統合型リゾート

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統合型リゾート(とうごうがたリゾート、英称:Integrated Resort、略称:IR)とは、地方自治体の申請に基づきカジノの併設を認める区域を指定して設置される、国際会議場・展示施設などのMICE施設、ホテル商業施設ショッピングモール)、レストラン劇場映画館アミューズメントパークスポーツ施設、温浴施設などと一体になった複合観光集客施設のこと[1]

概要[編集]

マカオシンガポールなど、近年に統合型リゾートを設置した外国都市が国際的な観光拠点として多数の観光客を進める中で、訪日外国人観光客(インバウンド)を集めるプロジェクトの一つとして、日本国内への統合型リゾート設置が注目されている。しかし現行の日本の法制度ではカジノが違法とされているため、統合型リゾートの推進にあたっては、カジノの法制度化が大前提とされていた

2016年(平成28年)12月15日衆議院本会議で「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(IR推進法)が成立[2]、カジノの法制度化への道が開かれることになった。その一方、気軽に何処にもあることでギャンブル依存症を産み出してきたパチンコ店の数は1995年をピークに減少を続けている。2016年のIR法成立によって依存症対策が厳格化し、射幸性の高いものが禁止された。これよって、顧客の減少に拍車が掛かり2017年時点で10000店を割る直前となっている[3]

想定されるメリットと懸念[編集]

メリット[編集]

  • 国内外からの観光客の誘致[4]やMICEの振興
  • カジノ税収入など国家や地方自治体への新規財源の創出や赤字国債の削減による財政健全化
    • マカオでは、2017年のカジノ等税収が約940億パタカを記録し、歳入に占める割合は79.66%を占めた。同年の歳出は777億パタカであり、歳出の全てをカジノ等の税収で賄うことに成功している[5]。2018年には一ヶ月当たり約1091億円のカジノ税収があり、マカオでは歳入の約8割がカジノ税による収入である[6]。マカオはカジノ税で財政収支黒字なため、2018年にも11年連続で現金支給し、5年連続で約12万円を国民に支給している[7]
    • しかし、他国の成功事例の様に上手く進むとは限らず、実際の運営は厳しいと見る声も根強い。
  • 地域での雇用促進や経済波及効果

懸念[編集]

カジノ解禁によるギャンブル依存症問題
日本のような、「遊技」という扱いで、パチンコパチスロという賭博場がすぐ近くにある国では、それらの悪影響によって、他の先進国の10倍の割合のギャンブル依存症が存在するという指摘がある[8]
治安の悪化
カジノができることで、周辺の治安悪化を懸念する声が市民[9]や日本における反対派議員・政党から上がった[10][11]。かつてのラスベガスは、反社会組織がカジノに関与していたため、犯罪の増加とそれに伴う顧客離れが発生したが、その後、排除(後述)に成功している[12]。2012年現在のネバダ州(ラスベガスのある州)におけるギャンブル関連犯罪による逮捕件数は、52件であり、全体(142,459件)に占める割合にすると0.03%である[13]
また、IRを強行したい日本政府は、シンガポールにおけるIR設置前と後の犯罪認知率のデータを示して、IRの設置による犯罪認知率の大幅な変動がなかったことをアピールしている[14]。東京都の報告書では、シンガポールの例に加えて、マカオ、韓国における犯罪件数のデータも示されており、この2例でもIR設置前と後で犯罪件数に大幅な変動は見られず、ほぼ横ばいであると報告されている[13]
犯罪組織の関与
IRの運営にマフィアギャング暴力団などが介入することで、IRが彼らの資金源となってしまうことが懸念されている[15]。ラスベガスでは、「ラスベガス・モデル」と呼ばれる参入規制が実施されており、上場企業がカジノに参入しようとするときは有価証券報告書、税務調査内容、取引先の一覧などの情報を当局に提出しなければならない[12]。「ラスベガス・モデル」では、ある一定以上の議決権を有する株主や企業の役員・管理職にも、銀行・クレジットカードの明細、海外の預金口座、確定申告書、無犯罪証明書など種々の文書の提出が求められる[12]。一方、これらの制約を受けない犯罪組織メンバーが関与しうる余地は依然として残る[15]
国際的な競争力の弱さ
カジノを中心とした総合型リゾートは既に世界でラスベガスドバイマカオ等が先行している。今から総合型リゾートを開発しても、競争力で大きく見劣りすると予測する声も多い。
収支予想の甘さ
カジノによる財源の創出や赤字国債の削減による財政健全化は想定が甘く、実際は赤字経営や税金の無駄な投入となることが予測されている。

日本解禁による韓国への影響[編集]

ハナ金融投資研究員は日本でカジノ解禁された場合には真っ先に韓国に来る中国人観光客が減少し、韓国の外国人カジノが打撃を受ける可能性が高いと法案が可決されれば韓国内の外国人向けカジノの売り上げが減少するかもしれないと懸念を示し、投資家も同様に反応して韓国のカジノ関連の株価が下落した[16]

日本での動き[編集]

※政党名は当時のもの

  • 2002年(平成14年)12月 「国際観光産業としてのカジノを考える議員連盟」を結成(自由民主党)。
  • 2004年(平成16年)6月 同議員連盟が、ゲーミング(カジノ)法基本構想案を公表。
  • 2006年(平成18年)2月 「カジノ・エンターテイメント検討小委員会」が自由民主党政務調査会内に設置。
  • 2006年(平成18年)6月 同委員会が「我が国におけるカジノ・エンターテイメント導入に向けての基本方針」を策定。
  • 2008年(平成20年)6月 民主党政策調査会内に「民主党新時代娯楽産業健全育成プロジェクトチーム」設立。
  • 2010年(平成22年)4月 日本共産党社会民主党を除いた政党に所属する国会議員で構成される超党派議連で「国際観光産業振興議員連盟」を発足。
  • 2011年(平成23年)8月 同議連が、カジノを中心とした複合観光施設の国内整備に向けた議員立法「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(通称:IR推進法案、カジノ法案)を公表。
  • 2013年(平成25年)9月 フジ・メディア・ホールディングス三井不動産鹿島建設日本財団産業競争力会議国家戦略特区ワーキンググループに「東京臨海副都心(台場エリア)における国際観光拠点の整備~エンターテイメント・リゾート戦略特区~」提案を提出。
  • 2013年(平成25年)6月 日本維新の会が衆議院にIR推進法案を提出[17]
  • 2013年(平成25年)12月 臨時国会で自由民主党・日本維新の会生活の党の3党が衆議院にIR推進法案を共同提出。継続審議案件となる[18][19]
  • 2014年(平成26年)2月 「IR推進協議会(仮称)」の第1回設立準備委員会が開催[20]
  • 2015年(平成27年)4月 自由民主党・維新の党次世代の党の3党が衆議院にIR推進法案を再提出[21]
  • 2016年(平成28年)11月 民進党内でIR整備推進法案の早期成立を目指す議員連盟が発足[22]
  • 2016年(平成28年)12月6日 衆議院本会議にてIR推進法案が自民党・公明党日本維新の会の賛成多数で可決[23]
  • 2016年(平成28年)12月14日 参議院本会議にてIR推進法案の修正案が自民党・日本維新の会などの賛成多数で可決[24]。前日に開催された参議院内閣委員会で法案が修正されたため、同日衆議院へ再送付された。
  • 2016年(平成28年)12月15日 衆議院本会議にてIR推進法案の修正案が自民党・公明党・日本維新の会の賛成多数で可決・成立した[25]
  • 2016年(平成28年)12月26日 IR推進法が施行された。これを受け政府ギャンブル依存症対策を検討する関係閣僚会議を開催し、本格的な法整備の検討に乗り出した[26]
  • 2017年(平成29年)3月24日 政府はIRの導入に向け、首相を本部長とする「特定複合観光施設区域整備推進本部」を立ち上げた。これに伴い、内閣官房にあった本部の設立準備室を整備推進室に改編した[27]
  • 2017年(平成29年)8月1日 特定複合観光施設区域整備推進会議議長の山内弘隆一橋大学商学部教授が首相に規制案等を盛り込んだ報告書を提出[28][29]
  • 2018年(平成30年)4月27日 政府がIR実施法案を閣議決定。当面は全国3カ所を上限にIRを整備し、日本人と国内に居住する外国人から入場料6000円を徴収する[30]
  • 2018年(平成30年)6月19日 衆議院本会議にてIR実施法案が自民党・公明党・日本維新の会などの賛成多数で可決[31]
  • 2018年(平成30年)7月20日 参議院本会議にてIR実施法案が自民党・公明党・日本維新の会などの賛成多数で可決・成立[32]

脚注[編集]

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  1. ^ “IR実施法案に関する基本的な考え方”. http://www.internationalcasino.jp/ir-shi-shi-fa-anni-guansuru-ji-ben-dena-kaoe-fang 
  2. ^ 「観光立国の実現の第一歩」高まる経済効果への期待 産経ニュース 2016年12月15日付
  3. ^ 「地球の歩き方 ラスベガス セドナ&グランドキャニオンと大西部 2018-2019」p13、 地球の歩き方編集室
  4. ^ “なぜ今、カジノ? プラス面とマイナス面を検証”. 日本産経新聞 プラスワン (日本経済新聞社). (2013年12月10日). https://style.nikkei.com/article/DGXDZO63692180W3A201C1W14001 2018年7月21日閲覧。 
  5. ^ “マカオの17年度財政収支、約5300億円の黒字に…対前年86.2%増=カジノ税収アップが寄与”. マカオ新聞 - 澳門新聞 - The Macau Shimbun. (2018年3月6日). https://www.macaushimbun.com/news?id=23857 2018年7月20日閲覧。 
  6. ^ “マカオ、18年1月のカジノ税収14.1%増の約1091億円…歳入の8割占める”. マカオ新聞 - 澳門新聞 - The Macau Shimbun 
  7. ^ [1]マカオ政府、11年連続で市民へ現金配布…7月から順次=支給額は5年連続据え置きの約12万円、カジノ税収潤沢で富の還元
  8. ^ “ギャンブル依存症536万人”. しんぶん赤旗. (2014年8月25日). http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-08-25/2014082513_01_1.html 
  9. ^ 石川将来、益川量平、芝村侑美、山成孝治 (2018年7月21日). “カジノ法成立:それどころでは…被災地では嘆きの声”. 毎日新聞 (毎日新聞社). https://mainichi.jp/articles/20180721/k00/00m/040/197000c 2018年7月24日閲覧。 
  10. ^ “第196回国会 衆議院本会議 第40号”. (2018-6-20). http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/196/0001/19606200001040a.html. "カジノ法案は、(中略)ギャンブル依存症や多重債務者が増加し、生活破綻や治安悪化を招くだけです。" 
  11. ^ “与党「慎重」世論押し切る 野党、依存症や治安悪化懸念”. 東京新聞 (東京新聞社). (2018年6月20日). http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201806/CK2018062002000135.html 2018年7月24日閲覧。 
  12. ^ a b c 統合型リゾート (IR) 構想と検討課題(2)”. 大和総研 (2014年8月13日). 2018年7月24日閲覧。
  13. ^ a b 平成26年度 IR(統合型リゾート)に関する調査業務委託 報告書 (PDF)”. 東京都 (2014年6月). 2018年7月24日閲覧。
  14. ^ 諸外国におけるIRについて (PDF)”. 首相官邸. 2018年7月24日閲覧。
  15. ^ a b “第196回国会 衆議院本会議 第38号”. (2018-6-15). http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/196/0001/19606150001038a.html. "このような暴力団がカジノへの関与に強い意欲を持つことは、容易に想定される。この点、カジノ営業を行う事業主体からは暴力団を排除するための制度が整備されるとのことであるが、事業主体として参入し得なくても、事業主体に対する出資や従業員の送り込み、事業主体からの委託先・下請への参入等は十分可能である。カジノ利用者をターゲットとしたヤミ金融、カジノ利用を制限された者を対象とした闇カジノの運営、いわゆる「ジャンケット」(VIP顧客をカジノに送客し、カジノ事業者からコミッションを得る者)を典型とする、顧客とカジノとの間の「媒介者」としての関与等、周辺領域での資金獲得活動に参入することも可能である。しかも、これら資金獲得活動を行うに際しては、暴力団員が直接関与する必要がなく、その周辺者、共生者、元暴力団員等を通じて関与することが十分可能であり、これら業務を通じて獲得した資金が暴力団の有力な資金源となり得る。" 
  16. ^ “韓国カジノ関連株、日本のカジノ解禁法案推進で下落”. http://japanese.joins.com/article/229/223229.html?servcode=300&sectcode=310&cloc=jp 中央日報 2016年12月6日
  17. ^ 維新、カジノ法案を衆院提出 日本経済新聞 2013年6月7日
  18. ^ 週刊東洋経済2014年9月27日号p29. 週刊東洋経済編集部. 
  19. ^ 自民、維新、生活の3党がカジノ法案提出 産経ニュース 2013年12月6日
  20. ^ 2020年へ向け「カジノ解禁」動き活発 推進民間団体発足 産経ニュース 2014年2月5日
  21. ^ 自民、維新、次世代3党がカジノ法案再提出 産経ニュース 2015年4月28日
  22. ^ 民進党有志議員がIR推進議連を発足 党執行部のカジノ法案反対の姿勢を覆す勢いはなく… 産経ニュース 2016年11月24日付
  23. ^ カジノ法案、衆院通過 与党内の対応割れる異例の展開に 朝日新聞 2016年12月6日付
  24. ^ カジノ法案参院採決、公明代表が反対票 日本経済新聞 2016年12月14日付
  25. ^ カジノを含むIR法が成立 野党徹底抗戦も異例の会期再延長で衆院本会議採決 産経ニュース 2016年12月15日付
  26. ^ 政府、依存症対策に着手=カジノ法施行受け閣僚会議 時事ドットコム 2016年12月26日付
  27. ^ 政府、統合リゾート導入へ推進本部発足 日本経済新聞 2017年3月24日付
  28. ^ 「IR整備推進本部、カジノ報告書を首相に提出」産経ニュース2017.8.1 07:15
  29. ^ 「カジノ依存対策、入場回数制限やカード使用不可」読売新聞2017年07月31日 20時27分
  30. ^ 「カジノ法案閣議決定 今国会成立は微妙産経新聞2018年04月27日 21時36分
  31. ^ “カジノ実施法案、衆院を通過 国会会期延長へ”. 朝日新聞. (2018年6月19日). https://www.asahi.com/sp/articles/ASL6M4DN3L6MUTFK00L.html 2018年6月19日閲覧。 
  32. ^ “【攻防・終盤国会】IR実施法成立、今国会が事実上閉会”. 産経新聞. (2018年7月20日). https://www.sankei.com/politics/news/180720/plt1807200036-n1.html 2018年10月23日閲覧。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]