CQB

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CQBトレーニングを行うアメリカ陸軍特殊部隊

CQB(クロース・クォーター・バトル、: Close Quarters Battle近接戦闘)とは、市街地建物内のような狭隘な場所、飛行機船舶内部等の限定的な閉所で行われる歩兵主体の戦闘をいう。拳銃や短機関銃による射撃や白兵戦が効果的とされる3〜30m程度の距離で行われ、さらに近距離での戦闘はCQCと呼ばれる。ここでの"close"は"閉まる"という動詞ではなく"近い"という形容詞だが、日本語では閉所戦闘等と表記される事もある。

概要

近接戦闘は、少数の歩兵により、直接照準射撃を駆使し、敵に対して接近して行われる戦闘である。占拠された建物等の解放や人質の救出、目標の逮捕や殺害を目的に、主に室内や、市街戦などで発生する。広い視界と射界が得られ、ある程度距離を置いて敵を発見し、小銃機関銃、火砲などを以て殲滅しようとする野戦森林戦砂漠戦山岳戦などの戦闘と区別される。

近接戦闘では、短機関銃拳銃手榴弾スタングレネードナイフなどの装備を用いた、各種格闘技術が確立されている。近距離戦への対応のほか、建造物への突入を伴う作戦や人質救出作戦での活用を目的に、一部の軍隊特殊部隊警察SWATが専門的に訓練教育されている。

基本的な概念は、第二次世界大戦のヨーロッパでの市街地における戦闘で、建物を確保するために用いられた戦術が原点である。のちにイギリス陸軍の下士官によって体系化され、対テロ作戦、人質救出作戦における戦闘技術を研究開発したイギリス陸軍SASが発祥とされている[要出典]

装備

CQBトレーニング中のシールズ隊員
旧来の銃剣突撃では、小銃に銃剣を付けての代わりとして用いたが、CQBの対象となる市街地や屋内、塹壕密林での戦闘では、取り回しの良さを求めて全長の短い火器が使用される。第一次世界大戦の塹壕戦ではまず拳銃が使用され、次いで発明された短機関銃が加わった。閉所での制圧効果やドアなどの破壊、突破に利用できるため散弾銃が用いられる場合もある。
ベトナム戦争以降アサルトライフル西側諸国で普及すると、これを短銃身化したアサルトカービンPDWなどの高威力の短機関銃がCQB用として使用されるようになった。
に取り付ける光学照準器の一種。両目を開けたまま、拡大式の照準眼鏡のように視野を狭めることなく照準できる。
発射前にレーザーで着弾点を照射する照準器。可視レーザーを照射するもののほか、暗視装置と組み合わせて不可視光を用いるものもある。
  • バーチカルフォアグリップ
垂直(バーチカル)に取り付けられる取っ手。銃器の取り回しを向上させる。
爆裂時に強烈なを出すことで、効果範囲内の対象の感覚を数秒間麻痺させることを目的とする手榴弾。対象の殺傷は意図されておらず、破片を飛散させる機能は持たないのが一般的だが、至近距離で炸裂した場合は負傷する。閃光弾はスタングレネードの一種。
非常に強力なライト全般のこと。カメラのフラッシュ(ストロボ)とは異なる。このライトを直視した場合、視野に数秒間残像が残るため、照射した相手の肉眼視力を減衰させられる。先端部に打撃用の突起を持つ物や、連続的な点滅でより視覚に悪影響を与えられる機能を持つ物もある。発光源から直線開環境時の突入で採用されやすい。常に点灯していると電池の消耗が激しいだけでなく射手の位置が露見してしまうため、点けっ放しにはせず、対象および対象が潜んでいそうな所に対して任意に点灯して使用する。
飛散物や破片、各種外部擾乱からの保護を目的とした、眼部付近の装備一般。
  • エルボーパッド、ニーパッド
(エルボー)と(ニー)に取り付ける防具一般。膝だけでなく脛当てになっているものもある。
頭部を保護する防具一般。
爆発物砲弾の破片、銃弾などから胴体を守るための防具。
重武装ではない民間人が暴徒化した場合の治安維持や立て篭もり事件などでは、拳銃弾や爆弾の破片、火炎瓶の直撃や投石などを防ぐ程度の比較的小型軽量なものが使用されるが、より高度な防御力を備える規格になると大きく重いため、下部に脚や車輪を備えた物もある。
  • この他に閃光手榴弾使用時に火傷防止のために難燃性の物(ヘリコプターや車輌搭乗者用の難燃性のツナギなどを流用する事もある)を着用する場合もある。また、対テロ部隊などの場合、隊員への報復を防止するために目出し帽を着用する事が多い。ポリカーボネート製の防弾フェイスマスクを導入している例もある。

自衛隊でのCQB訓練

自衛隊は、もともと大規模な侵略行為に対しての対処をしてきた。しかし、ソ連崩壊や、アメリカ同時多発テロ事件などの世界情勢の変化によって、特に陸上自衛隊は大規模な侵略行為だけでなく、テロリストゲリラ市街地などに侵入した際の対策を強化している。

2001年12月に発生した北朝鮮の工作船事件などから、このような船で特殊部隊工作員が上陸する可能性への警戒が強まった。事実上の空白地帯だった九州南西部の防衛を担う西部方面普通科連隊が創設されたのをきっかけに、他の全国の陸上自衛隊の部隊でも対ゲリラ・特殊部隊(ゲリラ+コマンド=ゲリコマ)や対テロ対策のための試みが行われている[1]。近年は各地の駐屯地祭などでも市街地での戦闘などが訓練展示として行われており、89式小銃型の電動ガンを使用した近接戦闘訓練も一部の部隊で実施されている。

陸上自衛隊だけではなく、航空自衛隊の基地防衛を任務とする基地警備隊も市街地戦闘を重視した訓練を行っている。基地警備教導隊がその中心である。海上自衛隊海上保安庁でも船舶臨検などにおいて、こうした近接戦闘訓練を行っているとされる[要出典]

市街地訓練場

王城寺原演習場でのプレハブ小屋を使用した訓練の様子(2004年2月9日)
日本原演習場での市街地戦闘訓練の様子(2007年11月13日)
中部訓練場での都市型戦闘訓練施設を使用した訓練の様子(2008年3月17日)

近年、陸上自衛隊では市街地戦闘訓練の需要が高まっている。今まで各部隊では宿営地などにある廃屋(例:北九州、曽根訓練場では陸軍毒ガス製造工場を使用していた)や、隊舎などの一部を使用したり、また、ベニヤ板などで部屋などを想定したものを使用しているが、より専門的な訓練場の必要性が指摘され、各方面隊で1ヶ所ずつ市街地戦闘訓練を行うための「市街地訓練場」と呼ばれる施設を整備している。

東部方面隊には富士駐屯地富士学校)近傍の東富士演習場内に「市街地訓練場」が2006年3月に完成した。約3万平方メートル(縦約150メートル、横約200メートル)の市街地訓練場内には総工費約25億円をかけて官公庁舎・テレビ局学校銀行・テナントビル・ホテルマンションアパートレストランスーパーを模した鉄筋コンクリート造りの施設計10棟と管理棟を合わせた計11棟が建ち、地下鉄などを想定した地下道ヘリポートも設けられており、本格的に都市が再現されている。建物の屋上や屋内には可動式のテレビカメラが設置されており、管理棟のモニターで1度に40ヶ所の訓練状況を確認できる。夜間の使用も可能なこの国内最大規模の市街地訓練場ができた事で全国で唯一、中隊規模(約150人)での市街地戦闘訓練が行えるようになった。ただ、これでも諸外国の訓練施設[要出典]と比べると小規模なものである。

市街地訓練場一覧

※東富士演習場以外では5棟程度の建物が整備されており、小隊規模の訓練が可能。

近接戦闘とそれに関する訓練

近接戦闘訓練のため、一部の普通科には近接戦闘訓練隊と呼ばれる小編成が存在する。銃剣道訓練隊と同じ規模で、編成隊は駐屯地の屋上や屋内を使用して市販のエアガンなどを個人で購入して訓練を行っている[要出典]

参考文献

脚注

  1. ^ ただし、公的なものを除けばそれ以前から隊員が駐屯地内の建物で私物の遊戯銃などを使用して室内戦訓練を行った例は存在している
  2. ^ 北海道平和委員会青年協議会による視察レポート
  3. ^ 野口卓也「武装工作員を鎮圧せよ! 東北方面隊市街地訓練」『』2007年8月号

関連項目