酪酸

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酪酸
識別情報
CAS登録番号 107-92-6
KEGG C00246
特性
化学式 C4H8O2
モル質量 88.11 g mol−1
外観 無色油状液体
密度 0.96 g/cm3, 液体
相対蒸気密度 3 (空気=1)
融点

−7.9 ℃

沸点

164 ℃

危険性
安全データシート(外部リンク) ICSC 1334
関連する物質
関連する異性体 イソ酪酸
出典
国際化学物質安全性カード
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

酪酸(らくさん、butyric acid)、IUPAC名ブタン酸 (butanoic acid) もしくはn-ブタン酸 (n-butyric acid) は、分子式 、示性式 の直鎖カルボン酸である。構造異性体イソ酪酸 がある。哺乳類は極微量でも臭いを探知することができ、イヌでは 10 ppbヒトでは 10 ppm まで嗅ぎ分けることができる。

性質[編集]

融点 −7.9 °C沸点 164 °C の無色の液体で、特有の不快臭を有する。pKa 4.82 の弱酸である。とはよく混和するが、食塩水には溶けにくいことから、酪酸水溶液に多量の食塩を加えると分離することができる。

揮発性が低いため、建物の壁や柱に染み付くとリフォームを施してもなかなか臭いが取れない。

存在[編集]

バターから得られたのでこの名で呼ばれるようになった。銀杏の異臭の原因でもあり、の悪臭の原因でもある。

脂肪酸の分解過程で生合成されるほか、バターやチーズ皮脂に含まれている。哺乳類大腸反芻胃では細菌が食物の中のセルロースヘミセルロースを嫌気発酵し、酪酸などの短鎖脂肪酸を生成しており、これが草食性動物の体内では重要なエネルギー源となっている。酪酸は、β酸化により酢酸に相当するアセチルCoAに分解され、クエン酸回路によりエネルギー源として利用される。

大腸内で産生された酪酸は結腸細胞に優先的にエネルギー源として利用される[1]

合成[編集]

工業的にはブタノールブチルアルデヒドの酸化によって作られている。また、酪酸エチル、酪酸イソアミルなどのエステルパイナップルの香気成分(香料)として知られる。

危険性[編集]

皮膚や粘膜に対する腐食性があり、水生生物に有害。ICSCでは「漏洩物処理」項目で、環境中への放出を禁じている。消防法に定める第4類危険物 第3石油類に該当する[2]

関連項目[編集]

C3:
プロピオン酸
飽和脂肪酸 C5:
吉草酸

脚注[編集]

  1. ^ Keith A. GARLEB, Maureen K. SNOWDEN, Bryan W. WOLF, JoMay CHOW, 田代 靖人訳、発酵性食物繊維としてのフラクトオリゴ糖の医療用食品への適用、腸内細菌学雑誌 16 巻 (2002) 1 号 p. 43-54
  2. ^ 法規情報 (東京化成工業株式会社)