猫カフェ

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一般的な猫カフェの様子。向かって右手には来店者の喫茶ブースがあり、向かって中央から左手に来店者がとふれあう為の遊具が揃っている。
アニマルカフェ > 猫カフェ

猫カフェ(ねこカフェ)、猫喫茶(ねこきっさ)とは、室内にを放し飼いにし、猫とふれあう時間を提供する業態の喫茶店である。

概要[編集]

ロッテルダム
リュブリャナ

カフェの名の通り飲食店の一種であるが、猫と同じ空間でくつろげ、猫に癒されることを主な目的とする。保護団体や保護活動を行う個人が迷子になった猫や捨て猫などを保護し(保護猫)、里親を見つける活動を行う場合もある[1][2]。一般的には、通常のカフェに数匹の猫が放し飼いにされており、利用者はそこで飲食したり猫とふれあって時間を過ごす。猫との接触が可能な場所と飲食スペースが分離されている店舗もある[3]

台湾台北市1998年に開店した「猫花園(貓花園)」が世界初の猫カフェ[4]とされ、日本では2004年に開店した大阪市北区の「猫の時間」が国内初であるとされる[5]

フィンランド第2の都市タンペレで、保護猫カフェ Purnauskis が2014年10月開業。また、イギリスのブリストルには猫パブがある[6]

ネコミミカフェ(喫茶)と呼ばれる猫に扮した店員が接客を行う喫茶店は、コスプレ系飲食店の一業態であり、猫カフェとは区別される[7]

営業形態[編集]

営業時間[編集]

日本では2012年6月に改正された動物愛護法の施行規則改正に伴い、午後10時以降の営業が禁止になっている[注釈 1]。改正以前には24時間営業している店舗もあった。定休日は、猫の定期健康診断などに充てられることが多い。猫のストレスを少なくするため、猫ごとに休息日を設け、丸一日客とは完全に隔離して過ごさせることもある。

利用時[編集]

猫の扱いについて注意すべきことがあり、初めての利用の場合は、店員の説明を受ける必要がある。

日本では時間制の料金が課金されている店が多く[3]、台湾では「最低消費額」という、店にいる間は一定の金額を飲食することという規則を設けている店が多い。日本ではソフトドリンクサービスのみの店が多く、台湾では食事や酒類を提供する店もある。

先に注文と、必要であればコースの指定を行い、あとは時間の許す限り自由に猫と触れ合うことができる。猫に餌をあげたり、猫じゃらしなどのおもちゃで遊ぶことのできる店舗もある。

利用者層[編集]

利用者は老若男女様々である。都市部や集合住宅などでペットを飼えないため猫カフェにやってくるという客もいる[3]

猫カフェの経営と問題[編集]

猫カフェの営業形態は動物の「展示」に当たるため、動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)に基づく動物取扱業の登録が必要である。飲食店と動物の展示(飼育を含む)という衛生面では相反する業態を複合させたものであり、所轄の保健所とよく相談し、指導を仰ぐ必要がある。

猫じゃらしで遊ぶ猫カフェの猫。

猫カフェの経営は、飲食店としてはメニューの簡易化などによって通常の店舗よりランニングコストは低く抑えることができる反面、閉店時や定休日であっても猫の健康管理をするスタッフが必要となる。閉店時刻をできるだけ遅くする(猫達の就寝時間帯開始時刻ぎりぎり手前とする。猫に就寝を促す店内消灯・エアコン温度自動調整設定後に退勤)運用で、直接利益が生み出されない作業の人件費を抑えることも可能だが、反面、深夜時間帯では入店客数も限られてくるという悩ましい問題も抱えてしまう。

2012年6月1日から施行された動物愛護法の規則改正により、20時以降はペットショップなどでの展示・販売が禁止される。猫カフェにおいても同法が準用される可能性が指摘されたが[8]環境大臣諮問機関である中央環境審議会動物愛護部会は、1歳以上の猫が自由に動ける環境が確保されていることを条件として、22時までの猫カフェの営業(動物愛護法での展示に相当)を認める経過措置をとることを決めた。2年間の猶予期間を経過した時点で再度規制が必要か議論する予定としていた[9]。その後の2016年4月27日の中央環境審議会動物愛護部会において、条件付きで22時までの展示が了承された[10]

多くの店舗では、その店舗のマスコット的な猫をSNS動画サイトに投稿するなどのアイドルさながらの売り込みを行っている。一方、近年は、猫カフェ出店が相次いでいるため、「独自色」を出すため、内装を工夫したり、雑貨の取り扱い、カメラ(写真機)の修理を受け付けたり、品種においては、あえて血統のいい猫を置かず、捨て猫や雑種を中心に配置し里親を見つけながら経営を行う店舗も存在する[11]

2018年8月2日ケイアイコーポレーションの運営する猫カフェMOCHAの立川店舗にて7匹の猫が猫パルボウィルスに感染して亡くなった事を公式ウェブサイトで公表し、関東地区の全店舗を臨時休業する出来事があった[12]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 法律上は午後8時であるが猫カフェは経過措置により午後10時に緩和されている。猫の労働、夜は何時までOK? 猫カフェ規制で議論 朝日新聞 2016年4月14日記事

出典[編集]

  1. ^ “保護猫が主役、異色の江戸版“猫カフェ”が好調「少しでも関心持ってもらえれば」”. オリコンニュース. (2019年1月19日). https://www.oricon.co.jp/special/52412/  2020年5月9日閲覧。 
  2. ^ 殺処分ゼロを目指して ぶらくりに猫カフェ」『わかやま新報』、2016年7月28日。2020年5月9日閲覧。
  3. ^ a b c 「猫が待つ癒しカフェ――首都圏で続々」 朝日新聞2008年8月15日付夕刊、第3版、第14面。
  4. ^ 【今回のお題】話題の「猫カフェ」に来るお客さんってどんな人たち? - ライフ - 日経トレンディネット
  5. ^ ペット関連ビジネス活況 家族同然、健康管理は当然」フジサンケイ ビジネスアイ、2007年11月6日
  6. ^ にゃんこ15匹がお迎えするパブ、客の反応は上々も反対の声挙がる。”. ナリナリドットコム (2015年11月17日). 2015年11月17日閲覧。
  7. ^ 猫が癒してくれる猫カフェAll About2010年3月7日
  8. ^ 夜行性なのに…展示時間制限に「猫カフェ」困惑 読売新聞2012年2月4日閲覧
  9. ^ “「猫カフェ」は適用猶予=動物の夜間展示禁止で-中環審部会”. 時事通信. (2012年4月16日). http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012041600787 2012年4月16日閲覧。 
  10. ^ 猫カフェ午後10時まで営業可に”. 公益財団法人動物環境・福祉協会Eva. 2022年9月3日閲覧。
  11. ^ 「NPO法人 捨て猫や野良猫の飼い主探しの場として、動物病院と連携した「猫カフェ」をオープン」 朝日新聞、2010年4月22日付朝刊、山梨全県版
  12. ^ 猫カフェ『MOCHA』猫パルボウィルス感染を公表し謝罪 関東全店舗を臨時休業に”. ORICON NEWS (2018年8月3日). 2018年8月4日閲覧。

関連項目[編集]

  • 保護猫カフェ - 保護団体や保護活動を行う個人が引き取った野良猫や捨て猫などの「保護猫」を猫スタッフとする猫カフェ。
  • ドッグカフェ - 猫カフェとは違い店側で犬を用意するわけではなく、客が飼い犬を連れて入店できる形態の喫茶店を指す。
  • ネコノミクス