念仏の鉄

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念仏の鉄(ねんぶつのてつ)は必殺シリーズに登場する、山崎努演じる架空の人物である。小説などの原作を持たない、テレビ番組オリジナルのキャラクターである。

キャラクター[編集]

上州出身。元は宗慶寺の住職であったが、檀家の人妻と肉体関係を持ったために女犯の罪に問われ、佐渡島に流される。この時、同心見習いとして佐渡金山に勤めていた中村主水藤田まこと)と知り合った。怪我人の絶えない金山での過酷な囚人生活から、我流で、骨接ぎの技術を会得する。

仕置人本編の2年前、御赦免となって江戸に流れる。その後、江戸の観音長屋で接骨医を営みながら、酒と女に明け暮れる、その日暮らしの生活を送っていた。ある日、観音長屋に居を構えていた、棺桶の錠沖雅也)の持ち込んだ、ある事件をきっかけに北町奉行所で同心をしていた主水、鉄砲玉のおきん(野川由美子)、おひろめの半次(津坂匡章)らとともに金を貰って、悪を闇に葬る殺し屋「仕置人」となる(第2作『必殺仕置人』)。

殺し技は骨外し。骨接ぎで得た人体骨格の知識を元に、相手の腰骨や喉を指先で破壊し、死に至らしめる。怪力に任せて首を折ったり、半身不随にしたり声を出せなくしたりすることも可能であり、相手を殺さず、生き地獄を味わせることもあった。放送前は「三本指殺法」として宣伝されており、右手の人差し指、中指、薬指を使うことになっていたが、実際には人差し指と中指を使っている[1]。右手の人差し指、中指、薬指での殺しは舞台劇『必殺仕事人』で、誠直也が披露している[1]

金に汚く、他人に情けを掛けることを嫌い、女好きとは言いながらも抱いた女ですら利害が絡むと突き放すなど、冷徹で乾いた性格だが、子供に優しいという意外な一面がある(『新・必殺仕置人』第35話「宣伝無用」)。危機に陥った仲間を救い出したり、外道仕置はいかなる場合も行なわず、仕置に際しては金額の多寡で決めたりしない義理深さも持っている。その一方、仲間を裏切った主水を長年の仲間であるにも関わらず仕置しようとしたこともある[2](『新・仕置人』第8話「裏切無用」)。

仕置人の存在が奉行所に発覚した後は江戸を去り、姿を消していたが、4年後、江戸に再び舞い戻り、鋳掛屋の巳代松(中村嘉葎雄)。絵草子屋の正八火野正平)。スリのおてい(中尾ミエ)とともに、元締・虎藤村富美男)の主催する仕置人組織 寅の会の一員の仕置人となった。寅の会で、主水の仕置の依頼が取り上げられたことをきっかけに主水と再会。主水と再び組んで、裏稼業を行うこととなる(第10作『新・必殺仕置人』)。寅の会の一員となってからは、かつての非情さは徐々に影を潜め、掟には厳しいものの、女子供のために情に流されることも多々あり、性格的に丸くなり、涙もろい一面も見せていた[3]

その後、寅の会で仕置人を続けていたが、辰蔵の寅の会乗っ取りに反抗した際、辰蔵一味に捕らえられ、右腕を黒焦げにされてしまう。その後、自らの手で辰蔵を仕置するが、自身も腹部に致命傷を受ける。重体の体を押して女郎屋に赴き、女郎と床入りしたところで、その生涯を閉じた。

解説[編集]

初登場は『必殺仕置人』。必殺シリーズ第1作『必殺仕掛人』の主人公 藤枝梅安緒形拳)をモチーフに作られたキャラクターである。坊主頭の接骨師で家族を持たず、気ままな独り暮らしを送っているという設定から、梅安の「二匹目のどじょう」を狙っていたことが窺える。しかし、自己中心的快楽主義者という梅安にはなかった怪人的な一面を持ち合わせており、享楽的な人生を謳歌している。『新・必殺仕置人』で、シリーズに復帰[4]。同作の最終回で、命を落とした。なお、鉄の再登場にあたり、山崎は一度演じた役は再びやらないという強い信念を持っていたが、制作スタッフの説得に負けてしまったというエピソードがある。

1982年、『必殺仕事人III』に先立って放映された必殺スペシャル『仕事人大集合』の企画段階では鉄を復活させ、ゲスト出演させるという案が持ち上がっていたが、山崎自身が出演に消極的だったために交渉は失敗し、棺桶の錠と知らぬ顔の半兵衛(緒形拳)が再登場することになった。また1985年、『必殺仕事人V・激闘編』制作の際にも復活案が浮上するが、これも固辞されたため、新キャラクターとして、同じく指による急所砕きの技を使用する壱(柴俊夫)を登場させた経緯がある。以降、再登場は実現しないまま、現在に至る。

本編での再登板は叶わなかったが、舞台版の『必殺仕事人』では誠直也が鉄を演じており、誠は必殺スペシャル『必殺スペシャル・春 勢ぞろい仕事人! 春雨じゃ、悪人退治』で別のキャラクターではあるが、鉄や壱に似た素手の怪力技を使った。1990年バンプレストから発売された、ファミコン用ゲーム ソフト「必殺仕事人」、1996年バンダイビジュアルから発売された、セガサターン用ゲーム ソフト「必殺!」で、主水、飾り職人の秀三田村邦彦)、三味線屋の勇次中条きよし)らとチームを組んで登場している。2007年4月に京楽産業.から発売されたパチンコ機「CRぱちんこ必殺仕事人III」にも登場しており、タイトルが「仕事人」でない番組から「仕事人」のゲームやパチンコに登場しているのは鉄だけである。

2007年8月7日、『笑っていいとも!』の「テレフォンショッキング」に京本政樹が出演した際、「ぱちんこ必殺仕事人」シリーズのポスターを後ろに貼ってもらい、京本がポスターの端の鉄の写真について「あの坊主、誰かわかりますか?」と聞いたところ、タモリも観客もわからなかった様子で、京本は「山崎努さんです。本当は『仕置人』なんですけど、30年前です」と説明していた。

バラエティー番組の「必殺仕事人」のパロディーコントにもよく登場しており、過去に田代まさし矢崎滋などが演じている。

裏話[編集]

  • 鉄は女郎部屋で最期を迎えたが、当初の予定では鉄の死体を発見した主水と正八が、2人で川に沈めるというストーリーだった。しかし、鉄を演じる山崎が「女郎部屋で死ぬほうが鉄らしい最期」と提案し、その意見を取り入れて変更されたという。
  • 『新・仕置人』に於ける鉄はストーリーライン上『仕置人』同様に主人公扱いであるが、演者の山崎は本編のクレジット タイトルでは最後尾(トメ)に記載されており、主演扱いではない。ただし、そのクレジットは起こしタイトル[5]となっている[6]。これは制作段階で、主水役の藤田がトメに再び回されることに抗議をしたためであり、結果、藤田の対応に苦慮していた制作スタッフが山崎と藤田に交渉して、順序を入れ替えたと言われている。詳しくはこちらを参照。
  • 『仕置人』後期では「足を負傷した」という設定で足を引きずっているが、これは当時、山崎が実際に足を負傷していたことを反映したものである。

脚注[編集]

  1. ^ a b 山田誠二『必殺シリーズ完全百科』p28
  2. ^ 実際は主水が事情を把握していなかったための誤解。
  3. ^ ただし、その代わりに「人を殺害するという行為を定期的に行わないと精神的に、もやもやする」といったように暗殺行為そのものに快楽的なものを感じてしまった一面も追加された。
  4. ^ 主水や密偵役以外の旧作の殺し屋が再登板するのはシリーズ初であった。
  5. ^ 倒れている文字が起き上がってくるようにエフェクトされた表示。
  6. ^ 他作品では主人公扱いではあっても主演扱いではなかった時の主水=藤田、山田五十鈴菅井きん村上弘明滝田栄らにも使用されたことがあった。