ペア・メルテザッカー

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ペア・メルテザッカー
アーセナルでのメルテザッカー(2018年)
名前
ラテン文字 Per Mertesacker
基本情報
国籍 ドイツの旗 ドイツ
生年月日 (1984-09-29) 1984年9月29日(39歳)
出身地 西ドイツの旗 西ドイツハノーファー
身長 200cm[1]
体重 90kg
利き足 右足
ユース
1988-1995 ドイツの旗 TSVパッテンゼン
1995-2003 ドイツの旗 ハノーファー96
クラブ1
クラブ 出場 (得点)
2003-2004 ドイツの旗 ハノーファー96II 16 (1)
2003-2006 ドイツの旗 ハノーファー96 74 (7)
2006-2011 ドイツの旗 ヴェルダー・ブレーメン 147 (12)
2011-2018 イングランドの旗 アーセナル 156 (5)
通算 393 (26)
代表歴
2003  ドイツ U-20 2 (0)
2004  ドイツ U-21 3 (0)
2004-2014[2] ドイツの旗 ドイツ 104 (4)
1. 国内リーグ戦に限る。
■テンプレート■ノート ■解説■サッカー選手pj

ペア・メルテザッカー(Per Mertesacker, 1984年9月29日 - )は、西ドイツハノーファー出身の元サッカー選手。元ドイツ代表。ポジションはDFメアテスアッカー[3]メルテスアッカーとも表記される[4]

経歴[編集]

生い立ち[編集]

サッカー指導者を務める父・シュテファン・メルテザッカードイツ語版ノルディックウォーキングの指導者を務める母との間に生まれる[5]。シュテファンは1994年10月31日から11月6日にかけてハノーファー96のトップチームの暫定監督を務めた経験を持つ[6]。メルテザッカーはハノーファーの南に位置するパッテンゼンという町で育ちTSVパッテンゼンという小さなスポーツクラブでサッカーを始めたが、父のシュテファンは「息子は少年時代は特別に注目されるような選手ではなかった」と評している[5]

クラブ[編集]

ブレーメンでのメルテザッカー

1995年、11歳の時にハノーファー96の下部組織に入団した[7]2003年にプロ契約し、同年11月1日1.FCケルン戦でブンデスリーガデビューをしたが[7]、この時は右サイドバックとしての出場だった[8]ラルフ・ラングニック監督の下、それからしばらくは出場機会がなかったが、2004年3月にエーヴァルト・リーネン英語版新監督が就任するとセンターバックのレギュラーを任されるようになった[8]

2006年8月8日、ハノーファーから100kmほどの距離にあるヴェルダー・ブレーメンに移籍した[9]。移籍金は470万ユーロ[9]2008年6月にはブレーメンとの契約を2012年6月30日まで延長した[10]。ブレーメンではナウドセバスティアン・プリョードルとともにDFラインの要に成長した。

2008-09シーズンには国内大会のDFBポカールと国際大会のUEFAカップ 2008-09で決勝進出を果たしたが、怪我の影響もあり2009年5月20日に行われたUEFAカップ決勝と同年5月30日に行われたDFBポカール決勝は欠場した[7][11][12]

2012年に行われたサンダーランドAFC戦でのメルテザッカー

2011年8月31日、開幕から不振の続くイングランドアーセナルに移籍金800万ポンド(約9億9800万円)の4年契約で移籍した[13]。1年目はプレミアの水に馴染めず欠点であるスピード不足を露呈する場面が目立ち、2012年2月11日に行われたサンダーランドAFC戦において足首の靭帯を損傷したことで長期離脱を余儀なくされた[14][15]。2年目の2012–13シーズンになると徐々にプレミアにも慣れていき、得意の空中戦での強さで相手FWを封じ込める場面が増えた。ミスの目立った主将のトーマス・フェルメーレンに代わってレギュラーに昇格したローラン・コシールニーとのコンビネーションを見せ、UEFAチャンピオンズリーグ出場権獲得に貢献した。

2013–14シーズンもコシールニーとのコンビにより安定した守備を見せ[16]、プレミアリーグでは一時期は首位に立ったもののマンチェスター・シティFCリヴァプールFCとの優勝争いに敗れ4位でシーズンを終えたが、FAカップ決勝ではハル・シティAFCを延長戦の末に3-2のスコアで下し優勝に貢献した[17]

2014年3月4日、アーセナルとの契約延長に合意した[18]

2016-17シーズンからはキャプテンを務め[19]、2017年1月19日に契約期間を2018年6月末まで延長したが、膝の怪我のため長期離脱を余儀なくされた[20]。同年5月22日に行われたプレミアリーグ第38節のエヴァートンFC戦で復帰をすると[21]FAカップ決勝のチェルシーFC戦では、守備陣に怪我人が続出したという事情から先発出場を果たすと、相手の攻撃を抑え優勝に貢献した[22][23]

クラブのアカデミーの職に就任するため、2017-18年限りで現役を引退。アーセナルのホーム最終戦に後半途中から出場し、その試合限りでの引退となった。

代表[編集]

2012年9月11日に行われたオーストリア戦でのメルテザッカー

2004年ドイツ代表ユルゲン・クリンスマン監督に初招集され、10月9日のアウェーでのイラン戦で初出場した[2]。このときまだ19歳であり、しかもリーグ戦にわずか20試合に出場したのみだった。12月のアジア遠征では、韓国、タイとともに日本をも訪れている[8]。以後代表レギュラーの座を掴むとディフェンスの要となり、2005年FIFAコンフェデレーションズカップでは3位入賞に貢献[24]。この後、クリストフ・メッツェルダーとコンビを組むようになり2006年ワールドカップドイツ大会では3位入賞に貢献した。

監督がクリンスマンからヨアヒム・レーヴへと引き継がれた後も欠かすことのできない選手として[7][25]2008年UEFA EURO 2008では準優勝、2010年ワールドカップ南アフリカ大会では全7試合に出場し3位入賞に貢献した[7][26]。南アフリカ大会後はマッツ・フメルスとセンターバックのコンビを組むようになったが[27]2012年UEFA EURO 2012では所属クラブの試合中に負った足首の怪我や[15]同じポジションを務めるホルガー・バトシュトゥバーの台頭もあり[27]出場機会はなかった。

2014年ワールドカップブラジル大会では準々決勝のフランス戦を除く6試合に出場し[2]、グループリーグ第2戦のガーナ戦では通算100試合出場を達成[28]決勝アルゼンチン戦では延長後半にメスト・エジルとの交代で出場を果たしドイツの24年ぶり4回目の優勝に貢献した[28]。この試合が最後の出場となり、1か月後の同年8月15日に代表からの引退を表明した[28][29]。メルテザッカーはドイツ代表としての11年間のキャリアにおいて国際Aマッチ104試合に出場し4得点を記録した[28]。また、ワールドカップ優勝メンバーの代表からの引退はフィリップ・ラームミロスラフ・クローゼに続いて3人目となった[28]

人物[編集]

プレースタイル[編集]

200cmの長身を生かした空中戦の強さが特徴だが[30][31]、身体能力だけでなく的確な予測とポジショニングを生かした守備も得意としている[32]アーセナルFCアーセン・ベンゲル監督は「彼は豊富な経験と強さを持つ国際的な選手であり、地上においても空中においても優れている」と評しているが[33]、その一方でスピード不足の欠点を指摘されている[27][34]。また、警告や退場を受けるケースが少ないクリーンな選手でもある[35] [36]。試合展開の予測と数少ないファールで相手を封じるプレースタイルは、ベルティ・フォクツユルゲン・コーラーのような身体能力を最大限に生かして相手の攻撃を寸断するドイツ人ディフェンダーの典型とは異なるという[36]

私生活[編集]

2013年6月にハンドボール選手のウルリケ・シュタンゲドイツ語版と結婚した[37]。ウルリケはハンドボールドイツ女子代表として38試合に出場し2007年世界女子ハンドボール選手権では3位入賞を果たした経歴を持つ[38]。2人は2014年の時点で2児をもうけているが長男は結婚前の2011年4月24日[39]、次男は2014年5月20日に誕生している[39]。なお、メルテザッカーは次男の出産に立ち会うために同年に行われた2014 FIFAワールドカップの事前合宿に遅れて参加をした[39]

ボランティア意識が強く[31]、「ペア・メルテザッカー財団」を設立し、ハノーファーやドイツ国内において社会的に恵まれない子供たちの支援を行っている[40]

引退を決断したのちの2018年3月、プロアスリートが常に強い姿のみを求められ、自分の弱い部分を見せることが嫌悪される風潮に一石を投じるべく「長年大きなプレッシャーに苦しみ、出場した600を超える試合のそのほとんどで重圧から直前に体調を崩したり、気分がすぐれず吐いたりしていた」と公表した。常日頃は選手に厳しい『ビルト』紙は、「フットボールという残酷な一面がある巨大ビジネスの核心を突く、初めての人間だ」とメルテザッカーを称賛したが、ローター・マテウスのようにメルテザッカーの告白を批判する者もいた[41]

個人成績[編集]

クラブでの成績[編集]

出典[42][43]
クラブ シーズン リーグ リーグ カップ リーグカップ 欧州カップ その他 通算
出場 得点 出場 得点 出場 得点 出場 得点 出場 得点 出場 得点
ハノーファー 2003-04 ブンデスリーガ 13 0 1 0 14 0
2004-05 31 2 4 1 35 3
2005-06 30 5 3 0 33 5
小計 74 7 8 1 82 8
ブレーメン 2006-07 ブンデスリーガ 25 2 0 0 0[44][45] 0[44][45] 10 2 35 4
2007-08 32 1 3 0 1[46] 0[46] 9 0 45 1
2008-09 23 2 3 1 13 1 39 4
2009-10 33 5 5 0 10 0 1 1 49 6
2010-11 30 2 2 0 7 0 38 2
2011-12 4 0 0 0 4 0
小計 147 12 13 1 1 0 49 3 1 1 211 17
アーセナル 2011-12 プレミアリーグ 22 0 1 0 0 0 5 0 28 0
2012-13 34 3 3 0 1 0 6 0 44 3
2013-14 35 2 6 1 1 0 10 0 52 3
2014-15 35 0 4 2 0 0 9 0 0 0 48 2
2015-16 24 0 3 0 2 0 6 0 1 0 36 0
2016-17 1 0 0 0 0 0 1 0 0 0 2 0
小計 150 5 17 3 4 0 36 0 1 0 208 8
合計 370 24 38 5 5 0 85 3 2 1 500 33

代表での成績[編集]

出典[2][42]


ドイツ代表国際Aマッチ
出場得点
2004 4 0
2005 14 1
2006 11 0
2007 10 0
2008 13 0
2009 7 0
2010 14 0
2011 6 0
2012 6 1
2013 10 2
2014 9 0
通算 104 4

代表での得点[編集]

出典[2]
# 開催日 開催地 対戦国 スコア 結果 大会
1. 2005年6月15日 ドイツフランクフルト  オーストラリア 2-1 4-3 FIFAコンフェデレーションズカップ2005
2. 2012年10月16日 ドイツ、ベルリン  スウェーデン 3-0 4-4 2014 FIFAワールドカップ・予選
3. 2013年9月10日 フェロー諸島トースハウン  フェロー諸島 1-0 3-0 2014 FIFAワールドカップ・予選
4. 2013年11月19日 イングランドロンドン  イングランド 1-0 1-0 親善試合

タイトル[編集]

クラブ[編集]

ヴェルダー・ブレーメン
アーセナル

代表[編集]

ドイツ代表

脚注[編集]

  1. ^ Per Mertesacker neuer ZDF-Fußball-Experte”. 第2ドイツテレビ (2020年8月31日). 2020年10月24日閲覧。
  2. ^ a b c d e Per Mertesacker - Century of International Appearances”. rsssf.com. 2014年8月13日閲覧。
  3. ^ ドイツ代表、イングランド下す”. ブンデスリーガ公式ウェブサイト. 2015年6月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月20日閲覧。
  4. ^ ドイツ、ウェンブリーでクロースのアシストから白星”. fcbayern.de. 2016年3月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月14日閲覧。
  5. ^ a b Wiegen der Weltmeister: Für Mertesacker begann alles beim eigenen Vater”. DFB - Deutscher Fußball-Bund e.V. (2014年7月26日). 2014年8月16日閲覧。
  6. ^ Stefan Mertesacker”. kicker online. 2014年8月16日閲覧。
  7. ^ a b c d e Per Mertesacker”. UEFA.com. 2014年8月16日閲覧。
  8. ^ a b c 「控え目なシンデレラボーイ」『ワールドサッカーダイジェスト』 2007年5月17日号、日本スポーツ企画出版社、62-64頁。 
  9. ^ a b Mertesacker-Wechsel zu Werder Bremen perfekt”. RP Online (2006年8月8日). 2014年8月16日閲覧。
  10. ^ Mertesacker bleibt bis 2012 bei Werder Bremen”. Tagesspiegel (2008年6月21日). 2014年8月16日閲覧。
  11. ^ Spielstatistik Schachtar Donezk gegen SV Werder Bremen 2:1 n.V. - UEFA-Cup 2008/2009”. Fussballdaten.de. 2014年8月16日閲覧。
  12. ^ DFB - Deutscher Fußball-Bund e.V. - DFB-Pokal 2008/2009”. DFB - Deutscher Fußball-Bund e.V.. 2014年8月16日閲覧。
  13. ^ アーセナル、メルテザッカーも確保”. Goal.com (2011年9月1日). 2014年8月16日閲覧。
  14. ^ Arsenal defender Per Mertesacker out 'long term' - Arsene Wenger”. BBC.com (2012年2月17日). 2014年8月16日閲覧。
  15. ^ a b Euro 2012: Per Mertesacker called up by Germany”. BBC.com (2012年5月7日). 2014年8月16日閲覧。
  16. ^ 今季アーセナルのベストプレーヤーは ?”. Goal.com (2014-0518). 2014年8月16日閲覧。
  17. ^ Aaron Ramsey steers Arsenal to victory in epic FA Cup Final”. The FA.com (2014年5月17日). 2014年8月16日閲覧。
  18. ^ メルテザッカーとロシツキが契約延長”. Goal.com (2014年3月4日). 2014年8月16日閲覧。
  19. ^ ‘Our new captain was the natural choice’”. Arsenal.com (2016年8月13日). 2017年6月24日閲覧。
  20. ^ アーセナル、32歳DFメルテザッカーと契約延長 今季は公式戦出場なし”. サッカーキング (2017年1月20日). 2017年6月24日閲覧。
  21. ^ アーセナル、ミラクル起こせず…最終節勝利も5位確定でCL連続出場は19でストップ”. ゲキサカ (2017年5月22日). 2017年6月24日閲覧。
  22. ^ 引退を考えていたメルテザッカー、「あと1年はプレーを続ける」と現役続行の意思”. ゲキサカ (2017年6月4日). 2017年6月24日閲覧。
  23. ^ 「陰のMVP」は最多クリアを記録したアーセナルのベテランCB! FAカップ決勝をデータで振り返る”. サッカーダイジェストWEB (2017年5月28日). 2017年6月24日閲覧。
  24. ^ Buoyant Germans glimpse bright future”. FIFA.com. 2013年12月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月16日閲覧。
  25. ^ „Hannover? Das bedeutet sehr gute Stimmung“”. haz.de (2009年9月1日). 2014年8月16日閲覧。
  26. ^ STATICS 17 Per Mertesacker”. FIFA.com. 2013年10月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月16日閲覧。
  27. ^ a b c Euro 2012: Germany’s defense under the spotlight as reliability of Per Mertesacker a question after February ankle surgery”. NY Daily News (2012年6月6日). 2014年8月16日閲覧。
  28. ^ a b c d e Arsenal-Verteidiger: Mertesacker tritt aus Nationalelf zurück”. spiegel.de (2014年8月15日). 2014年8月16日閲覧。
  29. ^ Per Mertesacker retires from international duty with Germany”. the guardian.com (2014年8月15日). 2014年8月16日閲覧。
  30. ^ ペア・メルテザッカー”. ゲキサカ. 2014年8月13日閲覧。
  31. ^ a b ペア・メルテザッカー”. qoly.jp. 2014年8月13日閲覧。
  32. ^ 「出場32か国コンプリートガイド」『ワールドサッカーダイジェスト』 2014年6月19日号、97頁。 
  33. ^ Arsenal seal Mertesacker deal”. FIFA.com (2011年8月31日). 2014年8月13日閲覧。
  34. ^ Arsenals Mertesacker: Führungsfigur trotz Fehlern”. Transfermarkt.de (2013年3月12日). 2014年8月16日閲覧。
  35. ^ ペア・メルテザッカー”. Goal.com. 2014年8月13日閲覧。
  36. ^ a b Phänomen Mertesacker: Abwehrriese mit guter Kinderstube”. spiegel.de (2006年6月30日). 2014年8月20日閲覧。
  37. ^ Geheimsache Hochzeitsfoto”. Hannoversche Allgemeine Zeitung (2013年6月23日). 2014年8月13日閲覧。
  38. ^ Ulrike Stange”. Deutscher Handballbund. 2012年4月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月13日閲覧。
  39. ^ a b c Die Frauen hinter der Elf: Unsere Spielerfrauen der WM 2014”. gofeminin.de (2013年3月12日). 2014年8月16日閲覧。
  40. ^ welcome”. Per Mertesacker Stiftung (2013年6月23日). 2014年8月13日閲覧。
  41. ^ スポーツ選手は“強く”あるべき?メルテザッカーの“独白”への賛否フットボリスタ 2018年5月16日
  42. ^ a b Per Mertesacker”. Fussballdaten.de. 2014年8月14日閲覧。
  43. ^ Per Mertesacker”. Arsenal.com. 2014年8月16日閲覧。
  44. ^ a b Spielstatistik SV Werder Bremen – Hamburger SV”. Fussballdaten.de. 2014年8月14日閲覧。
  45. ^ a b Spielstatistik SV Werder Bremen – FC Bayern München”. Fussballdaten.de. 2014年8月14日閲覧。
  46. ^ a b Spielstatistik SV Werder Bremen – FC Bayern München”. Fussballdaten.de. 2014年8月14日閲覧。

外部リンク[編集]