ゴッドファーザー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

ゴッドファーザー』(The Godfather)は、アメリカ作家マリオ・プーゾが、1969年に発表した小説。それを原作とした映画1972年に公開された。

ストーリー[編集]

アメリカに生きるイタリア移民とその子孫であるイタリア系アメリカ人一族の、栄光と悲劇を描く。「ゴッドファーザー」とは、マフィアのボスまたはファミリーのトップへの敬称であるが、本来はカトリックでの洗礼時の代父(名付け親)という意味である。イタリアなどの伝統的なカトリック世界では洗礼時の代父・代母は第二の父母であり、後見人的な存在として生涯にわたり関わりが続いたことに由来している。

アメリカにおけるイタリア人移民社会でも本国同様に代父母とのかかわりが重視されていたため、場合によってはイタリア系アメリカ人社会の実力者であるマフィアのボスに代父を頼み、協力を惜しまない代わりに庇護を求めていたという歴史的背景がある。

マリオ・プーゾの原作は組織の首領であるヴィトー・コルレオーネ(Vito Corleone)と彼の家族の絆に焦点を当てている。少年時代に父と兄を殺され、シチリアの寒村を追われアメリカへたった一人で移住した彼は「家族を守り」「友達を信じる」という信条を貫いた結果、政界や芸能界労働組合の奥深くにまで影響力を及ぼす存在となる。犯罪行為に手を染めながら同民族の力を借りてアイデンティティを保ち、周囲の恐怖と尊敬の視線を集めるヴィトーは絶対的な「ゴッドファーザー」である。

ドラマは古い価値観が壊れた第二次世界大戦直後から始まり、ここではコルレオーネ・ファミリーだけでなく、それに関わるアメリカにおけるイタリア人社会の変質「イタリア人からアメリカ人(イタリア系アメリカ人)へ」歩もうとする姿にも光を当てている。原作で歌手のジョニー・フォンティーン(人物描写が露骨にフランク・シナトラを想起させる)やソニーの愛人だったルーシー・マンティニにも多くの筆が割かれているのもこの新世代群像であり、その中には「新しいドン」への道を歩むことになるヴィトーの三男マイケルもいる。

一方、映画の『Part I』では、ほぼ原作に忠実であるが、ヴィトーの後半生と他のイタリア人移民社会の住人の描写が削られており、よりマイケルを中心としたコルレオーネ家族の絆の物語になっている。『Part II』『Part III』では、ヴィトーの前半生とマイケルの現在を対比させ、家族(ファミリー)を守るためにマフィアになり、組織(ファミリー)を作ったヴィトーと、家族を守るためにマフィアを継いだが、いつの間にか組織を守るために、家族を失っていくマイケルの姿を対照させている。

『ゴッドファーザー』は単なる組織犯罪やギャングの物語ではなく、家族の愛憎とファミリーを守ろうとする男たちの姿が主要なテーマである。

映画版では『Part II』においてヴィトー・アンドリーニ(Andolini)という名前であった少年が家族を殺されて逃れ、アメリカにやってきた際、エリス島にあった移民局での手違いから出身地名であるコルレオーネ村を取ったヴィトー・コルレオーネという名前になる次第が描かれている。(役人が異文化の住民の姓名を適当に変えてしまうことは移民局ではよくあることであった)。

映画(1972年~1990年)[編集]

イタリア系移民の悲哀を描き出した一大叙事詩的映画(エピックフィルム)。Part1、2、3の三部作で構成される。

『Part I』(1972年)[編集]

フランシス・フォード・コッポラ

『Part II』(1974年)[編集]

『ゴッドファーザー・サガ』[編集]

後にコッポラはテレビ用に二作を再編集して時系列で並び替え、『ゴッドファーザー・サガ』という作品にしている。複雑な時間の流れが整理されて理解しやすい作品となった。

『Part III』(1990年)[編集]

その後[編集]

1990年代後半には『Part IV』製作の噂が流れ、アンディ・ガルシアレオナルド・ディカプリオが出演するといわれたが、実現しなかった。一時期、ディカプリオの起用にコッポラが意欲的であると伝えられたが、1999年にマリオ・プーゾが死去したため、今後続編が作られる可能性は低いとみられている。コッポラはプーゾの死を受け、彼なくして(プーゾとの脚本共同執筆なくして)続編の制作はあり得ないと語った。

2004年ランダムハウス社はマーク・ウィンガードナーの手による新作『ゴッドファーザー・リターンズ』を発表した。

ゴッドファーザーDVDコレクションの特典「フランシス・フォード・コッポラ自作を語る」によると、PARTⅣは、PARTⅡのように「過去」と「現在」を重ね合わせた作品にする予定だったと語っている。脚本は「現在」の部分だけは既に完成しており、マイケルの死に至るまでの経緯と、ビンセントがドンとしてファミリーを纏めて行くまでの話だったという。コッポラによると、その後のファミリーは、麻薬取引を行い始めたため没落。ビンセントがファミリーを束ね、コロンビアで麻薬を扱っているドンと対峙するというものであった。「過去」の部分は、ヴィトーが一大ファミリーとなる部分を描く予定であった。しかし、あくまでもコッポラの構想であり、上記にある通りマリオ・プーゾが死去したため、続編は作られていない。

映画版での主要スタッフおよびキャスト[編集]

主要キャストの吹き替え声優[編集]

役名 俳優 TV版 DVD版1 DVD版2
PartI PartII PartIII サガ PartI PartII PartIII PartI PartII
ヴィトー・コルレオーネ マーロン・ブランド 鈴木瑞穂 麦人 麦人
マイケル・コルレオーネ アル・パチーノ 野沢那智 山寺宏一 山路和弘 野沢那智 森川智之
ヴィトー・コルレオーネ(青年時代) ロバート・デ・ニーロ 青野武 大塚芳忠 山野井仁 山野井仁
ヴィンセント・マンシーニ アンディ・ガルシア 江原正士 関俊彦
ソニー・コルレオーネ ジェームズ・カーン 穂積隆信 金尾哲夫 谷口節 谷口節
フレド・コルレオーネ ジョン・カザール 大塚国夫 牛山茂 牛山茂
トム・ヘイゲン ロバート・デュヴァル 森川公也 菅生隆之 田原アルノ 田原アルノ
ケイ・アダムス・コルレオーネ ダイアン・キートン 鈴木弘子 堀越真己 山像かおり 鈴木弘子 山像かおり
コニー・コルレオーネ・リッジ タリア・シャイア 小谷野美智子  麻志奈純子 田中敦子 渡辺美佐 駒塚由衣 斎藤恵理
サル・テッシオ エイブ・ヴィゴダ 上田敏也  加藤精三 水野龍司 水野龍司
マクラスキー警部 スターリング・ヘイドン 北山年夫 北村弘一 糸博 仲野裕

作品の評価[編集]

『ゴッドファーザー』は1973年度、アカデミー賞8部門で10個のノミネートを受け、3つのアカデミー賞を獲得した。

  • 作品賞
  • 主演男優賞 マーロン・ブランド
  • 脚本賞 フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーゾ

続編の『PartII』もまたアカデミー作品賞を獲得したため、正編・続編が作品賞を受賞した唯一のケースとなっている。また、『ゴッドファーザー』はそれ以外にも5つのゴールデングローブ賞グラミー賞など数々の栄誉を受けている。

ヴィトー・コルレオーネのモデル[編集]

一般的に知られているのはジョゼフ・ボナンノだと言われている。他にもオリーブオイルの独占販売権という点ではジョゼフ・プロファチである。

またコッポラ監督は1975年に受けた雑誌プレイボーイのインタヴューではヴィト・ジェノヴェーゼとプロファチから作ったと述べている。

映画でのマーロン・ブランドの話し方はフランク・コステロを真似たと言われている。[要出典]

貫禄を出そうと、両方のほほに、彼自身がティッシュペーパーを詰め込んだエピソードも有名。

エピソード[編集]

  • 当時のパラマウント社最大のヒット作である。社長のロバート・エヴァンズ自らが企画・製作し、同じく自身が製作した「ある愛の詩」と並ぶ興行成績を上げ、この2作品により倒産寸前だったパラマウント社を立て直したと言われる。
  • 『ゴッドファーザー』はマフィアの物語であるが、『Part I』撮影に備えて行われたイタリア系アメリカ人人権団体との折衝と合意により、Part Iでは「マフィア」、「コーザ・ノストラ」という言葉を使っていない(Part II、Part IIIでは多くはないが使われている)。また、公開にあたってはパラマウント社および監督のフランシス・フォード・コッポラより、作品がイタリア系アメリカ人、及びイタリア人とマフィアを関連付けて偏見を助長する意図に基づいていないことが再三に渡って表明されている。同作品が初めてテレビ放送される際にはコッポラによる「解説」も放映されたが、そこでもこの作品によってイタリア系アメリカ人をマフィア視するような偏見をもたないでほしいという内容の言及があった。
  • 『ゴッドファーザー』のファーストシーンは、ヴィトーの娘コニーの華やかな結婚式の裏でマフィアの闇の社会の謀議が行われるという対照的な情景だが、これは黒澤明監督の『悪い奴ほどよく眠る』のファーストシーン(娘の結婚式と、高級官僚である父の汚職事件の進行)から着想したと、のちにコッポラが語っている。
  • 室内のシーンで、コッポラは上から照明を当て、マーロン・ブランドの目を黒い影にして撮影したが、これは当時の映画の常識を破るものだった。以後、この手法を取り入れた映画が続出する。
  • ドン・ヴィトー・コルレオーネの役は、最初ロッサノ・ブラッツィなど他の俳優に出演依頼されたが、断られ、最後にマーロン・ブランドに回ってきた。ブランドは撮影中に監督と衝突するなどトラブルメーカーとして知られ、人気も下り坂だったため、当時ほとんど出演依頼がなかったが、この当たり役を得て第一線に復帰する。
  • マーロン・ブランドは撮影所の中で人懐こい野良猫を見つけ、この猫を気に入り、劇中でこれを抱くことをコッポラに了解させた。
  • Part IIの最後の場面、誕生日を祝う場面では、実際にマーロン・ブランドが現れなかったため、急遽、設定を変え、他のメンバーだけで撮影した。
  • マフィア役が気に入らなかったという説もあるが、後に、パロディーのような映画、ドン・サバティーニなどにも出演しているため、詳細は不明である。
  • また、映画『アナライズ・ユー』では、若き日のゴッドファーザーを演じたロバート・デニーロ自身が、父が撃たれる場面のフレド役を演じるなど、色々なところでファンを喜ばせる演出がされているが、数十年に渡るシリーズのため、出演者達は自分たちの記録・歴史そのものと語っている。それは、Part Iでピアノを弾く場面に、コッポラの父である作曲家のカーマイン・コッポラを出演させているところにも表れる。曲名はロンリネス。
  • Part IIIに娘役のメアリーとして出演し、後に映画監督になるソフィア・コッポラも、赤ん坊の時に洗礼を受けるコニーの次男役(Part I)、幼児時に移民船上の少女役(Part II)で登場している。
  • アメリカでは、マーロン・ブランド演じるヴィトーの口真似が宴会芸の定番とされた。
  • また、アメリカではよく「俺は奴に、断ることの出来ないオファーをするつもりだ」というセリフが引用される(イタリア訛りで)。
  • フランシス・フォード・コッポラは音楽にエンニオ・モリコーネを使いたかったらしい。(ただし、彼も「愛のテーマ」に関してはカバー曲として演奏をしている)

TVゲーム[編集]

日本では以下の作品が発売されている。

その他[編集]

  • PartⅠの、ドン・コルレオーネの葬儀でマイケルが立ち上がるシーンで、女性の顔がマイケルの服に映る。幽霊が映りこんでいると話題になる事があるが、これはマイケルのすぐとなりに座っているカルメラ・コルレオーネ(マイケルの母)がカメラの反射で映りこんだものとされている。

関連事項[編集]

外部リンク[編集]