フォルクスワーゲン・up!

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

up!(アップ)は、ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンが製造・販売するAセグメントハッチバック乗用車フォルクスワーゲングループに属するチェコシュコダ・シティゴ(citigo )、スペインセアト・Miiはリバッジ車である。

フォルクスワーゲン・up!
120型
5ドア white up!
VW white up! 1.0 – Frontansicht, 28. Juli 2012, Velbert.jpg
VW white up! 1.0 – Heckansicht, 28. Juli 2012, Velbert.jpg
製造国 スロバキアの旗 スロバキア
販売期間 2011年 -(欧州)
2012年10月 -(日本)
デザイン ワルテル・デ・シルヴァ
乗車定員 4人
ボディタイプ 3 / 5ドアハッチバック
エンジン 1.0L 直列3気筒
最高出力 44 - 55kW(60 - 75ps)
5,000 – 6,200rpm
最大トルク 90 - 95Nm(9.2 - 9.7kgm)
3,000 – 4,300rpm
変速機 5速セミAT(ASG)
5速MT
駆動方式 FF
サスペンション 前:マクファーソンストラット(スタビライザー付)
後:トーションビーム
全長 3,540 - 3,545mm
全幅 1,641 - 1,650mm
全高 1,489 - 1,495mm
ホイールベース 2,420mm
車両重量 923 - 940kg
最小回転半径 4.6m
別名 セアト・Mii(スペイン
シュコダ・シティゴ(チェコ
プラットフォーム VW・NSFプラットフォーム
-自動車のスペック表-

概要[編集]

位置づけはフォルクスワーゲン・フォックスの後継モデルとなるが、日本を含めて導入されていない国ではフォルクスワーゲン・ルポの後継モデルとなる[1]。最終組み立てはスロバキアブラチスラヴァ工場

高い質感と大人4人が無理なく乗れる室内スペースを確保した上で1万ユーロから購入できることを目指して開発された。ボディの67%に軽量化と高剛性を両立させる熱間成型鋼板や超高張力鋼板を採用し、2ドア版で車重900kgを実現しながらユーロNCAPで最高の5つ星となる高い安全性を実現している[2]。発売開始時のドイツ本国価格は約9,850~13,700ユーロ。

低価格実現のためパワーウィンドウはフロントのみでスイッチは各ドア毎の個別配置となっており、リアウィンドウは3ドアが固定の“はめ殺し”、4ドアは前側のヒンジを支点に開閉する方式で後端が外側に数cm浮き上がる程度である。またドアミラーは手動格納式、給油キャップのロックにメインキーを必要とするなど、装備に割り切りが見られる[3][4]

ボディサイズは軽自動車規格より一回り大きく、日本車の1Lコンパクトクラスよりやや小さい。ルポと比較して全長の延びは20mmに抑えられた一方で、ボディ四隅へのタイヤ配置によってホイールべースは100mm長い2,420mmと室内空間の拡大が図られた[1]。後部座席でもヘッドクリアランスを確保してあり、荷室容量は後席を完全に折り畳むことで通常の251Lから最大951Lまで拡大する[5]。狭い道や駐車場での取り回しに大きな影響を与える最小回転半径は全グレード4.6m[6]

eco up!

デザインテーマは「シンプル&クリーン」で、グリルレス風のフロントマスクを持つ。サイドガラスのグラフィックは3ドアと5ドアで異なり、ガラス下端のラインが5ドアはストレート、3ドアは後端で跳ね上がる。大きな黒いガラスを備えたハッチゲートはスマートフォンを模したと言われる[7][8]

2012年時点でのグレードは「take up!」「move up!」「high up!」「black up!」「white up!」「cheer up!」6種類に加えて、CNGとガソリンのハイブリッドで総容量72Lとなる2個のCNGタンクとガソリン用の10Lサブタンクを搭載する「eco up!」もラインナップされた。2013年にはフォルクスワーゲン初となる量産EVとして「e-up!」の発売が決定した[9][10]

沿革[編集]

  • 2007年9月 - フランクフルトモーターショーで将来を担う小型車の提案「ニュースモールファミリー」のコンセプトカーとして「concept up!」を発表。
  • 2009年4月22日 - 量産型をスロバキアで2011年から製造することを発表。
  • 2011年9月 - フランクフルトモーターショーに量産型を出展、同年より欧州で販売を開始した。
  • 2012年1月23日 - 4ドアモデル(5ドアハッチバック)発表。
  • 2013年8月22日 - 「black up!」・「white up!」をフォルクスワーゲン国内正規輸入60周年記念限定モデルの第4弾として日本でも数量限定で発売。
  • 2014年1月27日 - オレンジをテーマにした限定車「オレンジ アップ!(orange up!)」を発売。専用カラーの「ホットオレンジメタリック」が650台、「ディープブラックパールエフェクト」が200台、「リフレックスシルバーメタリック」が150台の計1000台限定。UVカット機能付きダークティンテッドリアガラス、16インチアルミホイール、ブラック塗装ドアミラーに加えダッシュパッド、本革ステアリング、レザーハンドブレーキグリップ、ファブリックシートにオレンジのステッチやパイピングをあしらい、専用のドアシルプレートを追加した。[16]
  • 2014年3月20日 - 株式会社イードが運営する登録会員が実生活で得られた愛車の実燃費をインターネット経由で入力・管理する燃費管理サービス「e燃費」が実施した「e燃費アワード2013-2014」において、「輸入車部門」で17.9km/Lを記録し、同部門の1位になったことが発表された[17]
    • 4月1日 - 消費税率の引き上げ並びに原材料高騰などに伴う生産コスト・輸送費の上昇に伴って車両本体価格を改定し、up!の場合、5.8万円~7.2万円値上げとなった(改定後の価格は154.8万円~193.2万円)。[18]
    • 10月14日 - EV「e-up!」を2015年2月1日より日本で発売を開始することを発表し、仕様および諸元を公表。なお、同時に発表されたイー・ゴルフ(ゴルフVIIベースのEV)と共に、日本国内の電気自動車では初の5ナンバー車である[19]

メカニズム[編集]

エンジンは可動部品の精度を高めてバランスシャフトを排した1L直列3気筒DOHC12バルブ[20]で44kW(60ps)と55kW(75ps) の2種類。CNGは50kW(68ps)。5速MTではアイドリングストップ回生ブレーキなどで更に燃費を向上させた「ブルーモーション テクノロジー」を採用したモデルも選べる。

トランスミッションは5速MTのほか、up!専用に開発されたASG[21]と呼ばれるシングルクラッチを採用したATモード付きの5速ASGを設定する[3][22]。同じ2ペダルMTでDCTを採用し素早い変速を可能とするDSGに対して、30kg以下と軽量でMTのクラッチとギヤボックス本体を使用できるASGは低コストかつ高効率と言われる[23]

ASGはクラッチに加えてギヤ選択も自動化したオートモード付きのセミATとなるが、変速時はMTと同じく1枚のクラッチで断続動作を行うため、根本的にトルクコンバータ(トルコン)式ATとは異なる[6]。クラッチペダルがないことで法規上はAT扱いだが、MTをベースとする事からトルコン式ATと区別するため、一般的にはDCTとともに"2ペダルMT"と呼ばれる。

安全機構は、このクラスで初となる市街地走行用の緊急制動を目的とする「シティ エマージェンシー ブレーキ」がオプションで設定される。これは同社の上級モデルフォルクスワーゲン・CCに搭載される技術で、5~30km/hで走行中にフロントウィンドウ上部の赤外線レーザーセンサーにより前方10mまでの車両や障害物を検知、状況により自動で緊急ブレーキを掛けて回避したり衝突時の衝撃を軽減する衝突被害軽減ブレーキの一種。その他、運転席・助手席エアバッグ、頭部保護機能付きサイドエアバッグ、全席3点式シートベルト、フォースリミッター付シートベルトテンショナー、ESP(横滑り防止装置)も装備する[4]

諸元表[編集]

○は日本販売モデル。

モデル 1.0 (44kW) 1.0 (55kW)○ 1.0 (50kW)
エンジン 電子制御噴射式直列3気筒DOHCガソリンエンジン 電子制御噴射式直列3気筒DOHCガソリンエンジン (CNG)
バルブ 12バルブ
排気量 999cc
最高出力 44kW (60ps) / 5,000 – 6,000rpm 55kW (75ps) / 6,200rpm 50kW (68ps) / ー
最大トルク 95Nm(9.7kgf·m)/3,000 – 4,300rpm 90Nm(9.2kgf·m)/ ー
最高速度 km/h 160 / 161 (BlueMotion) 171 / 172 (BlueMotion)
0–100km/h加速 14.4秒(5速MT) / 15.3秒 (5速ASG) 13.2秒(5速MT) / 13.9秒 (5速ASG)
欧州燃費 L/100km

(市街地 / 高速道路 / 総合)

5.6 / 3.9 / 4.5 (5速MT)

5.0 / 3.6 / 4.1 (BlueMotion 5速MT)
5.3 / 3.9 / 4.4 (5速ASG)

5.9 / 4.0 / 4.7 (5速MT)

5.1 / 3.7 / 4.2 (BlueMotion 5速MT)
5.5 / 4.0 / 4.5 (5速ASG)

JC08モード燃費 km/L
23.1
CO2排出量 g/km
(総合)
105 (5速MT) / 96 (BlueMotion 5速MT) / 103 (5速ASG) 108 (5速MT) / 98 (BlueMotion 5速MT) / 105 (5速ASG) 79 (BlueMotion 5速MT)
欧州排出基準 Euro 5
energy label C (5速MT) / B (BlueMotion 5速MT) / C (5速ASG) C (5速MT) / B (BlueMotion 5速MT) / C (5速ASG)

日本での販売[編集]

10月1日より販売が開始された。導入モデルは「move up!」の2ドア(受注生産)と4ドア、「high up!」の4ドアで、エンジンが55kW(75ps)の高出力仕様である。全車「平成27年度燃費基準+10%」を達成すると共に「平成17年基準排出ガス75%低減レベル(☆☆☆☆)」認定も取得している。ガソリンハイオク指定で、トランスミッションは5速ASGのみ。

欧州ではオプション設定となる市街地用緊急ブレーキシステムの"シティ エマージェンシー ブレーキ"が全車に標準装備されている。カーナビは専用設計の欧州仕様とは異なり、市販品ベースのポータブルカーナビディーラーオプションで設定する。助手席を前方に倒して長尺物を積める機構は日本仕様には備えていない。

2013年8月22日には、既に海外で発売されていた「black up!」と「white up!」がフォルクスワーゲン国内正規輸入60周年記念限定モデルの第4弾として日本でも発売された[24]。2車種共通の特別装備として、クロームパッケージ(フロントフォグランプベゼル、ドアモール、サイドモールティング)、ダークティンテッドガラス(リア/リア左右、UVカット機能付)、専用ファブリックシート、専用レザー3本スポークステアリングホイール、専用ドアシルプレート、16インチタイヤ+専用デザインアルミホイールを装備。異なるのは前席正面のカラーパネル「ダッシュパッド」の色とフロントドアに装着した専用デカールのデザインで、ダッシュパッドの色はグレード名にちなみ、前者はディープブラック、後者はピュアホワイトをそれぞれ採用する。また、「white up!」はこれまで、エントリーモデルの「move up!」のみの設定だった2ドアも設定される。限定数は「black up!」は400台、「white up!」は2ドア200台、4ドア600台の計800台となる。

コンセプトモデル[編集]

「up!」の原型である3ドアモデル「up!コンセプト」を2007年9月のフランクフルトモーターショーで発表。コンセプトではRR(リアエンジン・リアドライブ)とされたが、量産型は伝統的なFF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式に変更された。 その後もup!シリーズの様々な派生モデルを相次いで発表している。

兄弟車種[編集]

シュコダでは「シティゴ(Citigo)」、セアトでは「Mii」の名で販売されている。ともに、フロントは大幅に変更されるが、リヤは細部を除けばUp!とほぼ同じである。

関連項目[編集]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b “フォルクスワーゲンmove up!(FF/5AT) / high up!(FF/5AT)【短評】”. webCG. (2012年9月18日). http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/i0000027162.html?pg=1 
  2. ^ “最も小さなフォルクスワーゲン、『up!』発売”. AUTO SPORT. (2012年9月18日). http://as-web.jp/news/info.php?c_id=7&no=43484 
  3. ^ a b “軽自動車の牙城をもゆるがす フォルクスワーゲン up!という黒船”. OPENERS. (2012年9月18日). http://openers.jp/car/car_impressions/vw_up_impression_otani_29864.html 
  4. ^ a b “VW、新型スモールカー「up!」を発売”. webCG. (2012年9月18日). http://www.webcg.net/WEBCG/news/n0000027165.html?word=%A5%D5%A5%A9%A5%EB%A5%AF%A5%B9%A5%EF%A1%BC%A5%B2%A5%F3 
  5. ^ “フォルクスワーゲンup! もしもVWが軽自動車を作ったら!?”. 日経トレンディネット. (2012年3月15日). http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20120314/1040055/?ST=life&P=1 
  6. ^ a b “フォルクスワーゲン up! 試乗レポート”. green carview. (2012年9月18日). http://www.carview.co.jp/green/report/road_imp/vw_up/382/1/ 
  7. ^ “フォルクスワーゲンup!【開発者インタビュー】”. webCG. (2012年9月27日). http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/i0000027228.html 
  8. ^ ワルテル・デ・シルヴァ、クラウス・ビショフがデザインに関わる。
  9. ^ “Up!のEVプロトタイプに試乗”. carview. (2012年2月9日). http://www.carview.co.jp/magazine/scoop/vw_eup/1176/ 
  10. ^ “ニュースモールファミリー「up!」”. フォルクスワーゲン グループ ジャパン.. http://www.volkswagen.co.jp/sustainable_mobility/future/new_small_family.html 
  11. ^ “VWの新世代コンパクト up!コンセプトの市販決定”. Responce. (2009年4月23日). http://response.jp/article/2009/04/23/123686.html 
  12. ^ “VWの新世代コンパクト up!コンセプトの市販決定”. Responce. (2009年4月23日). http://response.jp/article/2009/04/23/123686.html 
  13. ^ “2012WCOTYはVW up! ハイブリッドのライバルとなるか?”. VividCar. (2012年4月8日). http://www.vividcar.com/cgi-bin/WebObjects/1192cafa25b.woa/wa/read/137a37d218c/ 
  14. ^ “ドイツ自動車団体(VCD)の2012~2013年環境対応車番付で最もエコな自動車として1位に輝く”. BOSCH. (2012年8月30日). http://www.bosch.co.jp/jp/press/group-1209-01.asp 
  15. ^ “フォルクスワーゲン「up!」がRJCカーオブザイヤーインポートを受賞”. フォルクスワーゲン グループ ジャパン. (2012-11-14 ). http://www.volkswagen.co.jp/information/news/pdf/000928_web.pdf 2012年11月15日閲覧。 
  16. ^ “これまでになくフレッシュな「アップ!」が登場!「オレンジ アップ!」”. フォルクスワーゲン グループ ジャパン. (2014-01-27 ). http://www.volkswagen.co.jp/content/medialib/vwd4/jp/volkswagen/news/2014/001058_2_web/_jcr_content/renditions/rendition.download_attachment.file/001058_2_web.pdf 2014年1月28日閲覧。 
  17. ^ “e燃費アワード2013-2014の“輸入車TOP10”に5台のVWがランクイン。- up!が初めて輸入車トップの栄冠に輝く”. フォルクスワーゲン グループ ジャパン. (2014-03-20 ). http://www.volkswagen.co.jp/content/medialib/vwd4/jp/volkswagen/news/2014/001074_web/_jcr_content/renditions/rendition_0.download_attachment.file/001074_web.pdf 2014年3月27日閲覧。 
  18. ^ “フォルクスワーゲン メーカー希望小売価格を改定。2014年4月1日(火)から適用”. フォルクスワーゲン グループ ジャパン. (2014-03-14 ). http://www.volkswagen.co.jp/content/medialib/vwd4/jp/volkswagen/news/2014/001071_web/_jcr_content/renditions/rendition_0.download_attachment.file/001071_web.pdf 2014年6月26日閲覧。 
  19. ^ “フォルクスワーゲン、2台の電気自動車「e-up!」と「e-Golf」を日本に導入”. フォルクスワーゲン グループ ジャパン. (2014-10-14 ). http://www.volkswagen.co.jp/content/medialib/vwd4/jp/volkswagen/news/2014/001126_web/_jcr_content/renditions/rendition.download_attachment.file/001126_web.pdf 2014年10月16日閲覧。 
  20. ^ “フォルクスワーゲンup! (FF/5MT)【海外試乗記】”. WebCG. (2012年4月3日). http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/i0000026169.html 
  21. ^ ドイツ語で「自動式の手動変速機」を意味するAutomatisiertes Schaltgetriebeの略称。
    英語ではAutomated Manual Transmissionで、略称のAMTやロボダイズドMTとも呼ばれる。
  22. ^ “フォルクスワーゲン アップ!(VW up!)新車情報”. CORISM. (2012年9月18日). http://www.corism.com/news/vw/1412.html 
  23. ^ “走行性能up! 環境性能up!”. フォルクスワーゲン グループ ジャパン.. http://www.volkswagen.co.jp/cars/up/features_performance.html 
  24. ^ “フォルクスワーゲン「up!」初の限定車、「black up!」「white up!」販売開始。フォルクスワーゲン国内正規輸入60周年を記念した限定モデルの第4弾”. フォルクスワーゲン グループ ジャパン. (2013-08-22 ). http://www.volkswagen.co.jp/content/medialib/vwd4/jp/volkswagen/news2013/001010_web/_jcr_content/renditions/rendition_0.download_attachment.file/001010_web.pdf 2013年8月23日閲覧。 

外部リンク[編集]