チャリオット

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チャリオットの発祥地と伝播
紀元前2000年ごろシンタシュタ・ペトロフカ文化で発明され、急速に世界中へ広まった。

チャリオット(Chariot)とは古代戦争に用いられた戦闘用馬車である。ここでは、中国語で「戦車」(tankではない)と呼ばれるチャリオットを含め、戦闘馬車全般について記す。



概要[編集]

紀元前2500年ごろのウル王墓から出土したウルのスタンダードに描かれたチャリオット。
ブロンズ製のチャリオットと運転手(インダス文明•紀元前2000年)

チャリオット(戦車)は古代オリエント世界ではシュメールヒッタイトアッシリア古代エジプトローマペルシア古代中国古代インドなどで使用された。近東のものは二輪でを2頭から4頭立て、エジプトでは乗員2名、ヒッタイト・イスラエル・アッシリア・中国などでは3名、多くはサスペンションがなく皮革や柳のような柔軟な材料で編んだ床に振動を吸収させていた。古代戦の主力であり、昔は戦車の数をもって戦力とした時代もあった。旧約聖書列王紀史記などには大規模な戦車戦の記述がある。地形の制約を受けやすく、また戦力維持に要するコストが非常に高くつくため、などの馬具の開発、遊牧民軽騎兵による騎馬戦術の開発や定住文化圏への伝播、また品種改良による馬の大型化とそれによる重騎兵の登場などの影響を受けて騎兵に取って代られた。どの地域でも戦車に乗って戦った兵士の多くは貴族やその子弟などで、御者を担当する者はその部下や奴隷が主だった。特に古代ギリシャローマの4頭立ての二輪戦車のことをクワドリガ(Quadriga)と呼ぶ。

御者は戦力にならないため、射撃戦に対応する弓兵や白兵戦に対応するなどのポールウェポンなどで武装した者を乗車させる必要がある。また車輪自体に動力は無いため、旋回は各馬の調教に熟練した御者の手綱さばき頼みで今で言うところのドリフト走行のように車輪を滑らせて旋回する必要があり、構造上非常に脆い。機動性から見ても、戦力構成から見ても騎兵に比べて大きく劣る。とは言うものの、そもそも騎兵が存在しなかった時代においては、戦車の機動性は他に代えるものがなかった。高速で移動しながらでも弓矢による射撃を行えることや、加速をつけたポールウェポンによる破壊力は驚異的であった。騎兵が戦場で盛んに現れる時代になっても、馬上で扱うには大きすぎる長弓弩砲で射撃を行ったり、戦車の前面や側面に槍やを取り付けて敵の重装歩兵の隊列に突撃し隊列を分断、混乱させるような運用もされた。

春秋時代の中国の戦車の図解
後漢(東漢)の戦車

西方世界では重装歩兵時代をはさみ、いつ騎兵と入れ替わったかは定かではない。古代ギリシアでも末期になると、既に過去に戦車を実戦に用いた事が忘れられてしまい、叙事詩や物語作品では、英雄を戦場に運ぶ乗り物として描写された。古代ローマでは戦車を用いた記録が無い。ガイウス・ユリウス・カエサルガリア戦記に、紀元前1世紀ブリテン島での戦車の特異な用法を記している。ただし戦場の兵器以外の使途として、古代ローマでは戦車競走が行われるようになり、首都・ローマをはじめとする帝国の各地に競馬場が作られた。その中でも東ローマ帝国の首都・コンスタンティノポリスでは12世紀まで戦車競走が行われていた。現在行われている繋駕速歩競走は、この戦車競走のスタイルを引き継いだものである。

中国では春秋時代までは戦車が主流であったが、都市国家から領域国家の時代に移行する戦国時代ころより歩兵戦が主流となった。武霊王紀元前307年に胡服騎射を取り入れ、これ以降は騎兵の時代となる。しかしながらそれ以降の前漢代以降も防御力・輸送力の高さから戦車は用いられており、屋根のある戦車や屋根の上に建物が立てられた戦車も用いられている。戦車は歩兵の指揮官用の指揮車としても使われた。『司馬法』では、戦車は密集すると守りが固くなるとされている。また『孫子』には戦車の戦力維持に要する膨大なコストに対する警告が見受けられる。中国における戦車の運用方法に関しては「」の項目も参照されたい。

李衛公問対』によれば、中国のでは1台の戦車に75人の兵が従い、では1台の戦車に150人の兵が従った。また曹操軍では攻車(戦闘用の戦車)1台に75人の兵が従い、守車(輸送用の戦車、輜重車)1台には炊事夫・警備兵など25人が従った。

時代は降りるが、フス戦争においてフス派勢力が馬車を装甲して銃撃戦のベースとして用いた戦車を用いており、また幕末期の日本において徳川斉昭が銃撃戦に対応するための装甲した牛車状の戦車を考案している。世界的に見て、時代が進むとともに、戦車は重装甲化して来ているようである。



出土例[編集]

戦車の登場するフィクション作品[編集]

その他[編集]

外部リンク[編集]