F-19

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F-19とは、アメリカ軍が極秘に開発したと噂されていた機体の開発コードであり、実際には存在しない航空機の形式番号である。

消えた“19”[編集]

1962年にアメリカ空海軍は軍用機の命名規則により、航空機識別ナンバーを統一することとなり、それまで空海軍で異なる基準だったのを、同一基準で通番で命名する事となった。命名規則はほぼ空軍のそれに依拠するものとなり、海軍の既存の戦闘機にF-1F-11の型番が新たに付与され、以降の戦闘機はそれに続く番号で命名される事となった。

だが、F/A-18の次の機体であるF-5Gのコード変更後のナンバーが「F-19」ではなく「F-20」と発表され、その間の数字である「19」が欠番となったことが、各方面で議論がなされる切っ掛けとなった。同様に欠番となっていた13は、西洋において忌み数であることもあり、これを使用しないという理由には一応の根拠があったが、19に関しては特にそういった理由もなかった事が、憶測に拍車をかけたといえる。

これに関して、記者たちが空軍の報道担当官にF記号19番目の欠番の理由を求めたが、担当官の返答は「我が空軍にF-19という航空機は存在しない」という簡潔なものであった。そのため「アメリカ軍はレーダーに映らない航空機を極秘に開発しており、そのナンバーがF-19である」との考察(推測)がなされた。

“117”[編集]

F-117

事実、アメリカは1975年からステルス機の開発を開始しており、1988年12月アメリカ国防総省は、この極秘裏に開発を進めていたステルス戦闘機の存在を公表すると共に、名称がF-117である事を発表した。

この発表は19の欠番と相まって更なる謎を生んだ。現実的に考えれば、極秘としている戦闘機に正直にF-19と名称が与えられるはずもないという意見[誰?]もあるが、117という数字には根拠が無い。1962年の軍用機の命名規則改正によって、空軍戦闘機の「F」ナンバーはF-111で終わっているが、仮にそこからの連番としてもF-112〜F-116が欠番となっている。無論、この名称が与えられた理由は公表されていなかった。

これに関して、アメリカ空軍がソビエト製戦闘機を極秘裏に入手し、それらで編成されるテスト部隊内での機体呼称には欠番となったF-112からF-114の各番が与えられているという説[1]がある。

カリフォルニア州エドワーズ空軍基地で管制官をしていた人物が「パイロットから聞いた話」として、「公式には装備されていないMiGシリーズの戦闘機の形式名を無線等でそのまま言う事は出来ないから」と航空雑誌や軍事雑誌の記者に語った[要出典]。またF-117を開発したロッキード社が過去に開発した革新的な軍需関連商品に肖って117と名づけた、といった推測がメディアによってなされている。この憶測に基づいて実際に空軍報道担当官に質問をした記者がいたという。この質問に担当官は「米軍はF-111を最後にしたと決めた事はなかった」とだけ答えた。[要出典]

その形状[編集]

SR-71(NASAマーキング機体)

1980年代後期に入ると、確認こそされていなかったがステルス機の存在そのものは「公然の秘密」とも言えるものになっていたため、各軍事関係書籍などでは多種類の想像図が発表されていた。

いずれの想像図においても共通していたのは「機体の各部が曲線で構成されている」「垂直尾翼が内側に向いている」「電波を吸収する特殊な材質[2]による黒い塗装が施されている」など、当時既に「レーダーに捕捉され難い」として知られていた、SR-71を小型化したようなデザインであった。また、ここからの連想で「仮に“ステルス戦闘機”を開発しているメーカーがあるとすればそれはロッキード社であろう」とも推測されていた。

これらの想像や推論は結果的にいくつかは正しかったが、当時確たる根拠を持って論を展開できた例は皆無であった。

プラモデル[編集]

F-19という名が一人歩きを始めた原因の一つが、イタリアにあるプラモデルメーカー、イタレリ(Italeri)が製作・販売したプラスチックモデルキットである。このモデルは「アメリカの開発した極秘の戦闘機を独自の情報源により再現した」と謳われており、当時漏れ伝えられていた情報を反映して、「ミサイル等の武装は機体内に搭載する」「機体は曲線で構成され、二枚の垂直尾翼は内側に傾斜している」といった特徴を持っていた。上述のようにステルス戦闘機に対する関心や憶測が高まっていたこともあり、マスコミなどが持てはやしてクリスマス商戦の目玉商品となったことから、このモデルは一躍ベストセラー商品となった。

このモデルキットについて国防総省のスポークスマンに記者がコメントを求めたが、返答は「ある程度の航空機についての知識を有する者ならば、この程度の形状は想像し得るだろう」という肯定も否定もしないものであった。この微妙な返答内容が「軍関係者が否定しなかった」として売り上げ増に拍車をかけたとも言われている。

F-117の開発を行っていた時期にスカンクワークスの責任者だったベン・リッチは引退後、自著の中で「このインチキ模型と社内の内紛のせいで、ロッキード社の機密保持に問題があるとした公聴会に呼び出されそうになった」[3]と記述している。

また、イタレリ製F-19キットの発売と時期を同じくして、アメリカの電子機器メーカー「ローラル」が自社広告で使用した未来の航空機のイラストが、イタレリ製F-19と同様に曲線主体の機体形状で垂直尾翼が内側に傾斜していたデザインで描かれていた事からもてはやされ、「ステルス戦闘機=曲線で包まれている」という誤った[4]想像を広める一因となった。

上述の「F-19のプラモデル」は、イタレリの他にアメリカのテスター、日本のアリイ等が販売を行った。ちなみにイタレリとテスターは提携関係にあり、発売されたのは同一のキットであったが、アリイのキットはイタレリのキットを基に「独自の考証」を加えて自社で新たに設計・開発した別物である。また、ローラル社のイラストを基にしたキットもモノグラム社から発売された。

これらのプラモデルの他には、フライトシミュレーションゲームで一世を風靡したマイクロプローズがF-19ステルスファイター(en:F-19 Stealth Fighter)というゲームを製作しており、日本ではPC-9801に移植され同社の日本法人のマイクロプローズジャパンから発売された[5]

近年では日本フルタ製菓チョコエッグ世界の戦闘機シリーズ」においてイタレリ版F-19をラインナップに加えている[6]

結果[編集]

これらの事象から解るように、F-19についての各種の推測において、実際のF-117のような直線構成の予想図はほとんど存在しなかった。最終的にF-117の公式発表によってその形状が明らかになると、F-19に関する考察は下火になったが、一部には「F-117は本来「F-19」と命名されるはずであったが、F-19についての推測報道が加熱したために、急遽「F-117」という命名規則外の制式番号に変更されたものである」との推察がなされたこともあった。

結局、19が欠番となった理由は現在も不明なままである。

その他[編集]

なお、F-19と同様に、YF-24やF-121についても、存在が疑われ議論されることがある。YF-24は新世代のステルス戦闘機[7]、F-121は1986年に初飛行を行ったと噂された“センチネル”と呼ばれるマッハ3級の高速偵察機[8]である、というのが俗説である。

YF-24は、最終的に「F-35」と命名された機体が当初は「順番から言ってF-24と命名されるのではないか」と推測されていたことから来たもの[要出典]と考えられているが、F-24〜F-34の欠番は、元は「X-35」という型式番号で試作されていた機体を、番号をそのままでF-35としたために生じたものであると説明できる。

F-121についてもF-118〜F-120にも該当する機体が無いため、F-121という機体番号が突然に登場することには確たる理由がないものである。これに関しては、「極秘開発機に広く使われたFのプレフィックスに超音速偵察機A-121号機という数字を組み合わせたもの[8]」という説がある。他方、“アメリカ空軍はソビエト製戦闘機を極秘裏に入手し、それらには欠番となったF番号が与えられている”という説[1]から「冷戦後に入手した新たなソビエト(ロシア)製戦闘機には同じようにF-118[1]・F-119[要出典]・F-120[要出典]の番号が与えられた」という説もあるが、情報源が漠然としていて[1]定かではない。なお、アメリカ軍は冷戦後には旧東側諸国から入手したMi-24“ハインド”戦闘ヘリコプターをそのまま「Mi-24」の呼称で公然とテストを実施している。

なお、これらの他にもF-104を大幅に発展させた機体としてF-204が存在するが、これはロッキードの自社開発機につけられた俗称であり、軍に制式採用された訳ではないので、正式な型番ではない[9]

“MiG-37”[編集]

イタレリ社はF-19のプラモデルの大ヒットを受け、続いて「MiG-37B “ferret‐E”」と銘打った架空機のキットを発売した。

F-117とYF-22及びYF-23、それにMiG-29やSu-27を足して割ったような形態をしていたこのモデルはある意味先進的ではあったが、F-19のようなヒット商品になることはなく、メディアで話題になることもなかった。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d Parsch, Andreas (2012年2月7日). “Cover Designations for Classified USAF Aircraft”. Designation-Systems.Net. 2012年2月18日閲覧。
  2. ^ 磁性体塗料とされていた。なお、その塗料を開発したのは日本のTDKである、という憶測もあった。TDKは電子レンジなど民生品に用いる目的の電波吸収材を開発・製造している。
  3. ^ 本人の出席は免れたが、当時のロッキード社の社長が出席している。
  4. ^ F-117が直線的デザインであるのは当時の技術的限界によるもので、空気力学的には問題のある設計である。後に曲線的デザインでステルス性を追求する事が不可能ではなくなり、B-2やF-22は部分的には曲線で構成されている。
  5. ^ ゲーム中では上記プラモデルと同様の形状の機体で、ウェポンベイを開くとレーダーに見つかりやすくなる、等の設定がなされている
  6. ^ 説明文には丁寧に「極秘のステルス戦闘機」との一文がある
  7. ^ Edwards AFB website”. Col. Joseph A. Lanni, USAF biography. 2005年3月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年2月18日閲覧。
  8. ^ a b Parsch, Andreas (2007年9月11日). “Secret U.S. Aircraft Projects at Groom Lake”. Dreamlandresort.com. 2012年2月18日閲覧。
  9. ^ 「実験機」としてアメリカ空軍によって与えられた公式名称は「X-27」である

参考文献[編集]

関連項目[編集]