コンテンツにスキップ

「鉄道車両の座席」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
149行目: 149行目:
変わり種としては[[JR東日本719系電車]]のクロスシート座席部分は[[鉄道車両の座席#固定式クロスシート|集団見合い型]]、[[名鉄6000系電車]]の一部では[[鉄道車両の座席#固定式クロスシート|集団離反型]]の配置になっている。
変わり種としては[[JR東日本719系電車]]のクロスシート座席部分は[[鉄道車両の座席#固定式クロスシート|集団見合い型]]、[[名鉄6000系電車]]の一部では[[鉄道車両の座席#固定式クロスシート|集団離反型]]の配置になっている。


=== デュアルシート(2WAYシート・L/Cカー) ===
=== デュアルシート(L/Cカー・2WAYシート) ===
[[画像:Kintetsu 5800-inside.JPG|thumb|240px|デュアルシート(近鉄5800系電車)]]
[[画像:Kintetsu 5800-inside.JPG|thumb|240px|デュアルシート(近鉄5800系電車)]]



2007年10月14日 (日) 11:41時点における版

鉄道車両の座席(てつどうしゃりょうのざせき)では、鉄道車両における座席のうち、椅子を使用したものの配置や形態について扱う。

客車(広義の旅客用鉄道車両)には通常座席が備わっている。客車は座席が主に椅子からなる座席車と寝台を座席として用いる寝台車に大別されるが、寝台車についてはその形態や配置について別に扱う。ただし、座席車のうち個室車の座席についてはコンパートメント席で扱い、ここではその区分がない開放式と称される座席について述べる。

主要な構造についての概観

伝統的に座席の下部には車両ドアの開閉機構や暖房用のヒーターなどが設置されるため箱状に覆われてきたが、最近の車両では軽量化、清掃容易性、レッグスペース拡大など利点の多いカンチレバーシートとも言われる片持ち式支持構造とする例が見られる。

また、ロングシートの一人当たり占有幅やクロスシートの座席間隔は、戦時設計とされる63系電車および同時期の車両以後、特に国鉄~JRでは伝統的寸法が用いられたが、最近ではサービス向上や日本人の体格向上に合わせるため拡大する傾向がある。一方、ラッシュ時の収容力確保も両立せねばならず、各鉄道会社では自社路線の性格にあわせ様々な工夫をこらしている。


座席の配列

ロングシート(縦座席)

概要

ロングシート(小田急2600形電車

車両の長手 (longitude) 方向に並んで座る座席。通常は車両の左右の側窓を背にして座る長いベンチ様の座席である。ラッシュ時の混雑が激しい都市部や走行距離の短い路線を走る車両、車幅の狭い車両に採用されることが多い。また、1両あたりで運べる人数が多く(収容力が大きい)、車両の製造・ランニングコストも低く抑えられるため、ラッシュはあるもののあまり混雑の続かない、不採算となりやすい地方線区で使われる例も見られる。

通路が広いため立席乗車人数を最大にでき、乗降のしやすさは横座席に勝る。混雑の激しい路線では着席よりも収容力や乗降のしやすさを優先し縦座席を採用することがほとんどである。また、構造上長時間乗車に向かない事から、閑散時や中~長距離の乗車ではあまり好ましい評価を受けない。

近年では、「鉄道のライバルは鉄道以外にもある」との輸送モード間競争(自家用車バスなどに対して)の観点からオールロングシート車の新造を止めた会社もある(例:南海電気鉄道京浜急行電鉄もその中の1社ではあったが、新1000系増備車でオールロングシートが復活した)。

反面、(立ち客がいないなど、他の乗客に迷惑とならないことが前提であるのは当然だが)空いていれば足を伸ばせる点で快適であるともいえ、閑散路線・時間帯でロングシートとクロスシートが混用されている路線ではロングシートを好む乗客もいる。元々ロングシートとは、優等列車の車内で乗客が自由に足を投げ出せるように考案された座席配置であったといわれている[1]

座席の前のスペースを広く取れることから、一等車二等車といった特別車両に採用された時代もあり、現在でもごく少数ながらロングシートを採用したサロン調の特別車両が見られる。しかしながら、そのような車両は大変コストがかかるため、現在においては比較的少ないスペースでプライベートな空間を提供できること、窓の大きさを犠牲にする事なく背ずりの高さを上げられることなどから、特別料金を必要とする座席には横座席を採用する例が大勢を占め、縦座席は通勤近郊形車両に使われている例がほとんどである。

なお、通路部分に大きいテーブルを設置することを考慮し、イベント車に使用するケースもある。こちらはさほどコストはかからないため、ローカル線の車両でもロングシート車をイベント対応車として設定しているケースも見られる。

特殊な配置では、JR東日本キハ100系気動車の一部や、伊豆急行2100系電車のように、中央部から窓を向いたロングシートが設置されたものもある。

なお、海外では日本の様なラッシュ輸送の例が少ないためかロングシートは少数派で、地下鉄や路面電車などでもクロスシートやセミクロスシートの採用例が多く見られる。

椅子の形態

バケットシート(東京都交通局6300形電車

1人当たりの着席幅が明確にならない場合、7人掛け座席に5~6人で着席するなど着席定員が守られないことも多く、各鉄道会社は定員着席のために座席の色や形状に様々な工夫を凝らしている。

色分け
椅子の色の一部分を替えて、心理的な誘導効果をねらったもの。
バケットシート
座席に体形にあった定員分の凹みを設け、より快適な着座感を期待するほか定員着席を誘導する方式。凹みの形状は各社各様で、その形状によって効果も異なるようである。1980年代頃から採用例が増えている。一方海外では以前からベンチ状に成形したプラスチック製・金属製のシートが取り入れられている例が見られる。
仕切り
色分けや座席形状からより区画的に、座席の中間に1~2ヶ所の仕切りを設け、半ば強制的に着席位置を画定する構造である。日本では1986年東急9000系電車等を先駆として採用されはじめ、1990年代後半から徐々に採用例が増えた。仕切りには板状のものと、立ち客の握り棒(スタンションポール)を兼ねた直立棒のものがある。特に握り棒を兼ねたものについては、交通バリアフリー法の施行以後の新造車両については、ほぼ例外なく採用されている。なお、海外でも混雑輸送が比較的多いベルリン市やロンドン市の地下鉄等では早くから採用されていたほか、アジア地域でもソウル市の都市交通など採用例が増えている。
座席数、寸法
かつては『普通鉄道構造規則』の中で座席数を車両定員の3分の1以上、かつ1人当たりの着席幅を400mm以上とすることが規定されていた。この規定はJR東日本の6扉車導入を機に廃止されたが、そうした特殊な例を除けば現在も概ね守られている。むしろ1人当たりの着席幅は体格向上に応じて拡大の傾向にあり、最新の車両では460~480mmが標準となっている。

クロスシート(横座席)

概要

クロス(ボックス)シート(国鉄キハ40系気動車 (2代)
クロス(リクライニング)シート(JR東海373系電車
転換式クロスシート(近鉄5200系電車

車両の長手方向と交差(クロス)する方向に並んで着席する配置の座席。通常2人掛けの座席を中央の通路を挟んで複数列配置する。有料のものを中心に特急列車急行列車用の車両はほとんどこの配置である。乗客は列車の進行方向によって、前後方向を向いて座ることになる。乗客の収容力・乗降のしやすさを考慮すると、通勤用車両への採用はラッシュ時の混雑度が比較的低い場合でないと難しい。欧州においては都市内交通用車両においても多用される。

関西圏・中京圏などでは以前から鉄道会社間の競合があり、都市間列車を中心にJR、私鉄双方とも転換式クロスシートの採用例が多い。一方関東圏では京浜急行電鉄快特のうち泉岳寺・品川駅発着の列車中心に運転される転換クロスシート車、西武秩父線4000系などの採用があるが、料金不要の列車にクロスシート主体の車両は少なく、特に日中の京急線では交互に運行されるロングシート使用の都営線直通快特に比べて混雑率が高い列車も多く、ロングシート車が主体の東京では特殊な車両ゆえに遅延の原因になるなど一部では評判が悪い。

なお、回転式、転換式にかかわらず、鉄道用語としては進行方向に向けることのできる2人掛け座席をロマンスシートと呼ぶ。このような構造の座席設備を持つ車両をロマンスカーと呼び、特に小田急電鉄小田急ロマンスカーは列車名としても広く親しまれている。

椅子の形態

回転式クロスシート(回転腰掛)

主に有料特急用車両に装備され、向きを転換するときには床面に垂直な回転軸を中心に180度回転する(観光利用を念頭に置いた車両においては、45度あるいは90度回転させられるものなどもある)。背もたれの裏側に後席の乗客のためのテーブルを備えるものもある。国鉄型(特急形普通車、近郊形グリーン車)の標準座席間隔は910mmであった。

現在採用されているものの大部分は背もたれの傾斜を変えられるリクライニングシートであるが、快速「なのはなDX」指定席車(キハ200系)やキハ185系普通列車用改造車など、リクライニングしない座席を持つ列車もある。

転換式クロスシート(転換腰掛)

背もたれが前後に移動する機構により着席方向を切り替えられる座席。0系新幹線JR東日本185系の普通車座席の原型仕様はこれであった。

比較的簡易な機構で着席者が進行方向を向き、また必要に応じて4人向かい合わせの座席として利用できるという利点もあることから、現在では料金不要の優等列車での採用例が多い。背もたれに中折れ機構を設け、着座姿勢をより改善しているものもある。かつては特別料金を要する列車で用いられることも多かったが、この分野ではより快適なリクライニング機構を設けられる回転式クロスシートに移行した。代わりに最近では普通列車(各駅停車・快速)等の特別料金不要の列車に導入される例が増えている。座席間隔は国鉄型が910mm、私鉄では900mmとする例が多く、必要に応じてこれより拡大または縮小される。

京阪3000系8000系電車阪急電鉄6300系8000系9300系電車京急2100形電車などでは座席の自動転換装置を備え、終着駅での方向転換を自動化している。なお、京急2100形は向かい合わせ使用をしないことを前提に座席間隔を詰め、より多くの座席配置とする設計を採っており、営業時の座席は進行方向に固定され、乗客が転換することはできない(運行開始直後はこれを知らない者が強引にボックス席に変えようと座席を引っ張り、故障が多発したこともある)。

固定式クロスシート

方向転換しないクロスシートで、固定の向きによって次のような配置がある。

ボックスシート
向かい合わせに掛ける配置。国鉄・JRの伝統的なクロスシート車がこれで、旧式の普通客車急行形車両における一般的配置であり、近年まで各地で多く見られた。向かい合わせ間隔は、国鉄型だけでも1,335mmから1,580mmまでの範囲で数種類あったが、急行形車両の多くは1,460mm、1977年以降に製造された近郊形車両は1,470mmで、この辺りが標準とみてよい。
特急用としては、改修前のJR東日本253系電車成田エクスプレス)普通車や、JR東日本251系電車スーパービュー踊り子)の一部などで採用されていた。
進行方向向き
完全に一方向に座席を固定した2人がけクロスシートで、スハ44形客車等、戦前から戦後にかけての特急用三等客車がこれにあたる。終着駅到着後は、デルタ線を利用した、編成まるごとの方向転換を前提としていた。
集団見合型・集団離反型
客室の中央を境に2群に分け、全席が車両中央を向く配置が集団見合型、逆に車端方向を向くのが集団離反型である。見合型は欧州の長距離用開放式客車で採用例が多く、日本では登場時の京急2000形電車や2004年以降改修されたJR東日本253系電車普通車で採用されている。
離反型はかつて東北・上越新幹線開業時の200系新幹線や、0系新幹線の3人掛けシートで採用していた。これは簡易型リクライニングシートを備える際、横幅が大きい3人掛けシートについては回転が出来ないという問題からであった。また、車端部は車体中央を、中央部は車端方向を向いて掛ける配置(京阪9000系電車で採用)や、叡山電鉄デオ900形電車近鉄260系電車のように、前の車両が進行方向向き・後ろの車両が逆向きといった、2両以上にわたる座席配置もある。
集団見合型および集団離反型の場合、構造上着席客の半数は進行方向と逆向きとなるため、酔いやすい等の理由で日本では評判が良くない。ただし、同様の座席レイアウトが多い欧州においては、元来頭端式ホームを持つターミナル駅が多く長距離列車は頻繁に方向転換を行うため、座席の向きを進行方向に合わせるという考え方が一般的でなく、乗客も後向きでの乗車に慣れておりあまり問題にはならない。なお、方向転換構造による制約がない分構造が簡略化され軽量化が図れる、座席構造部の軋み音がしない(現代の車両はそうそう軋み音などしないが)等の利点もある。なお、JR東日本253系電車では座席下を荷物置き場として活用するためこの構造が採用されている。
リクライニングシート(自在腰掛)
リクライニングシート(国鉄185系電車サロ185)

背もたれを傾斜させることができる座席である。

国鉄では、1949年(昭和24年)戦後初の特別急行列車「へいわ」復活に際し、一等展望車に使用するため復活されたマイテ39の座席で初めて採用された。本格的な使用は翌年に登場した特別二等車スロ60形客車からで、このとき採用された機械式5段階ロック・足載せ台付の座席は以後大きな変更もなく国鉄末期まで特急・急行用二等車(→一等車→現グリーン車)の標準装備とされた。なお、スロ60形客車は最初は一等車「スイ60」として設計されたため座席間隔を1,250mmとしていたが、その後製造されたスロ53形客車では1,160mmとなり、これはJR化された現在でも特急形車両におけるグリーン車の標準座席間隔となっている。ちなみに、客車特急列車の展望車の代替車両として151系電車で設計・製造された「パーラーカー」クロ151形車両の1人用リクライニングシートの座席間隔は1,100mmであった。

新幹線では1964年の東海道新幹線開業時における0系新幹線の一等車から、現在に通じる座席幅のものを採用。車体幅が大きい規格をとる新幹線では、横一列当たりの座席数が普通車の大多数は3+2列なのに対し、グリーン車は2+2列として、座席幅にゆとりを持たせている。

普通車では簡易式(後述)のものが183系電車で使用されたのが最初となる。その後国鉄では普通車においても1985年の100系新幹線、在来線用も1986年のキハ183系500番台およびキハ185系気動車から無段階ロック式のリクライニングシートを採用している。なお、後者はキロハ186形の普通座席は転換式クロスシートを採用している。

その後、とりわけJR化以降普通車用座席の改良が重ねられた結果、1990年代後半ともなると普通車用座席とグリーン車用座席との差は傾きや座席の大きさ、シートピッチなどに限定されてきている。そのため在来線用のグリーン車では横一列当たりの座席数を2+2から2+1に減らし、新幹線と同様に1人あたり座席幅をゆとりを持たせて普通車用座席との差別化を図る場合も多い。

また、夜行列車の一部には、高速バス等との競争のために普通車であっても傾きの大きさ、シートピッチなどがグリーン車用に近い座席を導入するケースもある。2003年3月まで「ムーンライトえちご」に充当された165系電車がこれの緒とされ、2006年現在では「あかつき」の「レガートシート」・「はまなす」の「ドリームカー」等が該当する。

簡易リクライニングシート
113系グリーン車の簡易リクライニングシート

1972年に登場した183系電車普通車で初めて採用された、リクライニングシートの一種。同時期に製造された14系客車やキハ183系気動車、また113系グリーン車の一部などにも採用されている。背もたれのリクライニング角度は僅かで、あわせて座面が前後移動する。

初期のものは背もたれにストッパーが無く、体重を掛けていないと座席の傾きが元に戻り、体を起こすたびに「バッターン」という大きな音と衝撃が生じることから、「バッタンコシート」という俗称もある。そのため評判はあまり芳しくなく、1976年以降に製造された車両からは完全にリクライニングさせた時のみ作動するストッパーが付いたが、JR化の前後から指定席車用座席を皮切りに通常のリクライニングシートへの換装が行われた。


椅子の配列

2+1配列の例(JR東日本183系グリーン車

クロスシートは、概ね以下の構成になっている。

2+2配列
一列あたり中央の通路を挟んで2人掛けの椅子が並んでいる配列。日本の鉄道車両の場合ほとんどのクロスシートがこの構成である。
2+3配列
標準規格の新幹線の普通車で採用されている配列。東海道新幹線においては、海側の座席が3人掛け、山側が2人掛け座席となる。修学旅行列車155系電車で最初に採用された。
3+3配列
JR東日本の2階建て新幹線「Max」の2階自由席車で採用されている配列。通路を挟んで3人掛け座席が並ぶ形となる。
2+1配列
1人掛けと2人掛けの座席が組となっており、JR化以降の在来線特急グリーン車で採用されている事例が増えている。振り子式車両では、客室内で左右の重量を揃える為千鳥式の座席配置が見られる。
また、一部の普通・快速列車用車両にもこの配列が見られるが、これは立席定員を増やすためで、1座席の幅は2+2配列で利用されるものとほぼ同じである。
変わったところでは、関空快速用車両の223系0番台は空港利用客のスーツケースなどの荷物置き場としてのスペースを確保する目的も兼ね備えており、当初は1人掛け座席の肘掛け下に荷物を固定するためのワイヤーが備え付けられていた。また、京阪800系電車JR東海371系電車サロハ371形など、室内幅の都合でこの配列となった車両も存在する。
1+1配列
一列あたり中央の通路を挟んで1人掛けの椅子が並んでいる配列。かつての東海道本線特別急行列車群に使用されたクロ151形車両「パーラーカー」の開放式一等席及びその源流となった一等車で用いられた。1990年代に「成田エクスプレス」用253系電車の開放式グリーン席で採用された事例があるが、2004年までに上記の「2+1配列」に変更されている。なお、この配置は座席定員がごく限られることから採用はきわめて異例であり、路面電車の様に車両幅が狭い場合や、側面方向の展望席などに限られる。また変わったところでは、「あかつき」に連結している座席指定席普通車である「レガートシート」用オハ14形300番台車両では高速バス座席配置に倣い、1人掛け座席を独立させ3列に配置している(1+1+1配列)が、これは列車の事情に合わせた例外的なものと言いうる。

なお、一部の車両では車椅子を固定させるために標準の配列から1人分減じた区画を設ける場合がある。

セミクロスシート

2ドアセミクロスシートの例(富士急行5000形電車
3ドアセミクロスシートの例(JR四国121系電車
ファイル:E531車内.jpg
4ドアセミクロスシートの例(JR東日本E531系電車

ロングシートとクロスシートを組み合わせた配置で、通常は乗降が円滑になるようドア付近をロングシート、ドア間にボックスシートを配置したタイプ。

国鉄時代の車両では近郊形車両である113系電車や415系電車等の3ドア車や、80系電車711系電車やキハ40系気動車等の2ドア車が存在している。また、交直流急行電車キハ58系気動車などの急行形車両には、「近郊形改造」として、ドア付近の座席を一部ロングシートに改造した2ドアのセミクロスシート車が存在する。

また、私鉄の例では、首都圏の2ドアセミクロスシート車として希少な存在である東武6050系電車西武4000系電車などが挙げられる。

いわゆる国鉄型車両の場合、新規製造した時点での座席配置としては、3ドアの電車では通常ドア間に左右各2ボックス16名分のボックスシートを配していた。また、2ドア車両の場合ではデッキ付きのものはドア間全てにボックスシートを配しており、デッキがないものについてはデッキ付近をロングシートにし、中央部をボックスシートを配する例が多かった。


近年は4ドアの車両でもクロスシートを導入する車両が増えている。首都圏の場合、相鉄7000系電車GreenBoxこと7755Fの1本のみ)が比較的混まない一部車両のドア間に左右1個づつボックスを試験的に設置した。これを筆頭に同等の設備を同社の8000系9000系、JR東日本のE217系電車E231系電車近郊用仕様車E531系電車首都圏新都市鉄道TX-2000系電車で採用されている。また、名鉄300系電車名古屋市交通局7000形電車のようにロングシートと転換式クロスシートを扉を境に交互に配置した例、近畿日本鉄道のL/CカーやJR東日本の2WAYシートにみられる後述のデュアルシートなどがある。


なお、東急9000系電車都営三田線6300形電車(1、2次車のみ)、東京メトロ南北線9000系電車(1次車のみ)、京急新1000形電車京急2000形電車(改造後)、南海1000系電車南海2000系電車(後期車のみ)などの通勤形車両で、車端部に少数のボックスシートを配する(していた)例がある。

また、国鉄113系電車・115系電車の転換式クロスシート改造車、JR西日本125系電車阪急6300系電車のように、クロスシート主体で運転席後部などにごく少数のロングシートを配する例もある。

また、これとは別に国鉄キハ35系気動車近鉄2610系電車ロングシート化改造車、JR東日本107系電車JR東日本E231系電車のうち小山車両センターの車両の6号車をはじめとする列車便所を有する車両で、便所使用者の直視を避けるため、当該便所前の座席のみを横座席としている車両もある。

変わり種としてはJR東日本719系電車のクロスシート座席部分は集団見合い型名鉄6000系電車の一部では集団離反型の配置になっている。

デュアルシート(L/Cカー・2WAYシート)

デュアルシート(近鉄5800系電車)

ロングシート・クロスシートの両方に転換可能なタイプの座席である。混雑時には背もたれを窓に向けるように並べたロングシートとして使用し、閑散時には回転軸を中央に寄せて回転式クロスシートとして使用する。機構が複雑であるが、利用率に合わせてロング・クロス両配置の適した方で運用することが可能である。

登場自体は古く、1972年に国鉄が阪和線鳳電車区所属の73形電車のクハ79929号車を試験的に改造したのが最初である。これは実用化されなかったが、後の1996年近畿日本鉄道の長距離快速急行用車両として製造された2610系電車の座席でも試験的に採用された。以後L/Cカーの愛称が与えられ、翌年には新造車として5800系電車が、2000年には5820系電車シリーズ21)が登場し本格的に採用された。車端部は4人がけロングシートで、クロスシートにした場合は回転クロスとなる。現在は特急を除いて種別に関係なく使用されている。

また、JR東日本仙石線用に改造した205系電車でも5編成の先頭車に2WAYシートの名称を与え採用している。この場合は観光路線として仙石線の利用を促進させる狙いもある。またE331系電車の先頭車でも類似したものが装備されている。

収容式座席

収容式座席(JR北海道731系電車

主に、車内に設置されている折り畳みタイプの椅子である。混雑時における立席定員の確保のためや扉付近の通行の確保を必要とする場合には折り畳んだ状態でロックされているが、それ以外の時間帯にはロックが解除され利用が可能となるものである。

通勤車両における採用事例としては、京阪電気鉄道の5扉車5000系電車が最初(収納時は屋根部に格納)とされ、JR東日本が山手線205系電車に増結した6扉車「サハ204形車両」で広く知られるようになった。現在ではJR東日本E231系電車阪急8200系電車東急5000系電車 (2代)などに取り付けられている。

また、クロスシート車では、JR西日本223系電車阪和線用0番台、2500番台を除く)や京急2100形電車のようにドア付近に設置されているものや、2階建て新幹線「Max」や近鉄特急の一部のようにデッキに設けた例がある。類似したものとして東武鉄道特急用車両であった5700系電車には観光バスで採用された型式の補助席が設けられていた。

また阪急電鉄京都線京阪電気鉄道特急では、1970年代前半まで折りたたみ式のパイプ椅子が扉付近に取り付けられており、乗客が自由に取り外して座ることが出来る様になっていた。


また、京急600形電車では先駆的な機構として「ツイングルシート」が採用されていた。同形式は地下鉄対応車両としては日本では珍しい全席固定式クロスシート車として登場したが、立席収容力確保のため2人掛け座席の一部を収納して1人掛けとし、座席数が増減できるようにしたものである。しかし、不評のため現在座席の収納は行われていない。詳細は同車項目を参照されたい。

優先席

婦人・子供専用車(昨今の女性専用車設定は正確には新設ではなく復活したもの)廃止以降、1973年から中央快速線を皮切りに「シルバーシート」が設けられた。しかし、バリアフリーを目指す社会の要請に合わせて「優先席」の呼び名に変更し、高齢者だけでなく傷病人・妊婦など立つことが辛い人に優先的に着席してもらうよう改められた。

2000年頃から携帯電話による医療機器への悪影響を防ぐため、優先席付近では携帯電話の電源を切るよう呼びかけがされるようになり、2005年頃からは該当箇所の吊り革の色で区別を図るなどの方策をとっている。また、女性専用車が復活してもこの座席は他の車両で設定している。

最近では阪急電鉄横浜市営地下鉄のように全ての座席を「優先席」とし、特定の優先席を定めない事業者も現れている(なお、2007年8月に阪急電鉄はこのいわゆる「全席優先」が実質機能してないとして、優先席を復活させる方針であると報道された)。

出典

  1. ^ 『通勤電車なるほど雑学事典』(川島令三PHP研究所

関連項目

外部リンク