PV-1 (航空機)

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米海軍向け PV-1

ロッキード PV-1(Lockheed PV-1)は、第二次世界大戦中にアメリカ合衆国ロッキード社で製造された哨戒/爆撃機である。

アメリカ海軍の他、イギリス空軍ではヴェンチュラ(Ventura)の名称で、アメリカ陸軍航空隊ではB-34/B-37の制式名称で使用された。

概要

ロッキード・ロードスター輸送機軍用機化した機体で、同様にロッキード・スーパーエレクトラ旅客機を軍用機化したハドソンの成功を踏まえてイギリス空軍が発注したものである。

民間機転用の軍用機としてはハドソン程の成功作とはならなかったが、イギリス向け軍事援助の一環として多数が生産され、イギリス空軍の他アメリカ海軍によりPVの名称で哨戒爆撃機として採用され、アメリカ陸軍でもB-34及びB-37の名称で軽爆撃機や偵察機、及び軽輸送機として運用された。

戦後はアメリカの同盟国に供与され、日本の海上自衛隊でも発展型のPV-2が創設期に供与され、主に訓練機として運用されている。

開発

沿岸哨戒機としてロッキード・ハドソンを大量発注していたイギリス海軍は、ロッキード社に対してハドソンの後継機となるさらに強力な哨戒爆撃機の開発を要請した。ロッキード社への発注は1940年に行われ、ロッキード社では、L-18 ロードスター輸送機をベースとした機体をModel37の社内名称で開発した。

基体となったロードスターはハドソンの原型であるロッキード L-10 エレクトラ旅客機の改良型であるスーパーエレクトラの発展型ということもあり、ヴェンチュラの機体形自体はハドソンに類似していたが、エンジンは強力なP&Wダブル・ワスプを搭載した。また胴体背面の動力銃座の位置を変更して射界を改良し、胴体下面にも本格的な銃座が設けられた。イギリス軍はこの機体にヴェンチュラVenturaアメリカの都市名)という愛称を与え、生産された型をヴェンチュラI(またはヴェンチュラMK.1)と呼んだ。

ヴェンチュラは合計675機が発注され、試作1号機は1941年7月に初飛行した。しかし、同年の暮れには対日戦が開戦、ロッキード社はアメリカ本国向けの各種軍用機の開発と生産に全力を傾けねばならなくなり、生産の遅れから1号機がイギリス軍に引き渡されたのは1942年の夏のことであった。

ヴェンチュラIは発注された675機のうち188機生産されたところで発展型のヴェンチュラII(またはヴェンチュラMK.2)の生産に切り替えられることになった。ヴェンチュラIIはエンジンがさらに強化されR-2800-21(2,000hp)に換装された他、爆弾搭載量や燃料の搭載量も増加していた。

イギリス空軍の発注分の残り487機がヴェンチュラIIとして完成したが、この内イギリス空軍に引き渡されたのは196機だけで、残りは本機に注目したアメリカ軍により買い上げられ、陸軍と海軍により装備された。イギリス空軍ではさらに200機の追加発注を行ったが、これもイギリス空軍に引き渡されたのは25機のみで、残りはアメリカ陸軍に引き渡された。

運用

イギリス軍での運用

イギリス、オーストラリア、ニュージーランド空軍では1942年10月より本機を昼間爆撃任務に就かせたが、大した活躍もなく、また鈍重で実戦に耐えられないという用兵側からの非難もあり、これらの部隊はモスキートに装備改編された。

1943年後半からは爆撃任務からは退役し、沿岸航空隊の哨戒任務に就くことになった。その後は、ハドソンの後継機として終戦まで利用された。また、カナダ、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド等の英連邦各国にも譲渡されて運用された。

尚、イギリスおよび英連邦諸国で用いられた機体にはアメリカ陸軍向けとして生産・納入された後にアメリカ軍から譲渡された機体もあり、これらにはヴェンチュラではなくレキシントン(Lexington)の名称がつけられている。

アメリカ陸軍での運用

アメリカ陸軍では本機にB-34Aの名称を与え、イギリス向けとして生産された機体の中から250機を自軍の装備とし、この250機のうち少数機を航法訓練機B-34Bの名称で訓練に使用している。

アメリカ陸軍ではエンジンをライトR-2600-31に換装したヴェンチュラIIもO-56の名称で550機発注したが、大半はキャンセルされ、最終的に18機をB-37として受領した。

アメリカ海軍での運用

哨戒飛行艇が冬期に港湾施設の凍結に悩まされる事から、陸上基地で使用する長距離哨戒爆撃機を要望していたアメリカ海軍は、まずイギリス空軍向けの哨戒爆撃機ロッキード・ハドソンをPBO-1として20機採用した。

続いて本格的な機体として、陸軍が発注しイギリス空軍に供与する形をとっていたヴェンチュラに注目し、これを海軍の管理に移管することを陸軍に要請した。陸軍はこの要請を受け入れ、イギリス軍向けの生産機の一部を海軍に供与した他、イギリス向けの生産終了後に、生産を海軍へ移管することにした。

ヴェンチュラIがPV ヴェンチュラとして、ヴェンチュラIIがPV-1 ヴェンチュラとして運用され、ヴェンチュラIIの燃料搭載量を増加するなどした改良型がPV-2として開発されて装備された。PV-2はイギリス名称をそのまま転用した“ヴェンチュラ”に替えて“ハープーン(Harpoon:捕鯨用の意)”の愛称が命けられている。

スペック

PV-1 三面図
PV-1
  • 全長:15.77 m
  • 全幅:19.96 m
  • 全高:3.63 m
  • 翼面積:51.9 ㎡
  • 自重:9,160 kg
  • 全備重量:14,096 kg
  • エンジン:P&W R-2800-31 空冷星型18気筒 2,000hp×2
  • 最大速度:518 km/h=M0.42(4,025 m)
  • 巡航速度:274 km/h=M0.22
  • 着陸速度:134 km/h=M0.11
  • 上昇率:680 m/min
  • 実用上限高度:8,015 m
  • 航続距離:2,670 km
  • 武装
    • 爆弾 3,000ℓb
    • 12.7mm機銃×7
    • 7.62mm機銃×2
  • 乗員 5名

関連項目

  • PV-2 - 米海軍向けの発展型