パンドラ (衛星)

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パンドラ
Pandora
2005年にカッシーニが撮影したパンドラ
2005年にカッシーニが撮影したパンドラ
仮符号・別名 仮符号 S/1980 S 26
別名 Saturn XVII
分類 土星の衛星
発見
発見日 1980年10月
(38年前) (1980-10[1]
発見者 S・A・コリンズ
ボイジャー1号
発見方法 ボイジャー1号が撮影後受信された画像から発見した。
軌道要素と性質
元期:2003年12月31日
軌道長半径 (a) 141,720 ± 10 km[2]
離心率 (e) 0.0042[2]
公転周期 (P) 0.628504213 日[2]
軌道傾斜角 (i) 0.050° ± 0.004°
(土星の赤道)[2]
近日点引数 (ω) 66.248°[3]
昇交点黄経 (Ω) 147.272°[3]
平均近点角 (M) 125.112°[3]
土星の衛星
物理的性質
三軸径 104 × 81 × 64 km[4]
平均半径 40.7 ± 1.5 km[4]
表面積 ~21,000 km2
体積 ~270,000 km3
質量 (1.371±0.019) ×1017 kg[4]
平均密度 0.49 ± 0.08 g/cm3[4]
表面重力 0.0026-0.0060 m/s2[4]
脱出速度 ~0.019 km/s
自転周期 同期回転
アルベド(反射能) 0.6[5]
赤道傾斜角 0
表面温度 ~78 K
大気圧 なし
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パンドラ[6][7] (Saturn XVII Pandora) は、土星の第17衛星である。

発見と命名[編集]

パンドラは1980年10月中旬に、ボイジャー1号が撮影した写真の中からコリンズらボイジャーの撮像チームによって発見され、S/1980 S 27 という仮符号が与えられた[1]。この際にはプロメテウスも発見されている。その後1986年1月3日に、ギリシア神話に登場するパンドラという女性にちなんで命名され、Saturn XVII という確定番号が与えられた[8]。外側を回る別の衛星には彼女の夫であるエピメテウスの名が付いている。

物理的特徴[編集]

1981年ボイジャー2号が土星に接近した際の観測では大まかな形状が撮影されたのみだったが、2005年に土星探査機カッシーニによる接近観測では詳細な姿が明らかにされた。

自己を球形に保つほど重力が大きくないため歪な形をしており、三軸径が 104 × 81 × 64 km の楕円体で近似される[9]。表面には直径 30 km の2つのクレーターなどの地形が見られ、近くを公転するプロメテウスよりもクレーターは多い。クレーターの大部分は浅く、これは細微な氷の塵に覆われているためだと考えられている[10]。また表面には尾根や溝 (groove) といった特徴も見られる[10]

平均密度がおよそ 0.5 g/cm3と非常に低く、またアルベドが比較的高いため、内部に間隙を多く含んだ氷の天体であることが示唆される。ただしこれらの値には不定性が多い。また、他の多くの土星の衛星と同様に、土星からの潮汐力のためパンドラの自転周期と公転周期は等しくなっている (自転と公転の同期)。

F環および他の衛星との関係[編集]

パンドラはF環の外側の羊飼い衛星であると考えられてきた。しかし近年の研究では、パンドラはF環の形成・維持には寄与しておらず、F環の細い構造を維持する役割を果たしているのはプロメテウスのみであることが示唆されている[11][12]

パンドラの軌道は、プロメテウスとの4種類の 118:121 平均運動共鳴の影響でカオス的であると考えられる[13]。パンドラとプロメテウスの軌道の最も分かりやすい変化は、パンドラの近点がプロメテウスの遠点と一直線上に並ぶ、およそ6.2年ごとに発生する[2]。この時、両者はおよそ 1400 km 以内の距離に接近する。またパンドラは外側を公転するミマスと 3:2 の平均運動共鳴を起こしており、公転周期の比が 2:3 となっている[2]

出典[編集]

  1. ^ a b Brian G. Marsden (1980年10月31日). “IAUC 3532: SN IN NGC 6946; Sats OF SATURN; HD 44179; W Hya”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年11月24日閲覧。
  2. ^ a b c d e f Spitale, J. N.; Jacobson, R. A.; Porco, C. C.; Owen, W. M., Jr. (2006). “The orbits of Saturn's small satellites derived from combined historic and Cassini imaging observations”. The Astronomical Journal 132 (2): 692–710. Bibcode2006AJ....132..692S. doi:10.1086/505206. http://iopscience.iop.org/1538-3881/132/2/692/pdf/1538-3881_132_2_692.pdf. 
  3. ^ a b c Jet Propulsion Laboratory (2013年8月23日). “Planetary Satellite Mean Orbital Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. ジェット推進研究所. 2018年11月25日閲覧。
  4. ^ a b c d e Thomas, P. C. (July 2010). “Sizes, shapes, and derived properties of the saturnian satellites after the Cassini nominal mission”. Icarus 208 (1): 395–401. Bibcode2010Icar..208..395T. doi:10.1016/j.icarus.2010.01.025. http://www.ciclops.org/media/sp/2011/6794_16344_0.pdf. 
  5. ^ Jet Propulsion Laboratory (2015年2月19日). “Planetary Satellite Physical Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. ジェット推進研究所. 2018年11月25日閲覧。
  6. ^ 『オックスフォード天文学辞典』 朝倉書店、初版第1刷、333頁。ISBN 4-254-15017-2
  7. ^ 太陽系内の衛星表”. 国立科学博物館. 2019年3月9日閲覧。
  8. ^ Brian G. Marsden (1986年1月3日). “IAUC 4157: CH Cyg; R Aqr; Sats OF SATURN AND PLUTO”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年11月24日閲覧。
  9. ^ Porco, C. C.; et al. (2006). Physical Characteristics and Possible Accretionary Origins for Saturn's Small Satellites. Bulletin of the American Astronomical Society 37: 768. http://www.lpi.usra.edu/meetings/lpsc2006/pdf/2289.pdf. 
  10. ^ a b NASA (2017年12月5日). “In Depth | Pandora – Solar System Exploration: NASA Science”. アメリカ航空宇宙局. 2018年11月25日閲覧。
  11. ^ Lakdawalla, E. (2014年7月5日). “On the masses and motions of mini-moons: Pandora's not a "shepherd," but Prometheus still is”. Planetary Society. 2015年4月17日閲覧。
  12. ^ Cuzzi, J. N.; Whizin, A. D.; Hogan, R. C.; Dobrovolskis, A. R.; Dones, L.; Showalter, M. R.; Colwell, J. E.; Scargle, J. D. (2014-04). “Saturn’s F Ring core: Calm in the midst of chaos”. Icarus 232: 157–175. Bibcode2014Icar..232..157C. doi:10.1016/j.icarus.2013.12.027. ISSN 0019-1035. 
  13. ^ Renner, Stéfan F.; Sicardy, Bruno; French, Richard G. (2005-03). “Prometheus and Pandora: Masses and orbital positions during the Cassini tour”. Icarus 174 (1): 230–240. Bibcode2005Icar..174..230R. doi:10.1016/j.icarus.2004.09.005.