日本標準時

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明石天文科学館、親時計

日本標準時(にほんひょうじゅんじ、英語: Japan Standard TimeJST)は、独立行政法人情報通信研究機構原子時計で生成・供給される協定世界時 (UTC)(機構が決定するものであるため、厳密には「UTC(NICT)」と呼ばれ、国際度量衡局の決定するUTCとは若干のずれ(±10ナノ秒未満)が存在する。) を9時間進めたUTC+9をもって日本における標準時としたものである。俗に日本時間とも呼ばれる。日本国の法令上は、標準時と呼ばれているものの定義はない。なお、日本国の法令上「中央標準時」の語が用いられることがあるが、これはJSTとは異なり、天文時(GMT+9)として定義されている。

協定世界時 (UTC) との差を示す場合などには、「12:31:40+0900 (JST)」(日本標準時で12時31分40秒の場合)などと表記される。

日本では独立行政法人情報通信研究機構がJSTを生成・供給し、日本全国で日本放送協会 (NHK) などの放送局NTT (117) の時報にこの時刻が用いられている。

夏時間(サマータイム)

2011年現在、法令に基づき、JSTに1時間を加えたタイムゾーンを採用する夏時間(サマータイム)は実施されていない。ただし、過去には、1948年から1951年、5月(1949年のみ4月)第1土曜日から9月第2土曜日までの間、夏時刻法に基づきサマータイムが施行されていた。なお、2004年 - 2006年(2006年で終了)の7月 - 8月に北海道札幌市で試行されたいわゆる「北海道サマータイム」は、標準時を変えずに始業・終業時刻を1時間早める試みで、通常の意味での夏時間ではない。

JSTとほぼ同じ標準時

なお、オーストラリアは日本とほぼ同経度に位置しているが、東経135度線が通る南オーストラリア州ノーザンテリトリーがJSTに対し+30分であり、また夏時間でない場合の西オーストラリア州はJSTに対し-1時間であるため、JSTとちょうど同じ標準時になる地域は、西オーストラリア州が夏時間でない限りは存在しない。

また、ロシアにも東経135度線が通っているが、この地域はウラジオストク時間となり、JST+2となる。同じ時間がサハリンでも使われているため、日本とサハリンの間には2時間時差が生じている。

歴史

日本の標準時に関して初めて制定された法令は、本初子午線経度計算方及標準時ノ件(明治19年勅令第51号、1886年(明治19年)7月13日公布)である。この勅令では、グリニッジ天文台子午儀の中心を通る子午線本初子午線(経度0度)とし、東西それぞれ180度で、東を正、西を負として表すことを定めた上、東経135度 (GMT+9:00) の時刻を日本の標準時(「本邦一般ノ標準時」)と規定した。この日本の標準時に関する部分は1888年(明治21年)1月1日から適用された。

標準時ニ関スル件

その後、標準時ニ関スル件(明治28年勅令第167号、1895年(明治28年)12月28日公布、1896年(明治29年)1月1日施行)が制定され、第1条において東経135度の標準時の呼称を「中央標準時」と、第2条において東経120度 (GMT+8:00) の時刻を「西部標準時」とそれぞれ規定し、後者は八重山列島宮古列島と日本統治下の台湾澎湖諸島に適用された。中央標準時と西部標準時との時差は1時間であった。

この「二つの日本時間」は41年余り続いたが、明治二十八年勅令第百六十七号標準時ニ関スル件中改正ノ件(昭和12年勅令第529号、1937年(昭和12年)9月25日公布、同年10月1日施行)という改正勅令により、前の明治28年勅令第167号の第2条(西部標準時に関する条)の条文が削除となり、再び日本の標準時は一つとなった。なお、この改正では第1条(中央標準時に関する条)については改正されなかったため、(1つしかないにもかかわらず)「中央標準時」との呼称は維持された。

この2つの勅令は現在も政令として有効であり(文部科学省の所管)、「中央標準時」が日本の標準時の法令上の公式な名称とされ、現行法上、上記勅令以外にも、電波法施行規則40条3項や無線局運用規則3条において用いられている。しかしながら、上記の定義上は「中央標準時」は天文時(GMT+9:00)であり、原子時から生成する「日本標準時 (JST)」(UTC+9:00)とはずれがある。JSTを定義した法令は存在しないが、JSTの通報について定める総務省設置法4条73号や独立行政法人情報通信研究機構法14条1項3号などは「中央標準時」ではなく「標準時」との語を用いている。

かつては、兵庫県明石市を通る東経135度の子午線における地方平均太陽時と定義されていた。

明石市立天文科学館

子午線上にある明石市立天文科学館では、日本標準時を刻む大きな時計が設置されている。1978年に設置された2代目は1995年阪神・淡路大震災で破損し、停止してしまったため、その時計は撤去されて神戸学院大学で展示されている。現在設置されている大時計は3代目となり、服部セイコーからの寄贈である。

South Ryukyu Islands時間

FreeBSDなど一部のUNIX系OSでは、1999年初頭までインストール時にタイムゾーンとして「Japan」を選択すると、選択肢として「Most Locations」と「South Ryukyu Islands」の2つの選択肢が現れ、「South Ryukyu Islands」を選ぶとタイムゾーンとして西部標準時 (UTC+8) が設定されてしまうという問題が存在した。

これはこれらのOSがタイムゾーン設定の元データとして利用しているtzdataに誤って西部標準時に関するデータが含まれていたためである。これの元は「The International Atlas (3rd edition)」(Thomas G. Shanks、1991年)という文献において、「西部標準時が現在も石垣市を含む地域で使用されている」旨の誤った記載が行われていることが原因であった。

このことが雑誌「UNIX USER」(ソフトバンク)で取り上げられた結果、1999年にはtzdataから西部標準時が削除され、その後のバージョンでは「South Ryukyu Islands」という選択肢はなくなった。2006年4月1日にリリースされたエープリルフール版のFreeBSD 2.2.9-RELEASEでは、このバグがわざと残されている。

標準電波

日本標準時 (JST) を国内外に広く供給するために、情報通信研究機構標準電波を発信している。この波により送信されている周波数の標準と標準時の信号は、国家標準であるセシウムビーム型原子周波数標準機や水素メーザ型、実用セシウムビーム型原子時計群を用いたものより高い精度に保たれている。なお、標準電波の発信は電離層の影響を受けにくい長波を使用しているため、24時間の周波数比較平均値では 1×10-11の精度を得られると発表されている。

1999年6月10日に「おおたかどや山標準電波送信所」(福島県田村市都路町 大鷹鳥谷山)が開局した。しかし、九州沖縄方面では受信しにくい現象が起こるなどで日本全国をカバーできなかったため、2001年には佐賀県佐賀市富士町の羽金山に「はがね山標準電波送信所」を開局し、これにより日本国内の広い範囲で標準電波が受信ができるようになった。

いわゆる電波時計は、この標準電波を受信し、自動で時刻を合わせる時計である。

NTP

情報通信研究機構はインターネット経由で時刻同期を可能とするため、NTPサーバによる時刻情報提供サービスを2006年から提供している。NTPサーバのアドレスはntp.nict.jpである[1]。通常はNTPサーバの処理能力の限界を考慮し、原子時計などに直結されたNTPサーバを一般ユーザが直接利用すべきではないとされているが、このサーバは毎秒100万リクエスト以上の処理能力を持ち、日本標準時に直結でありながら一般ユーザが直接利用して構わないとしている[2]

UTCとJSTの換算

次の表でUTC+9とあるのが、JSTである。

UTC+9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
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脚注

参考文献

関連項目

外部リンク