西部方面普通科連隊

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西部方面普通科連隊
US Navy 060112-N-2613R-080 Marine Staff Sgt. David Cleaves, an instructor with Expeditionary Warfare Training Group Pacific, drives a Combat Inflatable Craft, (CRIC), with soldiers from Japan Ground Self-Defense Force.jpg
IronFist演習に参加した西部方面普通科連隊の隊員
創設 2002年(平成14年)3月27日
所属政体 日本の旗 日本
所属組織 陸上自衛隊
部隊編制単位 連隊
兵科 普通科
兵種/任務/特性 レンジャー
人員 約660名
所在地 長崎県 佐世保市
編成地 相浦
愛称 WAiR,西普連,バラモン部隊
上級単位 西部方面隊
担当地域 九州琉球諸島
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西部方面普通科連隊(せいぶほうめんふつうかれんたい、JGSDF Western Army Infantry Regiment(Light):WAiR)は、長崎県佐世保市相浦駐屯地に駐屯する陸上自衛隊西部方面隊直轄の普通科連隊(軽)である。部隊は通称西普連と呼ばれることが多いが、英語表記の頭文字からWAiR(ワイアー、ウェイヤー)と呼ばれることもある(連隊隊舎入口にはWAiRと表記されている)。部隊マークのバラモン(五島の民芸品で、"バラモン"とは五島の方言で「活発な、元気の良い」の意)からバラモン部隊とも。

概要[編集]

マキン・アイランド強襲揚陸艦の甲板上で訓練を行う隊員

離島対処即動部隊であり、島嶼防衛を主な任務とする。

島嶼の防衛、奪還を目的とした上陸作戦訓練を、海兵隊と重ねる報道もある。主任務としては隠密裏の潜入、遊撃による陣地構築の妨害、通信の遮断、情報収集および逆上陸部隊の誘導であり、アメリカ海兵隊武装偵察部隊に類似した性格を持つ。

レンジャー小隊に限らず、通常の隊員もレンジャーの有資格者が多く、一線に立つ隊員のほぼ全員が、水路潜入訓練など特別な訓練を行っている。運用に関しての詳細は公開されていないが、防衛白書の広報文によれば、海岸から10km程度離れた沖合いからゴムボートを使って水路潜入したり、ヘリコプターによるヘリボーンで島々を移動するとされている。

同連隊を特殊部隊として位置づけるかは資料によって異なるが、所属隊員の一部に対しては、特殊部隊向けの給与制度である「特殊作戦隊員手当」が適用されている。

設立の経緯[編集]

強襲揚陸艦ペリリューのハンガーデッキ内で89式5.56mm小銃を使用した訓練を行う西部方面普通科連隊第2中隊(WAiR2Co)の隊員。私品の使用が大幅に認められているようだ。

西部方面隊九州沖縄の防衛を担任しており、対馬から与那国島までの南北1,200km、東西900kmにも及ぶ広大な守備範囲を持つ。有人無人合わせて2,600あまりの島を抱え、不安定の弧の東端である朝鮮半島中華人民共和国台湾と海を挟んで接している。離島が敵対勢力に攻撃される場合、未然に上陸を防ぐのは困難な場合があるため、占領された離島を奪還するための先遣部隊として2002年(平成14年)3月に創設された。

創設前から西部方面隊担任地域にある島々の地誌について組織を挙げて情報収集し、密林と山岳地形が特徴である日本の離島でのゲリラ戦に対処する特殊部隊として注目されてはいたが、創設から間もない2002年5月~7月にかけての時期に3人の陸曹の自殺が明らかになったため国会議員の調査が入り、その過程で特殊部隊としての性格が大きくクローズアップされることとなった。

当初は、米中間における軍事的衝突の潜在的可能性がある沖縄県に駐屯する計画であったが、中国や沖縄県内での軍事活動に過敏な沖縄県民に対して刺激が強すぎるとの政治的配慮に基づき、縦深性を確保しつつ、五島列島男女群島壱岐島対馬を臨み、艦艇やヘリコプターによる緊急展開にも有利な長崎・佐世保市に落ち着いた。

創隊にあたっては、地元の商店街からの要望で、商店街を通過する記念パレードが行われた。当初は小銃も携帯する予定だったが、長崎の被爆地としての歴史認識を考慮し、徒手での行進として実施された。後に、本来の姿を見てもらいたいという部隊の意向により、第1空挺団の観閲行進時と同様の保持要領で携行してパレードを行っている。

歴史[編集]

訓練中の隊員

2002年3月27日に新編される。

2005年1月からは米国カリフォルニア州キャンプ・ペンデルトンを中心に実施される上陸演習である「アイアンフィスト(鉄拳)」に参加する。これ以降、毎年1月に同演習に連隊は参加する。2013年の「アイアンフィスト13」では連隊から約280人、米国海兵隊は約500人が参加する過去最大規模となっている[1]

自衛隊イラク派遣では連隊の隊員が派遣部隊に参加している。

2010年12月に実施された日米統合演習の中に、日出生台演習場において第1空挺団と初の共同訓練を行う。

2013年6月10日から26日まで米国カリフォルニア州キャンプ・ペンデルトンおよびサンクレメンテ島にて実施される米軍単独であった統合訓練「ドーンブリッツ13」に初めて参加する。事前に機能別訓練が同年5月29日から6月10日まで実施されている。他に海上自衛隊の護衛艦「DDH-181 ひゅうが」、「DDG-177 あたご」、輸送艦「LST-4002 しもきた」が、航空自衛隊からは航空総隊が参加、初めての統合運用による本格的島嶼上陸訓練が実施される[2][3]。演習期間中である同月15日に小野寺五典防衛大臣は「離島防衛のために水陸両用部隊が必要だ」と発言している[4]。同演習期間中の6月24日にはカナダ軍ニュージーランド軍の水陸両用車も参加する大規模のものとなっている[5]

2014年には、西部方面普通科連隊を発展的に改組し、新設予定の水陸機動団の第1連隊とする計画がある[6]。また、連隊内に、離島防衛に関する教育専従部隊を設立することも決まっている[7]

教育[編集]

西部方面普通科連隊には第1空挺団の「基本降下課程」のように正式な教育課程が複数存在しており、特に水陸両用課程については西部方面普通科連隊の隊員全員が取得する課目となっている[8]。なお、「水陸両用き章」、「洋上潜入き章」、「艇長き章」をすべて付与された隊員には「水路潜入き章」が付与される[9]

水陸両用基本訓練課程
ボートオペレーションの最も基礎的な訓練であり、ヘリによる訓練も含まれる。教育期間5週間[10]。修了者には「水陸両用き章」が付与される。
洋上潜入課程
洋上斥候としての能力を身につける課程。修了者には「洋上潜入き章」が付与される。
艇長課程
8人乗りボートの艇長として応急対処や洋上生存術などを身につける課程。修了者には「艇長き章」が付与される。
潜水課程
海上自衛隊で行われている潜水課程を修了した隊員も存在しており、これらの隊員はフロッグマンや洋上訓練時の安全係として活動すると思われる[11]修了者には「潜水員き章」が付与される。
レンジャー
他部隊と同じくレンジャー課程が存在しているが、レンジャー資格保有者の割合は圧倒的に高い。また、レンジャー隊員のみで編成されたレンジャー小隊が各中隊に編成されており、これに所属する隊員は特殊作戦隊員手当が支給されている[12]特殊作戦群以外でこの手当てが支給されているのはこのレンジャー小隊のみである。

構成[編集]

5.56mm機関銃MINIMIを装備した西部方面普通科連隊の隊員(強襲揚陸艦ペリリュー飛行甲板上。カリフォルニア州サンクレメンテ島での訓練。)

660名で構成されており、後方支援職である本部管理中隊を除き、隊員の約7割がレンジャー有資格者である他、海上自衛隊のスクーバ課程の教育も受けている。

部隊は、連隊本部のほか、本部管理中隊、3個普通科中隊で構成され、本部管理中隊を除き第1から第3の各中隊はレンジャー小隊を擁しており、自衛隊初の常置レンジャー部隊となった。中隊の編成は、小銃小隊(レンジャー小隊1個を含む)3個、対戦車小隊、81ミリ迫撃砲小隊および120ミリ迫撃砲小隊各1個からなる。

第1空挺団では、36歳までに空挺レンジャー課程を履修できなかった空挺隊員の転属先として、本人の希望があれば優先的にまわされる部隊でもある。

部隊編成[編集]

  • 連隊本部及び本部管理小隊(約60名)
  • 第1中隊(約200名)
  • 第2中隊(約200名)
  • 第3中隊(約200名)
歴代の西部方面普通科連隊長(1等陸佐
氏名 在任期間 出身校・期 前職 後職
1 越智正典 2002.3.27 - 2005.3.31 防大21期 第1師団司令部第3部長
→2001.12.1第3教育団
東北方面総監部総務部長
2 山中洋二 2005.4.1 - 2007.7.2 防大26期 陸上幕僚監部防衛部運用課
特殊作戦室長
中部方面総監部防衛部長
3 若生明智 2007.7.3 - 2010.3.22 統合幕僚学校教官 東北方面指揮所訓練支援隊長
4 黒澤晃 2010.3.23 - 2012.7.25 防大30期 第3師団司令部第3部長 統合幕僚監部運用部運用第1課特殊作戦室長
5 國井松司 2012.7.26 - 2014.7.31 第1空挺団本部高級幕僚 富士学校企画室長
6 後藤義之 2014.8.1 - 西部方面総監部防衛部訓練課長

主な装備品[編集]

上陸訓練を行う隊員。手にしているのは訓練用ラバーガン。

イラク派遣時に防暑帽4型として正式採用される以前からブッシュハットを使用しており、防弾機能の無いプロテック社製ヘルメットの使用や、部隊単位、個人単位で購入したとされるチェストリグ、マガジンポーチなどの装備も確認されている。

活動内容[編集]

  • 第1空挺団が落下傘降下又はヘリコプターにより空から敵後方に侵入するのに対して、WAiRはヘリコプター空輸やヘリキャスティングによる海中への降下とそれに続くゴムボート等の上陸用舟艇を使っての離島への潜入、または強襲を行う。増援部隊の強襲に先立って当該離島に潜入し、偵察による情報収集などの工作活動で強襲の下準備をすることも想定している。
  • ヘリコプターからの強襲の際は、西部方面航空隊や沖縄の第15ヘリコプター隊を用い、海からの強襲の際は、海上自衛隊のおおすみ型輸送艦に搭載可能なエアクッション艇1号型(LCAC)などを用いる。加えて、2013年度を目処に、AAV7の導入を図ることとなっている。
  • 2005年(平成17年)9月11日にイラク派遣部隊の活動として防衛庁から公開された『アル・ホールド小学校(サマーワ分校)施工状況確認』の写真の警備担当員の中に、「WAiR」と記入された89式5.56mm小銃を所持した隊員がいた。
  • 2006年1月に米カリフォルニア州サンディエゴ近郊にあるコロナド海軍揚陸基地に隊員125人を派遣して、アメリカ海兵隊との島嶼奪還共同対処訓練「Iron Fist(鉄の拳)作戦」を実施した。具体的には海上での偵察の際に用いる偵察泳法の習得、離島への潜入、展開などのノウハウ獲得訓練となっている。この訓練ではあくまで基礎的なノウハウの取得にとどまり、今後より実戦的な訓練が行われるかは未定。
  • 2006年10月にはFNN系列ニュースJAPAN』で部隊の訓練状況が放送され、個人用暗視装置 JGVS-V8を装着し、ヘリコプターからのリペリング降下や、中隊規模で夜間、山岳地帯の速やかな移動、陸曹クラスが小隊長となっての小隊規模夜間攻撃の訓練などが伝えられた。西部方面普通科連隊の部隊レンジャー訓練は、相浦駐屯地の広大な敷地を使って行われるもので、後半の技術課程になると航空機や船舶等を使った内容になる。
  • 2010年12月、この年の日米統合演習の際、日出生台演習場において第一空挺団と初の共同訓練を行い、報道陣に公開した。
  • 2011年12月にはTBS系列報道特集』で、現在問題とされている中国の軍拡と尖閣諸島問題との関連の中で、部隊の任務が紹介され、訓練の一端が公開された。報道では、水泳訓練、各自一週間分の食料と飲料水を携行しての生存自活訓練、至近距離における射撃訓練および狙撃手の育成について伝えられた。また、隊員の頭髪は全員が坊主頭であるが、これは任務中に徒手格闘が生起した場合に、敵に頭髪を掴まれないための配慮であると紹介された。
  • 海上自衛隊佐世保警備隊と相互に連携した訓練を実施している。西普連が陸警隊に基地警備を指導し海自潜水員が西普連に潜水技術を指導している。他にも処分母船を用いて陸自隊員の輸送を行うなど連携を取っている。

関連書籍[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 『軍事研究』2013年5月号P118「ワールドインフォーカス 130」、ジャパン・ミリタリー・レビュー。
  2. ^ 平成25年度米国における統合訓練(実動訓練)(ドーン・ブリッツ13)について {{{1}}} (PDF)
  3. ^ 島嶼防衛目的に「ドーン・ブリッツ」3自衛隊が初参加(2013年6月10日~26日)
  4. ^ MSN産経ニュース 「水陸両用部隊が必要だ」と防衛相 海兵隊機能を拡大を表明 2013年6月15日
  5. ^ 河北新報社 自衛隊、米海兵隊と上陸訓練 カリフォルニア南部で 2013年06月25日
  6. ^ “「水陸機動団」2千~3千人規模の大部隊 尖閣有事に備え”. サンケイビズ. (2014年2月3日). http://www.sankeibiz.jp/macro/news/140203/mca1402031011004-n1.htm 2014年3月1日閲覧。 
  7. ^ “離島防衛に教育専従部隊 陸自、3月末に発足”. 産経新聞. (2014年3月20日). http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140320/plc14032019580015-n1.htm 2014年3月21日閲覧。 
  8. ^ 【軍事のツボ】日本版海兵隊、西部方面普通科連隊の“ヒヨコ”たち(上)4ページ
  9. ^ 自衛官の職務又は技能を識別するために用いるき章の制式等に関する訓令 {{{1}}} (PDF)
  10. ^ 【軍事のツボ】日本版海兵隊、西部方面普通科連隊の“ヒヨコ”たち(上)3ページ
  11. ^ 【軍事のツボ】日本版海兵隊、西部方面普通科連隊の“ヒヨコ”たち(上)6ページ
  12. ^ 陸上自衛隊訓令第22号

関連項目[編集]

外部リンク[編集]