働き方改革関連法案

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働き方改革関連法案(はたらきかたかいかくかんれんほうあん)、正式名称「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案[1](はたらきかたかいかくをすいしんするためのかんけいほうりつのせいびにかんするほうりつあん)または「働き方改革」一括法案(「はたらきかたかいかく」いっかつほうあん)は、日本法における8本の労働法[注 1]の改正を行うための法律案の通称である。

第4次安倍内閣安倍晋三首相、自公連立政権)下の2018年平成30年)4月6日第196回国会に提出され、6月29日の参議院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。

内容[編集]

2017年(平成29年)9月8日厚生労働省労働政策審議会に諮問し、同月15日に厚生労働大臣加藤勝信第3次安倍第3次改造内閣)から「おおむね妥当」と答申された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」の要旨は、以下の通り[2]

時間外労働の上限規制[編集]

残業労働の上限は月45時間かつ年360時間が原則。繁忙期には単月で休日労働を含み100時間未満で、2~6ヶ月の平均で休日労働を含む80時間以内で、月45時間の原則を上回るのは年6回までの年720時間の残業労働延長ができる。

しかし、年720時間には休日労働を含まないので、企業が休日に働かせれば、制度上80時間の残業を12ヶ月続けられるので、年960時間の残業労働ができてしまう。違反企業や労務担当者には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科す。

残業規制は、大企業は2019年4月施行、中小企業は2020年4月施行、これまで限度時間なしであった建設業と自動車運送業と医師は、5年間適用を猶予。猶予期間後、建設業は他業種と同じ規制、自動車運送業は年960時間を上限とする。医師は業界団体も加わる検討会で議論し省令で定める。研究開発職は規制対象外とし、残業が付き100時間超の時は、医師の面談を義務付ける。

月60時間を超えた残業の賃金割増率は、中小企業への猶予措置を廃止し大企業と同じ50%以上とするのは、2023年4月施行。

有給休暇の消化義務[編集]

10日以上の年次有給休暇が与えられる労働者には、本人の希望を踏まえ、このうち時季を指定して取得させることを企業に義務付ける。

高度プロフェッショナル制度[編集]

特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)を創設。年収1075万円以上、本人が同意していることなどが条件で、各企業の労使委員会による決議が必要。高度プロフェッショナル制度対象者の健康確保のため、年104日以上かつ4週で4回以上の休日取得を企業に義務付ける。

  1. 勤務間インターバル
  2. 働く時間の上限設定
  3. 連続2週間の休日確保
  4. 臨時の健康診断

のいずれかを実施しなければならない。

高度プロフェッショナル制度2019年4月施行。高度プロフェッショナル制度は、おおむね3年後に政府が実際に高度プロフェッショナル制度で働く人の健康管理時間の実態や導入後の課題をまとめ、厚生労働委員会に報告し、高度プロフェッショナル制度適用者の合意内容を1年ごとに確認更新すると指針に規定、監督指導を徹底し、高度プロフェッショナル制度を導入した全ての職場に、労働基準監督署が立ち入り調査するなど、法的拘束力の無い附帯決議がついた。

同一労働同一賃金の推進[編集]

非正規労働者の待遇改善のため仕事内容や配置転換の範囲が正社員と同じである場合は賃金や休暇、福利厚生など同じ待遇確保(均等待遇)を企業に義務付ける。仕事内容などに違いがある場合も、不合理な格差禁止(均等待遇)。格差について企業は労働者に内容や理由を説明しなければならない。

派遣労働者は、

  1. 派遣先企業の正社員との不合理な格差解消
  2. 一定水準を満たす待遇について労使協定の締結

いずれかを実施するよう、派遣会社に義務付ける。

法解釈を明確化するために、指針を策定する。同一労働同一賃金は、大企業と派遣会社は2020年4月施行。派遣会社を除く中小企業は2021年4月施行。

衛生管理の強化[編集]

企業は産業医に、労働者の労働時間など必要な情報を提供しなければならない。産業医の面談に役立てるため、企業は管理職や高度プロフェッショナル制度の対象者を含む全労働者の労働時間を把握しなければならないが、違反しても罰則は無い。産業医から労働者の健康管理について勧告を受けた場合、企業は事業所ごとに労使で構成する衛生委員会で、その内容を報告しなければならない。

裁量労働制の適用業種拡大は裁量制で働く人の実態を再調査し厚労相の諮問機関の労働政策審議会で制度改革案を議論するとしたが、これも法的拘束力の無い付帯決議とされた。労働基準監督官の増員を政府の優先とする[3]

経緯[編集]

2015年(平成27年)4月3日時間外労働割増賃金の削減、・年次有給休暇の確実な取得・フレックスタイム制見直し・企画業務型裁量労働制見直し・高度プロフェッショナル制度創設などを内容とする労働基準法等改正案が、第189回国会に提出された[4]

2016年(平成28年)9月26日働き方改革実現会議が発足し、翌2017年(平成29年)3月28日、第10回同会議において「働き方改革実行計画」が決定された。先の法案は「サービス残業過労死を助長する」などの反対があって、一度も審議されないまま2年以上に渡り継続審議の状態が続いていた[5]が、同年9月28日衆議院解散により審議未了、廃案となった[2]

2018年(平成30年)1月22日第196回国会における内閣総理大臣安倍晋三施政方針演説において、働き方改革関連法案は同国会の最重要法案の一つと位置づけられた[6]1月29日、安倍晋三首相は衆議院予算委員会で「裁量労働制のほうが一般労働者より労働時間が短いというデータもある」と、労働政策研究・研修機構の調査データを使って答弁した。この答弁は、厚生労働省による「平成25年度労働時間等総合実態調査」[注 2][7][8]を根拠にしたものであったが、1カ月のうち「最も残業時間が長い1日」の一般労働者の法定時間外労働の平均時間に8時間を足したものと、裁量労働制で働く労働者の「労働時間の状況」[注 3]を比較して、後者のほうが短いとしていた[9]野党議員からの批判を受け、安倍晋三首相は2月14日に謝罪し、答弁を撤回した[10]

同年2月28日深夜、安倍晋三は今国会に提出予定の「働き方改革関連法案」から「裁量労働制の対象を拡大する部分」を削除するよう厚生労働大臣加藤勝信に指示した。

厚生労働省の毎月勤労統計によると、2017年(平成29年)の1人当たりの1カ月の平均残業代は約19,560円。政府が検討する残業上限規制(年間720時間以内など)で月60時間に抑えると、日本総研の試算では、労働者全体の残業代が年間5兆円、大和総研の試算では8兆5,000億円減少する[11]

2018年(平成30年)4月6日に政府・第4次安倍内閣自公連立政権)は、働き方改革関連法案を国会に提出した。残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)を盛り込み、野党は過労死過労自殺を助長すると批判[12]。残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)は残業代だけでなく休日労働深夜労働の割増賃金の支払いまで免れることになるため、過労死遺族からは「働き方関連法案を『過労死促進法』と言われても仕方ない内容で残念だ。政府はどちらの方を向いているのか」と非難が出た[13]

残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)は『定額働かせ放題』で、大阪大学社会経済研究所の小野善康特任教授は「時間ではなく成果に対して賃金を払う考え方は、人手が足りず、もっと一生懸命働かないとならない環境では良い政策だが、(今のような)消費が低迷し物が売れない時代に、生産性を上げても意味がない」と話す。日本総研調査部の山田久理事は「経済界には、逸脱した裁量性で、過労死や長時間労働につながる問題へのルールづくりの視点が欠けている。国任せでなく、ガイドライン策定などをしっかりやる責務がある。」とPTA会長の息子久保ともきが指摘[14]

共同通信社のアンケートで、残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)に賛成する企業は28 %で、裁量労働制の対象拡大も支持が35 %にとどまったことが分かった。いずれについても、約6 - 7割の企業が「どちらとも言えない」と賛否を保留とした。残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)は、働き方改革関連法案の柱で、経済界が強く要求していた経緯があるが、政府の説明不足で内容が理解しにくいことや国会での混乱が影響して企業が慎重姿勢に傾いていることがうかがえる。アンケートは2018年2月下旬から3月下旬にかけて112社を対象に実施。残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)について回答した100社のうち賛成は28社で、反対は1社、保留は71社。対象となる社員が勤務しているとした29社のうち、成立したら導入すると回答したのは2社のみであった。対象社員が存在しているかを把握していない企業が多く、42社は「分からない」とした[15]

希望の党民進党は、2018年(平成30年)4月12日、終業から始業の間に一定の休息時間を設ける「インターバル規制」導入を義務化し、政府が国会提出した働き方改革関連法案の対案をまとめた。インターバル規制を義務化する点が政府案の努力義務との違い。残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)も創設しないという点も政府案と相違する。同年4月16日以降に国会提出する[16]

同年4月27日自民党公明党の与党は衆議院本会議で、立憲民主党など野党6党の議員が欠席し審議拒否する中で働き方改革関連法案の趣旨説明と質疑を実施した[17]。同年5月2日衆院厚生労働委員会質疑開始、立憲民主党など野党終日欠席[18]。同年5月9日衆院厚生労働委員会与野党出席質疑、立憲民主党は残業上限80時間未満の案の趣旨説明[19]

日本国外の事例としてアメリカ合衆国では、高度プロフェッショナル制度のモデルのホワイトカラーエグゼンプションが低賃金労働者まで拡大、長時間労働と健康被害の蔓延により規制強化にうごいている。日本は明らかに逆の方向に進もうとしている[20]。同年5月15日自民党は日本維新の会の求めに応じ働く人が後に高度プロフェッショナル制度を撤回できる制度を盛り込む一部修正を検討。維新は残業時間の上限規制も中小企業経営に影響を及ぼすとして十分な配慮を自民に求めている。

厚労省は衆院厚労委員会理事会にデータの再調査結果を示し、調査対象の11,575事業所のうち、966事業所で異常値や誤記が見つかる。野党6党派は働き方関連法案を労働政策審議会に差し戻すよう求めることで一致した[21]。同年5月16日衆院厚生労働委員会で高度プロフェッショナル制度対象者が過労死した場合、勤め先に「長時間労働は指導できなくなる」と国民民主党岡本充功氏が指摘。厚労省の山越敬一労働基準局長は「労働時間の上限が無いので長時間労働は指導できない」と答弁で明言した。高度プロフェッショナル制度は法案には仕事の裁量を働く人に委ねる規定がない[22]

同年5月21日午後、自民、公明、日本維新の会、希望の党は高度プロフェッショナル制度の働く人が制度適用への同意ののちに撤回できる手続きを明記する事を一部修正に正式合意[23]。同年5月22日午後、過労死遺族らでつくる「全国過労死を考える家族の会」は高度プロフェッショナル制度創設に反対する抗議集会を総理大臣官邸前で開いた。家族の会は安倍に面会を求めていた。

日本労働弁護団日比谷公園で集会を開き、労組や国会議員、過労死遺族ら約1,800人が参加した[24]。同年5月23日午後、衆院厚生労働委員会は安倍も出席し質疑実施。立憲民主党など野党6党は国会運営に反発し衆院厚生労働委員長高鳥修一(自民党)の解任決議案を衆院に提出。これを受け厚生労働委員会は散会、法案採決は持ち越された[25]

同年5月24日、衆院本会議で野党提出高鳥委員長の解任決議案を与党などの反対多数で否決[26]。同年5月25日院本会議で野党6党派提出の加藤勝信厚労相の不信任決議案が与党の反対多数で否決。衆院厚生労働委員会、自民、公明、維新の会の賛成多数で働き方関連改革法案可決[27]。同年5月31日衆院本会議で自民、公明、日本維新の会などの賛成多数で可決し、衆議院を通過、参議院に送付される[28]

同年6月7日厚生労働省は、参院厚労委員会で、高度プロフェッショナル制度創設を巡って、ニーズ把握を行った12人への聞き取りのうち、9人は2018年1月に行ったと明らかにした。政府は労働者の中に高度プロフェッショナル制度を求める一定のニーズがあると主張してきた。野党は聞き取りはアリバイづくりと批判。厚労省の山越敬一労働基準局長が12人の聞き取り時期について、3人は2015年3月、9人は2018年1月31日と2月1日に行ったことを明らかにした。

社会民主党福島瑞穂参院議員は「2018年2月なら高度プロフェッショナル制度創設の方針は固まっている。これを唯一の根拠にするのは茶番だ。」と批判した[29]。同年6月12日、高度プロフェッショナル制度の前身となる法案が国会に提出された2015年4月3日以前に厚生労働省が対象となりうる専門職1人にしかヒアリングをしていなかったことが、厚生労働省が参院厚労委員会理事会に開示して分かった。厚労省が高度プロフェッショナル制度でヒアリングしたのは計5社12人実施時期は2015年3月31日が1人、2015年5月11日に2人、2018年1月31日に6人、2018年2月1日が3人だった。同じ会社で複数人に聴いていたケースが4社あった。社民党の福島瑞穂参院議員は参院厚労委員会で「ものすごい手抜きで、まとめて(同じ会社の人に)聴いている。これでどうして、みんなの声を聴いたと言えるのか。」12人中9人は人事担当者が同席していたことに対して言いたいことが言えなかったのではないかと調査方法を問題視した。午前の参考人聴取で、企業のコンサルタント会社の小室淑恵社長は「高度プロフェッショナル制度を導入したいと言っている企業は、ほとんどない。」と指摘[30]。同年6月13日地方広聴会を埼玉県川越市で行った。高度プロフェッショナル制度について4人の公述人のうち2人が「長時間労働を助長する」と法案から削除を求めた。高木太郎弁護士は「残業代を払わなくても成果が出るまで働いてほしいという経営者の都合の良い期待を実現するもの」と指摘。残業代を抑制するために企業が裁量労働制を採用している事例を紹介し「高度プロフェッショナル制度でも同様の乱用がおきるのではないか」。連合埼玉の佐藤道明事務局長は「法律ができてしまえば1075万円いじょうの年収要件が下がり、対象職種も見直されかねない。長時間労働を助長する懸念がある。高度プロフェッショナル制度は法案から削除すべき」。三州製菓の斉之平伸一社長は「過労死につながると大変なので歯止めをお願いしたい」[31]。高度プロフェッショナル制度は経営者が講じるべき健康確保策が複数用意される。インターバル制度もその1つだが、どれを選ぶかは労使が話し合う。実際は経営の負担が少ない「臨時の健康診断」を企業が選ぶ可能性が高く、実効性が疑われる[32]竹中平蔵東洋大学教授は高度プロフェッショナル制度の必要性を「時間内に仕事を終えられない生産性の低い人に残業代という補助金を出すのは一般論としておかしい。個人的には結果的に(対象が)拡大していくことを期待している。」棗一郎日本労働弁護団幹事長は高度プロフェッショナル制度に「成果主義の賃金制度に変えるとは法案のどこにも書いておらず定額働かせ放題になる。労働基準監督署が監督する根拠がなくなるので、監督署による過労死認定もほとんど無理。政府は自律的に働けると説明しているがウソ。労働者が出退勤時間や休みを自由に決められる裁量も法案のどこにも書いていない。24時間働けという企業命令に従わず『帰ります』と言ったら解雇懲戒処分になる。高度プロフェッショナル制度は本人の同意が必要。一旦同意した人も撤回できるが、会社から『おまえ、高度プロフェッショナル制度な』と言われて断れる人が、どれだけいるのか。撤回しても『高度プロフェッショナル制度から外れるなら、やってもらう仕事は無いので降格・減給だ』と言われ、対象も財界がすぐに拡大する恐れがある。健康確保措置は年間104日以上の休日のどこが厳しい規制なのか。4週で4日以上の休日も『残り24日間は24時間働け』という業務命令でも合法になる。生産性向上につながると主張しているが、長時間労働を抑制し労働時間を短縮した方が時間当たりの労働生産性は高まるはずだ。」[33]同年6月26日安倍晋三首相は参院厚労委員会で高度プロフェッショナル制度について「適用を望む企業や従業員が多いから導入するものではない。」と述べ、制度創設の理由は労働者ニーズとは関係ないとの考えを示した。国民民主党の浜口誠氏は「働く人は本当に望んでいるのか」との質問に、首相は「多様で柔軟な働き方の選択肢として整備する。望まない方には適用されないので、このような方には影響ない」と述べた。浜口氏は「長時間労働や過労死につながる不安は全く払拭できていない」とし法案から高度プロフェッショナル制度削除を求めた。国民民主、立憲民主、共産などの野党5会派は働き方改革関連法案を巡り加藤勝信厚労相が不適切な対応をしたとして問責決議案を参院に提出した[34]。同年6月27日参院本会議で野党5会派が提出した加藤勝信厚労相に対する問責決議案を与党などの反対多数で否決[35]。同年6月28日午後、立民、共産など野党は島村大厚労委員長(自民)の解任決議案提出。参院野党第一会派の国民の大塚耕平共同代表は「委員会の運営に解任に当たる瑕疵は感じられない」とし解任決議に加わらず野党の対応は割れた。参院議運委は解任決議案を本会議では取り扱わないと決定。その後、参院厚労委の理事会を再開し採決することを決めた[36]。同年6月28日参院厚生労働委員会にて自民、公明、維新の会などの賛成多数で働き方改革関連法案可決[37]。同年6月29日参院本会議で自民、公明、維新の会、希望の党無所属クラブの賛成多数で可決、成立[38]。国民民主、立憲民主、共産など野党は反対、共産党の倉林明子氏は「高度プロフェッショナル制度は長時間労働を拡大し過労死を促進するとして削除すべき」とし、立憲民主の難波奨二氏は「会期を延長した以上、まだまだ審議できる」とした[39]

裁量労働制との相違点としては、裁量労働制は労働基準法で「業務の遂行方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる」と明記されるが、高度プロフェッショナル制度は法律には明記されず省令で規定されるので国会の承認が不要となる。

働き方改革関連法案の審議で浮かんだ懸念は、条文に明記されずに省令で定める事項が計62項目に上る点で法改正を経ずに、なし崩しに適用範囲が拡大しかねない。

高度プロフェッショナル制度の年収要件を政府は1075万円以上と説明するが、法案には「年間平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準」と書いてあるだけで具体的には法成立後の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で論議し省令で決める。

対象業種も政府は、①金融商品の開発業務、②金融ディーラー、③アナリスト、④コンサルタント、⑤研究開発職を例示するが、具体的には労政審で決め、労政審で経営側委員が対象拡大を求め広がる懸念がある。

働き方改革関連法案には高度プロフェッショナル制度を適用された人が出退勤時間や仕事の進め方を決められる裁量について何も書かれておらず、これも省令で決める[40]

厚生労働省が約7600事業所を対象に行った監督では約4割で違法な時間外労働があった。

「時間外規制がある現行の働き方でも違法に長く働かせる状況での高度プロフェッショナル制度導入は過労を増やし過労死を増大させかねない」との指摘を出てきている。[41]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 雇用対策法労働基準法労働時間等設定改善法労働安全衛生法じん肺法パートタイム労働法(パート法)、労働契約法労働者派遣法の労働関連8法
  2. ^ 厚生労働省労働基準局 (2013年10月). “『平成25年度労働時間等総合実態調査結果』 (PDF)”. 2018年2月23日閲覧。時間外労働及び休日労働の実態・割増賃金率の状況・裁量労働制の実施等を把握することを目的として、2013年(平成25年)4月から6月にわたって、労働基準監督官が訪問調査した。調査結果は同年10月30日の労働政策審議会労働基準分科会に資料として提出された。なお、調査対象の事業場数は11575とされていたが、そのうちすくなくとも6つの事業場が二重集計されたものであったことが2018年5月25日に判明している (厚労省調査新たに二重集計のミス”. 共同通信 (2018年5月25日). 2018年5月25日閲覧。)。
  3. ^ 「労働時間の状況」とは「労働基準法第38条の3第1項第4号又は第38条の4第1項第4号に規定する労働時間の状況として把握した時間」(厚生労働省労働基準局 (2013年10月). “平成25年度労働時間等総合実態調査結果 (PDF)”. 2018年2月23日閲覧。) とされる。2013年10月30日の労働政策審議会労働基準分科会においては、村山労働基準局労働条件政策課長が「健康・福祉確保措置等を講ずる観点から、入退室の時刻等を把握していただいておりますけれども、そうした形で把握した時間も含めた把握できる範囲の数字」(労働基準局労働条件政策課. “2013年10月30日 第104回労働政策審議会労働条件分科会 議事録”. 2018年3月19日閲覧。) と説明していた。

出典[編集]

  1. ^ 暮らし関連法案 国会審議本格化 「働き方」最大の焦点 裁量労働制、与野党が攻防”. 毎日新聞 (2018年2月18日). 2018年2月22日閲覧。
  2. ^ a b スペシャルトピック 働き方改革/労政審が関連法案の法律案要綱をおおむね妥当と答申”. 『ビジネス・レーバー・トレンド』2017年11月号. 独立行政法人労働政策研究・研修機構. p. 38-41. 2018年2月22日閲覧。
  3. ^ 2018年6月30日中日新聞朝刊1面,2面,8面
  4. ^ 「労働基準法等の一部を改正する法律案」について (PDF)”. 厚生労働省. 2018年2月22日閲覧。
  5. ^ 働き方改革 問題多い一括法案 性格異なり”. 毎日新聞 (2017年9月15日). 2018年2月22日閲覧。
  6. ^ 働き方改革へ決意、改憲論議前進を 首相施政方針演説”. 日本経済新聞 (2018年2月18日). 2018年2月22日閲覧。
  7. ^ 労働時間等総合実態調査”. 独立行政法人労働政策研究・研修機構 (2013年11月). 2018年2月23日閲覧。
  8. ^ “2013年度 労働時間等総合実態調査: 厚生労働省”. 賃金事情. 2667号24-33頁 (2014年).
  9. ^ 2018年3月1日中日新聞朝刊1面
  10. ^ 【衆院予算委】菅義偉長官「精査必要なデータで撤回」 働き方改革関連法案をめぐる首相の答弁撤回に”. 産経新聞 (2018年2月14日). 2018年2月22日閲覧。
  11. ^ 2018年3月4日中日新聞朝刊3面
  12. ^ 2018年4月7日中日新聞朝刊1面
  13. ^ 2018年4月7日中日新聞朝刊3面
  14. ^ 2018年4月7日中日新聞朝刊6面
  15. ^ 2018年4月8日中日新聞朝刊1面
  16. ^ 2018年4月13日中日新聞朝刊3面
  17. ^ 2018年4月28日中日新聞朝刊2面
  18. ^ 2018年5月3日中日新聞朝刊2面
  19. ^ 2018年5月10日中日新聞朝刊2面
  20. ^ 2018年5月13日中日新聞朝刊5面
  21. ^ 2018年5月16日中日新聞朝刊2面
  22. ^ 2018年5月19日中日新聞朝刊2面
  23. ^ 2018年5月22日中日新聞朝刊1面
  24. ^ 2018年5月23日中日新聞朝刊26面
  25. ^ 2018年5月24日中日新聞朝刊2面
  26. ^ 2018年5月25日中日新聞朝刊2面
  27. ^ 2018年5月26日中日新聞朝刊1面
  28. ^ 2018年6月1日中日新聞朝刊3面
  29. ^ 2018年6月8日中日新聞朝刊3面
  30. ^ 2018年6月13日中日新聞朝刊3面
  31. ^ 2018年6月14日中日新聞朝刊3面
  32. ^ 2018年6月14日中日新聞朝刊5面
  33. ^ 2018年6月21日中日新聞朝刊2面
  34. ^ 2018年6月28日中日新聞朝刊2面
  35. ^ “参院、加藤勝信厚労相の問責決議案を否決 与党、働き方改革法案の29日成立目指す”. 産経新聞. (2018年6月27日). https://www.sankei.com/politics/news/180627/plt1806270032-n1.html 2018年6月30日閲覧。 
  36. ^ 2018年6月29日中日新聞朝刊1面
  37. ^ “働き方法案、参院委員会可決 29日本会議で成立見通し”. 朝日新聞. (2018年6月28日). https://www.asahi.com/sp/articles/ASL6X4FGSL6XUTFK00P.html 2018年6月30日閲覧。 
  38. ^ “働き方改革法が成立 脱時間給や同一労働同一賃金”. 日本経済新聞. (2018年6月29日). https://r.nikkei.com/article/DGKKZO32398980Z20C18A6MM0000?unlock=1 2018年6月30日閲覧。 
  39. ^ 2018年6月29日中日新聞朝刊1面
  40. ^ 2018年6月29日中日新聞朝刊2面
  41. ^ 2018年6月29日中日新聞朝刊5面

関連項目[編集]