S&W M36

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
S&W M36
Smith and Wesson Model 36-10.jpg
M36-10
概要
種類 警察用回転式拳銃
製造国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
設計・製造 スミス&ウェッソン
性能
口径 .38口径(約9mm)
銃身長 51mm
使用弾薬 .38スペシャル弾
装弾数 5発
作動方式 ダブルアクション
全長 160mm
重量 554g

S&W M36は、アメリカスミス&ウェッソン社が1950年に開発した小型回転式拳銃である。一般には「チーフ(ス)・スペシャル」、「チーフス」、「チーフ」の名で知られる。

特徴[編集]

「チーフ」は警察署長の事。

登場以来、小型(≒短銃身)リボルバーの代名詞であり[1]、半世紀たった今でも、隠し持てる小型拳銃として絶大なる支持を得ている。S&W社以外にも世界各国の銃器メーカーがコピーモデルや類似製品を製造している。

M36の特徴は、警察用拳銃として携行性の向上を図るために、有する装弾数が、一般的なリボルバーの6発よりも少ない5発ということである。これによって、通常の6連装リボルバーと比較しても圧倒的に小型化され、警察官が常に携えていざという時に使用するに適したサイズと軽さになった。

また、M36はアメリカにおいては女性の護身用として使用されることも多かった。そのため女性向けモデルとして、装飾を施した「M36 Lady Smith」も製造された。用心鉄のすぐ上に“Lady Smith”の筆記体刻印がされ、グリップはオリジナルモデルと異なりローズウッドが使われている。

架空の探偵フィリップ・マーロウがこの銃を使っていた事でも知られる。

バリエーション[編集]

以下、型番の1桁目に「6」が付くのは銀色の外観を持つステンレスモデルである。

S&W M60[編集]

現行型のS&W M60

「M60」は1965年に発売された。史上初のステンレス製リボルバーでもあり、発売当時は「錆びないリボルバー」として人気を集めた。

右の写真に写っているのは現行型のM60(3インチモデル)である。耐久力を向上させるために数々の改良を施すことで、Jフレームを持つ小型リボルバーでありながら高威力の.357マグナム弾を使用できるようになった[2]

しかし、現行型は強化銃身(排莢ロッドを収めるバレルシュラウドを同時装備)を採用したことによって、従来(通常型.38口径弾専用、照準は固定)のM36や発売時のM60とは全く違う外観となってしまった。

可変照準器のモデル[3]もあるが、従来どおりの固定照準器のモデル[4]もある。

S&W M40 センティニアル/M640/M940[編集]

セーフティハンマーレスモデルが載った1899年の雑誌広告。
S&W M642 M640のバリエーションモデル。グリップセフティは省略されている。

「M40」はS&W社が1887年に発表した中折れ式リボルバー「セーフティハンマーレスモデル」(左写真)のコンセプトを、M36を基本として再現した物である。

服の中から取り出す際に引っかからないように撃鉄を内蔵式としたリボルバーで、撃鉄内蔵式ゆえにダブルアクションのみでの発射しかできないため、暴発を防ぐグリップセフティが取り付けられている(握りの後ろ部分に組み込まれたレバーを同時に握らないと撃鉄は落ちない)。しかし、ただでさえ暴発しにくいダブルアクションオンリーの本銃にはこれは過剰な機構であり、後に登場したM640では省略されている。

M40の愛称は1952年にS&W社設立100周年を記念して発売された拳銃でもあるため「センティニアル(Centennial: 100周年)」とも呼ばれる。M40やM42はグリップセフティから「セーフティハンマーレスモデル」と同じ「レモンスクイザー(Lemon Squeezer: レモン搾り器)」のニックネームも付けられたが、一般にはその呼称はあまり知られておらず、「センティニアル」(「センチニアル」)と呼ばれることが圧倒的に多い。

シングルアクションを使えぬM40は、後発のM49の人気に押されて1974年には生産中止となり、一旦カタログ落ちしたが、1990年にステンレス版のM640として再発売され、M40もその後、2007年にクラシックシリーズとして再生産された。なお「M940」は1993年から1996年にかけて発売された、自動拳銃用の9ミリパラベラム弾を使用可能なモデルである。

M640は各種口径が取り揃えられており、現行型は.357マグナム弾を使用可能になっている他、.32マグナム弾。.22マグナム弾。.22ロングライフル弾を使用するバリエーションが存在する。装弾数はそれぞれ.32マグは6発。.22マグは7発。.22LRは8発と、標準型の5発よりも多弾数になっている。

S&W M49/M649 ボディーガード[編集]

S&W M49

「M49」「M649」は私服警察官の要望を基にM36を基本として開発されたリボルバー。通称「ボディーガード(Bodyguard)」。

服の中から取り出す際に引っかからないように撃鉄を半内蔵としているが、M40/M640とは違い、撃鉄がフレーム上端にスライドスイッチ風に顔を覗かせているため、シングルアクション射撃も可能である。その関係でフレームの後部が膨らんだ特徴的なデザインになっている。その形状から「肩をいからせたチーフスペシャル」と表現されることもある。

共に一般的な.38スペシャル弾を使用する拳銃であるが、現行型のM649はM60と同様、.357マグナム弾の使用が可能となっている。

また、通常のM36(すなわちハンマーが露出したモデル)をM49のようなスタイルに変更するためのカスタムラバーグリップが存在する[5]

2007年4月17日に発生した長崎市長射殺事件ではM49が使用されたといわれている。

S&W M37/M38/M42 エアーウェイト[編集]

「M37」はM36にアルミ合金製フレームを採用して軽量化を図ったリボルバーである。現在はSIG SAUER P230S&W M3913と共に、ニューナンブM60に代わる日本警察の制式拳銃として使用されている。日本警察のものには新たに管理番号刻印とランヤードリングが追加されており、これらの付与はミネベアが行っている。

他にS&W社はこのM37と同系統のアルミフレームリボルバーとして、M40のアルミニウムフレームモデル「M42」や、M49のアルミフレームモデル「M38」を製造しており、これらのリボルバーは実銃でありながら空気のように軽いことから「エアーウェイト(Air Weight)」とも呼ばれる。

「エアーウェイト」といえども実弾を発射する拳銃であることには変わりないため、耐久力を考慮して銃身と弾倉だけは通常の拳銃と同じくスチール製(色がシルバーのものはステンレス製)にしている。しかし、通常のスチール製、ステンレス製の銃と比較すると耐久性はやや劣っている。

ベトナム戦争での「サイゴンでの処刑」で知られるグエン・ゴク・ロアンが使用したのはこのM38[6]

M360J(SAKURA)[編集]

M360(エア・ライト.357マグナム)の日本警察向け特注モデル。通称SAKURA(サクラ)。外見上の違いは左フレームの刻印とグリップの形状、ランヤードリングの有無のみである。撃鉄が小ぶりであるため、本体が軽量な割りに射撃時のブレが少なく命中率がよい。また撃針についても、従来のようにハンマーに付属するのではなく、コルト式のように銃本体に内蔵されている。銃身内にはクロムメッキがされており、耐久性が向上している。指かけ(ラッチ)上部には市販のM360のように安全装置として鍵穴が存在するが、警察では鍵の支給はされていない。グリップは黒色プラスチック製で初期のM36とほぼ同じ大きさであるが、フィンガーレストが延長され握りやすくなっている。2006年頃から調達されはじめ、ニューナンブM60 、M37エアーウエイトの後継として配備されつつある。一部雑誌において、レーザーグリップが装備されているという情報が流れたが、そのような事実はない。 2010年警察庁の調査により、日本警察に支給された一部の拳銃に「ひびが入った」などの報告があり、警察庁は全国の警察本部にサクラの一斉点検を指示した。その結果、11月までに亀裂のある拳銃約200丁が見つかったと報道されている。警察庁は原因を銃の不具合と見て回収を指示した。

チャーターアームズ・アンダーカバー[編集]

チーフス・スペシャルの廉価版で、チャーターアームズ社製のサタデーナイトスペシャルである。S&W社の純正品と比べると、低性能で低価格である。ジョン・レノン殺害に使用されたのも同銃である。

登場作品[編集]

映画[編集]

ドラマ[編集]

第10シーズン ラストファイトにてM60が登場。コーチMにてM36が登場。
シーズン2 恐れる医師 前編にてホローポイント弾を受けた患者をMRIにかけれる事を証明するために研修用の遺体に発砲。
Season 6 第11話 ついている女 に登場。
Season 11 第1話 聖域 に登場。展示室の壁にかけてある。
伊達健 (舘ひろし)が使用(パックマイヤー・ラバーグリップ装着)。
制式拳銃としてSSI隊員が装備。また、宇宙鉄面党の幹部である紅博士も使用。

アニメ[編集]

小室孝が死亡した警察官が所持していたM37を使用。
壊れたM36をマグナブラスターという光線銃に改造している。ただし原形はとどめていない。
ジラード公爵が使用。

漫画[編集]

小説[編集]

主人公の咲夜がM36チーフススペシャルを使用

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ あくまで、代名詞であって史上初ではない。ちなみに、史上初はコルト・ディテクティブスペシャルと言われている。
  2. ^ 逆に、.38スペシャル専用リボルバーでは.357マグナム弾を発射する事は出来ない。理由はマグナム弾の方が.38スペシャル弾より全長が長く、シリンダーを閉じられなくなるためである。これは、.38スペシャル専用リボルバーに.357マグナム弾を装填してしまわないようにするための安全対策である。
  3. ^ http://www.smith-wesson.com/webapp/wcs/stores/servlet/Product4_750001_750051_765498_-1_757768_757767_757751_ProductDisplayErrorView_Y
  4. ^ http://www.smith-wesson.com/webapp/wcs/stores/servlet/Product4_750001_750051_764932_-1_757768_757767_757751_ProductDisplayErrorView_Y
  5. ^ Jフレームのモデルだけでなく、K,Lフレームのリボルバー(S&W M10S&W M19S&W M686など)にも、同様のスタイルにできるカスタムラバーグリップが存在する(ラウンドタイプ専用)。
  6. '^ Buckley, Tom. "Portrait of an Aging Despot", Harpers magazine April 1972, Page 69

関連項目[編集]

外部リンク[編集]