コンテンツにスキップ

レースクイーン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Race Queen
大会主催者が雇ったGrid Girl(ドイツツーリングカー選手権)
3人のRace Queen
マカオグランプリ

レースクイーン(Race Queen)とは、モータースポーツに参戦する各チームのスポンサーに所属するコンパニオンである。

一方、レース前配置(グリッド)を案内するため、レーサーの選手名やゼッケン番号が書かれたプラカードを持つ係員は、大会主催者が雇ったグリッドガール(Grid Girl)である。

なお、「RQ」と略される場合もある。

概要

[編集]

以前はレースの大会主催者などに雇われた(選ばれた)数名の女性(例えば鈴鹿サーキットクイーン等)で、優勝者の表彰などレース運営の中で一定のシンボル的役目を担う者を指す言葉だった。現在ではそれらの女性を「サーキットクイーン」と呼ぶ。そして、現在ではチームに雇われたキャンペーンガールを「レースクイーン」と呼ぶ。

また、この用語は元々英語のPromotional modelのサーキット版というニュアンスで作られた和製英語で、英語では「Paddock girls」などの名称も用いられているが、性差別の観点から、先進国では廃止の方向性にある。

レースクイーンの分類としては、レースクイーンだけを職業とする者がいる一方で、学生やその企業の従業員が兼業で就業することもままある。また、タレントや俳優として名を成した者もしくはグラビアアイドルなどでデビューした後に年契約でレースクイーンを務める、コスプレイヤーやネットアイドルといった「アイドル予備軍」が参入するなど経歴や形態が多様化している。

歴史

[編集]

競技スポーツにおける、入賞者にトロフィーを授けキスをするという表彰台ガール (en:Podium girl) は、20世紀初頭より自転車レースのツール・ド・フランスで有名になった。このようにレースの勝者を英雄として美しい女性が栄冠(トロフィーや月桂冠)を与えるという形態は古代ギリシアより存在した。1950年代にはシャンパンシャワーも行われるようになった。 

モータースポーツにおいては、戦後女性は開会式や表彰式のアシスタントとして従事する程度であった。1960年代頃より、モデルの女性がF1やル・マンなどのレーストラックに登場するようになり、チームで衣装を統一したマスコットガールも見られるようになる。1960年代後半に小川ローザらがNETスピードカップなどでサーキットモデルとしてアシスタント(主にトヨタレーシングチームのマスコットガール)として活躍したのが日本式レースクイーンの起源といわれている[1]。

海外でもレーストラックのモデルやグリッドガールは同時期に存在していたが、小川ローザがレースクイーンの起源とされるようになったのは、1969年に放映された小川が白いヘルメットにミニスカート姿で車を運転し「Oh! モーレツ」の決め台詞で出演した丸善石油のCMが国内で一世を風靡した影響が大きい。

F1グランプリにおいては、1971年のスペイングランプリには、スパンデックスのタイトなボディフィットのユニフォームを着たレースピットのコンパニオンガールが登場するようになる。1973年のF1イギリスグランプリでは、チーム・ロータスのスポンサーであったタバコ会社en:John Player & Sonsによるブランド名の入ったタイトTシャツとホットパンツ姿のキャンペーンガールたちがレーストラックに登場した。この時、大雨に見舞われた際にモデルたちが黄色いホットパンツとお揃いの黄色い傘をさすショットも見られた。それに続き、タバコ会社マルボロのキャンペーンガール、通称マルボロ・ガールズやR.J.レイノルズのキャメル・ガールズもF1に登場するようになった。このように1970年代のレースチームスポンサーによるキャンペーンガールは、タンクトップとホットパンツのスタイルが主流であった。

1983年のル・マン24時間レースでは、スポンサーの日焼けローション会社en:Hawaiian Tropicによるブランド名入りのタスキにビキニを着たキャンペーンガール、通称ハワイアン・トロピック・ガールズがレーストラックに登場した。1984年に開催された日本最高峰のオートバイ耐久レース「鈴鹿8時間耐久ロードレース」では、一部チームのキャンペーンガールがチーム名のロゴを入れた水着を着て応援し、話題となった。これ以降、各チームのキャンペーンガールが水着やレオタードにスポンサーの広告を掲げるようになったことから日本のレースクイーン文化は本格化した。

1980年代後半のバブル経済絶頂期に入ると、チームやスポンサー企業のロゴが入った極めて布地面積が少ないハイレグ・レオタードを身に纏った女性たちがサーキットに出現し、人気を博した。これ以降、このようなスタイルがレースクイーンの主流として定着した。特にオートバイのレーシングチームでキャンペーンガールを務めた飯島直子と岡本夏生の大ブレイクで、レースクイーンはサーキットを飛び出して様々な舞台へと進出するようになっていった。日本のレースクイーンは芸能界、人気タレントやアイドル特に映画女優への登竜門的存在となっている[2]。当時は日本以外の国では余り存在しておらず、レースクイーンは日本が発祥の地であると言われ、海外のレースにも広がった[1]。海外では、1990年代後半から2000年代初頭に、F1チームジョーダン・グランプリのグリッドガール、通称ジョーダン・ガールズが注目を浴びた。

現在

[編集]

レースクイーンを多く輩出する芸能事務所が多数あり、レースが行われない週末のカメラ小僧向けのアマチュア撮影会に所属のレースクイーンをモデルとして出演させて収益を得るといったことが行われている。そのため、レースはスポンサーアピールだけでなく、撮影会の集客の宣伝の場にもなっている。また、ワンエイトプロモーション、フェスタソーレ、エモーションカンパニーなどレースクイーンに特化したタレントマネージメント・撮影会事業を展開する事業者も登場している。

「レースクイーン」の役職欲しさに、イベントコンパニオン関連のオフィス(中でもパチンコ系のイベント会社)が自社の資金でレーシングチームのスポンサーとなり、自社のコンパニオンをレースクイーンに起用するといった例も見られる。過去にはAV女優をレースクイーンとしたソフト・オン・デマンドの例(2002年のフォーミュラ・ニッポンで山本清大をスポンサードした)もあるが、当時プレスのみならずレース関係者、一般の観客の間からも激しい批判が起こった。

モータースポーツで一番動員力があるSUPER GT(旧全日本GT選手権)は注目度も高いため、年々レースクイーンの数も増加の一途をたどった。特に2003年には飽和状態に達し、1レースで200名以上、1台のマシンに10名以上が立つチームも現れたことから、翌2004年以降は競技の進行を円滑に行うため、1台に対する人数の規定が設けられた。しかし、1レースに立てるのが4人だけで、実際は2007年までは5人以上登録していたチームも存在したため、全体で160〜180人程度いた。2008年に正式に公式規則で登録できるのが1シーズン4名までと規定され、人数も100人程度に減少した。(2008年から2011年までは4名まで、2012年より6名まで、2016年から登録人数は8人に緩和、1レースに立てるのは6人で変わらず)

日本で行われるレースが少ないことやレースクイーンとしてのギャランティーも下落している。岡本夏生・飯島直子らが人気レースクイーンとして活躍していたバブル期はレースウィークだけでも数十万円という時代はあったが、1990年代後半は所属事務所がレースクイーンになりたいモデルを無料で送り出すケースも出始め、ギャラのケタも一つ少なくなった[3]。狭き門のオーディションを通過してレースクイーンになってもレースのない時期はイベントコンパニオン・撮影会モデルや、一般企業のOLなどの副業で生計を立てる者がほとんどである。

1990年代後半から、「レースクイーン・キャンギャル情報誌」を名乗る書籍(雑誌、ムック等)が雨後の筍のごとく次々と創刊されたが、ほんの数年で軒並み休刊・廃刊になっている。しかし、『オートスポーツ』別冊として当初スタートした『ギャルズパラダイス』などはモーターショーや見本市のコンパニオンとして出演するモデルたちも取りあげることで発行を続けている。

世界での状況

[編集]

欧米では「Paddock Girls」「Grid Girls」等の名称で、決勝レース時のダミーグリッドでの看板持ちなどに女性を起用することが多いが、これは基本的にレース主催者側が用意するもので、日本のレースクイーンのように各チームと契約して、胸を強調するような服を着てレース毎に帯同する形態とは異なる。

欧米ではこれらの女性について「性差別の象徴」とみなして批判する意見があり、実際にFIA 世界耐久選手権(WEC)では2015年よりグリッドガールを廃止している。また、富士スピードウェイで行われる日本ラウンドでは、2017年現在もグリッドガールが存在している[4]。

F1でも2015年ブラジルグランプリでは「女性だけを起用するのは不公平」との意見から「Grid boy and girl」として男女混在形式が導入されたほか、2017年末にはWEC同様にグリッドガールを原則廃止すべきとの議論が巻き起こった(ただしドライバーやチーム関係者は反対している)[5]。

廃止

[編集]
  • 鈴鹿サーキットクイーンは2020年末を持って活動及び新規募集を終了した[6]。
  • 性差別に関するマナーは欧米は当然のごとく、ユーラシア・アジアでも非常に厳しくみられる傾向が21世紀に入り急激に強まっており、グリッドガールはその批判の先頭に立たされてきたこともあって、2018年1月31日、フォーミュラ1は「現代の社会規範にそぐわない」として2018年シーズンからグリッドガール(レースクイーン)の廃止を決定した[7]。グリッドガールに代わって「グリッドキッズ」を導入した[8]。グリッドボーイを試験的に導入したうえでの変更であった。
  • 日本でも、レースクイーン自体は廃止されていないものの、名称変更や対象の拡大等で批判をかわす動きがある。この例としてSUPER GTでは、2024年より従来のレースクイーンに相当する人物を「レースアンバサダー」と呼称し、対象を女性に限らないなどの変更を行っている[9][10]。

コスチュームの変遷

[編集]

コスチュームのデザインは、同じチーム・スポンサーであっても毎年変更されており、その時代の流行が多く反映されている。

1980年代以前

[編集]

サーキットのイメージガールである、本来のレースクイーンの活躍が見られた時期。

衣装はTシャツかタンクトップとホットパンツの組み合わせに、足元はブーツといういでたちが一般的。季節によって、丈の短いジャケットが加わる場合もある。たすきは必携で、時代やサーキットによっては、ミニスカートやティアラも見られる。

なお、ロングヘアはあまり見られない。

1980年代から1990年代前半

[編集]

エアロビクスブームの影響から、足ぐりの角度を極端に上げたハイレッグカット(ハイレグ)のワンピース型レオタードが主流となり、スポンサー名を直接印刷するか、またはたすきが用いられる。下には海外製を中心とした、ジャズダンス用のマチの見えない光沢のあるストッキングが組み合わされた。また、Tバックタイプのレオタードを着用するレースクイーンも多く見られた。

ピンヒールと大きな傘、そして当時流行の髪形(初期はレイヤー、その後ワンレンやソバージュ)とともに、レースクイーンの象徴的なスタイルとして強い印象を与えた。

なお、フェイスメイクは色黒、太眉が主流であった。

1990年代後半

[編集]

ハイレグ路線から転換し、極端なミニスカートのワンピースが主流となる。スパンデックス素材で作成された体のラインがそのままに出るものから、徐々にエナメル素材(PVC)のものへと変化した。

ワンピースの利点は布地面積が広いことであり、スポンサーのロゴが大きくプリントされ、企業やチームカラーで色とりどりにデザインされた。大きな襟が付いていることも特徴的だった。

なお、ハイレグに代わるセクシーさを求め、大胆なスリットを設けたり、バストの部分をくり抜き、谷間を強調するデザインが現れた。

2000年代初頭

[編集]

ワンピースからセパレートタイプへの移行が挙げられる。ウエスト部分を露出したアンダーバストまでの上衣(ホルターネック・チューブトップ・ハーフトップやキャミソールが中心)とミニスカートに、ブーツ(夏季はサンダル)、春や秋には七分袖丈の上着を合わせるというスタイルが主流となった。スポンサーのロゴは小さくなったが、カラーリングの組み合わせが容易になった。

パンツスタイルも採用されるようになり、長ズボン(スラックス)と短いホットパンツに大別される。なお、サイドを網状にしたりカッティングしたりするなど大胆な露出が施された。

2000年代後半

[編集]

セパレートタイプが主流となっているが、色や素材の違うパターンを織り込んで縫製された、細部にわたる複雑なデザインのものへと変化している。ショートパンツはローライズタイプが主流となっている。アクセサリー・帽子・上着もチームによってさまざまに取り入れられている。

なお、スポンサーによってはドレスやメイド服、セーラー服など、萌え系コスプレを意識したデザインも登場しており、過度な露出に頼らないスタイルへのシフトが感じられる。

レースクイーンのイベント

[編集]

レースクイーン出身タレント(五十音順)

[編集]

「Category:レースクイーン」「Yahoo 検索エンジン」も参照

脚注

[編集]
  1. 1 2 「【美女カタログ】一挙蔵出し! Fニッポン・レースクイーン集」『MSN産経ニュース』2011年12月29日。オリジナルの2011年12月29日時点におけるアーカイブ。2011年12月30日閲覧。
  2. ↑ 「F1がレースクイーン廃止を発表!「現代の社会規範に適さない」」『Yahoo!ニュース(THE PAGE)』2018年2月1日、2頁。オリジナルの2022年5月25日時点におけるアーカイブ。2022年8月7日閲覧。
  3. ↑ “2日間のギャラは50万円!? 80年代後半から始まった”レースクイーン・バブル”は、こんなにスゴかった!”. 集英社 ヨミタイ (2019年2月23日). 2019年7月25日閲覧。
  4. ↑ “日本のトップレースクイーン8名が世界耐久選手権のグリッドを華やかに演出|ウォーカープラス”. ウォーカープラス(Walkerplus). 2026年8月20日閲覧。
  5. ↑ “グリッドガール廃止説にドライバーたちが反対「F1から美しさをこれ以上奪わないで……」”. autosport web (2017年12月18日). 2026年8月20日閲覧。
  6. ↑ “「鈴鹿サーキットクイーン」、2020年限りで活動を終了”. Formula Web (2020年12月28日). 2022年10月24日閲覧。
  7. ↑ “F1、グリッドガール廃止 「現代の社会規範にそぐわず」”. フランス通信社 (2018年2月1日). 2018年5月26日閲覧。
  8. ↑ “F1、グリッドガール廃止に代わって『グリッドキッズ』の導入を正式発表”. オートスポーツWeb (2018年2月6日). 2018年5月26日閲覧。
  9. ↑ “スーパーGT規定内で『レースクイーン』の呼称変更へ。現状は『レースアテンダント(仮称)』”. autosport web (2024年2月9日). 2026年8月20日閲覧。
  10. ↑ “スーパーGTのシリーズ内におけるレースクイーン呼称は2024年から『レースアンバサダー』に | レースクイーン”. autosport web (2024年3月16日). 2026年8月20日閲覧。
  11. ↑ 「発売前から話題騒然! 超ハイスペック美女・天野ちよ、非現実ダイナマイトボディを大盤振る舞い【写真9点】」『ENTAME next』徳間書店、2024年11月20日。2025年2月11日閲覧。
  12. ↑ 「天野ちよ、真っ赤なビキニ姿で“女豹のポーズ”…大胆衣装で、身長169cmのグラマラスボディー強調」『WEBザテレビジョン』KADOKAWA、2025年1月8日。オリジナルの2025年2月11日時点におけるアーカイブ。2025年2月11日閲覧。
  13. ↑ “天野ちよ”. ワンエイトプロモーション. 2025年2月11日閲覧。
  14. ↑ 「希少すぎる“現役薬学生Fカップレースクイーン”有馬奈那、最新DVDでお姉さんキャラに目覚める!?」『ASCII.jp』角川アスキー総合研究所、2016年6月28日。2025年2月11日閲覧。
  15. ↑ “パシフィックレーシングチーム 歴代レースクイーン 有馬 奈那”. パシフィックレーシングチーム. 2025年2月11日閲覧。
  16. ↑ 「荏崎ろあ「車のことは何でもお任せ!」 レースクイーンでありながら全日本ラリーではメカニックも担当」『zakII』産経デジタル、2023年2月10日。2025年8月24日閲覧。
  17. ↑ 「現役RQの荏崎ろあが2回目のラリードライバーに挑戦もクラッシュを初体験」『ASCII.jp』角川アスキー総合研究所、2024年9月7日。2025年8月24日閲覧。
  18. ↑ 「現役RQの荏崎ろあが2回目のラリードライバーに挑戦もクラッシュを初体験」『ASCII.jp』角川アスキー総合研究所、2024年9月7日、2頁。2025年8月24日閲覧。
  19. ↑ 「「ATで運転を楽しむ」ビッグエンジンのVIPセダンでドリフトできるクルマをカスタム〈SENSE BRAND〉」『月刊自家用車WEB』内外出版社、2025年2月10日。2025年8月24日閲覧。
  20. ↑ 「「レースクイーン・オブ・ザ・イヤー2004」公式サイトが開設」『ケータイWatch』インプレス、2003年11月12日。2025年2月11日閲覧。
  21. ↑ 「RaceQueen GLAPHIC 発売記念 RQサイン入り生写真プレゼント」『All About』オールアバウト、2004年7月20日。2025年2月11日閲覧。
  22. ↑ 「くるす蘭、現役ビール売り子で「第二位」獲得 「美人すぎる」「こんなかわいい子が」と話題」『ENCOUNT』Creative2、2024年11月23日。2025年2月11日閲覧。
  23. ↑ “くるす蘭”. ゼロイチファミリア. 2025年2月11日閲覧。
  24. ↑ 「雛乃ぽぽの『セクシーで無防備な寝姿』マネージャーが激写!「お尻ペンしたいわ笑」と”お仕置き”コメントも」『中日スポーツ・東京中日スポーツ』中日新聞社、2022年12月27日。2025年2月11日閲覧。
  25. ↑ 「井岡戦のビキニでも注目、”RISEラウンドガール”ぽぽちゃんが日本レースクイーン大賞新人賞ファイナリストに」『イーファイト』ヨシクラデザイン、2023年7月2日。2025年2月11日閲覧。

関連項目

[編集]
イベント、会場のマスコット