第40回世界遺産委員会

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トルコでの会場となったイスタンブール・コングレス・センター

第40回世界遺産委員会(だい40かいせかいいさんいいんかい)は、2016年7月と10月にトルコイスタンブールフランスパリで開催された世界遺産委員会である。当初は7月10日から7月20日にイスタンブールのイスタンブール・コングレス・センター英語版でのみ開催される予定だったが、会期中に勃発したクーデター未遂事件が原因で7月16日の会議は中止され[1]、翌17日の会議でイスタンブールでの会議は終了となった[2][3]。残る議事は同年10月24日から26日にパリユネスコ本部で開催された会議で取り扱われた[3]

この世界遺産委員会の会場は文化遺産12件、自然遺産6件、複合遺産3件の計21件が登録された結果、世界遺産リスト登録物件の総数は1,052件となった。従来世界遺産を保有していなかった国の中では、ミクロネシア連邦アンティグア・バーブーダが保有国の仲間入りをした。

委員国[編集]

委員国は以下の通りである[4]。地域区分はUNESCOに従っている。

議長国 トルコの旗 トルコ 議長ラーレ・ウルカートルコ語版(Lale Ülker)
アジア太平洋 フィリピンの旗 フィリピン 副議長国
大韓民国の旗 韓国 報告担当国。担当者はEugene Jo(조유진)
インドネシアの旗 インドネシア
カザフスタンの旗 カザフスタン
 ベトナム
アラブ諸国 レバノンの旗 レバノン 副議長国
クウェートの旗 クウェート
チュニジアの旗 チュニジア
アフリカ タンザニアの旗 タンザニア 副議長国
アンゴラの旗 アンゴラ
ブルキナファソの旗 ブルキナファソ
ジンバブエの旗 ジンバブエ
ヨーロッパ北アメリカ ポーランドの旗 ポーランド 副議長国
アゼルバイジャンの旗 アゼルバイジャン
クロアチアの旗 クロアチア
 フィンランド
ポルトガルの旗 ポルトガル
カリブラテンアメリカ ペルーの旗 ペルー 副議長国
 キューバ
ジャマイカの旗 ジャマイカ

審議対象の推薦物件一覧[編集]

物件名に *印が付いているものは既に登録されている物件の拡大登録などを示す。太字は正式登録(既存物件の拡大などについては申請用件が承認)された物件。英語名とフランス語名は諮問機関の勧告文書に基づいており[5]、登録時に名称が変更された場合にはその名称を説明文中で太字で示してある。第40回世界遺産委員会の審議で新規に世界遺産保有国となったのは、アンティグア・バーブーダミクロネシア連邦の2か国である。この結果、世界遺産条約を締約している192か国のうち、世界遺産を保有していない国は27か国となった。

なお、審議期間中、イスタンブールなどにおいてトルコ軍の一部によるクーデター未遂事件が発生したことをうけ、一部物件の審議が順延される事態となった[6]。登録された資産に対する委員国のコメントも、例年の慣行に比べると短縮された[3]

自然遺産[編集]

画像 推薦名 推薦国 勧告 決議 登録基準
ミステイクン・ポイント カナダの旗 カナダ 登録 登録 (8)
Mistaken Point
Mistaken Point
この資産はニューファンドランド島東南端に位置するミステイクン・ポイント生態系保護区を対象としており、先カンブリア時代末期に棲息していたエディアカラ生物群の化石の産地となっている[7]。諮問機関であるIUCNからは、産出する化石の古さや多彩さが評価された[7]
湖北省神農架 中華人民共和国の旗 中国 登録 登録 (9), (10)
Hubei Shennongjia
Shennongjia au Hubei
神農架林区はモミ属の原生林などを含む国が直轄する森林地帯である[8]。世界遺産の対象は2つの地区に分かれており、諮問機関からは、その豊かな生物多様性などが評価された[9]
ピュイ山地フランス語版リマーニュ断層フランス語版の地殻運動・火山地帯 フランスの旗 フランス 不登録 情報照会
Tectono-volcanic Ensemble of the Chaine des Puys and Limagne Fault
Ensemble tectono-volcanique de la Chaîne des Puys et faille de Limagne
第38回世界遺産委員会ではIUCNは「不登録」を勧告していたが、それを覆して「情報照会」決議となった[10]。しかし、今回もIUCNの勧告はいずれの価値も否定した上で「不登録」のままだった[11]。会議では再び「情報照会」決議となった[12]第42回世界遺産委員会で正式登録されることになる。
ルート砂漠 イランの旗 イラン 情報照会 登録 (7), (8)
Lut Desert
Désert de Lout
ルート砂漠はケルマーン州と他2州にまたがるイラン東部の砂漠で[8][13]、IUCNからは推薦範囲の大部分が自然美や地形の面での顕著な普遍的価値を持つことを認められたが、該当しない地域があることも指摘された[14]。逆転登録を果たし、イラン初の自然遺産となった。
西天山 カザフスタンの旗 カザフスタン
キルギスの旗 キルギス
ウズベキスタンの旗 ウズベキスタン
登録延期 登録 (10)
Western Tien-Shan
Tien Shan occidental
アクス=ザバグリ自然保護区英語版などカザフスタンの7件、キルギスの4件、ウズベキスタンの2件の自然保護区を対象とする推薦である[15]。IUCNからは推薦時点での価値は否定されたものの、構成資産の練り直しによって、生態系や生物多様性の点での価値が認められる可能性も示された[16]。審議では逆転登録を果たした。
レビジャヒヘド諸島 メキシコの旗 メキシコ 登録 登録 (7), (9), (10)
Archipiélago de Revillagigedo
Archipel de Revillagigedo
レビジャヒヘド諸島はバハ・カリフォルニア半島南東に浮かぶ島々で、諮問機関からは、火山やそれが生み出す地形と周囲の海が織り成す自然美、および希少な海鳥を含む生態系などが評価された[17]
西コーカサス* ロシアの旗 ロシア 不適用 ――
Western Caucasus
Caucase de l’Ouest
西コーカサスは生態系や生物多様性が評価され、1999年に登録された[18]。しかし、今回の範囲見直しが価値の強化に繋がることは証明されていないとしてIUCNからは不適用を勧告され[19]、推薦国によって取り下げられた[20]
コミ原生林* ロシアの旗 ロシア 不適用 ――
Virgin Komi Forests
Forêts vierges de Komi
コミ原生林は自然美や生態系が評価された亜寒帯林で、1995年に登録された[21]。しかし、今回の範囲見直しが価値の強化に繋がることは証明されていないとしてIUCNからは不適用を勧告され[22]、推薦国によって取り下げられた[20]
サンガネーブ海洋国立公園とドンゴナーブ湾=ムカッワー島海洋国立公園 スーダンの旗 スーダン 情報照会 登録 (7), (9), (10)
Sanganeb Marine National Park and Dungonab Bay - Mukkawar Island Marine National Park
Parc national marin de Sanganeb et Parc national marin de la baie de Dungonab – île de Mukkawar
第39回世界遺産委員会で「情報照会」決議。IUCNは潜在的な価値を認めつつも、範囲の設定などに問題があるとして、「情報照会」を勧告したが[23]、逆転で登録を果たした。世界最北とされるサンゴ礁ジュゴン棲息地を含んでいる[24]
ケーンクラチャン森林保護区群 タイ王国の旗 タイ 情報照会 情報照会
Kaeng Krachan Forest Complex
Complexe des forêts de Kaeng Krachan
第39回世界遺産委員会で「情報照会」決議。IUCNは生物多様性の面での価値を認められる可能性が高いとしつつ、いくつかの情報が不足していることから「情報照会」を勧告した[25]。決議でもそれが踏襲された[26]
クイテンダグの山岳生態系英語版 トルクメニスタンの旗 トルクメニスタン 不登録 登録延期
Mountain Ecosystems of Koytendag
Écosystèmes de montagne de Koytendag
クイテンタグ自然保護区を含む4件の保護区を対象として推薦されたが、パミール高原から天山山脈にかけての地域内にある類似の特質を持つ世界遺産の新疆天山タジキスタン国立公園などに比べて価値が落ちると、IUCNからは判断された[27]。審議では「登録延期」となった[28]

複合遺産[編集]

画像 推薦名 推薦国 勧告 決議 登録基準
ピマチオウィン・アキ英語版 カナダの旗 カナダ 登録 情報照会
Pimachiowin Aki
Pimachiowin Aki
ピマチオウィン・アキはアニシナアベ英語版の言葉で「生命を与える土地」を意味し、彼らの伝統と密接に結びつく文化的景観を形成している[29]。同時に北方林の生態系の面からも評価された[30]第37回世界遺産委員会で「登録延期」決議となっていたが、今回は文化・自然とも「登録」が勧告された。ところが、勧告後に保護・管理体制に重要な変化が生じたことから、「情報照会」決議となった[31][32]第42回世界遺産委員会で正式登録されることになる。
エネディ山地の自然的・文化的景観 チャドの旗 チャド 登録延期 登録 (3), (7), (9)
Ennedi Massif: Natural and Cultural Landscape
Massif de l’Ennedi : paysage naturel et culturel
チャド北西部のエネディ山地は紀元前5000年にまで遡る岩絵群と[33]、自然美・生態系に特色のある自然環境が残されている[34]。しかし、諮問機関は文化、自然の両面について、範囲の再考などによって当てはまる可能性を認めつつ[35]、今回は登録延期とすることを勧告した。逆転登録を果たし、チャド2件目の世界遺産となった。
カンチェンゾンガ国立公園 インドの旗 インド 登録 登録 (3), (6), (7), (10)
Khangchendzonga National Park
Parc national de Khangchendzonga
カンチェンゾンガ国立公園は世界第3位の高峰カンチェンジュンガの一部を対象としており、地元の人々にとって聖なる山として崇拝されてきた文化的価値と、自然美・生物多様性から成る自然的価値とが評価された[36]。インド初の複合遺産である。
イラク南部のアフワール:生物多様性の保護地域とメソポタミアの都市の残存景観 イラクの旗 イラク 登録延期 登録 (3), (5), (9), (10)
The Ahwar of Southern Iraq: Refuge of Biodiversity and the Relict Landscape of the Mesopotamian Cities
Les Ahwar du sud de l’Iraq : refuge de biodiversité et paysage relique des villes mésopotamiennes
対象となるのはウルウルクエリドゥの古代遺跡およびマーシュ湿地帯(アフワール湿地帯)に含まれる4箇所の湿地である[37]。しかし、ICOMOSからは、古代都市遺跡の中で上記3件に絞った理由が不鮮明であることや、湿地と文化の結びつきも十分に示されていないとされた[38]。IUCN も自然的側面について今後価値を証明できる可能性を指摘しつつも、再検討を求めた[39]。逆転で登録を果たし、イラク初の複合遺産となった。

文化遺産[編集]

画像 推薦名 推薦国 勧告 決議 登録基準
アンティグアの海軍造船所と関連考古遺跡群 アンティグア・バーブーダの旗 アンティグア・バーブーダ 登録 登録 (2), (4)
Antigua Naval Dockyard and Related Archaeological Sites
Chantier naval d’Antigua et sites archéologiques associés
この資産は、ジョージ王朝様式英語版の海事施設群で、熱帯地方に適応した変化を伝えていることや、かつての海軍力の背景にした植民地化や技術・思想などの伝播を伝えていることが評価された[40]。アンティグア・バーブーダ初の世界遺産である。
ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献- フランスの旗 フランス
スイスの旗 スイス
ベルギーの旗 ベルギー
ドイツの旗 ドイツ
アルゼンチンの旗 アルゼンチン
インドの旗 インド
日本の旗 日本
登録 登録 (1), (2), (6)
The Architectural Work of Le Corbusier, an Outstanding Contribution to the Modern Movement
L’OEuvre architecturale de Le Corbusier, une contribution exceptionnelle au Mouvement Moderne
第33回世界遺産委員会で「情報照会」、第35回世界遺産委員会で「登録延期」となったが、インドを加えた今回の推薦(7か国17件)については諮問機関から全件の「登録」が勧告されている(前回の勧告では、構成資産のうち、3件のみにしか顕著な普遍的価値を認められていなかった)。大陸を越える初の世界遺産となった。
ステチュツィ - 中世の墓碑群 ボスニア・ヘルツェゴビナの旗 ボスニア・ヘルツェゴビナ
クロアチアの旗 クロアチア
セルビアの旗 セルビア
モンテネグロの旗 モンテネグロ
登録延期 登録 (3), (6)
Stećci – Medieval Tombstones
Stećci – Tombes médiévales
中世の墓碑であるステチュツィのうち、ボスニア・ヘルツェゴビナ22件、クロアチア2件、モンテネグロ3件、セルビア3件の計30件が推薦された[41]。ICOMOSは将来的に世界遺産登録基準を満たす可能性を示唆しつつも[42]、今回は登録延期を勧告した。しかし、逆転登録を果たし、登録名は「中世墓碑ステチュツィの墓所群」となった。
パンプーリャの近代建築群 ブラジルの旗 ブラジル 登録 登録 (1), (2), (4)
Pampulha Modern Ensemble
Ensemble moderne de Pampulha
パンプーリャはベロオリゾンテの人造湖周辺に形成された地区で、オスカー・ニーマイヤーロバート・ブール・マルクスカンディド・ポルチナーリらが手がけた建造物群が並ぶ[43]
左江花山の岩絵の文化的景観 中華人民共和国の旗 中国 登録 登録 (3), (6)
Zuojiang Huashan Rock Art Cultural Landscape
Paysage culturel de l’art rupestre de Zuojiang Huashan
花山岩画は紀元前5世紀から2世紀にかけての岩絵遺跡で、当時左江沿岸にいた雒越の活動をとどめている[44]。また、今なお象徴的意味を持つ銅鼓が描かれていることは、その文化的広まりを理解する上での意義も持つ[44]
フォルムの記念碑的建造物群を含むザダル半島の古代ローマ式都市生活 クロアチアの旗 クロアチア 不登録 ――
Roman Urbanism of the Zadar Peninsula with the Monumental Complex on the Forum
Urbanisme romain de la péninsule de Zadar avec l’ensemble monumental sur le forum
ザダルの古代ローマ遺跡は第36回世界遺産委員会で「情報照会」決議を受け、第37回世界遺産委員会では「不登録」勧告を受けて取り下げていた。今回の推薦でも「不登録」を勧告された。勧告を受け、審議前に取り下げられた[45]
エルツ山地の鉱業の文化的景観  チェコ
ドイツの旗 ドイツ
―― ――
Mining Cultural Landscape Erzgebirge / Krušnohoří
Paysage culturel minier d’Erzgebirge/Krušnohoří
エルツ山地の国境沿いの鉱業地帯 (Cross-border Mining Trail) である。勧告前に推薦国によって取り下げられた[20]
ハレフランケ財団英語版 ドイツの旗 ドイツ ―― ――
Francke Foundations, Halle
Fondations Francke, Halle
フランケ財団はアウグスト・ヘルマン・フランケ英語版が設立した。勧告前に推薦国によって取り下げられた[20]
ピリッポイの考古遺跡 ギリシャの旗 ギリシャ 登録 登録 (3), (4)
Archaeological Site of Philippi
Site archéologique de Philippes
ピリッポイ(フィリピ、ピリピ)はエグナティア街道上にあった古代都市で、近郊では紀元前42年フィリピの戦いがあった[8]。また、この都市はパウロの宣教によって、欧州で最初にキリスト教会が設立された場所でもあった[46]。推薦対象は都市遺跡と古戦場で、古代ローマ遺跡と初期キリスト教建築の両面で評価された[47]
ナーランダ・マハーヴィハーラの出土した遺構群 インドの旗 インド 登録延期 登録 (4), (6)
Excavated remains of Nalanda Mahavihara
Vestiges mis au jour de Nalanda Mahavihara
ナーランダ・マハーヴィハーラは玄奘義浄も学んだ密教学の拠点であったが[8]、世界遺産としての価値の証明が不十分で、推薦された基準 (4) と (6) のいずれにも当てはまらないとされた一方、比較研究を進めれば (3) が適用できる可能性も示された[48]。逆転での登録を果たし、登録名は「ビハール州ナーランダーのナーランダー・マハーヴィハーラ(ナーランダ大僧院)の考古遺跡」となった。
ペルシア式カナート イランの旗 イラン 登録延期 登録 (3), (4)
The Persian Qanat
Le qanat perse
カナートやその関連遺跡の計11件から成る[49]。価値の証明が不十分として、ICOMOSからは構成資産の再考を求められた[50]。審議では逆転登録を果たした。Traditional water sources of Persian antiquityも参照。
長崎の教会群とキリスト教関連遺産 日本の旗 日本 ―― ――
Churches and Christian Sites in Nagasaki
Églises et sites chrétiens de Nagasaki
日本へのキリスト教伝来から弾圧、隠れキリシタン、明治以降までの長い期間を対象としていたが[51]、ICOMOSからは禁教期に重点をおいて再考すべきとの中間報告を受けた[52]。それを踏まえて、正式勧告前に推薦国によって取り下げられた[53]第42回世界遺産委員会で正式登録されることになる。
ナンマトル:東ミクロネシアの祭祀センター ミクロネシア連邦の旗 ミクロネシア 登録 登録 (1), (3), (4), (6)
Nan Madol: Ceremonial Centre of Eastern Micronesia
Nan Madol : centre cérémoniel de la Micronésie orientale
ナン・マトールはポンペイ島沿岸に築かれた石造建造物群で、シャウテレウル王朝英語版の儀式が行われていた中心施設であり、首長制社会の発展や社会・宗教の結びつきなどを伝えている[54]。ミクロネシア連邦で初の世界遺産となったが、登録と同時に危機遺産リストにも加えられた。
ツェティニェ歴史地区 モンテネグロの旗 モンテネグロ 不登録 ――
Historic Centre of Cetinje
Centre historique de Cetinje
ツェティニェはモンテネグロの古都であるが、ICOMOSは推薦された理由が他の都市群にも当てはまり、顕著な普遍的価値を示せていないとして、不登録を勧告した[55]。その結果、推薦国によって取り下げられた[20]
パナマ市の歴史地区と考古遺跡(「パナマ・ビエホとパナマ歴史地区」1997年登録・2003年拡大、適用基準(2) ,(4), (6) の重要な境界変更)* パナマの旗 パナマ 不適用 不適用
Archaeological Site and Historic Centre of Panamá City [Significant boundary modification of the Archaeological Site of Panamá Viejo and Historic District of Panamá, 1997, 2003 (ii)(iv)(vi)]
Site archéologique et centre historique de la ville de Panamá [Modification majeure des limites de « Site archéologique de Panamá Viejo et district historique de Panamá » 1997, 2003 (ii)(iv)(vi)]
パナマ市の歴史地区とかつてのパナマ市の遺跡(パナマ・ビエホ)を対象としているが[56]、今回の拡大申請を踏まえたICOMOSの勧告では、かつて認められていた基準 (6) が都市開発の影響で該当しなくなっている可能性などが指摘された[57]。委員会でも「不適用」と決議された[58]
書院李氏朝鮮宋明理学教育機関群 大韓民国の旗 韓国 ―― ――
Seowon, Neo-Confucian Academies of the Joseon Dynasty
Seowon, académies néo-confucéennes de la dynastie Joseon
東アジアに見られた教育機関である書院の一種である。勧告前に推薦国によって取り下げられた[20]
アンテケーラドルメン遺跡 スペインの旗 スペイン 登録 登録 (1), (3), (4)
Antequera Dolmens Site
Site de dolmens d’Antequera
メンガ支石墓ビエラ支石墓の各ドルメン、エル・ロメラル遺跡の地下墳墓、エル・トルサル英語版など2件の非人工の記念物を対象としており、かつての巨石葬礼文化を伝えるものとして評価された[59]
プー・プラ・バート歴史公園英語版 タイ王国の旗 タイ 登録延期 ――
Phu Phrabat Historical Park
Parc historique de Phu Phrabat
プー・プラ・バート歴史公園は仏教とゆかりのある場所というだけでなく、先史時代の岩絵が残る地域でもある[60]。ただし、ICOMOSは全体としてはもとより、個別構成資産に絞っても顕著な普遍的価値が証明されていないとした[61]。勧告を受け、審議前に取り下げられた[62]
アニの考古遺跡 トルコの旗 トルコ 登録延期 登録 (2), (3), (4)
Archaeological Site of Ani
Site archéologique d’Ani
アニはトルコ北東部に位置し、かつてはシルクロードの拠点都市のひとつであった[63]。ICOMOSは顕著な普遍的価値を持つ可能性を認めつつも、比較研究が不足していることを指摘したが[64]、逆転で登録を果たした。
ジブラルタルネアンデルタール人洞窟群と周辺環境 イギリスの旗 イギリス 登録 登録 (3)
Gibraltar Neanderthal Caves and Environments
Grottes néandertaliennes de Gibraltar et leur environnement
イギリスの海外領土であるジブラルタルのゴーラムの洞窟英語版は、ネアンデルタール人の居住地の中でも末期に属すると見なされている[65]。一帯からは、ネアンデルタール人の生活の様子をうかがわせる遺物などが発見されており、彼らの文化的伝統などを知る上で貴重であることが評価された[66]。登録名は「ゴーラム洞窟群」となった。
フランク・ロイド・ライトによる近代建築の主要作品群 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 登録延期 情報照会
Key Works of Modern Architecture by Frank Lloyd Wright
OEuvres majeures de l’architecture moderne par Frank Lloyd Wright
フランク・ロイド・ライトが手がけたモダニズム建築作品のうち、計10件が一括して推薦された[49]。ICOMOSは落水荘(左画像)など一部の作品について顕著な普遍的価値を持つ可能性を認めたものの、構成資産全体については証明が不十分であるとした[67]。審議では「情報照会」と決議された [68]

危機遺産[編集]

危機にさらされている世界遺産(危機遺産)の変更状況は以下の通り。リビアの世界遺産は5件全てが危機遺産リストに加えられた。

リストからの除去[編集]

リストへの追加[編集]

名称変更[編集]

以下の通り、名称が変更された。なお、英語名ないし仏語名の片方のみが変更された場合もあり、以下の表では変更の無い部分については省略している。また、日本語名では区別しづらい変更もある。

旧登録名 新登録名
フランスの旗 フランス
ブルゴーニュのブドウ畑のクリマ ブルゴーニュのブドウ畑のクリマ
Climats, terroirs of Burgundy The Climats, terroirs of Burgundy
Les climats du vignoble de Bourgogne Les Climats du vignoble de Bourgogne
フランスの旗 フランス
シャンパーニュの丘陵、メゾンとカーヴ シャンパーニュの丘陵、メゾンとカーヴ
Champagne Hillsides, Houses and Cellars ――
Coteaux, maisons et caves de Champagne Coteaux, Maisons et Caves de Champagne
ポルトガルの旗 ポルトガル
ポルト歴史地区 ポルト歴史地区、ルイス1世橋およびセラ・ド・ピラール修道院ポルトガル語版
Historic Centre of Oporto Historic Centre of Oporto, Luiz I Bridge and Monastery of Serra do Pilar
Centre historique de Porto Centre historique de Porto, Pont Luiz I et Monastère de Serra do Pilar
フィリピンの旗 フィリピン
ビガン歴史都市 ビガン歴史都市
Historic Town of Vigan Historic City of Vigan
Ville historique de Vigan ――
ペルーの旗 ペルー
ナスカとフマナ平原の地上絵 ナスカとパルパの地上絵
Lines and Geoglyphs of Nasca and Pampas de Jumana Lines and Geoglyphs of Nasca and Palpa
Lignes et géoglyphes de Nasca et de Pampas de Jumana Lignes et Géoglyphes au Nasca et Palpa

その他の議題[編集]

パリでの継続会議[編集]

イスタンブールでのクーデター未遂事件により中断した世界遺産委員会が10月24 - 26日にパリのユネスコ本部で開催。日本では臨時委員会と報じられたが、ユネスコでは「continue」と称していることから、あくまでも第40回世界遺産委員会の再開・継続である位置付け。

  • 登録審査が延期された熊野古道の拡張登録が認められた[85]

脚注[編集]

  1. ^ The 40th session of the World Heritage Committee is suspended until further notice(2016年7月16日閲覧)
  2. ^ 40th World Heritage Committee session resumes for one day on Sunday 17 July(2016年7月17日閲覧)
  3. ^ a b c 二神 2016, p. 30
  4. ^ 以下のリストのうち、個別に出典が記載されていない情報は 40th session of the Committee世界遺産センター、2016年5月29日閲覧)に基づく。
  5. ^ World Heritage Centre 2016a
  6. ^ 世界遺産の審議見送り=トルコ・クーデター動きで―ユネスコ 時事通信2016年7月16日
  7. ^ a b World Heritage Centre 2016a, p. 10
  8. ^ a b c d 『ブリタニカ国際大百科事典・小項目電子辞書版』2011年
  9. ^ World Heritage Centre 2016a, pp. 6–7, 44
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  11. ^ IUCN 2016b, pp. 28–29
  12. ^ World Heritage Centre 2016b, p. 196
  13. ^ 三省堂編修所 1998, p. 1110
  14. ^ IUCN 2016a, pp. 22–23
  15. ^ World Heritage Centre 2016a, p. 44
  16. ^ IUCN 2016a, p. 35
  17. ^ World Heritage Centre 2016a, pp. 12–13
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  19. ^ IUCN 2016a, pp. 77–78
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  21. ^ 世界遺産検定事務局 2016b, p. 302
  22. ^ IUCN 2016a, p. 68
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    World Heritage and Urban Heritage UNESCO
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参考文献[編集]

外部リンク[編集]