アンテ (衛星)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アンテ
Anthe
カッシーニによるアンテ(赤い文字付き)の発見映像
カッシーニによるアンテ(赤い文字付き)の発見映像
仮符号・別名 仮符号 S/2004 S 4
別名 Saturn XLIX
分類 土星の衛星
軌道の種類 アルキオニデス
(内大衛星群の副群)
発見
発見日 2007年5月30日[1]
発見者 カッシーニ画像班[1]
軌道要素と性質
軌道長半径 (a) 197,700 km[2]
離心率 (e) 0.0011[2]
公転周期 (P) 1.05089 日[2]
軌道傾斜角 (i) 0.1°
(土星の赤道)[2]
近日点引数 (ω) 138.902°[3]
昇交点黄経 (Ω) 287.852°[3]
平均近点角 (M) 190.473°[3]
土星の衛星
物理的性質
直径 1.8 km[4]
平均半径 0.9 km[4]
質量 1.5 ×1012 kg[4]
平均密度 未知(推定 1.2 g/cm3
自転周期 同期回転と推測される
Template (ノート 解説) ■Project

アンテ[5][6]英語:Anthe、ギリシア語Άνθη、確定番号:Saturn XLIX)は、土星の第49衛星である。極めて小さい衛星であり、ミマスエンケラドゥスの中間の軌道を公転している。

土星探査機カッシーニによって2007年5月30日に撮られた画像から、カッシーニの画像解析チームによって発見された[1]。一度その存在が知れるとカッシーニの古い画像が再解析され、この小さい衛星が2004年6月には観測されていたことが判明した。衛星の発見は同年7月18日に国際天文学連合のサーキュラーで公表され、S/2007 S 4 という仮符号が与えられた[2][7]。その後9月20日にアンテと命名され、また Saturn XLIX という確定番号が与えられた[8]。「アンテ」の名はギリシア神話のAlkyonidesアルキオネウスの七人の娘)の一人に由来する。この衛星は、確認された土星の衛星としては60番目のものである[9]

アンテの軌道は、自身より遥かに大きいミマスによる摂動的な 10:11 の平均経度の共鳴によって影響を受けている。このためメトネの接触軌道要素[注 1]には大きな変化が生じており、およそ2年の時間スケールで軌道長半径が 20 km ほどの振幅で変動している。パレネおよびメトネと極めて近い軌道を持つことから、これらの衛星は力学的に密接な関係にあると推測されている。

2007年にカッシーニが撮影したアンテの画像から、アンテの周辺の軌道上に弧状のが発見され、R/2007 S 1 という仮符号が与えられた[10]。この環はアンテ・アークと呼ばれている。アンテ・アークは、アンテに衝突した微小隕石によって放出された物質で構成されていると考えられている[11][12]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 天体のある瞬間の位置と速度から計算した軌道要素のこと。時々刻々と変化するものであり、摂動などによる短周期での変動を知りたい場合にはこちらが用いられる。一方、長時間で平均して細かい変動を取り除いた軌道要素は平均軌道要素と呼ばれる。

出典[編集]

  1. ^ a b c NASA (2017年12月8日). “In Depth | Anthe – Solar System Exploration: NASA Science”. アメリカ航空宇宙局. 2018年11月30日閲覧。
  2. ^ a b c d e Daniel W. E. Green (2007年7月18日). “IAUC 8857: C/2007 N3; S/2007 S 4”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年11月30日閲覧。
  3. ^ a b c Jet Propulsion Laboratory (2013年8月23日). “Planetary Satellite Mean Orbital Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. ジェット推進研究所. 2018年11月30日閲覧。
  4. ^ a b c Jet Propulsion Laboratory (2015年2月19日). “Planetary Satellite Physical Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. ジェット推進研究所. 2018年11月30日閲覧。
  5. ^ 衛星日本語表記索引”. 日本惑星協会. 2019年3月9日閲覧。
  6. ^ 太陽系内の衛星表”. 国立科学博物館. 2019年3月9日閲覧。
  7. ^ C. Porco and the Cassini Imaging Team (2007-07-18). "S/ 2007 S 4"
  8. ^ Daniel W. E. Green (2007年9月20日). “IAUC 8873: P/2007 S1; Sats OF SATURN”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年11月30日閲覧。
  9. ^ Agle, D. C. (Jul. 19, 2007). Saturn Turns 60. JPL (Cassini-Huygens). Retrieved on 2007-07-19.
  10. ^ カッシーニが土星に弧状の環を発見”. アストロアーツ (2008年9月22日). 2018年11月30日閲覧。
  11. ^ Porco, Carolyn (2008年9月5日). “More Ring Arcs for Saturn”. Cassini Imaging Central Laboratory for Operations. 2008年10月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年9月5日閲覧。
  12. ^ Hedman, M. M.; Murray, C. D.; Cooper, N. J.; Tiscareno, M. S.; Beurle, K.; Evans, M. W.; Burns, J. A. (2008-11-25). “Three tenuous rings/arcs for three tiny moons”. Icarus 199 (2): 378–386. Bibcode2009Icar..199..378H. doi:10.1016/j.icarus.2008.11.001. ISSN 0019-1035. 

外部リンク[編集]