (SI) (英語) - Encyclopedia of Earth「国際単位系」の項目。
- JIS Z8203「国際単位系 (SI) 及びその使い方」 KIKAKURUI.COM