ワシントン海軍軍縮条約での各国保有艦艇一覧
1921年11月11日から1922年2月6日までアメリカ合衆国のワシントンD.C.で開催された「ワシントン会議」で採択されたワシントン海軍軍縮条約では、アメリカ、イギリス、日本、フランス、イタリアの主力艦・航空母艦等の保有の制限が取り決められた。主力艦の定義は航空母艦以外の基準排水量10,000トンを超える軍艦または口径20.3cm以上の砲を装備する軍艦を言う。
本項は条約締結の結果変更となった各国の保有艦艇(空母については条約締結当時建造中の物をふくむ)と処分艦艇について一覧にしたものである。
アメリカ合衆国
主力艦
- フロリダ級(フロリダ、ユタ)
- ワイオミング級(ワイオミング、アーカンソー)
- ニューヨーク級(ニューヨーク、テキサス)
- ネバダ級(ネバダ、オクラホマ)
- ペンシルベニア級(ペンシルベニア、アリゾナ)
- ニューメキシコ級(ニューメキシコ、ミシシッピ、アイダホ)
- テネシー級(テネシー、カリフォルニア)
- コロラド級(コロラド、メリーランド、ウェストバージニア)
航空母艦
廃棄・建造中止艦艇
- ワシントン
- サウスダコタ級(サウスダコタ、インディアナ、モンタナ、ノースカロライナ、アイオワ、マサチューセッツ)
- レキシントン級(コンステレーション、レンジャー、コンスティテューション、ユナイテッド・ステーツ)
日本
主力艦
航空母艦
※関東大震災で天城が大破・修理不能となったため、加賀が代わりに改装された。
廃棄・建造中止艦艇
イギリス
主力艦
- クイーン・エリザベス級(クイーン・エリザベス、ウォースパイト、バーラム、ヴァリアント、マレーヤ)
- リヴェンジ級(リヴェンジ、レゾリューション、ラミリーズ、ロイヤル・サブリン、ロイヤル・オーク)
- タイガー
- レナウン級(レナウン、レパルス)
- フッド
- ネルソン級(ネルソン、ロドニー):日本に陸奥の保有を認めるのと引き替えに新規建造が認められた。
航空母艦
廃棄艦艇
フランス
主力艦
航空母艦
廃棄艦艇
イタリア
主力艦の一覧
国名 | 陸奥対抗艦就役まで保有許可 | 準弩級戦艦 | 弩級戦艦 | 超弩級戦艦 | 巡洋戦艦 | 建造許可された陸奥対抗艦 |
---|---|---|---|---|---|---|
アメリカ | デラウェア(1923退役) | すべて廃棄 | フロリダ | ニューヨーク | 未完成放棄 | コロラド(1923就役) |
ノースダコタ(1923退役) | ユタ | テキサス | ウェストバージニア(1923就役) | |||
ワイオミング | ネバダ | |||||
アーカンソー | オクラホマ | |||||
ペンシルベニア | ||||||
アリゾナ | ||||||
ニューメキシコ | ||||||
ミシシッピ | ||||||
アイダホ | ||||||
テネシー | ||||||
カリフォルニア | ||||||
メリーランド | ||||||
イギリス | サンダラー(1926除籍) | すべて廃棄 | すべて廃棄 | アイアン・デューク | タイガー | ネルソン(1927就役) |
キング・ジョージ5世(1926除籍) | マールバラ | レナウン | ロドニー(1927就役) | |||
センチュリオン(1926標的艦) | ベンボウ | レパルス | ||||
エイジャックス(1926除籍) | エンペラー・オブ・インディア | フッド | ||||
クイーン・エリザベス | ||||||
ウォースパイト | ||||||
バーラム | ||||||
ヴァリアント | ||||||
マレーヤ | ||||||
リヴェンジ | ||||||
レゾリューション | ||||||
ラミリーズ | ||||||
ロイヤル・サブリン | ||||||
ロイヤル・オーク | ||||||
日本 | なし | すべて廃棄 | すべて廃棄 | 扶桑 | 金剛 | なし |
山城 | 比叡 | |||||
伊勢 | 霧島 | |||||
日向 | 榛名 | |||||
長門 | ||||||
陸奥 | ||||||
フランス | なし | ヴォルテール | クールベ | プロヴァンス | なし | なし |
ディドロ | ジャン・バール | ブルターニュ | ||||
コンドルセ | フランス | ロレーヌ | ||||
パリ | ||||||
イタリア | なし | レジナ・エレナ | ダンテ・アリギエーリ | 未完成放棄 | なし | なし |
ヴィットリオ・エマヌエーレ | コンテ・ディ・カブール | |||||
ナポリ | ジュリオ・チェザーレ | |||||
ローマ | レオナルド・ダ・ヴィンチ | |||||
カイオ・ドゥイリオ | ||||||
アンドレア・ドリア |
- 日本
- 金剛型は1924~31年の第一次改装で重装甲化・減速化し、1931年以後は巡洋戦艦から戦艦・練習戦艦に類別変更している。
- フランス
- クールベとバールの計2隻は、条約明け以後も練習艦としての保有が認められた。
- フランスは条約締結直後の1922年8月に座礁事故を起こし、喪失した。
- イタリア
- R.エレナ級4隻は条約明けを待たず退役。エレナとエマヌエレは1923年、ナポリは1926年、ローマは1927年除籍。
- ダンテとカブール級1隻の計2隻は、条約明け以後も練習艦としての保有が認められたが、ダンテは退役した。
- ダ・ヴィンチは1916年に爆沈し、1919年に浮揚したものの、復旧工事が実施されず、1923年に除籍解体された。
航空母艦の一覧
国名 | 1921→31年の保有数 | 条約締結以前に既存 | 廃棄対象未完成巡洋戦艦より改造 | 廃棄対象未完成戦艦より改造 | ロンドン条約締結までに新造 |
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アメリカ | 1→3 | ラングレー(1922年既成給炭艦改造) | レキシントン(1927年レキシントン級改造) | なし | なし |
サラトガ(1927年レキシントン級改造) | |||||
イギリス | 4→6 | フューリアス(1917年既成巡洋艦改造) | なし | なし | ハーミーズ(1924年新造) |
アーガス(1918年未成客船改造) | カレイジャス(1928年既成巡洋艦改造) | ||||
ヴィンディクティヴ(1918年未成巡洋艦改造) | グローリアス(1930年未成巡洋艦改造) | ||||
イーグル(1920年未成戦艦改造) | |||||
日本 | 1→3 | 鳳翔(1921年新造) | 赤城(1927年天城型改造) | 加賀(1928年加賀型改造) | なし |
フランス | 0→1 | なし | なし | ベアルン(1927年ノルマンディ級改造) | なし |
イタリア | 0→0 | なし | なし | なし | なし |
- ヴィンディクティヴは1924年に軽巡洋艦へ復帰している。
- イーグルはチリ海軍向けにイギリスで建造した戦艦アルミランテ・コクレンを購入し改造したもの。
- 天城は航空母艦改造中に関東大震災で被災し放棄。代艦として加賀を転用。
未完成主力艦の去就の一覧
国名 | 陸奥対抗主力艦として就役 | 航空母艦として就役 | 進水に至ったものの廃棄処分 | 進水に至らず廃棄処分 |
---|---|---|---|---|
アメリカ | コロラド(コロラド級、1923年就役) | レキシントン(レキシントン級、1927年就役) | ワシントン(コロラド級、1924年標的処分) | サウスダコタ(サウスダコタ級、1923年売却) |
ウェストバージニア(コロラド級、1923年就役) | サラトガ(レキシントン級、1927年就役) | コンステレーション(レキシントン級、1923年売却) | インディアナ(サウスダコタ級、1923年売却) | |
レンジャー(レキシントン級、1923年売却) | モンタナ(サウスダコタ級、1923年売却) | |||
コンスティチューション(レキシントン級、1923年解体) | ノースカロライナ(サウスダコタ級、1923年売却) | |||
ユナイテッド・ステーツ(レキシントン級、1923年売却) | アイオワ(サウスダコタ級、1923年売却) | |||
マサチューセッツ(サウスダコタ級、1923年売却) | ||||
イギリス | なし | なし | なし | なし |
日本 | なし | 赤城(天城型、1927年就役) | 天城(天城型、1923年解体) | 愛宕(天城型、1925年解体) |
加賀(加賀型、1928年就役) | 土佐(加賀型、1925年標的処分) | 高雄(天城型、1925年解体) | ||
フランス | なし | ベアルン(ノルマンディ級、1927年就役) | ノルマンディ(ノルマンディ級、1924年解体) | なし |
フランドル(ノルマンディ級、1924年解体) | ||||
ガスコーニュ(ノルマンディ級、1924年解体) | ||||
ラングドック(ノルマンディ級、1929年解体) | ||||
イタリア | なし | なし | なし | なし |
- イギリスのN3型戦艦4隻・G3型巡洋戦艦は未発注。
- ネルソン級は会議内で新造が認められたため、工事凍結艦には含まれない。
- 日本の紀伊型戦艦・十三号型巡洋戦艦は未発注。
- 天城は航空母艦改造中に関東大震災で被災し放棄。代艦として加賀を転用。
- イタリアのフランチェスコ・カラッチョロは1920年に進水したが、同年に廃棄済み。