野獣死すべし (1980年の映画)

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野獣死すべし
監督 村川透
脚本 丸山昇一
製作 角川春樹
製作総指揮 黒澤満
紫垣達郎
出演者 松田優作
小林麻美
室田日出男
鹿賀丈史
音楽 たかしまあきひこ
撮影 仙元誠三
編集 田中修
製作会社 角川春樹事務所/東映
配給 東映
公開 日本の旗 1980年10月4日
上映時間 118分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
配給収入 7億3000万円[1]
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野獣死すべし』(やじゅうしすべし)は、1980年公開の日本映画大藪春彦同名小説の映画化作品の一作である。

概要[編集]

配給は東映、製作は角川春樹事務所。松田優作が鬼気迫る演技で主演を務めたが、人物描写などに原作との差異(後述)が少なからず存在するため、原作とは同名異作のハードボイルド映画とする評価もある。

主演の松田優作は、クランクイン前に「役作りのために少し時間が欲しい」として、しばらくの間スタッフと音信を絶っている。その間に松田は10kg以上減量し(検量してみたところ62kgまで落ちていた)、更に頬がこけて見えるようにと上下4本の奥歯を抜いたという[2]。約1ヶ月後、撮影所に現れた松田の痩せ細った姿に監督の村川透が激怒し、松田と激しい口論を始めたという逸話も残されている。また、役になりきる上では身長が高過ぎるという理由で「可能なら足を5cm程切断したい」と真剣に語っていたとも伝えられている。なお、撮影当時の松田の公称身長は185cm(美智子元夫人の著書『越境者 松田優作』によれば実際には183cm)、物語における主人公の身長設定は「180cm前後」もしくは「180cm以上」とされており、数値だけを見ればさほど差があるわけではない。

上記の通り主人公・伊達邦彦のキャラクター像は原作とは大きく異なっている。そのため、脚本を担当した丸山昇一は、伊達のキャラクター描写について大藪春彦から批判された、と後に語っている。これは、大藪が伊達を野性的なタフガイとして位置付けていた(大藪は『野獣』シリーズ以外の作品にも伊達を登場させているが、その人物像は終始一貫している)のに対し、丸山は原作が書かれた時期とは時代の様相が大きく異なっていたことも鑑みて、当時の若者から感じ取った、掴みどころがなく陰湿な不気味さを持った人物として伊達を描いたことに起因する。

本作の場面描写には抽象的な点も多く、特に結末は現在でも日本映画における難解なラストシーンのひとつに数えられている。解釈には「待ち伏せていた警察隊により狙撃され死亡した」「伊達の狂気が生み出した幻影」「突発的にフラッシュバックを起こし、錯乱した」など諸説あるが、公式に明示された例はないため、結論は得られていない。

角川春樹によれば、『野獣死すべし』・『ニッポン警視庁の恥といわれた二人 刑事珍道中』の2本立ては利益が1億円に満たない興行成績で終了した[3]

2009年松田優作没後20年を記念して初めてBlu-ray Disc化。その後、2012年に改めて「角川ブルーレイ・コレクション」の一作品として廉価版が発売。2014年には4Kスキャニングマスターを使用したニューマスター版Blu-rayが発売。

ストーリー[編集]

ある大雨の夜、東京都内で警視庁捜査第一課の岡田警部補が刺殺され、拳銃を奪われる事件が起きた。更にその直後、その拳銃を使用した違法カジノ強盗殺人事件が発生、世間は騒然となる。その犯人は、数々の戦場で地獄を見てきた大手通信社外信部記者の伊達邦彦だった。伊達は東京大学卒のエリートで頭脳明晰、射撃の心得もある。現在は通信社を退職し、翻訳家をしながら趣味である読書とクラシック音楽鑑賞に没頭、社会とは隔絶した生活を送っていた。

次の標的を銀行に定めた伊達は綿密な計画を企てるが、厳重な防犯体勢の元では単独犯行は不可能であると判断、相応しい共犯者を欲するようになる。そしてある日、大学の同窓会に出席した伊達は、レストランでウェイターとして働く青年、真田と出会う。2人は正反対の性格ながら、どこか通じ合うものを感じ、以後行動を共にするようになる。現金強奪計画を真田に伝えた伊達は、真田に銃の扱い方を教え、「動く標的」として恋人の殺害を強要する。そして、躊躇を重ねながらも恋人を射殺した真田を伊達は「君は今確実に、神さえも超越するほどに美しい」と称え、社会性や倫理感を捨て去り「野獣」として生きていく術を説く。

2人は銀行襲撃を決行するが、伊達に思いを寄せる華田令子が客として偶然居合わせるという、予期せぬ事態が起きる。行員達を次々と殺害し、地下金庫から大金を収奪すると逃走を図るが、そこにはマスク姿の伊達を見つめる令子の姿があった。振り返った伊達はマスクをはずし、躊躇することなく令子にも引き金を引く。

警察の緊急配備網を巧みな鉄道移動で突破したかに思えたが、岡田の部下で伊達を執拗に追い回す変わり者の刑事・柏木は、どこまでも伊達に付きまとう。そしてついに決断した柏木は、夜も更けた鉄道の車内で伊達に拳銃を向け、尋問を始めたのだが…。

備考[編集]

  • 伊達が所持するコルト・シングル・アクション・アーミーは、本作品のテクニカル・アドバイザーを務めたトビー門口の私物のモデルガンである。ただし、グリップは19世紀末に実銃用に作られたアンティーク品で、非常に希少価値が高いものだという。当時の映画雑誌の記事によれば、劇中で印象的に描写されるグリップの裏側に彫られた隠し文字や、中に入っている異物(人間の歯だといわれている)も、入手した際には既にあったものと解説されている。
  • 伊達が佐藤慶演じる妙な訛りのある闇ブローカーから入手する拳銃はコルト・ウッズマン。22口径でサイレンサーを特注した設定になっている。
  • 逃走に使用する列車は1980年当時の客車夜行急行「八甲田」で、伊達と刑事が乗り込んだ車両にはA寝台用を示すナロネ21の表示もあるが、車内はボックスシート普通車である。さらに走行場面の外観は近郊形電車であり、立っている通勤客が見える。

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

その他[編集]

  • キャッチコピーは、「青春は屍をこえて」。
  • 当初、真田徹夫役には金子正次が候補にあった。
  • 劇中コンサートのシーンで演奏されている曲は、すべてショパンの作品で、ラストシーンで演奏されている曲は、ショパンのピアノ協奏曲第1番第3楽章である。
  • オーケストラの指揮者役は、村川透の実兄の村川千秋である。

脚注[編集]

  1. ^ 中川右介 「資料編 角川映画作品データ 1976-1993」『角川映画 1976‐1986 日本を変えた10年』 角川マガジンズ2014年、281頁。ISBN 4-047-31905-8
  2. ^ 『昭和55年 写真生活』(2017年、ダイアプレス)p38
  3. ^ 角川春樹 「§7 エクスカリバー」『試写室の椅子』 角川書店1985年9月10日、58頁。ISBN 4048831895

関連項目[編集]

外部リンク[編集]