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| Genre = {{Hlist-comma|[[カントリー・ミュージック|カントリー]]<ref name="Unterberger/AM">{{Cite web | first = Richie | last = Unterberger |authorlink=:en:Richie Unterberger | url = https://www.allmusic.com/song/ive-just-seen-a-face-mt0010100352 | accessdate = 2020-01-19 | title = The Beatles 'I've Just Seen a Face' |quote = almost pure country | website = [[オールミュージック|AllMusic]] |archiveurl = https://web.archive.org/web/20141015175309/https://www.allmusic.com/song/ive-just-seen-a-face-mt0010100352 | archivedate = 2014-10-15 }}</ref>|[[スキッフル]]{{Sfn|Gould|2008|p=238}}}}
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「'''夢の人'''」 (ゆめのひと、原題 : ''I've Just Seen A Face'')は、[[ビートルズ]]の楽曲である。イギリスでは1965年8月6日に発売された5作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『[[ヘルプ! (ビートルズのアルバム)|ヘルプ!]]』のB面5曲目、アメリカでは1965年12月6日に発売されたアメリカ編集盤『[[ラバー・ソウル#米国キャピトル編集盤『ラバー・ソウル』|Rubber Soul]]』のA面1曲目に収録された。[[レノン=マッカートニー]]名義となっているが、[[ポール・マッカートニー]]によって書かれた[[カントリー・ミュージック|トリー]]調{{Sfn|Miles|1997|p=200}}{{Sfn|Sheff|2000|p=195}}
「'''夢の人'''」 (ゆめのひと、原題 : ''I've Just Seen A Face'')は、[[ビートルズ]]の楽曲である。1965年8月に発売された5作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『[[ヘルプ! (ビートルズのアルバム)|ヘルプ!]]』に収録された。アメリカでは1965年に発売された『[[ラバー・ソウル#米国キャピトル編集盤『ラバー・ソウル』|Rubber Soul]]』にオープニング・トラックとして収録された。[[レノン=マッカートニー]]名義となっているが、[[ポール・マッカートニー]]によって書かれた楽曲で、1965年6月に[[アビー・ド・スタ|EMIスタジオ]]で「[[アイム・ダウン]]」や「[[イエスタデイ (ビートルズの曲)|イエスタデイ]]」と共に録音された


陽気なラブ・バラードで、歌詞は一目惚れをテーマとしている。マッカートニーは本作をアップテンポの[[カントリー・ミュージック|カントリー&ウエスタン]]調の楽曲として書き始めたが、完成した楽曲はカントリーと[[フォークロック]]や[[ポップ・ロック]]などのジャンルを融合した作品となっている。アメリカで発売された『Rubber Soul』のオープニング・トラックという観点から、「ビートルズがフォークに転向した」という解釈が広まった。本作は、ビートルズが初めてベースを使用しなかった楽曲で、4本の[[アコースティック・ギター]]が主体となっている。
1996年に[[ジュークボックス]]用に制作されたシングル盤『[[恋のアドバイス]]』のB面にも収録された。


マッカートニーがビートルズ解散後に初めてライブで演奏したビートルズの楽曲の1つで、1975年から1976年にかけて行なわれた『[[ウイングス|Wings]] Over the World』ツアーで演奏された。その後も複数のライブで演奏されている。楽曲発表後、{{仮リンク|チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズ|en|Charles River Valley Boys}}、{{仮リンク|ハンク・クロフォード|en|Hank Crawford}}、[[ホリー・コール]]によってカバーされている。
2010年に[[ローリング・ストーン]]誌が発表した「100 Greatest Beatles Songs」では第58位にランクインした{{Sfn|Womack|2014|p=484}}<ref>{{Cite web |title=58 - 'I've Just Seen a Face' |url=https://www.rollingstone.com//music/music-lists/100-greatest-beatles-songs-154008/ive-just-seen-a-face-167987 |work=100 Greatest Beatles Songs |publisher=[[ローリング・ストーン|Rolling Stone]] |accessdate=2021-02-02 }}</ref>。


== 背景・曲の構成 ==
== 背景とインスピレーション ==
マッカートニーは、1964年初頭に作曲した「[[キャント・バイ・ミー・ラヴ]]」以降、4作にわたってビートルズのシングルA面曲としてソングライターとしてのパートナーである[[ジョン・レノン]]が作曲した楽曲が採用されていたことから{{Refnest|group="注釈"|「[[ア・ハード・デイズ・ナイト (曲)|ア・ハード・デイズ・ナイト]]」、「[[アイ・フィール・ファイン]]」、「[[涙の乗車券]]」、「[[ヘルプ! (ビートルズの曲)|ヘルプ!]]」の4曲{{Sfn|Womack|2009|p=286}}。なお、1965年2月にアメリカでシングルとして発売された「[[エイト・デイズ・ア・ウィーク]]」は、レノンとマッカートニーの共作である{{Sfn|MacDonald|2007|pp=132, 155}}。}}、レノンの後塵を拝していた{{Sfn|MacDonald|2007|p=155}}。1965年2月から5月にかけて行なわれた5作目のオリジナル・アルバム『ヘルプ!』のセッションでは、ほとんどの作業がレノンの楽曲に集中していた{{Sfn|MacDonald|2007|p=155}}{{Sfn|Doggett|2005|p=65}}。この期間に録音した12曲のオリジナル楽曲のうち、マッカートニーが作曲した楽曲は5曲で、そのうち「[[ザット・ミーンズ・ア・ロット]]」と「[[イフ・ユーヴ・ガット・トラブル]]」の2曲は収録が却下されていた{{Sfn|Doggett|2005|pp=60, 63-65}}{{Refnest|group="注釈"|この時点で、マッカートニーは「[[アナザー・ガール]]」、「[[ザ・ナイト・ビフォア]]」、「[[テル・ミー・ホワット・ユー・シー]]」の3曲、レノンは「涙の乗車券」、「[[イエス・イット・イズ]]」、「[[悲しみはぶっとばせ]]」、「[[恋のアドバイス]]」、「ヘルプ!」を作曲していた{{Sfn|Doggett|2005|pp=60, 63}}。また、[[ジョージ・ハリスン]]は「[[アイ・ニード・ユー (ビートルズの曲)|アイ・ニード・ユー]]」と「[[ユー・ライク・ミー・トゥ・マッチ]]」を提供している{{Sfn|Doggett|2005|p=60}}。}}。1か月の休止期間を経て、1965年6月14日に作業を再開し、その際にマッカートニーは「夢の人」、「[[アイム・ダウン]]」、「[[イエスタデイ (ビートルズの曲)|イエスタデイ]]」の3曲を発表した{{Sfn|Lewisohn|2000|p=195}}。
曲が出来た当初は歌詞がついておらず、本作を気に入っていたマッカートニーの父親の末妹にちなみ、「'''Auntie Gin's Theme'''」(ジンおばさんのテーマ)という仮名が付いていた{{Sfn|Harry|2000|p=559}}{{Sfn|MacDonald|2005|p=155}}{{Sfn|Womack|2014|p=484}}。本作についてマッカートニーは「僕なりのカントリー・アンド・ウェスタン。ちょっと速めで変わった感じのテンポの曲だけど、すごく満足した。歌詞のテンポもよくて、次の展開へとどんどん引っ張っていくんだ」と語っている{{Sfn|Harry|2002|p=444}}。


レノンもマッカートニーも、「夢の人」の作曲者はマッカートニーであると認識している{{Sfn|Smith|1972|p=5}}{{Sfn|Sheff|2000|p=195}}{{Sfn|Miles|1998|p=200}}。1963年11月にマッカートニーは、ロンドン中心部のウィンポール・ストリート57番地にある恋人で女優の[[ジェーン・アッシャー]]の実家に引っ越し{{Sfn|Miles|1998|p=103-104}}、後にマッカートニーはこの家の地下にある音楽室で「夢の人」を書いた{{Sfn|Miles|1998|p=107-108}}。アップテンポのアップテンポの[[カントリー・ミュージック|カントリー&ウエスタン]]調の楽曲として書き始められ{{Sfn|Miles|1998|p=200}}、マッカートニーは最初にメロディを作った{{Sfn|Everett|2001|p=299}}。本作についてマッカートニーは「僕なりのカントリー・アンド・ウェスタン。ちょっと速めで変わった感じのテンポの曲だけど、すごく満足した」と語っている{{Sfn|Harry|2002|p=444}}。
1964年よりビートルズは、「[[ぼくが泣く]]」(アルバム『[[ハード・デイズ・ナイト (アルバム)|ハード・デイズ・ナイト]]』に収録)やアルバム『[[ビートルズ・フォー・セール]]』に収録の数曲でカントリーに傾倒しており、本作はそれが顕著に表れた楽曲と言える。なお、音楽評論家の{{仮リンク|リッチー・アンターバーガー|en|Richie Unterberger}}は、曲中で[[バンジョー]]や[[フィドル]]が使用されず、テンポが速いという観点から「[[ブルーグラス]]・ナンバー」と評している<ref name="Unterberger/AM" />。


その後、家族の集まりで[[ピアノ]]で弾いてみたところ{{Sfn|Kruth|2015|p=51}}、叔母のジンが曲を気に入り、これを由来としてマッカートニーは「'''Auntie Gin's Theme'''(ジンおばさんのテーマ)」という仮タイトルを付けた{{Sfn|Badman|2001|p=97}}{{Sfn|Turner|2005|p=83}}{{Refnest|group="注釈"|ジン・ハリスは、マッカートニーの父であるジム・マッカートニーの妹{{Sfn|Turner|2005|p=83}}{{Sfn|Lewisohn|2013|pp=10, 25, 906}}。マッカートニーは、1976年に発売した[[ウイングス]]のアルバム『[[スピード・オブ・サウンド (アルバム)|スピード・オブ・サウンド]]』{{Sfn|Guesdon|Margotin|2013|p=248}}に収録された「[[幸せのノック]]」でジンについて言及している{{Sfn|Turner|2005|p=83}}。}}。マッカートニーは、テンポの速い歌詞を加えて{{Sfn|MacDonald|2007|p=155}}、本作を陽気なラブ・バラードに転向させた{{Sfn|Hertsgaard|1995|p=132}}。歌詞について、アッシャーとの関係に触発されて書いた可能性が指摘されている{{Sfn|Guesdon|Margotin|2013|p=248}}{{Sfn|Norman|2016|p=196}}。
「夢の人」は、1965年6月14日に[[アビー・ロード・スタジオ|EMIスタジオ]]でレコーディングされ、同日には「[[イエスタデイ (ビートルズの曲)|イエスタデイ]]」や「[[アイム・ダウン]]」のセッションも行われた{{Sfn|Lewisohn|1988|p=59}}。6テイク録音され、最終テイクとなるテイク6が採用された{{Sfn|Lewisohn|1988|p=59}}。本作において[[エレクトリックベース|ベース]]は未使用とされている{{Sfn|Kruth|2015|p=60}}{{Sfn|Halpin|2017|p=95}}が、ビートルズの歴史家である{{仮リンク|ケネス・ウォマック|en|Kenneth Womack}}は、本作におけるマッカートニーの担当楽器の1つとして[[エレクトリックベース|ベース]]も挙げている{{Sfn|Womack|2014|p=484}}。


== 曲の構成 ==
アメリカでは[[キャピトル・レコード]]によって当時の[[フォークロック]]の流行に合わせることと、アルバム全体の[[アコースティック]]色を強調する目的として、キャピトル編集盤『[[ラバー・ソウル#米国キャピトル編集盤『ラバー・ソウル』|Rubber Soul]]』に収録された{{Sfn|Halpin|2017|p=95}}。
=== コード進行と様式 ===
「夢の人」は、キーが[[イ長調|Aメジャー]]で{{Sfn|Pollack|1993}}{{sfn|MacDonald|2007|pp=155, 495}}、2/2拍子(カットタイム)で演奏される{{Sfn|Everett|2001|p=299}}{{Refnest|group="注釈"|エヴェレットは本作について「カットタイム」であるとしている。一方でポラックは、本作を2/2拍子とも4/4拍子(コモンタイム)とも言えるとしたうえで、前者の方が「リスナーが基礎となるテンポがどの程度一定であるかをより簡単に把握できる」と書いている{{Sfn|Pollack|1993}}。}}。曲は10小節のイントロから始まり{{Sfn|Pollack|1993}}、遅延した3連符を使用して加速感を演出している{{Sfn|Pollack|1993}}{{Sfn|Riley|2002|p=148}}。本作では4つのコードが使用されており、12小節の[[Aメロ|ヴァース]]では一般的なポップスのコード進行(I-vi-IV-V)、8小節の[[リフレイン形式|リフレイン]]ではブルース進行(V-VI-I)を使用している{{Sfn|Pollack|1993}}。リフレインのコード進行は下降をシミュレートしており、「and she keeps '''calling'''...」の第1音節にマイナー・サードを含めることでリフレインにブルース調のサウンドをもたらしている{{Sfn|Pollack|1993}}。他のビートルズの楽曲と同様に3連符の繰り返しによって曲が終わり、イントロの最後の部分を繰り返すことによって対称性をもたせている{{Sfn|Pollack|1993}}。


本作は複数の異なる音楽の様式を融合しており、分類が複雑になっている{{Sfn|Pollack|1993}}。音楽学者の{{仮リンク|ウォルター・エヴェレット (音楽学者)|label=ウォルター・エヴェレット|en|Walter Everett (musicologist)}}は本作を「[[フォークソング|フォーク]]」{{Sfn|Everett|2001|p=337}}、音楽評論家の{{仮リンク|イアン・マクドナルド (音楽評論家)|label=イアン・マクドナルド|en|Ian MacDonald}}は「[[フォークロック]]」{{Sfn|MacDonald|2007|p=156}}としている。テリー・オグラディは「ブルーグラスの影響を受けた曲」としている{{Sfn|O'Grady|2008|p=24}}。音楽学者のアラン・W・ポラックは、「冒頭の2つのヴァースが連続する部分は純粋な[[ポップ・ロック]]。後半のヴァースとリフレインの変化は、どちらかというとフォークソングのような感じ。アウトロの3連リフレインは、[[リズム・アンド・ブルース|R&B]]のレイヴアップを思わせる」と述べている{{Sfn|Pollack|1993}}。本作はビートルズの楽曲で初めてベースのパートが存在しない楽曲{{Refnest|group="注釈"|name="bass"|ただし、ビートルズの歴史家である{{仮リンク|ケネス・ウォマック|en|Kenneth Womack}}は、本作におけるマッカートニーの担当楽器の1つとして[[エレクトリックベース|ベース]]も挙げている{{Sfn|Womack|2014|p=484}}。}}で、音楽評論家の{{仮リンク|ティム・ライリー|en|Tim Riley}}は「ベースを使用せずに、ギターの低音域で演奏されるギターソロ」から、本作のジャンルをカントリーとしている{{Sfn|Riley|2002|p=148}}。
== 演奏 ==

※出典{{Sfn|MacDonald|2005|p=155}}
=== 歌詞 ===
* [[ポール・マッカートニー]] - [[ボーカル|リード・ボーカル]]、[[コーラス (ポピュラー音楽)|ハーモニー・ボーカル]]、[[アコースティック・ギター]]([[リードギター]]){{Refnest|group="注釈"|ケネス・ウォマックは、本作におけるマッカートニーの担当楽器の1つとして[[エレクトリックベース|ベース]]も挙げている{{Sfn|Womack|2014|p=484}}。}}
会話形式で書かれた<ref name="rs">{{Cite web |title=100 Greatest Beatles Songs: 58. 'I've Just Seen a Face' |url=https://www.rollingstone.com/music/lists/100-greatest-beatles-songs-20110919/ive-just-seen-a-face-19691231 |website=[[ローリング・ストーン|Rolling Stone]] |date=2020-04-10 |accessdate=2021-09-22 }}</ref>「夢の人」の歌詞は、一目惚れをテーマとした内容となっている{{sfn|MacDonald|2007|p=155}}{{sfn|Gould|2007|p=278}}。作家のジョナサン・グールドは、本作を1965年にマッカートニーが作曲した「[[テル・ミー・ホワット・ユー・シー]]」、「[[ユー・ウォント・シー・ミー]]」、「[[恋を抱きしめよう]]」、「[[君はいずこへ]]」など、顔を見合わせることをテーマとした楽曲と関連づけている{{Sfn|Gould|2007|p=302}}。一方で、音楽学者のナフタリー・ワグナーは、「[[ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ]]」や「[[フィクシング・ア・ホール]]」などのマッカートニーの作品と関連づけている{{Sfn|Wagner|2008|p=89}}。
* [[ジョン・レノン]] - アコースティック・ギター([[リズムギター]])

* [[ジョージ・ハリスン]] - アコースティック・ギター(リードギター)
2拍ごとに韻が踏まれた{{Sfn|Everett|2001|p=403n137}}歌詞は、連なったヴァースと[[頭韻法]]で構成されており{{Sfn|Riley|2002|p=148}}、マッカートニーは「歌詞のテンポもよくて、次の展開へとどんどん引っ張っていくんだ」と語っている{{Sfn|Miles|1998|p=200}}{{Sfn|Harry|2002|p=444}}。
* [[リンゴ・スター]] - [[マレット (打楽器)|ブラシ]]で叩いた[[スネアドラム]]、[[マラカス]]

== レコーディング ==
ビートルズは、1965年6月14日の午後のセッションで「夢の人」と「[[アイム・ダウン]]」のレコーディングを行ない、夕食を済ませた後に「[[イエスタデイ (ビートルズの曲)|イエスタデイ]]」のレコーディングを行なった。レコーディングは、[[アビー・ロード・スタジオ|EMIスタジオ]]のスタジオ2で行なわれ、[[ジョージ・マーティン]]がプロデュースを手がけ、バランス・エンジニアの[[ノーマン・スミス]]がアシスタントを務めた{{Sfn|Lewisohn|1988|p=59}}。本作は2つのベーシック・トラックで構成されている。1つ目のベーシック・トラックでは、[[ジョージ・ハリスン]]が[[12弦ギター|12弦]][[アコースティック・ギター]]、レノンが12弦アコースティック・ギター(フラマス・フーテナニー)、マッカートニーが[[クラシック・ギター]]{{Sfn|Everett|2001|pp=299, 346}}を弾き、[[リンゴ・スター]]が[[マレット (打楽器)|ブラシ]]で[[スネアドラム]]{{Sfn|Everett|2001|p=299}}{{Sfn|MacDonald|2007|p=155}}を叩いている。2つ目のベーシック・トラックでは、レノンがアコースティック・ギターでリズムギターのパートを弾き、マッカートニーが[[ボーカル|リード・ボーカル]]を担当している{{Sfn|Everett|2001|p=299}}。

本作は6テイクで完成し{{Sfn|Lewisohn|1988|p=59}}、テイク6に[[オーバー・ダビング]]が施された{{Sfn|Winn|2008|p=324}}。マッカートニーはイントロの高音域をクラシック・ギターで弾き、{{仮リンク|ディスカント|en|Descant}}のパートを加えた{{Sfn|Everett|2001|p=299}}ほか、リフレインに『[[アクト・ナチュラリー#ビートルズによるカバー|アクト・ナチュラリー]]』でも聴くことができる[[対位法]]を用いたバッキングを取り入れた{{Sfn|Pollack|1993}}。スターは[[マラカス]]をオーバー・ダビングし{{Sfn|Everett|2001|p=299}}{{Sfn|MacDonald|2007|p=155}}、ハリスンは12弦アコースティック・ギターでソロを弾いている{{Sfn|Everett|2006|p=79}}{{Sfn|Gould|2007|p=278}}{{Sfn|Winn|2008|p=2008}}{{Sfn|Everett|2009|pp=61, 346}}{{Refnest|group="注釈"|ギターソロの演奏者については意見が分かれており、グールドとジョン・C・ウィンはそれぞれギターソロの演奏者をハリスン{{Sfn|Gould|2007|p=278}}{{Sfn|Winn|2008|p=324}}とし、ジーン・ミシェル・ゲドンとフィリップ・マーゴティンはギターソロの演奏者をマッカートニー{{Sfn|Guesdon|Margotin|2013|p=248}}としている。}}。ギターソロは2本のギターが同時に演奏され、対照的なサウンドを提示している{{Sfn|Everett|2006|p=79}}{{Refnest|group="注釈"|これは『ヘルプ!』のセッション中に多用された手法の1つで{{Sfn|Everett|2006|p=79}}、カバー曲の「[[ディジー・ミス・リジー#ビートルズによるカバー|ディジー・ミス・リジー]]」や「[[バッド・ボーイ (ラリー・ウィリアムズの曲)#ビートルズによるカバー|バッド・ボーイ]]」、「ヘルプ!」、「[[イッツ・オンリー・ラヴ (ビートルズの曲)|イッツ・オンリー・ラヴ]]」、「涙の乗車券」でも確認できる{{Sfn|Everett|2006|p=79}}。}}。ソロの途中でカットタイムからコモンタイムに移行することから、グールドはハリスンの演奏について「[[ジャンゴ・ラインハルト]]や{{仮リンク|ホット・クラブ・ド・フランス|label=ル・ホット・クラブ|en|Hot Club de France}}を彷彿とさせる」と指摘し{{Sfn|Gould|2007|p=278}}、一方でポラックは「いなかじみていて、リズム的に単調」と評している{{Sfn|Pollack|1993}}。

マーティンとスミスは、6月18日にEMIスタジオのスタジオ2で、「夢の人」をはじめとした『ヘルプ!』の数曲のモノラル・ミックスとステレオ・ミックスを作成した{{Sfn|Lewisohn|1988|p=60}}。本作の2つのミックスは、ほぼ同じ仕上がりとなっている。1987年に『ヘルプ!』のCD化に際して、マーティンは本作をステレオ用にリミックスし、わずかにエコーを加えた{{Sfn|Winn|2008|p=324}}。

== リリース ==
「夢の人」のレコーディングが行われていた当時、映画『[[ヘルプ!4人はアイドル]]』の制作が完了していたことから、本作が映画に使用されることはなかった{{Sfn|MacDonald|2007|p=156}}{{Sfn|Spitz|2005|p=558}}。1965年8月6日に[[パーロフォン]]からオリジナル・アルバム『ヘルプ!』が発売され{{Sfn|Castleman|Podrazik|1975|p=47}}、「夢の人」は映画に使用されなかった他の楽曲とともにB面に収録された{{Sfn|Lewisohn|1988|p=62}}。マッカートニーは完成した楽曲の仕上がりに満足しており、マッカートニーのお気に入りのビートルズの曲の1つとなった{{Sfn|Miles|1998|p=200}}。

アメリカでは、[[キャピトル・レコード]]がビートルズのアルバムを再構成し、出版料を抑えることを目的に曲数を減らし、シングルとして発売された楽曲を加えてアルバムがイギリスよりも多く発売された{{Sfn|Frontani|2007|p=53}}{{Sfn|Rodriguez|2012|p=24-25}}。キャピトル・レコードの重役であるデイヴ・デクスター・ジュニアは、アメリカで発売された『[[ヘルプ! (ビートルズのアルバム)#米国キャピトル編集盤 『ヘルプ(四人はアイドル)』|ヘルプ(四人はアイドル)]]』から「夢の人」をはじめとした楽曲をカットし{{Sfn|Marsh|2007|pp=147, 177}}、映画で使用された楽曲だけを残し、映画のサウンドトラックとして使用されたオーケストラの楽曲を追加した{{Sfn|Lewisohn|1988|p=62}}{{Sfn|Kimsey|2009|pp=233-234}}。その次作にあたる『[[ラバー・ソウル]]』でも、キャピトル・レコードは再び再構成を行ない{{Sfn|Rodriguez|2012|pp=74-75}}、アメリカにおけるフォークロックの流行に合わせることを目的に{{Sfn|Gould|2007|p=296}}、本来のオープニング・トラックで、{{仮リンク|メンフィス・ソウル|label=メンフィス・サウンド|en|Memphis soul}}の影響を受けた「[[ドライヴ・マイ・カー]]」を「夢の人」に置き換える{{Sfn|Kimsey|2009|p=235}}など、「エレクトリック」とみなされた楽曲をカットした{{Sfn|Kruth|2015|p=7}}{{Refnest|group="注釈"|キャピトル・レコードは、『らバー・ソウル』をさらに改変して、「[[ひとりぼっちのあいつ]]」、「[[消えた恋]]」、「[[恋をするなら (ビートルズの曲)|恋をするなら]]」をカットし、アメリカ出発売された『ヘルプ(四人はアイドル)』では未収録となっていた「イッツ・オンリー・ラヴ」を追加した{{Sfn|Kruth|2015|p=7}}{{Sfn|Hamilton|2016|p=147}}。『ラバー・ソウル』からカットされた楽曲は、1966年6月に発売されたアルバム『[[イエスタデイ・アンド・トゥデイ]]』に収録され{{Sfn|Frontani|2007|p=117}}、『ヘルプ(四人はアイドル)』の残りの未収録曲は、『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』と1965年6月に発売されたアルバム『[[ビートルズ VI]]』の2作に収録されている{{Sfn|Frontani|2007|pp=114-117, 245n23}}。}}。音楽学者のローラ・ターナーは、アメリカで発売されたアルバムにおける「夢の人」から「[[ノルウェーの森]]」の流れを「パワフル」と表現し{{Sfn|Turner|2016|p=83}}、評論家のロブ・シェフィールドも「見事なワン・ツー・パンチ」と表現している{{Sfn|Sheffield|2017|p=90}}。

1965年12月6日にアメリカで発売された{{Sfn|Castleman|Podrazik|1975|p=50}}『[[ラバー・ソウル#米国キャピトル編集盤『ラバー・ソウル』|ラバー・ソウル]]』は、アコースティックがベースの楽曲を中心としたの内容になっており{{Sfn|Rodriguez|2012|p=75}}{{Sfn|Frontani|2007|p=116}}、音楽学者のジョン・キムジーは「木製の楽器の[[テクスチュア]]と、穏やかでゆったりとしたリズム」と述べている{{Sfn|Kimsey|2009|p=235}}。このアルバムの再構成により、ビートルズの歴史家である{{仮リンク|ケネス・ウォマック|en|Kenneth Womack}}曰く「明らかにフォーク志向」になっており、その結果アメリカの多くのリスナーは「ビートルズがフォーク・ミュージックに転向した」と誤認した{{Sfn|Gould|2007|p=296}}{{Sfn|Kimsey|2009|p=235}}。学者のジャック・ハミルトンは、「夢の人」をアルバムのオープニング・トラックに位置づけたことにより、フォークロックとしてのパッケージが一目瞭然になったと判断している{{Sfn|Hamilton|2016|p=148}}{{Refnest|group="注釈"|また、ハミルトンは「[[ボブ・ディラン|ディラン]]風の『悲しみはぶっとばせ』を収録した『ヘルプ!』は、『ラバー・ソウル』よりもフォークロックに近かったのではないか」と述べている{{Sfn|Hamilton|2016|p=148}}。シェフィールドは、キャピトル・レコードによる『ラバー・ソウル』の改変について「イギリスのオリジナル盤よりもコンセプト的に統一されたフォークロック・アルバムになったが、乏しくて良いものではなかった」と述べている{{Sfn|Sheffield|2004|p=52}}。}}。評論家のジム・フジーリは、「ドライヴ・マイ・カー」の「滴るような[[冷笑主義|シニシズム]]」と「夢の人」で聴かれる「幸せな男の物語」を対比した上で、アメリカでのアルバムの内容は「ビートルズの『成熟した姿』を示すのに失敗している」と主張している{{Sfn|Fusilli|2005|p=78}}。音楽評論家のデイヴ・マーシュも「夢の人」については「悪くない」としたうえで、オリジナル盤のオープニング・トラックとは「バンドがどこにいるのか、まったく異なる印象を与える」と述べている{{Sfn|Marsh|2007|p=177}}。また、マーシュは「改変された『ラバー・ソウル』は、ビートルズのアルバムを再構成するというレーベルの『最高でも最悪でもない』試みと見ることができ、流行りのフォークロック・アルバムとして音は良いが、バンドの本来の芸術的意図を誤って表現している」と結論づけている{{Sfn|Marsh|2007|pp=122, 177}}。

== 評価 ==
[[オールミュージック]]にアルバム『ヘルプ!』のレビューを寄稿した[[スティーヴン・トマス・アールワイン]]は、「夢の人」を「魅力的なフォークロックの逸品」と評している<ref>{{Cite web |first=Stephen Thomas |last=Erlewine |authorlink=スティーヴン・トマス・アールワイン |title=Help! - The Beatles {{!}} Songs, Reviews, Credits |url=https://www.allmusic.com/album/help%21-mw0000189173 |website=[[オールミュージック|AllMusic]] |publisher=All Media Network |accessdate=2021-09-23 }}</ref>。ジャーナリストの{{仮リンク|アレクシス・ペトリディス|en|Alexis Petridis}}は、マッカートニーが『ヘルプ!』に提供した他の楽曲(特に「[[アナザー・ガール]]」と「[[テル・ミー・ホワット・ユー・シー]]」)を「穴埋めの曲」とする一方で、「夢の人」について「アルバムで見落とされていた本物の逸品」と評している{{Sfn|Petridis|2004|p=176}}。ペトリディスは、本作を「『ヘルプ!』で注目されているディランの影響をイギリス風に反転したもの」と見ており、「[[グリニッジ・ヴィレッジ]]のフォーク・サウンドと[[スキッフル]]のそれとの中間に位置している」と述べている{{Sfn|Petridis|2004|p=176}}。マクドナルドは、「『ヘルプ!』のB面を『瞬発力のある新鮮さ』で高めている」とし、1965年の{{仮リンク|スウィンギング・シックスティーズ|label=スウィンギング・ロンドン|en|Swinging Sixties}}の映画のような「ポップ・パラレル」と述べている{{Sfn|MacDonald|2007|p=155}}。

「夢の人」は、2010年に[[ローリング・ストーン]]誌が発表した「100 Greatest Beatles Songs」で第58位にランクインし{{Sfn|Womack|2014|p=484}}<ref>{{Cite web |title=58 - 'I've Just Seen a Face' |url=https://www.rollingstone.com//music/music-lists/100-greatest-beatles-songs-154008/ive-just-seen-a-face-167987 |work=100 Greatest Beatles Songs |publisher=[[ローリング・ストーン|Rolling Stone]] |accessdate=2021-02-02 }}</ref>、2014年に同誌が行なった読者投票「10 Great Early Beatles Songs」で第10位にランクインしている<ref>{{Cite web |title=10 - 'I've Just Seen a Face' |url=https://www.rollingstone.com/music/music-lists/readers-poll-the-10-greatest-early-beatles-songs-11145/10-ive-just-seen-a-face-228309/ |work=10 Great Early Beatles Songs |publisher=Rolling Stone |date=2014-02-12 |accessdate=2021-09-23 }}</ref>。マッカートニーの伝記作家である{{仮リンク|ピーター・エイムズ・カーリン|en|Peter Ames Carlin}}は、本作をマッカートニーの「ビートルズへの貢献の中で最も見落とされているが、同時に最高傑作の1つ」としている{{Sfn|Carlin|2009|p=117}}。ライリーは、本作を「マッカートニーが『イエスタデイ』に次いで『ヘルプ!』に貢献した曲」「(歌詞には)場違いな言葉は1つもない」と称賛し、「甘ったるくなることなく、甘くしなやか」「由緒深いフォークのシンプルな優美さを持っている」と述べている{{Sfn|Riley|2002|p=148}}。マクドナルドも同様に、韻を踏むこととテンポの速い表現が「音楽を完璧に補完している」と述べている{{Sfn|MacDonald|2007|p=155}}。エヴェレットは、マッカートニーの不規則な韻律を「まさに詩的」としている{{Sfn|Everett|2001|p=403n137}}。ジャーナリストの{{仮リンク|マーク・ハーツガード|en|Mark Hertsgaard}}は、本作を「魅力的なヴィンテージ・マッカートニー」「暖かくて、陽気なフォークロックの宝」とし、「太ももを叩くビート、歌うようなメロディで、陽気で愛は偉大ではないという歌詞」を評価し、「音楽的には腕いっぱいの摘みたてのヒナギクに相当する」と述べている{{Sfn|Hertsgaard|1995|pp=127, 132-133}}。シェフィールドは、本作について「(これまでで)最もロマンティックな曲」「『ドライヴ・マイ・カー』と同じくらい面白い」と述べている{{Sfn|Sheffield|2017|pp=15-16}}。

音楽評論家の{{仮リンク|リッチー・アンターバーガー|en|Richie Unterberger}}は、「1964年よりビートルズは、『[[ぼくが泣く]]』{{Refnest|group="注釈"|1964年に発売されたアルバム『[[ハード・デイズ・ナイト (アルバム)|ハード・デイズ・ナイト]]』に収録されている楽曲。}}やアルバム『[[ビートルズ・フォー・セール]]』に収録の数曲でカントリーに傾倒しており、それが顕著に表れているが、『夢の人』はほとんど純粋なカントリー」とし、曲中で[[バンジョー]]や[[フィドル]]が使用されず、テンポが速いという観点から「[[ブルーグラス]]・ナンバー」と評している<ref name="Unterberger/AM" />。音楽ジャーナリストの{{仮リンク|ピーター・ドゲット|en|Peter Doggett}}は、本作を「ブルーグラスのテンポで歌われたフォークソング」「マッカートニーの逸品」とし、「絶叫系ロッカー」である「アイム・ダウン」と同じセッションで録音されたことで、より注目を集めたとしている{{Sfn|Miles|2001|p=205}}。作家のジョン・クルトは、「夢の人」の影響がアメリカのロックバンドである[[バッファロー・スプリングフィールド]]の「[[バッファロー・スプリングフィールド (アルバム)|ゴー・アンド・セイ・グッバイ]]」で聴けると示唆している。クルトは、本作と「ゴー・アンド・セイ・グッバイ」の2曲がロック・ファンに些細なカントリー・ミュージックを知らしめることに役立ち、アメリカのバンドである[[バーズ (アメリカのバンド)|バーズ]]が1968年に発売したアルバム『[[ロデオの恋人]]』で、フォークロックからカントリーに転向するきっかけになったと主張している{{Sfn|Kruth|2015|p=52}}。さらにクルトは、本作の「深い木製の音色」は、[[クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング]]や[[ジェームズ・テイラー]]、[[ジャクソン・ブラウン]]の音楽で聴くことができるとし{{Sfn|Kruth|2015|p=54}}、エヴェレットは、「マッカートニーが1968年に作曲した『[[マザー・ネイチャーズ・サン]]』の『シンプルなフォーク・スタイル』を先取りしている」と指摘している{{Sfn|Everett|1999|p=186}}。

== マッカートニーによるライブでの演奏 ==


本作はマッカートニーのビートルズ以降のキャリアにおいてもお気に入りの楽曲となっており、マッカートニーが後のバンドである[[ウイングス]]としても演奏した数少ないビートルズの曲の1つである{{Sfn|Miles|1998|p=200}}。「夢の人」は、1975年から1976年に行われた『[[ウイングス|Wings]] Over the World』ツアーでマッカートニーが演奏した5つのビートルズの曲の1つで{{Sfn|Badman|2001|pp=165, 182-183}}{{Sfn|Rodriguez|2010|pp=63, 173}}、マッカートニーがライブのセットリストにビートルズの曲を加えた初の例となった{{Sfn|Norman|2016|p=516}}{{Sfn|Ingham|2009|p=66}}{{Refnest|group="注釈"|この他には、「[[レディ・マドンナ]]」、「[[ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード]]」、「イエスタデイ」、「ブラックバード」が演奏された{{Sfn|Schaffner|1977|p=182}}{{Sfn|Rodriguez|2010|pp=172-173}}。}}。作家のロバート・ロドリゲスは、この選曲を予想外のものとし{{Sfn|Rodriguez|2010|p=173}}、マッカートニーは同時期に「適当に…。あまりおおごとにはしたくなかった」と説明している{{Sfn|Schaffner|1977|p=182}}。ジャーナリストの{{仮リンク|ニコラス・シャフナー|en|Nicholas Schaffner}}は、本作がセットリストに加えられていたことで「観客に衝撃を与えた」と述べており、ロドリゲスもセットリストにおけるビートルズのセクションを「ほとんどの観客にとっての感動的なハイライト」と述べている{{Sfn|Rodriguez|2010|p=63}}。マッカートニーは、「素晴らしい曲だ。最終的にはそんなにたいしたことじゃないから、やってみようと思ったんだ」と語っている{{Sfn|Schaffner|1977|p=182}}。1976年6月23日のロサンゼルス公演でのライブ音源は、同年に発売されたライブ・アルバム『[[ウイングス・オーヴァー・アメリカ]]』に収録され{{Sfn|Madinger|Easter|2018|p=222}}、その前日のロサンゼルス公演の模様は1980年に公開されたコンサート映画『Rockshow』に収録されている{{Sfn|Madinger|Easter|2018|p=228}}{{Refnest|group="注釈"|『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』のライナーノーツで、マッカートニーは同作に収録のビートルズの楽曲の作曲クレジットを「レノン=マッカートニー」から「マッカートニー=レノン」に変更した{{Sfn|Doggett|2011|p=248}}{{Sfn|Norman|2016|p=679}}。この変更について、当時レノンからの苦情も含めて批判を受けることはなかったが、2002年に発売されたライブ・アルバム『[[バック・イン・ザ・U.S. -ライブ2002]]』で、マッカートニーが再びクレジットを変更したことにより、レノンの未亡人である[[オノ・ヨーコ]]の怒りを買うこととなった{{Sfn|Doggett|2011|pp=248, 339-340}}。}}。ライリーは、「夢の人」の映像化された演奏を、「まるでマッカートニーがポーチに座って古き良き田舎の人気曲にハーモニーを奏でているようだ」と称賛している{{Sfn|Riley|2002|p=148}}。
== ライブ演奏 ==
マッカートニーは、ビートルズ解散後ソロでのライブで頻繁に演奏されており、1975年から1976年に行われた『[[ウイングス|Wings]] Over the World』で初めて演奏されたのち、1991年の『Unplugged Tour』、2004年の『Summer Tour』、2011年から2012年の『On the Run Tour』で演奏されたほか{{Sfn|Womack|2014|p=484}}、2013年から2015年にかけて行われた『Out There』ツアーでも演奏された。


マッカートニーは、1991年1月25日{{Sfn|Badman|2001|p=459}}に『[[MTVアンプラグド]]』用に撮影されたライブで、「夢の人」をアコースティック調のアレンジで演奏した{{Sfn|Ingham|2009|p=111}}。この時の演奏は、1991年に発売されたアルバム『[[公式海賊盤]]』に収録されている{{Sfn|Badman|2001|p=459}}{{Sfn|Ingham|2009|p=111}}。これ以降もマッカートニーはたびたびライブで演奏しており{{Sfn|Womack|2014|p=484}}、1991年のイギリスでの『Surprise Gigs』ツアー、2004年の『Summer Tour』、2011年から2012年の『On the Run』ツアーのセットリストに含まれていて、2005年に発売された『[[ライヴ・イン・レッド・スクウェア]]』にも収録されている{{Sfn|Womack|2014|p=484}}。
ライブ音源は『[[ウイングス・オーヴァー・アメリカ]]』(1976年)、『[[公式海賊盤]]』(1991年)に収録されており、ライブ映像は『[[ライヴ・イン・レッド・スクウェア]]』(2005年)に収録された{{Sfn|Womack|2014|p=484}}。


2015年2月15日に放送された『[[サタデー・ナイト・ライブ|Saturday Night Live 40th Anniversary Special]]』では、オープニング・アクトとして[[ポール・サイモン]]とこの曲で共演している<ref>{{cite news |url=https://www.rollingstone.com/tv/news/paul-mccartney-miley-cyrus-paul-simon-captivate-at-snl-40-20150216 |title=Paul McCartney, Miley Cyrus, Paul Simon Captivate at ‘SNL 40’ |last=Blistein |first=Jon |publisher=[[ローリング・ストーン|Rolling Stone]] |date=2015-02-15 |accessdate=2019-05-15}}</ref>。
2015年2月15日に放送された『[[サタデー・ナイト・ライブ|Saturday Night Live 40th Anniversary Special]]』では、オープニング・アクトとして[[ポール・サイモン]]とこの曲で共演している<ref>{{cite news |url=https://www.rollingstone.com/tv/news/paul-mccartney-miley-cyrus-paul-simon-captivate-at-snl-40-20150216 |title=Paul McCartney, Miley Cyrus, Paul Simon Captivate at ‘SNL 40’ |last=Blistein |first=Jon |publisher=[[ローリング・ストーン|Rolling Stone]] |date=2015-02-15 |accessdate=2019-05-15}}</ref>。

== 演奏 ==
※出典{{Sfn|Everett|2001|p=299}}(特記を除く)
* [[ポール・マッカートニー]] - [[ボーカル]]、[[コーラス (ポピュラー音楽)|バッキング・ボーカル]]、[[クラシック・ギター]]<ref group="注釈" name="bass" />
* [[ジョン・レノン]] - [[12弦ギター|12弦]][[アコースティック・ギター]]、アコースティック・ギター([[リズムギター]])
* [[ジョージ・ハリスン]] - 12弦アコースティック・ギター
* [[リンゴ・スター]] - [[マレット (打楽器)|ブラシ]]で叩いた[[スネアドラム]]{{Sfn|MacDonald|2007|p=155}}、[[マラカス]]{{Sfn|MacDonald|2007|p=155}}


== カバー・バージョン ==
== カバー・バージョン ==
=== チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズによるカバー ===
* {{仮リンク|チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズ|en|Charles River Valley Boys}} - 1966年に発売されたアルバム『Beatle Country』に収録<ref>{{AllMusic |first=Pemberton |last=Roach |title=Beatle Country - The Charles River Valley Boys {{!}} Songs, Reviews, Credits |class=album |id=beatle-country-mw0000172754 |accessdate=2021-02-02 }}</ref>。
{{Infobox Song
* {{仮リンク|ディラーズ|en|The Dillards}} - 1968年に発売されたアルバム『[[:en:Wheatstraw Suite|Wheatstraw Suite]]』に収録<ref>{{AllMusic |first=Bruce |last=Eder |title=Wheatstraw Suite - The Dillards {{!}} Songs, Reviews, Credits |class=album |id=wheatstraw-suite-mw0000225067 |accessdate=2021-02-02 }}</ref>。
| Name = 夢の人
* {{仮リンク|ジョニー・リバース|en|Johnny Rivers}} - 1974年に発売されたライブ・アルバム『Last Boogie in Paris』に収録<ref>{{AllMusic |first=Jeff |last=Tamarkin |title=Last Boogie in Paris - Johnny Rivers, Johnny Rivers & His L.A. Boogie Band {{!}} Songs, Reviews, Credits |class=album |id=last-boogie-in-paris-mw0000176588 |accessdate=2021-02-02 }}</ref>。
| English_title = I've Just Seen a Face
* {{仮リンク|ハンク・クロフォード|en|Hank Crawford}} - 1976年に発売されたライブ・アルバム『[[:en:Tico Rico|Tico Rico]]』に収録{{Sfn|Kruth|2015|p=63}}。
| Artist = {{仮リンク|チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズ|en|Charles River Valley Boys}}
* {{仮リンク|アーロ・ガスリー|en|Arlo Guthrie}} - 1978年に発売されたアルバム『One Night』に収録<ref>{{AllMusic |first=Stewart |last=Mason |title=One Night - Arlo Guthrie {{!}} Songs, Reviews, Credits |class=album |id=one-night-mw0000674375 |accessdate=2021-02-02 }}</ref>。
| from Album = {{仮リンク|ビートル・カントリー|en|Beatle Country}}
* {{仮リンク|カラミティ・ジェーン (バンド)|label=カラミティ・ジェーン|en|Calamity Jane (band)}} - 1982年にシングル盤として発売。[[ビルボード]]誌が発表した[[:en:Hot Country Songs|Hot Country Songs]]で最高位44位を記録した<ref>{{Cite web |title=I've Just Seen A Face - Calamity Jane Chart History (Hot Country Songs) |url=https://www.billboard.com/music/calamity-jane/chart-history/CSI/song/361000 |publisher=[[ビルボード|Billboard]] |accessdate=2021-02-03 }}</ref>{{Sfn|Whitburn|2008|p=74}}。
| Released = 1966年11月
* [[デイヴィッド・リー・ロス]] - 1988年に敢行した『Skyscraper』ツアーで披露。
| Recorded = {{Plainlist|
* {{仮リンク|フォレスター・シスターズ|en|The Forester Sisters}} - 1988年に発売されたアルバム『Sincerely』に収録<ref>{{AllMusic |first=William |last=Ruhlmann |title=Sincerely - The Forester Sisters {{!}} Songs, Reviews, Credits |class=album |id=sincerely-mw0000200279 |accessdate=2021-02-02 }}</ref>。
* 1966年9月
* {{仮リンク|グレー・マター|en|Gray Matter}} - 1992年に発売されたアルバム『Thog』に収録<ref>{{AllMusic |first=Ned |last=Raggett |title=Thog - Gray Matter {{!}} Songs, Reviews, Credits |class=album |id=thog-mw0000730137 |accessdate=2021-02-02 }}</ref>。
* [[クォンセット・ハット・スタジオ|コロムビア・スタジオB]]
* {{仮リンク|シングス・オブ・ストーン・アンド・ウッド|en|Things of Stone and Wood}} - 1995年に発売されたアルバム『The Man with the Perfect Hair』に収録<ref>{{AllMusic |title=The Man with the Perfect Hair - Things of Stone and Wood {{!}} Songs, Reviews, Credits |class=album |id=the-man-with-the-perfect-hair-mw0000984920 |accessdate=2021-02-02 }}</ref>。
}}
* [[ホリー・コール]] - 1997年に発売されたアルバム『[[:en:Dark Dear Heart|Dark Dear Heart]]』に収録{{Sfn|Kruth|2015|p=63}}。シングル盤としても発売され、カナダの[[RPM (カナダの音楽雑誌)|RPM]] Top Singles Chartで最高位7位を獲得した<ref>{{Cite web |title=RPM 100 Hit Tracks - November 17, 1997 |url=https://www.collectionscanada.gc.ca/obj/028020/f2/nlc008388.3389.pdf |work=[[RPM (カナダの音楽雑誌)|RPM]] |publisher=[[カナダ国立図書館・文書館|Library and Archives Canada]] |accessdate=2021-02-03 }}</ref>。
| Genre = [[ブルーグラス]]
* {{仮リンク|ザ・ペイパーボーイズ (カナダのバンド)|label=ザ・ペイパーボーイズ|en|The Paperboys (Canadian band)}} - 1997年に発売されたアルバム『Molinos』に収録<ref>{{AllMusic |first=Rick |last=Anderson |title=Molinos - The Paperboys {{!}} Songs, Reviews, Credits |class=album |id=molinos-mw0000028994 |accessdate=2021-02-02 }}</ref>。
| Length = 2分39秒
* {{仮リンク|ジョン・ピザレリ|en|John Pizzarelli}} - 1999年に発売されたアルバム『[[:en:John Pizzarelli Meets The Beatles|John Pizzarelli Meets The Beatles]]』に収録<ref>{{AllMusic |first=Jonathan |last=Widran |title=Meets the Beatles - John Pizzarelli {{!}} Songs, Reviews, Credits |class=album |id=meets-the-beatles-mw0000041997 |accessdate=2021-02-02 }}</ref>。
| Label = [[エレクトラ・レコード]]
* {{仮リンク|ピーター・リパ|en|Peter Lipa}} - 2003年に発売されたアルバム『Beatles in Blue(s)』に収録<ref>{{AllMusic |first=François |last=Couture |title=Beatles in Blue(s) - Peter Lipa {{!}} Songs, Reviews, Credits |class=album |id=beatles-in-blues-mw0000323406 |accessdate=2021-02-02 }}</ref>。
| Writer = レノン=マッカートニー
* [[栗コーダーカルテット]] - 2003年に発売されたトリビュート・アルバム『ウクレレ ビートルズ 〜4弦はアイドル〜』に収録。
| Composer = レノン=マッカートニー
* [[タイラー・ヒルトン]] - 2004年に放送された『[[:en:American Dreams|American Dreams]]』で披露。
| Producer = {{Plainlist|
* [[ザ・ビュー (バンド)|ザ・ビュー]] - 2007年に発売されたシングル『The Don / Skag Trendy』に収録。
* [[ポール・A・ロスチャイルド]]
* [[ジム・スタージェス]] - 2007年に公開された映画『[[アクロス・ザ・ユニバース (映画)|アクロス・ザ・ユニバース]]』のサウンドトラックとして歌唱{{Sfn|Kruth|2015|p=63}}。スタージェスは同映画にジュード役で出演していた。
* ピーター・K・シーゲル
* [[ビータリカ]] - 2009年に発売されたアルバム『[[:en:Masterful Mystery Tour|Masterful Mystery Tour]]』に、[[メタリカ]]の「[[:en:Bleeding Me|Bleeding Me]]」とのマッシュアップ曲「'''I'll Just Bleed Your Face'''」を収録{{Sfn|Womack|2014|p=484}}{{Sfn|Kruth|2015|p=63}}。
}}
* {{仮リンク|ザ・エイプリル・メイズ|en|The April Maze}} - 2012年に発売されたアルバム『Two』に収録。
| Misc = {{Extra track listing
* {{仮リンク|クリス・ハークス|en|Chris Hawkes}} - 2014年に放送された『[[:en:The Voice (U.S. TV series)|The Voice]]』で披露
| Album = {{仮リンク|ビートル・カントリー|en|Beatle Country}}
* [[原田知世]] - 2015年に発売されたカバー・アルバム『[[恋愛小説 (原田知世のアルバム)|恋愛小説]]』に収録<ref>{{Cite news|title=原田知世のカバー盤『恋愛小説』、The Beatlesやノラ・ジョーンズを全編英語で歌う|url=https://www.cinra.net/news/20150207-haradatomoyo|work=CINRA.NET|publisher=株式会社CINRA|date=2015-02-07|accessdate=2019-05-20}}</ref>。
| Type = cover
* [[THE GOGGLES]] - 2017年に発売されたアルバム『MAGICAL MYSTERY TUNES Vol.2』に本作のパロディ曲「'''I'VE JUST SEEN A FAMOUS TALENT'''(有名の人)」を収録。
| this_track = '''夢の人'''
* {{仮リンク|スティーヴ・ハーレイ|en|Steve Harley}} - 2020年に発売されたアルバム『[[:en:Uncovered (Steve Harley album)|Uncovered]]』に収録<ref>{{AllMusic |title=Uncovered - Steve Harley {{!}} Songs, Reviews, Credits |class=album |id=uncovered-mw0003342827 |accessdate=2021-02-03 }}</ref>。
| track_no = A-1
このほか、[[ブランディ・カーライル]]が自身のライブで演奏したことがある{{Sfn|Kruth|2015|p=63}}。
| next_track = [[ベイビーズ・イン・ブラック]]
| next_no = A-2
}}
}}

{{仮リンク|チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズ|en|Charles River Valley Boys}}は、1966年に発売したアルバム『{{仮リンク|ビートル・カントリー|en|Beatle Country}}』に「夢の人」のカバー・バージョンを収録している。このアルバムは、レノン=マッカートニーの作品をブルーグラス調にアレンジで演奏したカバー・バージョンを集めた作品となっている{{Sfn|Kruth|2015|pp=30, 54, 169}}。チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズのジェームス・フィールドは、アメリカにおける『ラバー・ソウル』の発売に先駆けて、ラジオで本作を聴いて「すぐにブルーグラスのように感じた」と振り返っている{{Sfn|Turner|2016|p=84}}。バンジョー奏者のボブ・シギンスは、「この曲の瞬間的な『感触』が僕にとって手がかりになったと思う…さらに、歌詞はブルーグラスの歌詞にになりやすい」と語っている{{Sfn|Turner|2016|p=84}}。バンドは、新旧のブルーグラスやカントリーの楽曲で構成されたいつものセットリストに、「夢の人」とカントリー風にアレンジを加えた「[[消えた恋]]」を加えた{{Sfn|Frontani|2007|p=117}}{{Sfn|Turner|2016|p=85}}{{Sfn|Frontani|2007|p=117}}{{Refnest|group="注釈"|「消えた恋」は、アメリカで発売された『ラバー・ソウル』には収録されていないが{{Sfn|Kruth|2015|p=132}}、1996年2月21日にシングル盤『ひとりぼっちのあいつ』のB面曲として発売された{{Sfn|Womack|2009|p=290}}。}}。1966年2月に{{仮リンク|ハインズ・コンベンション・センター|label=ウォー・メモリアル・オーティトリアム|en|Hynes Convention Center}}で本作を演奏し、5,600人の観客から好意的な評価を得た{{Sfn|Turner|2016|pp=85-86}}。これをきっかけに、バンドは4曲のデモ音源(そのうちの2曲はビートルズのカバー曲)をエレクトラ・レコードの[[ポール・A・ロスチャイルド]]に送り、レコード会社の重役であるジャック・ホルツマンがビートルズのカバー曲を集めたアルバムの発売を許可した{{Sfn|Turner|2016|p=86}}。

ロスチャイルドとピーター・K・シーゲルの共同プロデュース作品となった『ビートル・ントリー』のレコーディングは、1966年9月にテネシー州ナッシュビルにある[[クォンセット・ハット・スタジオ|コロムビア・スタジオB]]で行なわれた{{Sfn|Turner|2016|p=87}}。レコーディングは、シギンス(バンジョー)、フィールド(ギター)、エヴェレット・A・リリー([[コントラバス|アップライト・ベース]])、ジョー・ヴァル([[マンドリン]])という基本編成に加え、[[フィドル]]奏者の{{仮リンク|バディ・スピチャー|en|Buddy Spicher}}、[[ドブロ]]奏者のクレイグ・ウィングフィールド、ギタリストのエリック・トンプソンをはじめとしたセッション・ミュージシャンを迎えて行なわれた{{Sfn|Turner|2016|pp=82, 86-87}}。シーゲルは、レコーディングの過程について「効率的かつすばらしかった」と振り返っていて、バンドは4日間で14曲のカバー・バージョンを録音した。ロスチャイルドとシーゲルは、ニューヨークにあるエレクトラ・レコードのスタジオでアルバムのミキシングを行ない、アルバムのために12曲が選曲された{{Sfn|Turner|2016|p=87}}。

ビートルズのオリジナル・バージョンでは、[[サビ|コーラス]]の最後のみマッカートニーのボーカルが[[ダブルトラック (音楽)|ダブルトラック]]になっているのに対して、チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズのカバー・バージョンではヴァースがシングルトラック、コーラスが3声ハーモニーになっていて、各フレーズの最後に軽いハーモニーが加えられている{{Sfn|Turner|2016|pp=85-86}}。また、オリジナル・バージョンでは間奏(ギターソロ)が1回しかないのに対して、カバー・バージョンではバンジョー、マンドリン、フィドルのソロのために間奏が追加されている{{Sfn|Turner|2016|p=84}}。

エレクトラ・レコードは、1966年11月にアルバム『ビートル・カントリー』を発売した{{Sfn|Turner|2016|p=90}}。同作のオープニング・トラックとして収録された「夢の人」は、後にフィールドが「アルバム全体の基盤となる曲」と位置づけており{{Sfn|Turner|2016|pp=79, 88}}、当時の[[キャッシュボックス]]誌のレビューで「アルバムで最高の5曲」の1つとして挙げられている<ref>{{Cite journal |author=Cash Box Review Panel |date=3 December 1966 |title=Album Reviews |journal=[[キャッシュボックス|Cash Box]] |page=62 }}</ref>。アルバムは商業的には失敗となったが、後にカルト的な人気を得ることとなった<ref>{{AllMusic |first=Pemberton |last=Roach |title=Beatle Country - The Charles River Valley Boys {{!}} Songs, Reviews, Credits |class=album |id=mw0000172754 |accessdate=2021-09-25 }}</ref>{{Refnest|group="注釈"|{{仮リンク|国際ブルーグラス音楽協会|en|International Bluegrass Music Association}}は、1974年に発売したコンピレーション・アルバム『Strings Today... And Yesterday』にこのカバー・バージョンを収録している{{Sfn|Hambly|1976|p=509}}。}}。オンライン雑誌『Spectrum Culture』のジョン・ポールは、チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズのカバー・バージョンについて「失われたブルーグラス・スタンダードのようだ」と評している<ref>{{Cite web |last=Paul |first=John |title=Bargain Bin: The Charles River Valley Boys: Beatle Country |url=https://spectrumculture.com/2016/10/12/bargain-bin-charles-river-valley-boys-beatle-country/ |website=Spectrum Culture |date=2016-10-12 |accessdate=2021-09-25 }}</ref>。

=== ブルーグラス調のカバー・バージョン ===
チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズの他にも、「夢の人」は複数のブルーグラス・ミュージシャンによってカバーされており{{Sfn|Kruth|2015|p=54}}、ターナーは「ブルーグラスとビートルズの音楽との関係を刺激する鍵となった」と論じている{{Sfn|Turner|2016|p=83}}。プログレッシブ・ブルーグラス・バンドの{{仮リンク|ザ・ディラーズ|en|The Dillards}}は、1965年にキャピトル・レコードと契約を結んだ後に、本作のカバー・バージョンのレコーディングを行なった。このレコーディングは、イギリスでの『ヘルプ!』の発売とアメリカでの『ヘルプ(四人はアイドル)』の発売の間に行なわれたもので、ザ・ディラーズはアメリカでビートルズに先駆けて本作を発売することを望んでいたが、このカバー・バージョンは未発表となった{{Sfn|Einarson|2001|p=46}}。その後、1968年に発売したアルバム『Wheatstraw Suite』にカバー・バージョンを収録した{{Sfn|Kruth|2015|p=54}}。ザ・ディラーズの{{仮リンク|ダグ・ディラード|en|Doug Dillard}}は、「大胆な試みとなったけど、僕はこの曲を気に入った。ビートルズがブルーグラスとは何たるかを探りあてようとしているように感じた」と振り返っている{{Sfn|Einarson|2001|p=135}}。{{仮リンク|アパラチアンミュージック|en|Appalachian music}}と近代的なカントリー・ミュージックの要素を融合させたザ・ディラーズによるカバー・バージョンには、高音域のハーモニー、バンジョー、[[ペダル・スティール・ギター]]が含まれている{{Sfn|Kruth|2015|p=54}}。音楽評論家のリック・ペトレイシクは、「燃えるような演奏と見事なボーカル・ハーモニーを見せている」{{Sfn|Petreycik|1997|p=127}}と評し、ターナーは「ゆったりとしたテンポで切ない」と評している{{Sfn|Turner|2016|p=83}}。ターナーは、カバー・バージョンにおけるペダル・スティール・ギターの使用について「反映するフォークロック・シーンへの明確な敬意」と述べており{{Sfn|Turner|2016|p=83}}、クルトはこのカバー・バージョンがバーズ、[[グレイトフル・デッド]]、[[イーグルス]]に影響を与えたとしている{{Sfn|Kruth|2015|p=54}}。

プログレッシブ・ブルーグラス・バンド、{{仮リンク|ニュー・グラス・リバイバル|en|New Grass Revival}}のマンドリン奏者である{{仮リンク|サム・ブッシュ|en|Sam Bush}}は、1960年代半ばまで[[ロック (音楽)|ロック]]に興味がなかったが、「夢の人」を通して「初めてビートルズに共感した」と語り、「バンジョーのないブルーグラス」という表現に同意している{{Sfn|Harris|2018|p=244}}。1981年にニュー・グラス・リバイバルが発売したライブ・アルバム『The Live Album』には、[[レオン・ラッセル]]と共に演奏したカバー・バージョンが収録されている{{Sfn|Turner|2016|pp=78, 84}}。

=== その他のカバー・バージョン ===
ジョージ・マーティンは、1965年に発売したインストゥルメンタル・アルバム{{Sfn|Castleman|Podrazik|1975|p=278}}『George Martin and His Orchestra Play Help!』に本作のオーケストラ・バージョンを、制作時のタイトル「Auntie Gin's Theme」で収録している{{Sfn|Everett|2001|p=299}}{{Sfn|Shea|Rodriguez|2007|p=422}}。オールミュージックにアルバムのレビューを寄稿したブルース・エダーは、マーティンによるカバー・バージョンを「センスは良いが、それ以外はほとんど特徴がない」と評する一方で、アルバムのユニークな点として楽曲を制作時のタイトルで収録したことを挙げ、「当時の[[ビートルマニア]]たちは、このような細かい部分にも注目していた」と述べている<ref>{{AllMusic |first=Bruce |last=Eder |title=George Maritin Plays 'Help' - George Martin & His Orchestra {{!}} Songs, Reviews, Credits |class=album |id=mw0000864963 |accessdate=2021-09-25 }}</ref>。

グレイトフル・デッドは、1969年6月11日にサンフランシスコで行なったライブで、「Bobby Ace and the Cards from the Bottom of the Deck」という名義を使って演奏し{{Sfn|Trager|1997|p=209}}、同バンドの元メンバーである{{仮リンク|トム・コンスタンテン|en|Tom Constanten}}は、1993年に発売したアルバム『Morning Dew』にカバー・バージョンを収録した{{Sfn|Trager|1997|p=269}}。

{{仮リンク|ハンク・クロフォード|en|Hank Crawford}}は、1976年に発売したアルバム『Tico Rico』に、ファンクとレゲエの影響を受けたアレンジを施した「夢の人」のカバー・バージョンを収録した{{Sfn|Kruth|2015|p=54}}。

カナダのジャズ・シンガーの[[ホリー・コール]]は、1997年に発売したアルバム『Dark Dear Heart』にカバー・バージョンを収録{{Sfn|Kruth|2015|p=55}}。[[フィルム・ノワール]]風の[[ミュージック・ビデオ]]とともに発売され、1997年11月の[[RPM (カナダの音楽雑誌)|RPM]]誌のトップ・シングル・チャートで最高位7位を獲得した<ref>{{Cite journal |title=RPM 100 Hit Tracks |url=https://www.bac-lac.gc.ca/eng/discover/films-videos-sound-recordings/rpm/Pages/image.aspx?Image=nlc008388.3389&URLjpg=http%3a%2f%2fwww.collectionscanada.gc.ca%2fobj%2f028020%2ff4%2fnlc008388.3389.gif&Ecopy=nlc008388.3389 |journal=[[RPM (カナダの音楽雑誌)|RPM]] |volume=66 |issue=11 |date=17 November 1997 }}</ref>。

2007年に公開された映画『[[アクロス・ザ・ユニバース (映画)|アクロス・ザ・ユニバース]]』に本作のカバー・バージョンが登場しており、劇中では主人公のジュード([[ジム・スタージェス]])がボウリング場でルーシー([[エヴァン・レイチェル・ウッド]])について歌った楽曲となっている。このシーンについて、クルトは「やや奇妙なラブ・ファンタジーの場面」と表現している{{Sfn|Kruth|2015|p=55}}。[[ビータリカ]]は、2009年に発売したアルバム『Masterful Mystery Tour』に、[[メタリカ]]の「{{仮リンク|ブリーディング・ミー|en|Bleeding Me}}」と[[マッシュアップ]]させた楽曲「'''I'll Just Bleed Your Face'''」を収録していて、クルトは「(本作の)最も奇妙なカバー」としている{{Sfn|Womack|2014|p=484}}{{Sfn|Kruth|2015|p=55}}。

日本でも[[原田知世]]が2015年に発売されたカバー・アルバム『[[恋愛小説 (原田知世のアルバム)|恋愛小説]]』<ref>{{Cite news|title=原田知世のカバー盤『恋愛小説』、The Beatlesやノラ・ジョーンズを全編英語で歌う|url=https://www.cinra.net/news/20150207-haradatomoyo|work=CINRA.NET|publisher=株式会社CINRA|date=2015-02-07|accessdate=2019-05-20}}</ref>でカバーしているほか、[[栗コーダーカルテット]]<ref>{{Cite web |title=栗Qディス/V.A |url=http://www.kuricorder.com/discography/ukulele_beatles.shtml |website=栗コーダーカルテット オフィシャルウェブサイト |accessdate=2021-09-25 }}</ref>によってカバーされている。


== 脚注 ==
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=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
=== 出典 ===
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
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2021年9月25日 (土) 13:29時点における版

夢の人
ビートルズ楽曲
収録アルバムヘルプ!
英語名I've Just Seen a Face
リリース1965年8月6日
録音
ジャンル
時間2分7秒
レーベルパーロフォン
作詞者レノン=マッカートニー
作曲者レノン=マッカートニー
プロデュースジョージ・マーティン
ヘルプ! 収録曲
テル・ミー・ホワット・ユー・シー
(B-4)
夢の人
(B-5)
イエスタデイ
(B-6)

夢の人」 (ゆめのひと、原題 : I've Just Seen A Face)は、ビートルズの楽曲である。1965年8月に発売された5作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ヘルプ!』に収録された。アメリカでは1965年に発売された『Rubber Soul』にオープニング・トラックとして収録された。レノン=マッカートニー名義となっているが、ポール・マッカートニーによって書かれた楽曲で、1965年6月にEMIスタジオで「アイム・ダウン」や「イエスタデイ」と共に録音された。

陽気なラブ・バラードで、歌詞は一目惚れをテーマとしている。マッカートニーは本作をアップテンポのカントリー&ウエスタン調の楽曲として書き始めたが、完成した楽曲はカントリーとフォークロックポップ・ロックなどのジャンルを融合した作品となっている。アメリカで発売された『Rubber Soul』のオープニング・トラックという観点から、「ビートルズがフォークに転向した」という解釈が広まった。本作は、ビートルズが初めてベースを使用しなかった楽曲で、4本のアコースティック・ギターが主体となっている。

マッカートニーがビートルズ解散後に初めてライブで演奏したビートルズの楽曲の1つで、1975年から1976年にかけて行なわれた『Wings Over the World』ツアーで演奏された。その後も複数のライブで演奏されている。楽曲発表後、チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズ英語版ハンク・クロフォード英語版ホリー・コールによってカバーされている。

背景とインスピレーション

マッカートニーは、1964年初頭に作曲した「キャント・バイ・ミー・ラヴ」以降、4作にわたってビートルズのシングルA面曲としてソングライターとしてのパートナーであるジョン・レノンが作曲した楽曲が採用されていたことから[注釈 1]、レノンの後塵を拝していた[9]。1965年2月から5月にかけて行なわれた5作目のオリジナル・アルバム『ヘルプ!』のセッションでは、ほとんどの作業がレノンの楽曲に集中していた[9][10]。この期間に録音した12曲のオリジナル楽曲のうち、マッカートニーが作曲した楽曲は5曲で、そのうち「ザット・ミーンズ・ア・ロット」と「イフ・ユーヴ・ガット・トラブル」の2曲は収録が却下されていた[11][注釈 2]。1か月の休止期間を経て、1965年6月14日に作業を再開し、その際にマッカートニーは「夢の人」、「アイム・ダウン」、「イエスタデイ」の3曲を発表した[14]

レノンもマッカートニーも、「夢の人」の作曲者はマッカートニーであると認識している[15][16][17]。1963年11月にマッカートニーは、ロンドン中心部のウィンポール・ストリート57番地にある恋人で女優のジェーン・アッシャーの実家に引っ越し[18]、後にマッカートニーはこの家の地下にある音楽室で「夢の人」を書いた[19]。アップテンポのアップテンポのカントリー&ウエスタン調の楽曲として書き始められ[17]、マッカートニーは最初にメロディを作った[20]。本作についてマッカートニーは「僕なりのカントリー・アンド・ウェスタン。ちょっと速めで変わった感じのテンポの曲だけど、すごく満足した」と語っている[21]

その後、家族の集まりでピアノで弾いてみたところ[22]、叔母のジンが曲を気に入り、これを由来としてマッカートニーは「Auntie Gin's Theme(ジンおばさんのテーマ)」という仮タイトルを付けた[23][24][注釈 3]。マッカートニーは、テンポの速い歌詞を加えて[9]、本作を陽気なラブ・バラードに転向させた[27]。歌詞について、アッシャーとの関係に触発されて書いた可能性が指摘されている[26][28]

曲の構成

コード進行と様式

「夢の人」は、キーがAメジャー[5][29]、2/2拍子(カットタイム)で演奏される[20][注釈 4]。曲は10小節のイントロから始まり[5]、遅延した3連符を使用して加速感を演出している[5][30]。本作では4つのコードが使用されており、12小節のヴァースでは一般的なポップスのコード進行(I-vi-IV-V)、8小節のリフレインではブルース進行(V-VI-I)を使用している[5]。リフレインのコード進行は下降をシミュレートしており、「and she keeps calling...」の第1音節にマイナー・サードを含めることでリフレインにブルース調のサウンドをもたらしている[5]。他のビートルズの楽曲と同様に3連符の繰り返しによって曲が終わり、イントロの最後の部分を繰り返すことによって対称性をもたせている[5]

本作は複数の異なる音楽の様式を融合しており、分類が複雑になっている[5]。音楽学者のウォルター・エヴェレット英語版は本作を「フォーク[3]、音楽評論家のイアン・マクドナルド英語版は「フォークロック[4]としている。テリー・オグラディは「ブルーグラスの影響を受けた曲」としている[2]。音楽学者のアラン・W・ポラックは、「冒頭の2つのヴァースが連続する部分は純粋なポップ・ロック。後半のヴァースとリフレインの変化は、どちらかというとフォークソングのような感じ。アウトロの3連リフレインは、R&Bのレイヴアップを思わせる」と述べている[5]。本作はビートルズの楽曲で初めてベースのパートが存在しない楽曲[注釈 5]で、音楽評論家のティム・ライリー英語版は「ベースを使用せずに、ギターの低音域で演奏されるギターソロ」から、本作のジャンルをカントリーとしている[30]

歌詞

会話形式で書かれた[32]「夢の人」の歌詞は、一目惚れをテーマとした内容となっている[9][33]。作家のジョナサン・グールドは、本作を1965年にマッカートニーが作曲した「テル・ミー・ホワット・ユー・シー」、「ユー・ウォント・シー・ミー」、「恋を抱きしめよう」、「君はいずこへ」など、顔を見合わせることをテーマとした楽曲と関連づけている[34]。一方で、音楽学者のナフタリー・ワグナーは、「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」や「フィクシング・ア・ホール」などのマッカートニーの作品と関連づけている[35]

2拍ごとに韻が踏まれた[36]歌詞は、連なったヴァースと頭韻法で構成されており[30]、マッカートニーは「歌詞のテンポもよくて、次の展開へとどんどん引っ張っていくんだ」と語っている[17][21]

レコーディング

ビートルズは、1965年6月14日の午後のセッションで「夢の人」と「アイム・ダウン」のレコーディングを行ない、夕食を済ませた後に「イエスタデイ」のレコーディングを行なった。レコーディングは、EMIスタジオのスタジオ2で行なわれ、ジョージ・マーティンがプロデュースを手がけ、バランス・エンジニアのノーマン・スミスがアシスタントを務めた[37]。本作は2つのベーシック・トラックで構成されている。1つ目のベーシック・トラックでは、ジョージ・ハリスン12弦アコースティック・ギター、レノンが12弦アコースティック・ギター(フラマス・フーテナニー)、マッカートニーがクラシック・ギター[38]を弾き、リンゴ・スターブラシスネアドラム[20][9]を叩いている。2つ目のベーシック・トラックでは、レノンがアコースティック・ギターでリズムギターのパートを弾き、マッカートニーがリード・ボーカルを担当している[20]

本作は6テイクで完成し[37]、テイク6にオーバー・ダビングが施された[39]。マッカートニーはイントロの高音域をクラシック・ギターで弾き、ディスカント英語版のパートを加えた[20]ほか、リフレインに『アクト・ナチュラリー』でも聴くことができる対位法を用いたバッキングを取り入れた[5]。スターはマラカスをオーバー・ダビングし[20][9]、ハリスンは12弦アコースティック・ギターでソロを弾いている[40][33][41][42][注釈 6]。ギターソロは2本のギターが同時に演奏され、対照的なサウンドを提示している[40][注釈 7]。ソロの途中でカットタイムからコモンタイムに移行することから、グールドはハリスンの演奏について「ジャンゴ・ラインハルトル・ホット・クラブ英語版を彷彿とさせる」と指摘し[33]、一方でポラックは「いなかじみていて、リズム的に単調」と評している[5]

マーティンとスミスは、6月18日にEMIスタジオのスタジオ2で、「夢の人」をはじめとした『ヘルプ!』の数曲のモノラル・ミックスとステレオ・ミックスを作成した[43]。本作の2つのミックスは、ほぼ同じ仕上がりとなっている。1987年に『ヘルプ!』のCD化に際して、マーティンは本作をステレオ用にリミックスし、わずかにエコーを加えた[39]

リリース

「夢の人」のレコーディングが行われていた当時、映画『ヘルプ!4人はアイドル』の制作が完了していたことから、本作が映画に使用されることはなかった[4][44]。1965年8月6日にパーロフォンからオリジナル・アルバム『ヘルプ!』が発売され[45]、「夢の人」は映画に使用されなかった他の楽曲とともにB面に収録された[46]。マッカートニーは完成した楽曲の仕上がりに満足しており、マッカートニーのお気に入りのビートルズの曲の1つとなった[17]

アメリカでは、キャピトル・レコードがビートルズのアルバムを再構成し、出版料を抑えることを目的に曲数を減らし、シングルとして発売された楽曲を加えてアルバムがイギリスよりも多く発売された[47][48]。キャピトル・レコードの重役であるデイヴ・デクスター・ジュニアは、アメリカで発売された『ヘルプ(四人はアイドル)』から「夢の人」をはじめとした楽曲をカットし[49]、映画で使用された楽曲だけを残し、映画のサウンドトラックとして使用されたオーケストラの楽曲を追加した[46][50]。その次作にあたる『ラバー・ソウル』でも、キャピトル・レコードは再び再構成を行ない[51]、アメリカにおけるフォークロックの流行に合わせることを目的に[52]、本来のオープニング・トラックで、メンフィス・サウンド英語版の影響を受けた「ドライヴ・マイ・カー」を「夢の人」に置き換える[53]など、「エレクトリック」とみなされた楽曲をカットした[54][注釈 8]。音楽学者のローラ・ターナーは、アメリカで発売されたアルバムにおける「夢の人」から「ノルウェーの森」の流れを「パワフル」と表現し[58]、評論家のロブ・シェフィールドも「見事なワン・ツー・パンチ」と表現している[59]

1965年12月6日にアメリカで発売された[60]ラバー・ソウル』は、アコースティックがベースの楽曲を中心としたの内容になっており[61][62]、音楽学者のジョン・キムジーは「木製の楽器のテクスチュアと、穏やかでゆったりとしたリズム」と述べている[53]。このアルバムの再構成により、ビートルズの歴史家であるケネス・ウォマック英語版曰く「明らかにフォーク志向」になっており、その結果アメリカの多くのリスナーは「ビートルズがフォーク・ミュージックに転向した」と誤認した[52][53]。学者のジャック・ハミルトンは、「夢の人」をアルバムのオープニング・トラックに位置づけたことにより、フォークロックとしてのパッケージが一目瞭然になったと判断している[63][注釈 9]。評論家のジム・フジーリは、「ドライヴ・マイ・カー」の「滴るようなシニシズム」と「夢の人」で聴かれる「幸せな男の物語」を対比した上で、アメリカでのアルバムの内容は「ビートルズの『成熟した姿』を示すのに失敗している」と主張している[65]。音楽評論家のデイヴ・マーシュも「夢の人」については「悪くない」としたうえで、オリジナル盤のオープニング・トラックとは「バンドがどこにいるのか、まったく異なる印象を与える」と述べている[66]。また、マーシュは「改変された『ラバー・ソウル』は、ビートルズのアルバムを再構成するというレーベルの『最高でも最悪でもない』試みと見ることができ、流行りのフォークロック・アルバムとして音は良いが、バンドの本来の芸術的意図を誤って表現している」と結論づけている[67]

評価

オールミュージックにアルバム『ヘルプ!』のレビューを寄稿したスティーヴン・トマス・アールワインは、「夢の人」を「魅力的なフォークロックの逸品」と評している[68]。ジャーナリストのアレクシス・ペトリディス英語版は、マッカートニーが『ヘルプ!』に提供した他の楽曲(特に「アナザー・ガール」と「テル・ミー・ホワット・ユー・シー」)を「穴埋めの曲」とする一方で、「夢の人」について「アルバムで見落とされていた本物の逸品」と評している[69]。ペトリディスは、本作を「『ヘルプ!』で注目されているディランの影響をイギリス風に反転したもの」と見ており、「グリニッジ・ヴィレッジのフォーク・サウンドとスキッフルのそれとの中間に位置している」と述べている[69]。マクドナルドは、「『ヘルプ!』のB面を『瞬発力のある新鮮さ』で高めている」とし、1965年のスウィンギング・ロンドン英語版の映画のような「ポップ・パラレル」と述べている[9]

「夢の人」は、2010年にローリング・ストーン誌が発表した「100 Greatest Beatles Songs」で第58位にランクインし[31][70]、2014年に同誌が行なった読者投票「10 Great Early Beatles Songs」で第10位にランクインしている[71]。マッカートニーの伝記作家であるピーター・エイムズ・カーリン英語版は、本作をマッカートニーの「ビートルズへの貢献の中で最も見落とされているが、同時に最高傑作の1つ」としている[72]。ライリーは、本作を「マッカートニーが『イエスタデイ』に次いで『ヘルプ!』に貢献した曲」「(歌詞には)場違いな言葉は1つもない」と称賛し、「甘ったるくなることなく、甘くしなやか」「由緒深いフォークのシンプルな優美さを持っている」と述べている[30]。マクドナルドも同様に、韻を踏むこととテンポの速い表現が「音楽を完璧に補完している」と述べている[9]。エヴェレットは、マッカートニーの不規則な韻律を「まさに詩的」としている[36]。ジャーナリストのマーク・ハーツガード英語版は、本作を「魅力的なヴィンテージ・マッカートニー」「暖かくて、陽気なフォークロックの宝」とし、「太ももを叩くビート、歌うようなメロディで、陽気で愛は偉大ではないという歌詞」を評価し、「音楽的には腕いっぱいの摘みたてのヒナギクに相当する」と述べている[73]。シェフィールドは、本作について「(これまでで)最もロマンティックな曲」「『ドライヴ・マイ・カー』と同じくらい面白い」と述べている[74]

音楽評論家のリッチー・アンターバーガー英語版は、「1964年よりビートルズは、『ぼくが泣く[注釈 10]やアルバム『ビートルズ・フォー・セール』に収録の数曲でカントリーに傾倒しており、それが顕著に表れているが、『夢の人』はほとんど純粋なカントリー」とし、曲中でバンジョーフィドルが使用されず、テンポが速いという観点から「ブルーグラス・ナンバー」と評している[1]。音楽ジャーナリストのピーター・ドゲット英語版は、本作を「ブルーグラスのテンポで歌われたフォークソング」「マッカートニーの逸品」とし、「絶叫系ロッカー」である「アイム・ダウン」と同じセッションで録音されたことで、より注目を集めたとしている[75]。作家のジョン・クルトは、「夢の人」の影響がアメリカのロックバンドであるバッファロー・スプリングフィールドの「ゴー・アンド・セイ・グッバイ」で聴けると示唆している。クルトは、本作と「ゴー・アンド・セイ・グッバイ」の2曲がロック・ファンに些細なカントリー・ミュージックを知らしめることに役立ち、アメリカのバンドであるバーズが1968年に発売したアルバム『ロデオの恋人』で、フォークロックからカントリーに転向するきっかけになったと主張している[76]。さらにクルトは、本作の「深い木製の音色」は、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングジェームズ・テイラージャクソン・ブラウンの音楽で聴くことができるとし[77]、エヴェレットは、「マッカートニーが1968年に作曲した『マザー・ネイチャーズ・サン』の『シンプルなフォーク・スタイル』を先取りしている」と指摘している[78]

マッカートニーによるライブでの演奏

本作はマッカートニーのビートルズ以降のキャリアにおいてもお気に入りの楽曲となっており、マッカートニーが後のバンドであるウイングスとしても演奏した数少ないビートルズの曲の1つである[17]。「夢の人」は、1975年から1976年に行われた『Wings Over the World』ツアーでマッカートニーが演奏した5つのビートルズの曲の1つで[79][80]、マッカートニーがライブのセットリストにビートルズの曲を加えた初の例となった[81][82][注釈 11]。作家のロバート・ロドリゲスは、この選曲を予想外のものとし[85]、マッカートニーは同時期に「適当に…。あまりおおごとにはしたくなかった」と説明している[83]。ジャーナリストのニコラス・シャフナー英語版は、本作がセットリストに加えられていたことで「観客に衝撃を与えた」と述べており、ロドリゲスもセットリストにおけるビートルズのセクションを「ほとんどの観客にとっての感動的なハイライト」と述べている[86]。マッカートニーは、「素晴らしい曲だ。最終的にはそんなにたいしたことじゃないから、やってみようと思ったんだ」と語っている[83]。1976年6月23日のロサンゼルス公演でのライブ音源は、同年に発売されたライブ・アルバム『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』に収録され[87]、その前日のロサンゼルス公演の模様は1980年に公開されたコンサート映画『Rockshow』に収録されている[88][注釈 12]。ライリーは、「夢の人」の映像化された演奏を、「まるでマッカートニーがポーチに座って古き良き田舎の人気曲にハーモニーを奏でているようだ」と称賛している[30]

マッカートニーは、1991年1月25日[92]に『MTVアンプラグド』用に撮影されたライブで、「夢の人」をアコースティック調のアレンジで演奏した[93]。この時の演奏は、1991年に発売されたアルバム『公式海賊盤』に収録されている[92][93]。これ以降もマッカートニーはたびたびライブで演奏しており[31]、1991年のイギリスでの『Surprise Gigs』ツアー、2004年の『Summer Tour』、2011年から2012年の『On the Run』ツアーのセットリストに含まれていて、2005年に発売された『ライヴ・イン・レッド・スクウェア』にも収録されている[31]

2015年2月15日に放送された『Saturday Night Live 40th Anniversary Special』では、オープニング・アクトとしてポール・サイモンとこの曲で共演している[94]

演奏

※出典[20](特記を除く)

カバー・バージョン

チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズによるカバー

夢の人
チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズ英語版楽曲
収録アルバムビートル・カントリー英語版
英語名I've Just Seen a Face
リリース1966年11月
録音
ジャンルブルーグラス
時間2分39秒
レーベルエレクトラ・レコード
作詞者レノン=マッカートニー
作曲者レノン=マッカートニー
プロデュース
ビートル・カントリー英語版 収録曲
夢の人
(A-1)
ベイビーズ・イン・ブラック
(A-2)

チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズ英語版は、1966年に発売したアルバム『ビートル・カントリー英語版』に「夢の人」のカバー・バージョンを収録している。このアルバムは、レノン=マッカートニーの作品をブルーグラス調にアレンジで演奏したカバー・バージョンを集めた作品となっている[95]。チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズのジェームス・フィールドは、アメリカにおける『ラバー・ソウル』の発売に先駆けて、ラジオで本作を聴いて「すぐにブルーグラスのように感じた」と振り返っている[96]。バンジョー奏者のボブ・シギンスは、「この曲の瞬間的な『感触』が僕にとって手がかりになったと思う…さらに、歌詞はブルーグラスの歌詞にになりやすい」と語っている[96]。バンドは、新旧のブルーグラスやカントリーの楽曲で構成されたいつものセットリストに、「夢の人」とカントリー風にアレンジを加えた「消えた恋」を加えた[56][97][56][注釈 13]。1966年2月にウォー・メモリアル・オーティトリアム英語版で本作を演奏し、5,600人の観客から好意的な評価を得た[100]。これをきっかけに、バンドは4曲のデモ音源(そのうちの2曲はビートルズのカバー曲)をエレクトラ・レコードのポール・A・ロスチャイルドに送り、レコード会社の重役であるジャック・ホルツマンがビートルズのカバー曲を集めたアルバムの発売を許可した[101]

ロスチャイルドとピーター・K・シーゲルの共同プロデュース作品となった『ビートル・ントリー』のレコーディングは、1966年9月にテネシー州ナッシュビルにあるコロムビア・スタジオBで行なわれた[102]。レコーディングは、シギンス(バンジョー)、フィールド(ギター)、エヴェレット・A・リリー(アップライト・ベース)、ジョー・ヴァル(マンドリン)という基本編成に加え、フィドル奏者のバディ・スピチャー英語版ドブロ奏者のクレイグ・ウィングフィールド、ギタリストのエリック・トンプソンをはじめとしたセッション・ミュージシャンを迎えて行なわれた[103]。シーゲルは、レコーディングの過程について「効率的かつすばらしかった」と振り返っていて、バンドは4日間で14曲のカバー・バージョンを録音した。ロスチャイルドとシーゲルは、ニューヨークにあるエレクトラ・レコードのスタジオでアルバムのミキシングを行ない、アルバムのために12曲が選曲された[102]

ビートルズのオリジナル・バージョンでは、コーラスの最後のみマッカートニーのボーカルがダブルトラックになっているのに対して、チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズのカバー・バージョンではヴァースがシングルトラック、コーラスが3声ハーモニーになっていて、各フレーズの最後に軽いハーモニーが加えられている[100]。また、オリジナル・バージョンでは間奏(ギターソロ)が1回しかないのに対して、カバー・バージョンではバンジョー、マンドリン、フィドルのソロのために間奏が追加されている[96]

エレクトラ・レコードは、1966年11月にアルバム『ビートル・カントリー』を発売した[104]。同作のオープニング・トラックとして収録された「夢の人」は、後にフィールドが「アルバム全体の基盤となる曲」と位置づけており[105]、当時のキャッシュボックス誌のレビューで「アルバムで最高の5曲」の1つとして挙げられている[106]。アルバムは商業的には失敗となったが、後にカルト的な人気を得ることとなった[107][注釈 14]。オンライン雑誌『Spectrum Culture』のジョン・ポールは、チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズのカバー・バージョンについて「失われたブルーグラス・スタンダードのようだ」と評している[109]

ブルーグラス調のカバー・バージョン

チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズの他にも、「夢の人」は複数のブルーグラス・ミュージシャンによってカバーされており[77]、ターナーは「ブルーグラスとビートルズの音楽との関係を刺激する鍵となった」と論じている[58]。プログレッシブ・ブルーグラス・バンドのザ・ディラーズ英語版は、1965年にキャピトル・レコードと契約を結んだ後に、本作のカバー・バージョンのレコーディングを行なった。このレコーディングは、イギリスでの『ヘルプ!』の発売とアメリカでの『ヘルプ(四人はアイドル)』の発売の間に行なわれたもので、ザ・ディラーズはアメリカでビートルズに先駆けて本作を発売することを望んでいたが、このカバー・バージョンは未発表となった[110]。その後、1968年に発売したアルバム『Wheatstraw Suite』にカバー・バージョンを収録した[77]。ザ・ディラーズのダグ・ディラード英語版は、「大胆な試みとなったけど、僕はこの曲を気に入った。ビートルズがブルーグラスとは何たるかを探りあてようとしているように感じた」と振り返っている[111]アパラチアンミュージック英語版と近代的なカントリー・ミュージックの要素を融合させたザ・ディラーズによるカバー・バージョンには、高音域のハーモニー、バンジョー、ペダル・スティール・ギターが含まれている[77]。音楽評論家のリック・ペトレイシクは、「燃えるような演奏と見事なボーカル・ハーモニーを見せている」[112]と評し、ターナーは「ゆったりとしたテンポで切ない」と評している[58]。ターナーは、カバー・バージョンにおけるペダル・スティール・ギターの使用について「反映するフォークロック・シーンへの明確な敬意」と述べており[58]、クルトはこのカバー・バージョンがバーズ、グレイトフル・デッドイーグルスに影響を与えたとしている[77]

プログレッシブ・ブルーグラス・バンド、ニュー・グラス・リバイバル英語版のマンドリン奏者であるサム・ブッシュは、1960年代半ばまでロックに興味がなかったが、「夢の人」を通して「初めてビートルズに共感した」と語り、「バンジョーのないブルーグラス」という表現に同意している[113]。1981年にニュー・グラス・リバイバルが発売したライブ・アルバム『The Live Album』には、レオン・ラッセルと共に演奏したカバー・バージョンが収録されている[114]

その他のカバー・バージョン

ジョージ・マーティンは、1965年に発売したインストゥルメンタル・アルバム[115]『George Martin and His Orchestra Play Help!』に本作のオーケストラ・バージョンを、制作時のタイトル「Auntie Gin's Theme」で収録している[20][116]。オールミュージックにアルバムのレビューを寄稿したブルース・エダーは、マーティンによるカバー・バージョンを「センスは良いが、それ以外はほとんど特徴がない」と評する一方で、アルバムのユニークな点として楽曲を制作時のタイトルで収録したことを挙げ、「当時のビートルマニアたちは、このような細かい部分にも注目していた」と述べている[117]

グレイトフル・デッドは、1969年6月11日にサンフランシスコで行なったライブで、「Bobby Ace and the Cards from the Bottom of the Deck」という名義を使って演奏し[118]、同バンドの元メンバーであるトム・コンスタンテン英語版は、1993年に発売したアルバム『Morning Dew』にカバー・バージョンを収録した[119]

ハンク・クロフォード英語版は、1976年に発売したアルバム『Tico Rico』に、ファンクとレゲエの影響を受けたアレンジを施した「夢の人」のカバー・バージョンを収録した[77]

カナダのジャズ・シンガーのホリー・コールは、1997年に発売したアルバム『Dark Dear Heart』にカバー・バージョンを収録[120]フィルム・ノワール風のミュージック・ビデオとともに発売され、1997年11月のRPM誌のトップ・シングル・チャートで最高位7位を獲得した[121]

2007年に公開された映画『アクロス・ザ・ユニバース』に本作のカバー・バージョンが登場しており、劇中では主人公のジュード(ジム・スタージェス)がボウリング場でルーシー(エヴァン・レイチェル・ウッド)について歌った楽曲となっている。このシーンについて、クルトは「やや奇妙なラブ・ファンタジーの場面」と表現している[120]ビータリカは、2009年に発売したアルバム『Masterful Mystery Tour』に、メタリカの「ブリーディング・ミー英語版」とマッシュアップさせた楽曲「I'll Just Bleed Your Face」を収録していて、クルトは「(本作の)最も奇妙なカバー」としている[31][120]

日本でも原田知世が2015年に発売されたカバー・アルバム『恋愛小説[122]でカバーしているほか、栗コーダーカルテット[123]によってカバーされている。

脚注

注釈

  1. ^ ア・ハード・デイズ・ナイト」、「アイ・フィール・ファイン」、「涙の乗車券」、「ヘルプ!」の4曲[7]。なお、1965年2月にアメリカでシングルとして発売された「エイト・デイズ・ア・ウィーク」は、レノンとマッカートニーの共作である[8]
  2. ^ この時点で、マッカートニーは「アナザー・ガール」、「ザ・ナイト・ビフォア」、「テル・ミー・ホワット・ユー・シー」の3曲、レノンは「涙の乗車券」、「イエス・イット・イズ」、「悲しみはぶっとばせ」、「恋のアドバイス」、「ヘルプ!」を作曲していた[12]。また、ジョージ・ハリスンは「アイ・ニード・ユー」と「ユー・ライク・ミー・トゥ・マッチ」を提供している[13]
  3. ^ ジン・ハリスは、マッカートニーの父であるジム・マッカートニーの妹[24][25]。マッカートニーは、1976年に発売したウイングスのアルバム『スピード・オブ・サウンド[26]に収録された「幸せのノック」でジンについて言及している[24]
  4. ^ エヴェレットは本作について「カットタイム」であるとしている。一方でポラックは、本作を2/2拍子とも4/4拍子(コモンタイム)とも言えるとしたうえで、前者の方が「リスナーが基礎となるテンポがどの程度一定であるかをより簡単に把握できる」と書いている[5]
  5. ^ a b ただし、ビートルズの歴史家であるケネス・ウォマック英語版は、本作におけるマッカートニーの担当楽器の1つとしてベースも挙げている[31]
  6. ^ ギターソロの演奏者については意見が分かれており、グールドとジョン・C・ウィンはそれぞれギターソロの演奏者をハリスン[33][39]とし、ジーン・ミシェル・ゲドンとフィリップ・マーゴティンはギターソロの演奏者をマッカートニー[26]としている。
  7. ^ これは『ヘルプ!』のセッション中に多用された手法の1つで[40]、カバー曲の「ディジー・ミス・リジー」や「バッド・ボーイ」、「ヘルプ!」、「イッツ・オンリー・ラヴ」、「涙の乗車券」でも確認できる[40]
  8. ^ キャピトル・レコードは、『らバー・ソウル』をさらに改変して、「ひとりぼっちのあいつ」、「消えた恋」、「恋をするなら」をカットし、アメリカ出発売された『ヘルプ(四人はアイドル)』では未収録となっていた「イッツ・オンリー・ラヴ」を追加した[54][55]。『ラバー・ソウル』からカットされた楽曲は、1966年6月に発売されたアルバム『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』に収録され[56]、『ヘルプ(四人はアイドル)』の残りの未収録曲は、『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』と1965年6月に発売されたアルバム『ビートルズ VI』の2作に収録されている[57]
  9. ^ また、ハミルトンは「ディラン風の『悲しみはぶっとばせ』を収録した『ヘルプ!』は、『ラバー・ソウル』よりもフォークロックに近かったのではないか」と述べている[63]。シェフィールドは、キャピトル・レコードによる『ラバー・ソウル』の改変について「イギリスのオリジナル盤よりもコンセプト的に統一されたフォークロック・アルバムになったが、乏しくて良いものではなかった」と述べている[64]
  10. ^ 1964年に発売されたアルバム『ハード・デイズ・ナイト』に収録されている楽曲。
  11. ^ この他には、「レディ・マドンナ」、「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」、「イエスタデイ」、「ブラックバード」が演奏された[83][84]
  12. ^ 『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』のライナーノーツで、マッカートニーは同作に収録のビートルズの楽曲の作曲クレジットを「レノン=マッカートニー」から「マッカートニー=レノン」に変更した[89][90]。この変更について、当時レノンからの苦情も含めて批判を受けることはなかったが、2002年に発売されたライブ・アルバム『バック・イン・ザ・U.S. -ライブ2002』で、マッカートニーが再びクレジットを変更したことにより、レノンの未亡人であるオノ・ヨーコの怒りを買うこととなった[91]
  13. ^ 「消えた恋」は、アメリカで発売された『ラバー・ソウル』には収録されていないが[98]、1996年2月21日にシングル盤『ひとりぼっちのあいつ』のB面曲として発売された[99]
  14. ^ 国際ブルーグラス音楽協会英語版は、1974年に発売したコンピレーション・アルバム『Strings Today... And Yesterday』にこのカバー・バージョンを収録している[108]

出典

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参考文献

外部リンク