新しいSIの定義

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7つのSI基本単位と、現行の定義における基本単位の独立性

国際度量衡委員会(CIPM)の委員会は、SI基本単位の定義を改訂する提案をした。この提案はCIPMにおいて検討された上で、2014年の第25回国際度量衡総会(CGPM)で承認される予定である。

メートル法の大幅な修正は、一貫性のある単位系である国際単位系(SI)が1960年に公式に発表されて以来となる。SIは、一見したところでは「任意に」定義された7つの基本単位と、基本単位から組立てられた20の組立単位により構成されている。単位系が一貫性を持ったシステムを形成しているにもかかわらず、基本単位の定義はそのようにはなっていない。今回のCIPMによる提案は、基本単位の導出に基礎物理定数を使用することで、これを改善しようというものである。これにより、SI基本単位の中で唯一人工物による定義になっているキログラムが物理定数による定義になり、国際キログラム原器が不要になる。現行の定義では、メートルが既に物理定数によるものになっている。

新しいSIの定義の背景[編集]

1875年、世界の20の主要工業先進国が集まって会議が開かれ、その結果としてメートル条約が調印された。メートル条約により、国際的に使われる単位を管理するための以下の3つの機関が組織された。

  • 国際度量衡総会 (CGPM; Conférence Générale des Poids et Mesures) – 4から6年に1度開催される会議で、全ての条約加盟国の代表者で構成される。新しい基礎計測学の決定の結果に基づいた、国際単位系の改良や伝播に必要な協定について議論・検討が行われる。
  • 国際度量衡委員会 (CIPM; Comité international des poids et mesures) - CGPMから任命された、それぞれ国籍を異にする18人の科学者により構成される。CIPMは毎年開催され、CGPMへの助言を行う。CIPMはいくつかの分野別の小委員会を設置している。その中の一つである単位諮問委員会(CCU; Consultative Committee for Units)は、単位に関する諸問題についてCIPMに助言を行う。[1]
  • 国際度量衡局 (BIPM; Bureau international des poids et mesures) – CIPMとCGPMのために事務局と研究施設を提供する。

1960年にメートルの定義が国際メートル原器から特定の光の波長に関連づけられたものに置き換えられて以降、基本単位の中で定義が人工物に由来するものはキログラムのみとなった。年を重ねるにつれて、キログラムの定義となっている国際キログラム原器の質量に、1年で最大20×10^−9キログラムの変化があることがわかってきた。[2] 1999年の第21回総会で、各国の研究機関に対し、キログラムを人工物によらずに定義する方法を研究するよう要請された。

2007年、測温諮問委員会からCIPMに、温度の現行の定義では20 K以下と1300 K以上で十分な計測ができないという報告がなされた。測温諮問委員会では、現行の水の三重点による定義よりも、ボルツマン定数を基準にした方がより良い温度の計量ができ、低温や高温での計測困難を克服できると考えた。[3]

2007年の第23回総会で、CPIMに対し、全ての単位を物理定数に基づく定義にするための調査が命じられた。翌年、国際純粋・応用物理学連合(IUPAC)により承認された。[4] 2010年9月に開かれたCCUで、2010年10月のCIPMに提出される決議[5]およびSI文書の変更の草案についておおむね合意された。[6] 2010年10月のCIPMは「第23回総会で要求された条件はまだ満たされていないため、現時点ではCIPMはSIの改訂の提案は行わない」と決定した。[7] しかし、CIPMは第24回総会(2011年10月17日 - 21日)において、検討事項の決議について提示し、詳細が決定する前であったが、新しい定義についておおむね合意した。[8] This resolution was accepted by the conference[9] そして、総会は次回の第25回総会を2015年から2014年に前倒して開催することを決定した。[10]

提案[編集]

この節において、数値の末尾の"X"は、その桁以降の値について未だ合意がなされていないことを意味する。

CCUは、現行の光速度に加え、4つの物理定数を定義値とすることを提案した。

これらの定数は2006年版のSI文書に、「実験的に求められる定数」として記載されている。

この提案では、以下の物理定数には変更がない。

組立単位(ジュール、クーロン、ヘルツ、ルーメン、ワット)を使用した上記の定義は、基本単位を使用すると以下のように書き表される。(ここで、srは無次元の単位ステラジアンである。)

  • Δν(133Cs)hfs = 9192631770 s−1
  • c = 299792458 s−1·m
  • h = 6.62606X×10^−34 s−1·m2·kg
  • e = 1.60217X×10^−19 s·A
  • k = 1.38065X×10^−23 s−2·m2·kg·K−1
  • NA = 6.02214X×10^23 mol−1
  • Kcd = 683 s3·m−2·kg−1·cd·sr

加えて、CCUは以下のように提案している。

  • 国際キログラム原器は廃止し、現行のキログラムの定義は廃止される。
  • 現行のアンペアの定義は廃止される。
  • 現行のケルビンの定義は廃止される。
  • 現行のモルの定義は改訂される。

基本単位の定義の変更[編集]

提案では、全ての基本単位の定義の文言について、改訂または書き直しが行われている。現行(2008年)の定義と提案された定義[6]は以下の通りである。いくつかの定義において、定数の値について未だ合意がなされておらず、その部分を"X"と表現している。

SI基本単位(色つき)の提案された定義間の関連と、基本単位と基本物理定数(灰色)との関係

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の提案された定義は、実質的には現行の定義と同じものであるが、計測が行われる条件がより厳密に定義された。

現行の定義: 秒は、セシウム133原子の基底状態の2つの超微細準位間の遷移に対応する放射の周期の9192631770倍の継続時間である。
提案された定義: 秒(s)は時間の単位であり、その大きさは、単位 s−1Hzに等しい)による表現で、基底状態で温度が0ケルビンのセシウム133原子の超微細構造周波数の数値を正確に9192631770に固定することで示される。

メートル[編集]

メートルの提案された定義は、実質的には現行の定義と同じものであるが、秒の定義のわずかな違いがメートルに伝播する。

現行の定義: メートルは、1秒の1/299792458の時間に光が真空中を進む長さである。
提案された定義: メートル(m)は長さの単位であり、その大きさは、単位 m·s−1 による表現で、真空中の光速度の数値を正確に299792458に固定することで示される。

キログラム[編集]

キログラムの提案された定義は、現行の定義から根本的に変えられる。現行の定義は「国際キログラム原器の質量」であるが、新しい定義はプランク定数を通して光子が持つエネルギーと等価の質量に関連づけられる。

現行の定義: キログラムは質量の単位であり、国際キログラム原器の質量に等しい。
提案された定義: キログラム(kg)は質量の単位であり、その大きさは、単位 s−1·m2·kg(J·sに等しい)による表現で、プランク定数の数値を正確に6.62606X×10^−34に固定することで示される。

この変更により、キログラムの定義は秒とメートルの定義に依存することになる。

アンペア[編集]

アンペアの提案された定義は、現行の定義から大幅な見直しが行われる。現行の定義は充分な精度をもって現示するのが難しいが、新しい定義は直感的に理解しやすく、現示するのも容易である。

現行の定義: アンペアは、無限に長く、無限に小さい円形断面積を持つ2本の直線状導体を真空中に1メートルの間隔で平行においたとき、導体の長さ1メートルにつき2×10^−7ニュートンの力を及ぼしあう導体のそれぞれに流れる電流の大きさである。
提案された定義: アンペア(A)は電流の単位であり、その大きさは、単位 A·s(Cに等しい)による表現で、電気素量の数値を正確に1.60217X×10^−19に固定することで示される。

この変更により、アンペアの定義はキログラムとメートルの定義に依存しないものになる。また、現行では光速度と円周率によって正確な値が定義できる真空の誘電率真空の透磁率自由空間のインピーダンスが、電気素量の値を定義値とすることによって、不確かさのある値となる。

ケルビン[編集]

ケルビンの提案された定義は、現行の定義から根本的に変えられる。現行の定義は、水の状態が変化する温度を用いて温度目盛りを定義するものであるが、新しい定義ではボルツマン方程式を用いて温度と等価のエネルギーにより表現される。

現行の定義: 熱力学温度の単位ケルビンは、水の三重点の熱力学温度の1/273.16である。
提案された定義: ケルビン(K)は熱力学温度の単位であり、その大きさは、単位 s−2·m2·kg K−1(J·K−1に等しい)による表現で、ボルツマン定数の数値を1.38065X×10^−23に固定することで示される。

この変更により、ケルビンの定義は秒、メートル、キログラムの定義に依存することになる。

モル[編集]

現行のモルの定義は、キログラムに関連づけられている。提案された定義では、この関連をやめ、系に含まれる構成要素の数を定義値とすることでモルを定義する。

現行の定義: モルは、0.012 kgの炭素12に含まれる原子と等しい数の構成要素を含む系の物質量である。モルを使うときは、構成要素が指定されなければならないが、それは原子、分子、イオン、電子、その他の粒子またはこの種の粒子の特定の集合体であってよい。
提案された定義: モル(mol)は物質量の単位であり、その大きさは、単位 mol−1 による表現で、アボガドロ定数の数値を6.02214X×10^23に固定することで示される。

この変更により、炭素12(12C)の質量、統一原子質量単位(ダルトン)、キログラム、アボガドロ数の間の関連はなくなる。また、以下の値は変化する。

  • 12Cの質量。(12ダルトンとは等しくない)
  • 1ダルトンの質量。12C以外の全ての原子で、この質量は変化する。
  • 0.012kgの12Cに含まれる原子の数。(これは現行のアボガドロ定数の定義である)

カンデラ[編集]

カンデラの提案された定義は、実質的には現行の定義と同じものであるが、表現が改められている。

現行の定義: カンデラは光度の単位であり、周波数540×10^12ヘルツの単色放射を放出し、所定方向の放射強度が1/683 ワット毎ステラジアンである光源のその方向における光度と定義される。
提案された定義: カンデラ(cd)は光度の単位であり、その大きさは、単位 s3·m−2·kg−1·cd·sr または cd·sr·W−1(lm·W−1に等しい)による表現で、周波数540×10^12 Hzの単色光の発光効率の数値を683に固定することで示される。

再現性への影響[編集]

全般的な定義の変更は、「実践的技術」(mise en pratique[1])を用いた基本単位の再現の不確かさに改善をもたらす。

下表にその改善を示す。[6][11]

様々な物理学的測定の相対的不確かさ
単位 参照される定数 記号 現行の定義 提案された定義
kg 国際キログラム原器の質量 m(K) 定義値 5.0 × 10−8
プランク定数 h 5.0 × 10−8 定義値
A 磁気定数 μ0 定義値 6.9 × 10−10
電気素量 e 2.5 × 10−8 定義値
K 水の三重点の温度 TTPW 定義値 1.7 × 10−6
ボルツマン定数 k 1.7 × 10−6 定義値
mol 12Cのモル質量 M(12C) 定義値 1.4 × 10−9
アボガドロ定数 NA 1.4 × 10−9 定義値

秒の計測の相対的不確かさは1×10−14のまま維持され、メートルについても2.5×10−8が維持される。[12]


関連項目[編集]

外部リンク[編集]

脚注[編集]

  1. ^ CIPM: International Committee for Weights and Measures”. BIPM. 2010年10月3日閲覧。
  2. ^ Peter Mohr (2010年12月6日). “Recent progress in fundamental constants and the International System of Units”. Third Workshop on Precision Physics and Fundamental Physical Constants. 2011年1月2日閲覧。
  3. ^ Fischer, J. et al (2007年5月2日). “Report to the CIPM on the implications of changing the definition of the base unit kelvin”. 2011年1月2日閲覧。
  4. ^ Resolution proposal submitted to the IUPAP Assembly by Commission C2 (SUNAMCO)”. International Union of Pure and Applied Physics (2008年). 2011年5月8日閲覧。
  5. ^ Ian Mills (2010年9月29日). “On the possible future revision of the International System of Units, the SI”. CCU. 2011年1月1日閲覧。
  6. ^ a b c Ian Mills (2010年9月29日). “Draft Chapter 2 for SI Brochure, following redefinitions of the base units”. CCU. 2011年1月1日閲覧。
  7. ^ Towards the "new SI"”. 国際度量衡局 (BIPM). 2011年2月20日閲覧。
  8. ^ On the possible future revision of the International System of Units, the SI - Draft Resolution A”. 国際度量衡委員会 (CIPM). 2011年7月14日閲覧。
  9. ^ [http://www.bipm.org/utils/en/pdf/24_CGPM_Resolution_1.pdf “Resolution 1 - On the possible future revision of the International System of Units, the SI”]. 24th meeting of the General Conference on Weights and Measures. Sèvres, France. (17 - 21 October 2011). http://www.bipm.org/utils/en/pdf/24_CGPM_Resolution_1.pdf 2011年10月25日閲覧。 
  10. ^ “General Conference on Weights and Measures approves possible changes to the International System of Units, including redefinition of the kilogram.” (プレスリリース), Sèvres, France: 国際度量衡総会, (2011年10月23日), http://www.bipm.org/utils/en/pdf/Press_release_resolution_1_CGPM.pdf 2011年10月25日閲覧。 
  11. ^ Ian Mills (2010年10月). “A Note to the CIPM from Ian Mills, President of the CCU: Thoughts about the timing of the change from the Current SI to the New SI”. CCU. 2011年1月1日閲覧。
  12. ^ William B. Penzes. “Time Line for the Definition of the Meter”. 2011年1月1日閲覧。