競争力

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競争力 (Competitiveness) または国際競争力とは、与えられた市場において、企業・業種・国家が財やサービスを売ったり供給したりする能力と売上げの比較を語る際に用いられるバズワードである。経営管理論経済学において広く使われる。[要出典]

この用語は市場に対しても適用されることがあり、市場構造完全競争であるとみなされる範囲について言及するのに用いられる。この用法は経済学的に資源配分の効率性の概念を示す本来の意味での"競争"(competition)であり、個々の企業や国家が優劣を争ったり勝ち負けを付けるという意味での"競走"(race)ではないことに注意が必要である。

企業の競争力[編集]

経験的観測では、資源(資本、労働力、技術)と才能は地理的に集中する傾向があることが裏付けられている[1]。これは企業が、製品とサービスの販売において供給者、購入者、競合者が競争優位を得るのを助けるネットワークである企業間関係に組み込まれるという事実を反映する結果となる。

資本主義経済システムでは、企業の原動力は自らの競争力を維持し高めることである。これは事実上、企業部門につきものである。

国家の競争力[編集]

経済開発における新たなパラダイムとしての競争力の概念が現れた。国内や国際的な市場において、効果的な政府の行動が限られた予算により制約され、民間部門が競争するのに深刻な障害に直面するというときに、競争力は、国際競争によってもたらされる制約や課題の認識を捕らえる。

またこの用語は広い意味で、国、地域、都市の経済競争力を言及するのに使われる。グローバル市場での競争力に目を向ける国が増えつつある。アイルランド(1997)[2]、ギリシャ(2003)[3]、クロアチア(2004)[4]、バーレーン(2005)[5]、フィリピン(2006)[6]、ガイアナ[7]やドミニカ共和国[8]は、審議会特別な機関がある国の一例である。地域や都市においてもドバイ[9]やバスク国[10]がこのような組織を設立している。

国家競争力の国際比較は、スイスのビジネススクールである国際経営開発研究所 (IMD)[11]の「世界競争力年鑑[12]」や、スイスの非営利団体である世界経済フォーラム(WEF)の「世界競争力報告」で行われている。ただ、国際経営開発研究所のいう国際競争力とは「グローバル企業が活動しやすい国」かということであり、国際競争力をそのまま「国力」とか「その国の企業の競争力」と理解してはならない[誰?]

2013年9月4日、WEFが発表した2013年版の国際競争力ランキングは、

  1. スイス
  2. シンガポール
  3. フィンランド
  4. ドイツ
  5. アメリカ
  6. スウェーデン
  7. 香港
  8. オランダ
  9. 日本
  10. イギリス

となっており、スイスは5年連続で首位となっている[13]

国際競争力の学術的な分析は定期的な記述がおおむねなされている[14]。国際競争力を意味があるように定義し定量的に分析する、学者による組織的な努力は、国際競争力の決定要因の計量経済学モデルでなされている[15][16]

競争力指標の内訳[編集]

国際経営開発研究所[編集]

国際経営開発研究所によるランキングは、

  1. 経済状況
  2. 政府の効率性
  3. ビジネスの効率性
  4. インフラ

の4つの競争力指標で構成されており、各々5つの細分化項目を設けている[17]

世界経済フォーラム[編集]

世界経済フォーラムによるランキングは、

  1. 基礎条件 - 制度機構・インフラ・マクロ経済の安定・保健/初等教育
  2. 効率性促進要素 - 高等教育/訓練・財市場の効率性・労働市場の効率性・金融市場の高度化・技術即応性・市場規模
  3. イノベーション・高度化要素 - ビジネスの高度化・イノベーション

から構成されている[18]

学者の見解[編集]

「国際競争力」という概念の実用性や誤用はとくに国の競争力という文脈において、ポール・クルーグマンらの経済学者による活発な批判がある[19][20]

クルーグマンは「実際問題としてだが'競争力'主義は、はっきりとした誤りである。互いの経済競争において、どの程度であっても、国際的な先進国はない」と論じている。またクルーグマンは、経済の貿易がある部門でもない部門でも、国の経済的福祉は第一に生産性により決定されると述べている[20]

もし国際競争力の概念に実質的な意味があるとしても、生産性に向き合う国民という事実の上に存在しており、国際競争力の漠然として間違った概念の批判と平行して、トンプソンのような系統だった厳格な試みが練り上げられる必要がある[16]

森永卓郎は「国際競争力が低下すれば、一般物価の下落・通貨価値の低下で調整されるのが常識である」と指摘している[21]

概念[編集]

経営学者ピーター・ドラッカーは、知識(技術・技能)が経済力の基礎となり、知識の生産性こそが競争力の源泉となるとしている[22]

経済学者の竹中平蔵は「競争力という概念はどこにでもある競争力についてアメリカと日本の考え方はかなり違う。日本だと競争力をつけるという話になると、政府が補助金を与えて強くする」[23]

ポール・クルーグマンは「国際競争力などという概念は明確には存在しない。国家を企業と見立て貿易を市場をめぐる勝ち負けのゼロサム的認識が生んだ幻想にすぎない」と指摘している[24]

経済学者の飯田泰之は「さまざまな研究者・研究機関が独断と偏見に基づいて国際競争力を定義している」と指摘している[25]

貿易立国[編集]

塩沢由典は、直接「競争力」概念を批判していないが、競争力概念とともにある「貿易立国」の考え方に異論を提起している[26][27]。塩沢は、輸出に頼らない経済成長が可能であるといい、輸出依存型経済成長を目指していては、人々の幸福に繋がる経済成長は不可能であるとし、内需主導のサービス経済化を提唱している[28]

櫨浩一は、貿易立国は必要としながらも、外需依存型経済からの脱却を求め、外需依存がなぜ問題かを説明している[29]

日本[編集]

1985年9月のプラザ合意から、円高が急速に進み日本製品の国際市場における価格競争力が低下した[30]。同時に、労働コストが他の工業国に比べ上昇したため、日本国内に生産拠点を持っていた製造業の優位性が失われた[31]。竹中平蔵は「日本の競争力の低下は1980年代から明らかとなり、バブル崩壊後、1990年代後半から顕著となっている」と指摘している[32]。この国際競争力の低下に対応し、日本の製造業の生産拠点が労働コストの低いアジア地域に移転され、そこから第三国にも輸出されるようになった[31]

IMDの世界各国の競争力評価では、日本は1990年代前半まで1位であったが、2002年には30位にランクを落とす結果となっている[33]

2014年5月22日、IMDが、年次「世界競争力年鑑」(World Competitiveness Yearbook)の2014年版を公表、日本は世界競争力ランキングを前年より3ランク上げ21位となり、その理由として経済政策(アベノミクス)の円安効果によって輸出競争力が向上したことなどが挙げられている[34]

脚注[編集]

  1. ^ Easterly and Levine 2002
  2. ^ [1]
  3. ^ [2]
  4. ^ [3]
  5. ^ [4]
  6. ^ [5]
  7. ^ [6]
  8. ^ [7]
  9. ^ [8]
  10. ^ [9]
  11. ^ [10]
  12. ^ [11]
  13. ^ 国際競争力でスイスが5年連続首位、日本は9位に上昇Reuters 2013年9月4日
  14. ^ Porter M E, 1990, The Competitive Advantage of Nations London: Macmillan
  15. ^ Thompson, E. R. 2004. National competitiveness: A question of cost conditions or institutional circumstances? British Journal of Management, 15(3): 197-218.
  16. ^ a b Thompson, E R, 2003. A grounded approach to identifying national competitive advantage,Environment and Planning A, 35, 631-657.
  17. ^ 三菱総合研究所編 『最新キーワードでわかる!日本経済入門』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2008年、197-198頁。
  18. ^ 三菱総合研究所編 『最新キーワードでわかる!日本経済入門』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2008年、197-198頁。
  19. ^ Haidar, J.I., 2012. "Impact of Business Regulatory Reforms on Economic Growth," Journal of the Japanese and International Economies, Elsevier, vol. 26(3), pages 285–307, September
  20. ^ a b [12]
  21. ^ 森永卓郎 『日本経済50の大疑問』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、35頁。
  22. ^ 日本経済新聞社編 『世界を変えた経済学の名著』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2013年、283頁。
  23. ^ 佐藤雅彦・竹中平蔵 『経済ってそういうことだったのか会議』 日本経済新聞社学〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、153頁。
  24. ^ 野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、56頁。
  25. ^ 野口旭 『グローバル経済を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2007年、55頁。
  26. ^ 塩沢由典2013『今よりマシな日本社会をどう作れるか』SURE, pp.47-50.
  27. ^ 塩沢由典『リカード貿易理論の最終解決』岩波書店[要ページ番号]
  28. ^ 塩沢由典2013『今よりマシな日本社会をどう作れるか』SURE, pp.58-75.
  29. ^ 櫨浩一2011『日本経済が何をやってもダメな本当の理由』日本経済新聞社、第6章-第8章.
  30. ^ 三和総合研究所編 『30語でわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2000年、76-77頁。
  31. ^ a b 三和総合研究所編 『30語でわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2000年、77頁。
  32. ^ 竹中平蔵 『あしたの経済学』 幻冬舎、2003年、202頁。
  33. ^ 竹中平蔵 『あしたの経済学』 幻冬舎、2003年、118頁。
  34. ^ わが国の国際競争力の強化への期待をこめてハフィントンポスト ニッセイ基礎研究所 2014年6月13日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]