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乙一

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乙一
(おついち)
誕生 安達 寛高
(あだち ひろたか)
(1978-10-21) 1978年10月21日(45歳)
日本の旗 日本福岡県
職業 小説家
言語 日本語
国籍 日本の旗 日本
最終学歴 豊橋技術科学大学工学部卒業
活動期間 1996年 -
ジャンル 推理小説
ミステリ
ライトノベル
代表作暗いところで待ち合わせ』(2002年)
GOTH リストカット事件』(2002年)
主な受賞歴 ジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞(1996年)
本格ミステリ大賞受賞(2003年)
デビュー作夏と花火と私の死体』(1996年)
配偶者 押井友絵
親族 押井守岳父
公式サイト Web Otsuichi
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乙一(おついち、男性、1978年10月21日 – )は、日本小説家。本名安達 寛高(あだち ひろたか)。福岡県出身。日本推理作家協会会員。本格ミステリ作家クラブ会員。

ペンネームは、愛用していた関数電卓機(ポケコン)の名前「Z1」に由来する[1]

山白朝子中田永一の別名義でも活動を行なっている。

来歴

1996年、『夏と花火と私の死体』で第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞集英社)を受賞し、17歳(執筆時は16歳)という若さでデビュー。選考では、栗本薫が強く推したという。以後学業の傍ら、『ザ・スニーカー』などのライトノベル誌に作品を発表。

大学時代は愛知県豊橋市に居住。久留米工業高等専門学校材料工学科から編入学で、豊橋技術科学大学工学部エコロジー工学課程卒業。在学中、SF研究会所属。卒業後は1年程で東京に転居。

2002年に出版された『GOTH リストカット事件』で、第3回本格ミステリ大賞を受賞し、ライトノベルから抜け出した人気を誇った。

2004年には『手を握る泥棒の物語』がTEPCOひかり東京電力)の光ファイバーインターネットサービスのコンテンツとして映画化されたほか、2005年春に『ZOO』収録作のうちの5作品が映画化され全国の劇場で公開され、2006年秋には『暗いところで待ち合わせ』が、2007年夏には『きみにしか聞こえない』が劇場公開された。

大学時代から本名の安達寛高名義で自主映画の制作を行なっており、2004年には『ゴーストは小説家が好き』で第5回宝塚映画祭・映像コンクールに上位入選している。

2006年に、映画監督押井守の娘であり映画ライターの押井友絵と結婚した。

2011年山白朝子中田永一の別名義で活動していたことを本人のtwitterで明らかにした。

作風

作品は残酷さや凄惨さを基調としたものと、切なさや繊細さを基調としたものの、2つの傾向が存在している。前者の例としては集英社から刊行された作品の多くや『GOTH リストカット事件』が、後者の例としては角川スニーカー文庫で刊行された作品の多く(『きみにしか聞こえない』、『さみしさの周波数』、『失踪HOLIDAY』)や『暗いところで待ち合わせ』が挙げられる。しかし最近はどちらかに偏る作品がなくなってきている。また作品とは対照的なユーモアのあるあとがきも特徴。

乙一自身とライトノベル

乙一は学生時代には『スレイヤーズ』などのライトノベルを愛読していたが、後に「内容の薄さを綺麗な挿絵で誤魔化している作品が多すぎる」と感じるようになり、ライトノベルから遠ざかったという。作家としてのデビューはライトノベル作家としてであったが、「ライトノベルの存在さえ知らない人や、読書家でもライトノベルには手を出さない人が多くいることも事実である」として、『失踪HOLIDAY』『きみにしか聞こえない CALLING YOU』『さみしさの周波数』(いずれもライトノベルのレーベルである角川スニーカー文庫)の収録作から5作品を選び、新たに書き下ろし作品を加えてハードカバー化されたのが『失はれる物語』(角川書店)である。だが決してライトノベルを嫌いになったわけではなく、今でもライトノベルに対する愛着心は有り、ライトノベルのおかれている現状を憂いている。ちなみに本人は、自身の小説と比較してライトノベルが劣っているという評価を好ましく思っていない。

インタビューにおいて、特に影響を受けたライトノベル作品として麻生俊平の『ザンヤルマの剣士』シリーズを挙げている。外面的な派手さではなく、登場人物の内面を追求していくという作風は、両者に相通ずるものがある。

乙一の作品とライトノベル

ライトノベルとは、出版界において特殊な位置づけがされている。乙一自身「付き合いのある編集者の中でライトノベルを読んでいる人はいない」と述べている[2]。 乙一自身これは、乙一が出版界で活動をはじめて知った「ライトノベルの地位の低さ(差別)」にも繋がる事実である。乙一がデビューした当時(17歳)、ライトノベルに授けられる賞はひとつもなかった。自らがライトノベルで本を出すことによりライトノベルしか読んでいない人にもミステリーという形式を知ってもらい、いろんなジャンルの本を読んでもらおうと思った乙一は『GOTH』というミステリー小説を最初、ライトノベルというジャンルで出版した[3]。 しかしその後ライトノベルという形式から一般書の形式に変更した。本人はそれを「ライトノベルのままでは手にとってもらえない客層がいるという事実を覆せなかったという点では、ある種の敗北である」とハードカバー版の『失はれる物語』のあとがきの中で述べている。

人物

趣味・嗜好

アニメ、ゲームや漫画、映画鑑賞が趣味。スタジオジブリ作品のファンであることを公言しており、特に好きな作品は『天空の城ラピュタ』のようである。また、藤子・F・不二雄作品のファンでもあり、『ドラえもん』(原作・アニメ版共に)からは多大な影響を受けている。講談社の『ファウスト』という雑誌に『F先生のポケット』という作品を掲載したことがある。[4]。 この話は女子高生がタケコプターや四次元ポケットを拾う物語であり、この話が書かれたことからも『ドラえもん』に影響を受けていることが窺える。最も好きな映画監督はアンドレイ・タルコフスキー

16歳の頃から伊集院光爆笑問題ラジオ番組を愛好しており、東京に移住したのもラジオの電波が入りやすいという理由からであった。高専時代は友達がいなかった(なぜか人との接触を拒んでいた)ため、一人で本を読んでいる事が多く、「ダメでもいいんだ」というラジオの声に勇気付けられたと話す。ちなみに出身地である福岡県はずっと伊集院光と爆笑問題のラジオを放送している数少ない地域でもあった。

また乙一は1人で遊べるという点からDance Dance Revolution(ダンスダンスレボリューション)というダンスゲームが好きであり、最高のレベル10まで踊れると述べている。高校生の時85キロあった体重は大学での一人暮らしにおける肉体改造ともいえるダイエットとDance Dance Revolutionのおかげで現在65キロまで落ちている。[5]

メディア出演

メディアへの露出は少ないが一度だけ『爆笑問題のススメ』に出演している。『爆笑問題のススメ』出演時、「眞鍋かをりをデートに誘うなら?」という問いに、「渋谷にある大好きな漫画喫茶に誘う」と回答し、失笑を買う。本人曰く、牛乳が飲める、良い漫画喫茶らしい。

映画版『ZOO』の試写会にも姿を見せており、DVD特典では本人の姿を確認できる。

交流

ジャンプ ジェイ ブックス出身の作家では定金伸治松原真琴と特に仲が良く、3人でトルコを旅行し2006年に3人の共著で『とるこ日記』を出版している。また『ファウスト』の若手執筆陣、佐藤友哉西尾維新滝本竜彦らと交友がある。

家族

の押井友絵は映画ライターとして活動しており、乙一の監督映画で主演も務めている。また友絵の父は『うる星やつら』などで知られる映画監督の押井守であり、乙一から見ると岳父にあたる。

押井守
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
押井友絵
 
乙一
 

「このミステリーがすごい!」入賞作品

  • 2003年 - 『GOTH(夜の章・僕の章)』2位
  • 2007年 - 『銃とチョコレート』5位

作品

単行本・文庫

単行本未収録作品

  • 動くおもちゃ小説すばる、2000年8月号)
  • 妻の電話(小説すばる、2000年8月号)
  • 神隠し(小説すばる、2000年8月号)
  • 祝福された水ダ・ヴィンチなど)
    • 後述の外部リンク先で公開されている。
  • F先生のポケットファウスト vol.2)
  • 子供は遠くに行った(ファウスト vol.4)
  • 誰にも続かない(ファウスト vol.4)
  • 窓に吹く風(ファウスト vol.6 SIDE-A)
  • UTOPIA(ライトノベルを書く!)
    • 袋とじ形式で執筆のメイキングも収録されている。
  • ジョジョの奇妙な冒険 テュルプ博士の解剖学講義(読むジャンプ)
    • Part4のノベライズ作品だが、『The Book』には未収録。
  • おじいさんのひげのなか(BALLAD issue#1)
  • 電車のなかで逢いましょう(U-cafe オツイチ特集号)
  • きのぼりごはん(BALLAD #issue2)
  • 山羊座の友人(ファウスト vol.8)
  • 宗像くんと万年筆事件(小説すばる、2012年2月号)中田永一名義

アンソロジー

原案

  • 密室彼女(2006年、劇団、本谷有希子
    • 出版はされていないが、上演時に会場において、乙一本人による小説形式のプロットが無料で配布された。
  • 少年少女漂流記小説すばる
    • 著者名は古屋×乙一×兎丸古屋兎丸が作画、乙一が原作)。単行本は、2007年2月26日発売(集英社)。

映画

映像作品においては、本名の「安達寛高」名義で作品を発表している。

  • 二花子の瞳 〜にかこ、の、ひとみ〜(2002年)
    • 佐藤圭作監督作品。脚本:佐藤圭作・安達寛高
  • プールで泳いだ帰り道(2002年)
    • 上映時間5分間の自主製作作品。監督・脚本:安達寛高
  • 立体東京(2007年)
    • 赤緑メガネ(アナグリフ)を用いた3D作品。ゆうばり応援映画祭にて上映。その後、桜井亜美との上映イベント「東京小説~乙桜学園祭~」としてレイトショー公開。監督:安達寛高
  • ホッタラケの島 〜遥と魔法の鏡〜(2009年)
    • 佐藤信介監督作品。脚本:安達寛高、佐藤信介。
  • 一周忌物語(2009年)
    • 桜井亜美との上映イベント「天体小説~乙桜学園祭2~」で公開。監督・脚本:安達寛高

作品のメディア展開

映画

漫画

ドラマCD

ラジオドラマ

テレビドラマ

関連書籍

特集雑誌

  • 編集会議』2008年4月号 (宣伝会議、2008年3月) - 巻頭特集:乙一の小説公式
  • 謎詭 日本推理情報誌』Vol.3 (独歩文化、2008年12月) - 台湾で刊行されている推理小説情報誌の乙一特集号[7]。乙一訪台時のインタビューなどが掲載されている。訪台時の映像を収めたCDも付属[8]

脚注、出典

  1. ^ 「確かに、普通の電卓よりも高性能な計算ができるポケットコンピューターの名前が「Z1」でした。それが関わっていないことはないんですが、一番の理由は、画数の多い字が嫌いだったからです。ライトノベルのイラストの人には漢字二文字の人が多くて、『ザンヤルマの剣士』のイラストを描いていた方も、弘司さんという人で。その方の絵が好きだったので、漢字二文字で画数少なく、と考えました。(後掲外部リンク「作家の読書道」より)
  2. ^ 『失はれる物語』(角川文庫)あとがきより
  3. ^ 『GOTH 夜の章』『GOTH 僕の章』(角川文庫)あとがきより
  4. ^ 『ファウストMARvol.2』(2003年、講談社)
  5. ^ 『暗いところで待ち合わせ』(2001年、幻冬舎文庫)あとがきより
  6. ^ 箱庭図書館 乙一|集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブロー
  7. ^ 独歩文化公式ブログ 『謎詭』Vol.3(中国語)参照
  8. ^ 独歩文化公式ブログ 乙一訪台特別報道(中国語)でも、訪台時の様子を知ることができる。

外部リンク