Microsoft Exchange Server

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Microsoft Exchange Server
Exchange Server 2019 ロゴ
開発元 マイクロソフト
初版 1996年4月11日 (28年前) (1996-04-11)
最新版
2019 RTM (v15.02.221.12) / 2018年10月22日
対応OS Microsoft Windows
プラットフォーム x64(従来はx86
種別 グループウェア
ライセンス MS-エンドユーザライセンス
公式サイト products.office.com/ja-JP/exchange
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Microsoft Exchange Server (マイクロソフト エクスチェンジ サーバー) は、マイクロソフトの開発したグループウェア / 電子メール製品。Microsoft Serversの一部であり、マイクロソフト製品を採用している企業で広く使われている。Exchangeの主な機能は、電子メール / 予定表 / 連絡先などの共有と携帯機器やウェブからの情報アクセスサポート、さらにデータ格納サポートである。

歴史

マイクロソフトが従来のXENIXベースのメッセージングシステムからExchange Serverへの移行を開始したのは1993年4月であり[1]1995年1月には約500ユーザーが Exchange Server Beta 1 を使用していた。1996年4月までに 32,000 ユーザーが移行した。

1996年6月11日にリリースされたExchange Server 4.0が社外に販売するようになった最初のバージョンであり、Microsoft Mail 3.5の後継とされた。ただし、Exchange Serverは全く新しいX.400ベースのクライアントサーバ型メールシステムであり、単一のデータベースX.500ディレクトリサービスをサポートしていた。Exchange Serverで使われていたディレクトリは後にActive DirectoryというLDAP準拠ディレクトリサーバとなった。Active DirectoryはWindows 2000に導入された。

1997年5月23日Exchange Server 5.0がリリースされた。Exchange Administrator コンソールが新たに導入され、SMTPベースのネットワークとの連携を初めて実現した。SMTPリレーが別途必要だったMicrosoft Mailとは異なり、Exchange Server 5.0はInternet Mail Connectorというアドインを使って、直接SMTPベースのサーバと通信可能であった。また、Exchange Web AccessというWebメールインタフェースも新たに導入された。ただし、これは後にOutlook Web Accessと改称し、サービスパックに入れられた。5.0に対応して、その新機能をサポートしたMicrosoft Outlook 8.01、Microsoft Exchange Client 5.0、Microsoft Schedule+ 7.5がリリースされた。

1997年11月Exchange Server 5.5がリリースされた。スタンダード・エディションとエンタープライズ・エディションがある。これらは、データベースの大きさ、メール転送機能、クラスタリング機能などで差がある。スタンダード・エディションは従来版と同じ16GBというデータベースの制限があるが、エンタープライズ・エディションではこれが8TBに拡張されていた(ただし、マイクロソフトは100GBを越えた構成を推奨していない)。スタンダード・エディションには、Site Connector、MS Mail Connector、Internet Mail Service(Internet Mail Connector から改称)、Internet News Service(Internet News Connector から改称)、cc:Mail / Lotus Notes / Novell GroupWiseといったソフトウェアとの連携機能がある。エンタープライズ・エディションにはさらに、X.400 Connector、IBMのSNADSやPROFSとの連携機能がある。エンタープライズ・エディションには2ノードのクラスタリング機能が導入された。その他の新機能として、予定表をサポートしたOutlook Web AccessIMAP4LDAP v3クライアントのサポート、削除されたアイテムの復旧機能がある。このバージョンまで、Exchange Serverには内蔵のディレクトリとSMTP / NNTPサービスが含まれていた。Outlook 8.03が対応するクライアントとしてリリースされたが、Exchange ClientとSchedule+は対応バージョンがリリースされなかった。

2000年11月29日にリリースされたExchange Server 2000(開発コード名 Platinum)では、様々な制限が解除された。例えば、データベースのサイズ制限が緩和され、クラスタは2ノードから4ノードに拡張された。しかし、Active Directoryが必須となったためにアップグレードできない顧客が続出した。つまり、以前はディレクトリサービスを内蔵していたのだが、2000 ではActive Directoryなしでは機能しなくなったのである。Exchange Server 5.5から移行する場合、5.5の動作するシステムと2000をインストールするサーバは別に必要であり、そうしないとディレクトリの内容を変換できない。インスタントメッセージのサポートも追加されたが、後にMicrosoft Office Live Communications Serverとして分離されている。Exchange Server 2003(開発コード名 Titanium)で従来版からの移行がかなり容易になった。このため、Exchange Server 5.5のユーザーは2003のリリースを待ったところが多い。また、アップグレードするには、サーバのOSをWindows 2000にする必要があった。顧客によっては、マイクロソフトのサポートが得られないExchange Server 5.5とWindows NT 4.0の組合せに留まる選択をしたところもある。この製品発表会では、アクティブ/アクティブ型のクラスタ対応を宣伝するため、黒山羊と白山羊を模した自動メール発信を動作させておき、障害が発生しても問題が発生しないことをアピールしようとした。このパフォーマンス中、サーバの電源を引き抜き、障害を発生させたが、送信メール数と受信メール数が合わず、エラーにもならず、メールをロストしてしまったという、失態を演じた。[2]

Exchange Server 2003

2003年9月28日リリース。Windows 2000 Server(ただし、SP4)と、32ビットのWindows Server 2003で動作するが、前者では新機能の一部が機能しない。各種互換モードを備えており、ユーザーが徐々に移行できるようにしている。これは、多数のExchange Serverを稼動させていて、移行のためにサービスを停止できない企業などで重宝された。

Exchange Server 2003の新機能の一つとして、ダウン時の復旧を高速化した点が挙げられる。これは、メッセージストアがバックアップから復旧される前から新規メールのやり取りを可能としたものである。Mobile Information Server 2001 / 2002の機能の一部もExchange Serverに取り入れられた。例えば、Outlook Mobile AccessやActiveSyncのサーバ側などである(Mobile Information Server はその後開発中止となった)。ウイルスおよびスパム対策も強化され[3]、フィルタリングソフト向けのAPIの追加、SPFおよびDNSBL[4]フィルタリングの基本部分の組み込みがなされている。メッセージ / メールボックス管理ツールも強化され、管理者の作業時間短縮に寄与している。インスタントメッセージと Exchange Conferencing ServerはLive Communication Server(現在はMicrosoft Office Communications Serverに改名)に分離され別製品となったため、完全に除かれた。マイクロソフトはグループウェアとしての機能を、Microsoft OfficeMicrosoft Office Live Communications ServerMicrosoft Live MeetingMicrosoft Office SharePoint Server の組合せで実現するという方向となっている。このため、Exchange Serverは、電子メールと予定表だけを分担するようになっている。


Exchange Server 2003には、スタンダード・エディションとエンタープライズ・エディションがある。スタンダード・エディションはサーバ毎に1つのメッセージ・データベースをサポートし、データベースは最大16GBである。SP2では最大75GBに拡張されたが、デフォルトは18GBとなっており、それ以上に設定するにはレジストリを編集する必要がある[5]。エンタープライズ・エディションでは最大 16TB であり、最大5つのデータベースからなるストレージグループをサーバ内に最大4つ持つことができる(合計で20個のデータベース)[6]

Windows Small Business Server 2003にはExchange Server 2003も含まれるが、32ビット版だけであり、64ビット版では動作しない。

Exchange Serverの使うRPCプロトコルは独自のもので、APIしか公開されていない (MAPI)。これは、Microsoft Outlookクライアントで使うべく設計された。Exchange Server上の電子メールはPOP3IMAP4でアクセスでき、Mozilla ThunderbirdLotus Notesといったクライアントでも使える。OutlookとEvolutionはExchange Server特有の機能にも対応したクライアントである。Macintosh用のMicrosoft Entourageも最新版ではExchange Server特有の機能の大部分をサポートしている。ウェブブラウザからメールボックスにアクセスすることもでき、これをOutlook Web Access (OWA) と呼ぶ。また、Exchange Server 2003はモバイル版OWA (Outlook Mobile Access, OMA) もサポートしている。

Windows Mobile 5.0 AKU2以降では、Exchange Server 2003 SP2と組み合わせて、プッシュ型電子メールをサポートしている[7][8]

Exchange Server 2007

2006年12月7日リリース。Exchange Server 2003以降、マイクロソフトの方向性は不明だった。2005年に何らかの改良がリリースされる予定が立てられたが、中止されている。Exchange Server 2007がリリースされたのは2006年末であった。ボイスメールとの連携、ウェブサービス検索強化、フィルタリング強化、新たなOutlook Web Accessインタフェースなどが含まれる。

64ビットのx64版のWindows Serverでのみ動作する。サポートは得られないが、32ビットの試用版がダウンロード可能となっている。32ビットのハードウェアでExchange Serverを使っている顧客は、ハードウェアの置換が必要となるし、64ビットのハードウェアを使っている顧客でも、OSを64ビット版にしないと移行できない。

ベータ版は2005年12月にリリースされたが、ベータテストを行ったサイトはごく少ない。広範囲に配布されるベータ版は(開発チームのブログによれば)2006年3月に公開された。2006年4月25日、マイクロソフトはExchange Serverの次期バージョンがExchange Server 2007となることを発表した。

2009年1月、Exchange Server 2007 のセキュリティソリューションとしてマイクロソフトが起案・監修したメール情報セキュリティ強化パックがリリースされ、開発したソフトバンク・テクノロジーのWebサイトから無償提供される。

主な強化点

マイクロソフトによれば、強化点は以下の通り[9]

  • 保護機能: アンチスパム、アンチウイルス、法令順守、クラスタリングによるデータ複製、セキュリティと暗号の強化
  • アクセスの強化: 予定表強化、統合メッセージング、モバイル対応強化、ウェブアクセス強化
  • IT効率強化: 64ビット化によるスケーラビリティと性能、コマンドシェルと単純なGUI、展開強化、役割分離、ルーティングの単純化
  • Exchange Management Shell: 管理者向けの新たなコマンド行シェルスクリプト言語Windows PowerShellベース)。GUIでできることは全て実行可能であり、日々の作業でよく実施するものをスクリプト化することが可能。375種のコマンドを備えている[10]
  • 統合メッセージング: ボイスメール、電子メール、ファックスを統合的に利用可能。また、メールボックスに携帯機器や電話からアクセス可能。
  • データベースサイズの制限を解除。ハードウェアおよびOSの限界までの大きさのデータベースを利用可能。
  • サーバ毎のストレージグループ数とデータベース数を拡大。スタンダード・エディションでは5個まで、エンタープライズ・エディションでは50個まで。
  • Outlook 2007との組み合わせにより階層型アドレス帳機能をサポート。

Exchange Server 2010

2009年11月2日リリース。ベータ版は2009年4月にリリースされた。マイクロソフトが推進するクラウドコンピューティングである、ソフトウェア プラス サービス (S+S) に対応した最初のリリース。マルチテナント型で提供されるクラウドコンピューティングサービスであるMicrosoft Exchange Onlineを意識したつくりになっている。

主な強化点

  • Outlook Web Appの機能向上: リッチクライアントであるOutlookとの使い勝手の差がより小さくなった。複数の人の予定を一画面で表示させることも可能になった。
  • トランスポート保護ルール: メール送信時に、特定の条件に当たる場合は、自動的にInformation Rights Management (IRM) 保護を適用することが可能。
  • 個人用アーカイブ機能: 従来はPSTファイルとしてローカルに保存していた過去のメールをサーバー上に保存する機能が実装された。
  • マルチメールボックス検索: 管理者が複数のメールボックスを検索することが可能。
  • メールヒント: Outlook Web AppやOutlook 2010でメールを編集している場合、メールの送信時に、組織外部のメールアドレスが含まれていたり、配布リストに多人数のメールアドレスが含まれていたり、という特定の条件に当たる場合は、警告メッセージを表示する。

クラスタリングと高可用性

エンタープライズ・エディションは、Windows 2000 Serverでは4ノードまでのクラスタ、Windows Server 2003では8ノードまでのクラスタをサポートしている。Exchange Server 2003はアクティブ/アクティブ型クラスタも導入しているが、その場合は2ノードクラスタのみである。アクティブ / アクティブ型では、同時に両方のサーバが利用できる。より一般的なアクティブ/パッシブ型は、クラスタ内に現用系のフェイルオーバーのための待機系が存在する。待機系は現用系で障害が発生するときのために待機状態にある。アクティブ / アクティブ型については性能問題があることがわかり、マイクロソフトも現在では利用を推奨していない[11]。実際、Exchange Server 2007 では、アクティブ / アクティブ型クラスタはサポートされていない。

Exchangeのクラスタリングは、同じ物理データのノード間での共有方法が問題視されてきた。クラスタリングによってExchange Serverは「アプリケーション」として多重化されるが、「データ」は多重化されない[12]。この場合、データが「単一故障点」となるが、マイクロソフトはこれを "Shared Nothing" と説明している[13]。ただし、この隙間をISVやストレージ企業が様々な手法で埋めてきた[14]。Exchange Server 2007 では、新たなクラスタリング構成を導入し、従来の "shared data model" の問題点に対処している[15]

Exchange Server 2007では、SQL Serverの"Log Shipping"[16]に基づいた非同期レプリケーションを、CCR(クラスタ連続レプリケーション)[15]として組み込みでサポートしている。これは、MSCS MNS(Microsoft Cluster Service - Major Node Set) を使ったもので、共有ストレージを必要としない。このようなクラスタは安価に構成でき、遠隔のデータセンタ間でクラスタを構成可能で、サイト全体の災害などにも対応できる。CCRクラスタは、2ノードでのみ構成可能で、追加のファイル共有証人としての "voter node" が第三のノードとして追加可能である[17]。voter nodeはスプリットブレインシンドロームを防ぐもので、一般にHub Transport Server上でファイル共有する[15]

第二のクラスタ形態は、以前のバージョンから可能だったもので、現在はSCC(シングルコピークラスタ)と呼ばれている。Exchange Server 2007では、CCRもSCCも展開が簡略化され、Exchange Serverのインストール時にクラスタとしての構成が可能である。LCR(ローカル連続レプリケーション)[15] は "poor man's cluster"(貧者のクラスタ)とも呼ばれる。これは、データのレプリケーションを同じサーバ上の別の装置に行うもので、ストレージの故障に対応できる。しかし、サーバそのものが故障した場合には対応できない。

2007年11月、マイクロソフトはExchange Server 2007のSP1をリリースした。このサービスパックには新たな高可用機能 SCR(スタンバイ連続レプリケーション)が含まれている。CCRでは両サーバがWindowsクラスタに属していなければならなかったが、SCRではクラスタ化されていないサーバにレプリケーション可能であり、遠隔地のデータセンタへのレプリケーションが容易である。

関連項目

脚注

  1. ^ Microsoft's Migration to Microsoft Exchange Server - The Evolution of Messaging within Microsoft Corporation”. 2007年5月2日閲覧。
  2. ^ 2000年9月8日 東京国際フォーラム Bホール Microsoft Exchange 2000 Server Airlift において
  3. ^ Exchange Intelligent Message Filter”. 2007年7月2日閲覧。
  4. ^ Implementing and Configuring Blacklist Support in Exchange Server 2003”. 2007年7月2日閲覧。
  5. ^ Registry tweak to set a 75gb store limit on Exchange 2003 Standard Sp2”. 2007年7月2日閲覧。
  6. ^ Exchange 2003 editions”. 2007年7月2日閲覧。
  7. ^ New Mobility Features in Exchange Server 2003 SP2”. TechNet. 2007年7月2日閲覧。
  8. ^ Microsoft Looks to Mobilize With Exchange SP2”. 2007年7月2日閲覧。
  9. ^ Microsoft Exchange Server Website
  10. ^ Exchange 2007 Cmdlet List
  11. ^ Considerations when deploying Exchange on an Active/Active cluster”. 2007年7月2日閲覧。 (ログインが必要)
  12. ^ The benefits of Windows 2003 clustering with Exchange 2003”. 2007年7月2日閲覧。
  13. ^ Exchange Clustering Concepts”. 2007年7月2日閲覧。
  14. ^ Storage Glossary: Basic Storage Terms”. 2007年7月2日閲覧。
  15. ^ a b c d 高可用性”. 2008年1月14日閲覧。
  16. ^ Frequently asked questions - SQL Server 2000 - Log shipping”. 2007年7月2日閲覧。
  17. ^ An update is available that adds a file share witness feature and a configurable cluster heartbeats feature to Windows Server 2003 Service Pack 1-based server clusters”. 2007年7月2日閲覧。

参考文献

外部リンク