飲食店
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飲食店(いんしょくてん)とは、調理した食品、すなわち料理あるいは飲料を、その店内で客に飲食させる店の総称である[1]。飲食店は産業としては外食産業に分類される。
提供する料理・飲料の種類、営業スタイルは多様である。そして、国ごとにどのような料理や飲食店が主流なのかがそもそも異なっており、国ごとに主流の飲食店の分類法も異なる。
歴史
[編集]古代ギリシャ・ローマ世界にはテルモポリウム、すなわち「温かい食物を提供する場所」という名で呼ばれていた飲食店があった。ヘルクラネウムの遺跡には甕や大鍋をはめ込んだ石造りのカウンターを備えた飲食店が残されている。ポンペイ(紀元前5世紀頃 - 紀元79年)の遺跡にもカウンターを備えた飲食店が残り、瓶などの容器に残された成分の分析により、豚肉、魚、牛肉、エスカルゴの料理が提供されていたことが判明しており、カウンター前面の絵がメニューだとすれば鶏肉料理も提供していた可能性がある。
旅人に宿泊場所を提供する宿屋も、通常は飲食店のルーツの一つとして言及される。宿屋が旅人に料理を提供することは古代から自然なことであった。宿屋が宿泊客に加えて、通りがかりの旅人にも料理を提供すれば客から見れば飲食店でもあり、宿屋と飲食店の境界は曖昧であった。また昔は飲食店が客に対して宿泊場所の提供を始めることもあり、すなわち飲食店が副業的に宿の提供を始めることは昔は自然なことであり、その意味でも境界は曖昧であった。日本に「- 茶屋」という名の旅館があるのも、また中国語の「飯店」や「酒店」がホテルを意味するのも、両者の境界が曖昧だった歴史の名残である。
日本の飲食店の歴史
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日本で「茶屋」が登場したのは室町時代とされ、『職人歌合』など中世の図像史料には、寺社の門前で茶や食事を提供する簡素な茶屋と、茶食を提供する職人の姿が描かれている[2]。近世に至る前近代における飲食店は、寺社との関係が濃密であった。
『洛中洛外図屏風』の中には「一服一銭」の茶売り人の姿も描かれ、寺社の門前にござを敷き、そこに炉を構えて茶を点て、お代を受け取り、あるいは茶釜と水桶をてんびん棒で持ち歩き売り歩く様子が描かれている。東寺の南大門前は多くの参詣客で賑わい、それを目当てに茶売り人も集まってきたらしく、東寺百合文書にはその商売の様子が書かれている[3]。また日本の茶屋の二階は落ち着いて飲食できる場所として用意されたが、その個室は男女が逢引できる場所ともなり、簡易的な宿泊場所としても機能した。
なお、京の紫野の今宮神社の参道には、それより遡る平安時代後期、西暦1000年(長保2年)に創業したとされる「一和」(いちわ)があり、当時から餅にきなこをまぶして炭火で焼いたものを提供していたようである[4]。宇治橋近くには1160年(永暦元年)創業の茶屋「通圓」(つうえん)がある[5]。
近世には都市が発達し、旅人の往来する街道沿いや参詣地である寺社、遊興施設など集客機能を持つ場所が成立し、また物流網が発達し青物や海産物、乾物など多様な食材が安定的に供給されるようになり、料理屋など外食産業が成立する基盤が整えられ、都市の経済的発展や賑わいを示す要素ともなった。

現代でいう飲食店は、江戸時代には細分化して発展した。江戸では明暦の大火(明暦3年、1657年)後、市街復興のために集まってきた労働者を対象とした煮売屋が発生。そこから手軽に酒と肴を楽しむことのできる居酒屋も派生した。
また江戸時代初期には飯屋(めし屋)が登場し、井原西鶴の『西鶴置土産』によれば、明暦3年に浅草金竜山に開店した飯屋「奈良茶」では、茶飯、豆腐汁、煮しめ、煮豆のセットメニューを食べさせる店も登場し、江戸の人々は物珍しさから競ってそれを食べに行ったという。江戸時代中期から後期には蕎麦屋・うどん屋も登場し、「けんどん屋」などと呼ばれる「けんどん蕎麦切り[6]」を食べさせる店があった。また、惣菜用の料理を扱う「煮売屋」が茶屋(煮売茶屋)を兼ねて料理を提供することもあった。
徳川吉宗が亡くなった頃から、留守居役や文化人、商人が、接待や会合に使用する高級店が出現する[7]。これは「留守居茶屋」と呼ばれ、大名が不在の間に大名屋敷を預かる留守居役を相手とした会席料理を出す高級茶屋で料亭の起源とされる。1767年 - 1786年(明和4年 - 天明6年)の田沼時代には、江戸の飲食店は本格的に開花し、諸藩江戸屋敷に勤める留守居役や上層町人などを顧客とした高級料亭も多数開店した。
また江戸には、蕎麦、寿司、天ぷらなどの屋台が盛んとなり庶民に好まれた。うなぎ料理も人気を博し、1801年には浅草寺参詣ルートの浅草駒形に現代まで続くどじょう料理専門店「駒形どぜう」が創業し、どぜう鍋、どぜう汁を提供[8]してきた。一部には「ももんじ屋」で獣肉を食すことを愛好する者もいた。
江戸時代の料理屋は、芝居小屋などの娯楽施設と近接し、飯盛女を雇用した売春業を兼業することもあった。娯楽施設に近接する料理屋はその性格から博徒などアウトロー集団や犯罪に関わる情報が集中しやすく、一方で目明かしなど公権力の人間も出入りし、犯罪発生と治安維持の両側面を持っていた。こうした江戸時代の料理屋の多面的性格は、明治以降の都市では売春業は遊廓、治安維持は警察へと機能分化が進み、料理屋は純粋に飲食のみを提供する施設へと変化していった。
- 江戸葺屋町 福山そば屋の店先(北尾重政画『繪本三家榮種』)
種類
[編集]飲食店も、他の産業同様に細分化されている。国ごとに飲食の歴史は異なっており、飲食店の分類法も国ごとに大きく異なっている。
イタリアの飲食店
[編集]- ピッツェリア (Pizzeria) - 多様な料理を提供するカジュアルな飲食店[9]。語源は「ピザ専門店」だが、ピザ以外の料理も提供される。
- トラットリア (Trattoria) - シェフが作った料理を食べさせる店。次に説明するオステリアよりも上品。
- オステリア (Osteria) - もともとはワインと簡単な食事を提供する店のことだったが、後に食事メニューが充実し、現在では賑やかに愉しめる庶民的な店となった。日本の居酒屋のような雰囲気の店。
- エノテカ (Enoteca) - 「ワイン専門の酒屋」という意味で、店内ではワインの試飲もでき、購入し持ち帰ることもできる。
- パニノテカ (Paninoteca) - パニーノ、すなわちパンで具をはさんだイタリア風サンドウィッチを提供する飲食店。
また、イタリア国内でバール (Bar) と呼ばれる街のあちこちにある店は、英語圏でBarと呼ばれる店とは提供されるものや雰囲気が異なり、コーヒーや酒を提供する店である。朝のバールではイタリア人はよく「ウン・カフェ (un caffè) 」と注文し、こう言うとエスプレッソが提供される[10]。
日本の飲食店
[編集]日本の飲食店は、業態による分類としては、レストランや専門料理店(特定の料理の扱いが9割以上を占める料理店。蕎麦屋、ラーメン店、寿司屋、鰻屋など)のほか、ファミリーレストラン、ファストフード店、喫茶店、居酒屋などがある。
業態は多様化が進んでおり、店内での飲食に加えて、出前(デリバリー)やテイクアウト(持ち帰り)に対応している飲食店もある。また小売店で買った食品を店内で飲食できる設備を備えた店舗も増えてきており、酒販店では角打ち、コンビニエンスストアやスーパーマーケットではイートインと呼ばれる。ショッピングセンターなどの大規模商業施設に設置されるフードコートのような業態もある。
日本国内の産業分類
[編集]日本標準産業分類では「中分類76 - 飲食店」に分類される[11]。かつては「一般食堂」などの分類が用いられたが、2007年(平成19年)11月の改定により再編された[12]。
日本標準産業分類の事業区分では、「中分類76 - 飲食店」以下、次のように分類される[11]。
日本の飲食店と法規
[編集]日本の法律では、飲食店は食品衛生法第3条における「食品等事業者」の一種にあたる。同法は「食品等事業者」を「食品もしくは添加物を採取し、製造し、輸入し、加工し、調理し、貯蔵し、運搬し、もしくは販売することもしくは器具もしくは容器包装を製造し、輸入し、もしくは販売することを営む人もしくは法人または学校、病院その他の施設において継続的に不特定もしくは多数の者に食品を供与する人もしくは法人をいう。」と定義している。
飲食店を営業するためには、食品衛生法第55条の規定により、都道府県知事の許可(窓口は保健所)を受け、店舗ごとに食品衛生責任者を置かなければならない。
食品販売店が副業的(複合的)に飲食店も経営するには、飲食店としての営業許可が別途必要となる。たとえば酒類の店舗販売を行う酒店に必要なのは「一般酒類小売業販売免許」だが、その店舗内に角打ちのため飲食スペースを新たに設ける場合は、別途「飲食店営業許可」が必要となる。
また、接待を伴う飲食店(風俗営業)を営業する場合は、風俗営業法に基づき、各都道府県公安委員会の許可を受ける必要がある。
なお、ライブハウスは「興行場」として営業すると興行場法による厳しい規制を受けることから、より許可されやすい「飲食店」として届け出ている例も多く、チケット購入以外に必ず飲料を1品注文する「1ドリンク制」が広く採用されているのは、法律上は「飲食店」として届け出ているため[13]である。
脚注
[編集]- ↑ 飲食店 コトバンク
- ↑ “外食の始まり”. サンセイ. 2024年7月4日閲覧。
- ↑ “「大変だった?茶店のはじまり その1」”. 東寺百合文書WEB. 2024年7月4日閲覧。
- ↑ “「創業千年、日本最古の茶店女将」”. リクナビ (2014年11月28日). 2024年7月5日閲覧。
- ↑ “「創業永暦元年、平安時代末期から23代続く、日本で一番古い御茶屋」”. 宇治商工会議所. 2024年7月5日閲覧。
- ↑ 慳貪蕎麦切(読み)けんどんそばきり コトバンク
- ↑ 杉浦日向子監修『お江戸でござる 現代に活かしたい江戸の知恵』pp.67-68、ワニブックス、2003年9月10日。
- ↑ 200余年の歴史 駒形どぜう公式サイト、2024年9月15日閲覧。
- 1 2 Types Of Restaurants In Italy
- ↑ Italian bars
- 1 2 “大分類M-宿泊業,飲食サービス業” (PDF). 総務省. 2020年11月6日閲覧。
- ↑ “平成23年表における飲食サービス関連部門の設定について” (PDF). 総務省. 2020年11月6日閲覧。
- ↑ “ライブハウス、法律上は「飲食店」 1ドリンク制をめぐる誤解を弁護士が斬る”. 弁護士ドットコム (2018年6月4日). 2022年12月29日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 飲食店 - コトバンク
- 株式会社アール・アイ・シー『飲食店経営』 - 飲食店経営専門誌