ヘルタースケルター (漫画)
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『ヘルタースケルター』は、岡崎京子による日本の漫画。1996年まで、祥伝社の『FEEL YOUNG』に連載されていた。ストーリーは未完。
2012年に実写映画化され、7月14日より上映された。
概要
- 単行本出版
- 『ヘルタースケルター』連載終了直後の1996年5月、岡崎は交通事故に遭い意識不明の重体となった。療養生活の中、2003年に『ヘルタースケルター』単行本化に際して原稿チェックを行っていた。
- 手塚文化賞受賞
- 第8回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。この際、事故で療養中の岡崎に代わり彼女の弟が朝日新聞に受賞コメントを寄せた。
ストーリー
素性不明の人気ファッションモデル・りりこは、実は全身を作り変えるほど危険な美容整形手術を施しているという重大な秘密を抱えていた。りりこは、その美貌でトップスターになっていくが、美容整形の激甚な副作用と仕事のストレスで、心身共に蝕まれていく。
結婚を狙っていた御曹司の裏切り、自身を整形した美容クリニックの隠された犯罪を追う者、生まれながらに美しいがゆえ美に執着しない「期待の新人」である後輩・こずえが登場し、りりこは窮地に追い込まれていき、現実と悪夢をさまよう。そして付き人の内部リークもあり美容クリニックの違法行為が発覚し、りりこの全身整形の事実も公開され、マスコミの格好の対象にされたりりこは記者会見を行うことになる。そのとき既に、彼女の身体も心も崩壊状態だった。記者会見直前、えぐり抜いた自らの左目を楽屋に残し失踪する。
数年後、海外のロケに出ていたこずえはスタッフに連れられてフリーク・ショーを見学する。そこで出会ったのは、自らを見世物として出演している傷だらけのりりこの姿だった。
登場人物
- りりこ / 比留駒はるこ(ひるこま はるこ)
- 本作の主人公。年齢や経歴が全てが謎に包まれた今大人気のファッションモデル。前年には全くランクインしていなかった全ての人気ランキングにランクインし、最近では映画にも出演した。元はブサイクの太った大女[1]であり、上京した時に騙されてデブ専風俗店で働かされていた。ある時、多田にその太った容姿に隠された完璧な骨格を見込まれスカウトされ、骨格や目玉、爪、髪、耳、性器以外の全身のありとあらゆる箇所に大掛かりな整形を施し、モデルとしてデビューし大人気となる。中高生の女性からの支持が高い。テレビでは天然ぶったり、可愛いキャラクターだが実際には奔放かつ自己中心的な性格で、感情の起伏が激しく身勝手な振る舞いをしては周りに迷惑を掛ける(しかしそれは薬の副作用でもあった)一方で、家族思いの優しい一面もあり、病気で床に伏せる父の反対を押し切り上京したことを気にかけたり、実家に仕送りをしている。妹・ちかこにだけは「比留駒はるこ」の部分を出して接している。しかし、実際には社長はちかこがりりこに会いに来た事をりりこに隠し、仕送りもしていなかったが、社長に言いくるめられてしまう。整形手術の後遺症や整形を維持するための違法薬物の摂取、崩れ行く美貌、恋愛、仕事(芸能界)のストレスを抱え込み、心身ともに極めて不安定な状態にある。実家は貧しく、毎日母が働いていたうずらの缶詰工場からもらう「うずらの卵の醤油煮」を食べていた。母は中国人でハーフである。
- 映画版では本名の下の名前が「春子」と漢字表示になっている。
- 麻田(あさだ)
- 胎児売買事件を追う検事。美容クリニックの違法な医療行為を調査している。整形したりりこと美容クリニックとの関係について直感的に事件の匂いを嗅ぎつけている。りりこに興味を持つようになり、彼女を「タイガー・リリー」と呼ぶ。美に関して独自の解釈を持ち「年老いることは怖い事じゃない」と話す。りりこが整形だとすぐに判断した。(「表情筋と皮膚があっていない」など) 幼少期に両親が殺害されたような回想とも幻覚とも似つかない表現がある。
- 映画版では「誠(まこと)」という下の名前が設定されている。
- 羽田みちこ(はだ みちこ)
- りりこのマネージャー。公私共にりりこに翻弄されており、彼女から身勝手で性質の悪い嫌がらせ(顔に口に含んだ水をかけられる、夜中に季節外れの果物を買いに行かされる)に度々遭っているが、魅入られて逆らえず、マゾヒズムと化す。奥村と交際している。普段はりりこからは「羽田ちゃん」と呼ばれている。りりこの整形前の姿はおろか、整形すら知らない。
- 映画版では下の名前が「美知子」と漢字表示になっており、りりこと同年代ではなく中年の女性になっている。
- 多田(ただ)
- りりこやこずえが所属するモデル事務所の社長。りりこの秘密をプロデュースした張本人で、りりこの秘密を所有する人物の一人。自身も元モデルであり、りりこの容貌は若い頃の自分をそのまま再現したものである。りりこには「ママ」と呼ばれる。
- 映画版では「寛子(ひろこ)」という下の名前が設定されている。
- 吉川こずえ(よしかわ こずえ)
- 同じ事務所に所属するりりこの後輩モデル。全身整形のりりこに対して、こちらは天然の美人。自然体の純真さを売りにしており、後にりりこの人気を脅かす存在となる。赤ちゃんの頃からモデルをしているが、芸能界でのし上がっていく気は全くと言っていいほど無い。私生活でも府立高校に電車で通い、少年ギャグ漫画を読みながらクスクスと笑っているのを一般人に目撃されている。また、社長が仕事をたくさん入れるため高校の進級が危ういが追試や補習を受けて卒業したい意思はあるようである。美に対して「皮一枚剥いでしまえば人間はみんな同じ」と思っているが、本人がその皮一枚が美しいから思える事を気付いていない。
- 以前描かれた岡崎の作品『リバーズ・エッジ』にも登場している。本作では「若さ」「美しさ」「無垢の象徴」として描かれている。
- 沢鍋錦二(さわなべ きんじ)
- りりこのメイク担当。オカマ。通称「キンちゃん」。りりこの全身整形を知らなかったが、後遺症の痣が出来たことにより、りりこが泣き叫び、社長がついに全身整形を明かした。代償に社長から亡き夫の形見である高い指輪をもらう。りりこの扱いに慣れており、りりこがモデルを辞めると暴れた際には「りりこ以外代わりはいない」となだめて収めた。
- 南部貴男(なんぶ たかお)
- りりこの恋人。大企業・南部デパートの御曹司。りりこと交際しているがうわべだけの関係であり、政治家の娘・恵美利を婚約者にしている。りりこが恵美利に嫉妬したことから、彼女共々度人生を狂わされることになる。
- 奥村信輝(おくむら のぶてる)
- みちこの恋人。駆け出しのカメラマン。りりこのみちこへの嫌がらせに巻き込まれる。りりこに次第に惚れ始めて仕事まで辞めてしまう。
- 映画版では名前が「伸一(しんいち)」に改名されている。
- 田辺恵美利(たなべ えみり)
- 貴男の婚約者。大物政治家の娘。貴男のりりこへの恋慕に気付いたことによる行動が、彼女を取り返しの付かない方向へと導いていく。
- 保須田(ほすだ)
- 検察庁事務官。麻田と共に胎児売買事件を調査する。
- 映画版では「久美(くみ)」という下の名前が設定されている。
- 比留駒ちかこ(ひるこま ちかこ)
- りりこの実妹。ブサイクで太った大女。整形前のりりこを思わせる容貌であるため、周囲に存在を伏せられている。姉思いの心優しい性格。モデルとなった姉に憧れを抱き、彼女を探る麻田に淡い恋心を抱く。目を二重に整形したことで美に目覚め、後に努力して自力で痩せ、りりこ譲りの完璧なスタイルを麻田達の前に披露した。
- 映画版では下の名前が「千加子」と漢字表示になっている。
- せんせい
- 美容クリニックの院長。本名不明。りりこを含め、大勢の人々を非合法な美容整形で美しく仕立て上げている。しかし裏ではヒトの胎児や筋肉、脂肪、皮膚などを違法で手に入れて注射や移植等を行っている。更にその整形術は術後、拒絶反応を防ぐために免疫抑制剤や痛み止めなどを生涯飲み続けなくてはならない。また、薬を飲み続けてもいずれ肉体が崩壊していく可能性が高いという過酷なものであり、彼女に施術された患者が術後の後遺症に耐えられなくなり自殺するという被害が次々発生している。だが、「定期的なケアをしないで現状を維持できるなんて傲慢」と吐き捨てている。ラストでは逮捕されて取調べを受けている姿が描かれている。元は、錬金術師になりたかった。
- 映画版では「和智久子(わち ひさこ)」というフルネームが設定されている。
書籍情報
- 岡崎京子 『ヘルタースケルター』 祥伝社〈FEEL COMICS〉、全1巻
- 2003年4月8日発行、ISBN 978-4396762971
映画版
ヘルタースケルター | |
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監督 | 蜷川実花 |
脚本 | 金子ありさ |
原作 | 岡崎京子 |
製作 |
宇田充 甘木モリオ |
出演者 |
沢尻エリカ 大森南朋 寺島しのぶ 水原希子 新井浩文 原田美枝子 桃井かおり |
音楽 | 上野耕路 |
主題歌 |
浜崎あゆみ「evolution」 AA=「The Klock」 |
撮影 | 相馬大輔 |
編集 | 森下博昭 |
製作会社 | 映画『ヘルタースケルター』製作委員会 |
配給 | アスミック・エース |
公開 |
2012年7月14日 2012年10月11日 |
上映時間 | 127分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 21.5億円[2] |
2012年7月14日に公開された日本映画。R15+指定。主演の沢尻エリカの5年ぶりの映画出演となった[3]。
キャスト
- りりこ(本名:比留駒 春子) - 沢尻エリカ
- 麻田 誠 - 大森南朋
- 羽田 美知子 - 寺島しのぶ
- 奥村 伸一 - 綾野剛
- 吉川 こずえ - 水原希子
- 沢鍋 錦二 - 新井浩文
- 保須田 久美 - 鈴木杏(友情出演)
- 塚原 慶太 - 寺島進
- 浜口 幹男 - 哀川翔
- 比留駒 千加子- 住吉真理子
- 南部 貴男 - 窪塚洋介(友情出演)
- 和智 久子 - 原田美枝子
- 多田 寛子 - 桃井かおり
スタッフ
- 監督 - 蜷川実花
- 脚本 - 金子ありさ
- 原作 - 岡崎京子『ヘルタースケルター』(祥伝社フィールコミックス)
- プロデューサー - 宇田充、甘木モリオ
- 撮影 - 相馬大輔
- 照明 - 佐藤浩太
- 美術 - 小泉博康、ENZO
- 録音 - 阿部茂
- 編集 - 森下博昭
- VFXスーパーバイザー - 道木伸隆
- スタイリスト - 長瀬哲郎、篠塚奈美
- ヘアメイク - 冨沢ノボル
- 特殊メイク - 松岡象一郎
- 製作 - 映画『ヘルタースケルター』製作委員会(WOWOW、アスミック・エース、パルコ、ハピネットピクチャーズ、Yahoo! JAPAN、祥伝社、ラッキースター)
- 制作プロダクション - アスミック・エース、シネバザール
- 配給 - アスミック・エース
音楽
- サウンドトラック - 上野耕路
- テーマソング - 浜崎あゆみ「evolution」(avex trax)
- エンディングテーマ - AA=「The Klock」(SPEEDSTAR RECORDS)
- 挿入歌 - 戸川純「蛹化の女」
製作
映画は2012年1月中旬にクランクインし[4]、2月21日にクランクアップした[5]。
ポストプロダクションが完了し公開が近づいた5月15日、主演の沢尻が体調を崩したため、本作のPR活動を欠席すると発表された。監督の蜷川は「現場での彼女はりりこそのものでした」「『りりこの役がなかなか抜けない』と言っていた彼女に静養が必要なのは、必然のような気がします。」と、沢尻が本作の役に入り込むあまり変調をきたしたことを語っている[6][7]。
報道では7月5日開催のジャパン・プレミアにおいて復帰するという見通しが囁かれていたが[8]、結局体調が回復せず、直前に欠席が発表された。当日は会場で手紙による沢尻から観客への謝罪のコメントが寄せられた[9]。沢尻は7月14日の初日舞台挨拶で復帰した[10]。
コラボレーション
本作は実在の雑誌や企業と多数のコラボレーションを行い、これらのコラボレーション広告の撮影風景が、映画の一場面となっている。映画中に登場する、りりこやこずえが表紙を飾る雑誌はすべて実在するもので、写真は監督の蜷川自身が撮り下ろし[11]、中でも『VOGUE girl』などは現実に発売されている[12]。スポンサーの一つであるパルコの2012年夏セール「グランバザール」のCMには、りりこ役の沢尻とこずえ役の水原が映画のキャラクターとして出演した[13]。
封切り
日本では全国204スクリーンで公開され、2012年7月14、15日の初日2日間で興収2億3,353万3,030円、動員17万4,274人(3日間で興収3億4,817万3,390円、動員25万7,281人)になり映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第4位となった[14]。8月29日、興行収入20億円、観客動員150万人を突破したことが発表された[15]。最終興収は21.5億円[2]。
海外映画祭
米国ロサンゼルスで開催している「LA EigaFest 2012」にて招待作品として上映された。
関連商品
Blu-ray・DVD
2012年12月21日発売。発売・販売元はハピネット。
- ヘルタースケルター スペシャル・エディション(2枚組)
- ディスク1:本編ディスク
- 映像特典
- 特報・劇場予告編・TVスポット集
- WOWOW特別TVスポット『りりことは何だったのか?』(大森南朋篇、寺島しのぶ篇、水原希子篇、綾野剛篇、新井浩文篇、哀川翔篇、窪塚洋介篇、桃井かおり篇)
- 音声特典
- オーディオコメンタリー(監督:蜷川実花×撮影:相馬大輔×美術:ENZO×スタイリスト:長瀬哲郎×プロデューサー:宇田充)
- 映像特典
- ディスク2:特典ディスク(Blu-ray版はBlu-ray、DVD版はDVDで収録)
- メイキング
- 未公開シーン集
- インタビュー(監督:蜷川実花 / 沢尻エリカ)
- イベント映像集(製作発表記者会見、ジャパンプレミア、初日舞台挨拶、台北映画祭)
- WOWOW特番「映画『ヘルタースケルター』の世界」(極彩の蜷川ワールド篇、衝撃の豪華キャスト篇)
- 初回限定特典
- 特製スリーブケース
- ディスク1:本編ディスク
書籍
- ヘルタースケルター 映画・原作 公式ガイドブック(2012年7月6日発売、祥伝社〈フィールコミックス〉)ISBN 978-4396765521
- 蜷川実花写真集 ヘルタースケルター HELTER-SKELTER MIKA NINAGAWA(2012年7月14日、パルコ)ISBN 978-4891949709
CD
- CD『ヘルタースケルター・オリジナル・サウンド・トラック』(2012年7月11日発売、avex trax)
- CD『蛹化(むし)の女 蜷川実花セレクション』(戸川純、2012年7月25日発売、ソニー・ミュージックダイレクト)
参考書籍
- ユリイカ2012年7月号 特集・蜷川実花 映画『ヘルタースケルター』の世界(青土社)ISBN 978-4791702398
脚注
- ^ 漫画本編において、整形前の姿は部分的にしか描かれていない。なお、映画版では整形前の姿が大々的に公開されている。
- ^ a b “2013年記者発表資料(2012年度統計)” (PDF). 日本映画製作者連盟. p. 2 (2013年1月). 2013年1月31日閲覧。
- ^ “沢尻エリカ、蜷川実花監督「ヘルタースケルター」で5年ぶり銀幕復帰!”. 映画.com (2012年1月11日). 2012年1月11日閲覧。
- ^ “岡崎京子『ヘルタースケルター』を沢尻エリカ主演で映画化”. ORICON STYLE. オリコン (2012年1月11日). 2012年1月11日閲覧。
- ^ “クランクアップ!”. 映画『ヘルタースケルター』オフィシャルブログ (2012年2月22日). 2012年2月26日閲覧。
- ^ 映画『ヘルタースケルター』主演・沢尻エリカさんの体調不良によるPR活動休止について、映画公式サイト、2012年7月6日参照。
- ^ 体調不良でPR活動休止の沢尻エリカについて、蜷川実花監督がコメントを発表、2012年5月15日、ムービーコレクション、2012年7月6日参照。
- ^ 静養中の沢尻エリカ、「ヘルタースケルター」ジャパンプレミアで復帰か、2012年7月1日、livedoorニュース、2012年7月6日参照。
- ^ 沢尻エリカ、試写会欠席を手紙で謝罪!復活は映画初日の14日か?、2012年7月5日、シネマトゥデイ、2012年7月6日参照。
- ^ “エリカ様、姿見せた!「ヘルタースケルター」初日舞台あいさつに登壇”. スポーツ報知. 報知新聞社 (2012年7月14日). 2012年7月14日閲覧。
- ^ “蜷川実花インタビュー”. 映画公式サイト. 2012年7月14日閲覧。
- ^ “「ヘルタースケルター」りりこ&こずえがVOGUE girl表紙に”. コミックナタリー. ナターシャ (2012年3月1日). 2012年7月14日閲覧。
- ^ “「ヘルタースケルター」劇中で流れるパルコのCMをオンエア”. コミックナタリー. ナターシャ (2012年6月27日). 2012年7月14日閲覧。
- ^ 『海猿』いよいよ夏本番のランキングトップ!沢尻『ヘルター』は女性支持集め4位初登場!、シネマトゥデイ、2012年7月18日
- ^ “沢尻エリカ『ヘルタースケルター』興収20億円突破の大ヒット!台湾でも絶賛公開中!”. シネマトゥデイ (2012年8月29日). 2012年8月29日閲覧。
外部リンク
- 祥伝社作品サイト
- 手塚文化賞受賞時の記事
- 映画関連
- 映画『ヘルタースケルター』公式サイト
- 映画『ヘルタースケルター』 (@hs_movie) - X(旧Twitter)
- 映画『ヘルタースケルター』 (helterskelter.movie) - Facebook
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