ポーランドの世界遺産

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ポーランドの世界遺産 (ポーランドのせかいいさん) は、ポーランド国内にあるユネスコ世界遺産の一覧である。

概要

国際連合教育科学文化機関 (UNESCO) 世界遺産は、1972年に制定された世界遺産条約に基づいて登録される[1]ポーランド1976年6月29日にこの条約を批准した[2]

2020年現在、ポーランドには16の世界遺産があり[3]、15の文化遺産と1の自然遺産 (ビャウォヴィエジャの森) が存在する。この内、最初に登録されたのは1978年クラクフ歴史地区英語版ヴィエリチカ岩塩坑の2件、最新の登録は2019年クシェミオンキの先史時代の縞状燧石採掘地域である。これら世界遺産の内、ビャウォヴィエジャの森 (ベラルーシと共有) 、ポーランドとウクライナのカルパティア地方の木造教会群 (ウクライナと共有) 、ムスカウアー公園/ムジャコフスキ公園 (ドイツと共有) の3の遺産は国境を越える遺産である。また、6の遺産が暫定リストに登録されている[2]

世界遺産

  * 国境を越える遺産
世界遺産
名称 画像 位置 (県名) 登録年 IDと登録基準
説明
クラクフ歴史地区英語版 上空から見たクラクフの中央広場 マウォポルスカ県 1978年 29bis、 (iv) 、文化遺産 1257年に創建されたクラクフはポーランドの古都である。その歴史地区には、クラクフの中世の街並、ヴァヴェルの丘の建物群 (王宮とポーランド王の霊廟となってきたヴァヴェル大聖堂がある) 、カトリックとユダヤ教徒の街カジミエシュ英語版 (ストラドム郊外を含む) という調和のとれた三つの地区がある。工芸と美術の街クラクフは東洋と西洋の出会う場所でもあった。都市は高水準の保全がなされており、初期のロマネスク時代からモダニストの時代までの様式が見られる。2010年には登録範囲の軽微な変更が行われている[4]
ヴィエリチカボフニア英語版王立岩塩坑 地下ホール マウォポルスカ県 1978年 32ter、(iv) 、文化遺産 ヴィエリチカ、ボフニアの周辺地域には岩塩が埋蔵されており、13世紀から採掘が行われてきた。何百キロメートルにもわたる両鉱山の坑道内には塩でできた彫刻や地下礼拝堂などの芸術作品がある。鉱山は13世紀から20世紀のヨーロッパにおける採掘技術の発達の様子を示している。まず、1978年、ヴィエリチカ鉱山が単独で登録された。11年後、湿気が彫刻を脅かしていたため、危機遺産のリストに追加された。保全のため、鉱山内に効率的な脱湿装置の導入が行われ、1998年、危機遺産から除外された。2008年には登録範囲の軽微な変更が行われた。2013年にはボフニア鉱山が追加されている[5][6][7]
アウシュヴィッツ・ビルケナウ ナチス・ドイツの強制絶滅収容所(1940年–1945年) 赤いブロックでできた正門。門内に線路が伸びている。 マウォポルスカ県 1979年 31、 (vi) 、文化遺産 アウシュヴィッツは、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツによってナチス・ドイツにより併合されたポーランド領英語版に建設・運営された強制絶滅収容所網の一つである。この収容所はナチスの強制収容所では最大規模のものであった。世界遺産にはアウシュヴィッツ第一強制収容所(基幹収容所)、アウシュヴィッツ第二強制収容所=ビルケナウ (絶滅収容所) 、収容者の集団墓地が登録されている[8]。この遺産は元々「アウシュヴィッツ強制収容所」として登録されていたものの、ポーランド側の要望によりタイトルを「アウシュヴィッツ=ビルケナウ」、サブタイトルを「ナチス・ドイツの強制絶滅収容所(1940年–1945年)」として、改名されている[9]
ビャウォヴィエジャの森* 草を食む3頭のヨーロッパバイソン ポドラシェ県 1979年 33、(ix) (x) 、自然遺産 ビャウォヴィエジャの森はポーランドベラルーシの国境に位置する大森林群であり、広範囲にわたって原生林が存在する。森は中部ヨーロッパ混交林英語版陸域エコリージョンの一例であり、湿性草地、河谷、湿地などの森林以外の生息地も存在する。この地域には最大の野生のヨーロッパバイソン個体群、及びオオカミオオヤマネコカワウソなどが生息している。1979年、ポーランド側の地域がまず初めに登録された。ベラルーシ側の地域である「ベラヴェジュスカヤ・プーシシャ」は1992年に登録された。2014年には拡大登録が行われている[10]
ワルシャワ歴史地区 市場の背後に色とりどりの家が立ち並ぶ。 マゾフシェ県 1980年 30、(ii) (vi) 、文化遺産 ポーランドの首都、ワルシャワ1944年ワルシャワ蜂起の際、ドイツ軍によって破壊された。歴史地区の85パーセント以上が灰燼に帰した。戦後、5年間の再建計画により、旧市街地は綿密に復元された。1960年代の半ばまで再建は続き、ワルシャワ王宮 (1984年には観光客に開放された) の復元によって終了した[11]
ザモシチ旧市街 色とりどりの家が立ち並ぶ。 ルブリン県 1992年 564、(iv) 、文化遺産 ザモシチは16世紀にヤン・ザモイスキにより創建された。パドヴァ出身のベルナルド・モランドによって設計されたこの街は、後期ルネサンス期の街の傑出した一例である。当時の街並みが保存されており、要塞などの建築物に中部ヨーロッパとイタリアの建築様式の融合が見られる[12]
マルボルクのドイツ騎士団の城 赤レンガでできた城を望む。 ポモージェ県 1997年 847、(ii) (iii) (iv) 、文化遺産 マルボルク城はドイツ騎士団により築城され、1309年に騎士団の本拠地がベニスからマルボルクに移ると、大幅に増築された。この城はブリック・ゴシック英語版様式の中世の城の好例である。城は第二次世界大戦により激しい被害を受けたものの、以前の修復時の詳細な記録を元に再建されている[13]
中世都市トルニ 市街地 クヤヴィ=ポモージェ県 1997年 835、(ii) 、(iv) 、文化遺産 トルンは中世ヨーロッパにおいて貿易・政治の中心地として栄えた。街にはニコラウス·コペルニクスの生家やトルン城英語版などの中世の建築物が見られる。当時の街並みがほぼ完全に残されており、中世の生活様式を窺うことができる[14]
カルヴァリア・ゼブジトフスカ:マニエリスム様式の建築と公園の景観複合体と巡礼公園 白い壁でできた教会 マウォポルスカ県 1999年 905、(ii) 、(iv) 、文化遺産 カルヴァリア・ゼブジトフスカは、ミコワイ・ゼブジドフスキ英語版によって造られたポーランド初の大規模なカルヴァリーである。自然の情景を活かしてキリストの受難が表現されており、優れた文化的景観を生んでいる。現在も (登録時) このカルヴァリーには、何千人もの巡礼者が訪れる[15]
ヤヴォルとシフィドニツァの平和教会群 木造の教会 ドルヌィ・シロンスク県 2001年 1054、(ii) 、(iv) 、(vi) 、文化遺産
マウォポルスカ南部の木造教会群 木造の教会 マウォポルスカ県 2003年 1053、(iii) 、(iv) 、文化遺産 ビナロヴァ英語版ブリズネ英語版デンブノ・ポドハラニスキェ英語版ハチュフ英語版リプニツァ・ムロヴァナ英語版センコヴァ英語版にある6つの教会は、この地域で最も保存状態が良く、かつ最古のゴシック様式の木造教会である。貴族の出資によって建てられたこれらの教会には、豪華な装飾が施されており、中世ギルドの育んだ伝統と技術が見られる[16]
ムスカウアー公園/ムジャコフスキ公園* 城と池 ルブシュ県 2004年 1127、(i) 、(iv) 、文化遺産 ムジャコフスキ公園 (ムスカウアー公園) は、ヘルマン・フォン・ピュックラー=ムスカウによって1815年から1844年にかけて造園された。公園は周囲の景観と調和するように造られており、学問としてのランドスケープ建築の発展に大きな影響を与えた。公園はポーランドドイツの国境に位置し、両国によって共同管理がなされている[17]
ヴロツワフの百周年記念ホール 巨大なコンクリートのドーム ドルヌィ・シロンスク県 2006年 1165、(i) 、(ii) 、(iv) 、文化遺産 百周年記念ホールは、建築家マックス・ベルク英語版によって設計、1911年から1913年にかけて建設された。初期のモダニズム建築であるこのホールは、建設当時世界最大の鉄筋コンクリート製のドームであり、近代建築の歴史において重要な分水嶺となった。ホールは最大1万人まで収容することができ、近代的なレクリエーション建築としても卓逸した一例である[18]
ポーランド、ウクライナのカルパチア地方の木造教会* 木々に囲まれた木造の教会 マウォポルスカ県
ポトカルパチェ県
2013年 1424、(iii) 、(iv) 、文化遺産
タルノフスキェ・グルィの鉛・銀・亜鉛鉱山とその地下水利システム英語版 鉱山の内部 シロンスク県 2017年 1539、(i) 、(ii) 、(iv) 、文化遺産
クシェミオンキの先史時代の縞状燧石採掘地域 採掘場内部 マウォポルスカ県 2019年 1599、(iii) 、(iv) 、文化遺産 クシェミオンキは、新石器時代から青銅器時代にかけての (紀元前3900年から1600年頃) 四つの燧石採掘場の複合体である。これまで (登録時) に確認された中で最も大規模な先史時代の燧石採掘・加工システムの一つであり、先史時代の集落における生活や労働の様子が分かる[19]

暫定リスト

暫定リストは、加盟国によって世界遺産への推薦が検討されている遺産の一覧である。世界遺産への推薦にはまずこの暫定リストにその地点が登録されている必要がある[20]2020年現在、ポーランドでは6の遺産が暫定リストに登録されている[2]

  * 国境を越える遺産
暫定リスト
名称 画像 位置 (県名) 登録年 評価基準 説明
グダニスク—記憶と自由の街
グダニスクの臨海地区
ポモージェ県 2005年 (ii) (iv) (vi) 、文化遺産 グダニスクの街はヴェステルプラッテにおける第二次世界大戦における最初の戦闘やグダニスク造船所での「連帯」の結成などの、ヨーロッパの歴史上重要な出来事の舞台となってきた。また、グダニスクでは高い美術的価値を有するゴシック期ルネサンス期などの建築を見ることができる[21]
アウグストゥフ運河英語版*
アウグストゥフ運河。両側には木が植っている。
ポドラシェ県 2006年 文化遺産 アウグストゥフ運河は1823年から1839年にかけて造られたヴィスワ川ネマン川を結ぶ運河である。この運河の開通により、領内を通過するポーランドとリトアニアの商品に高い関税を掛けていたプロイセン領を迂回することができるようになり、バルト海にあるラトビアの港とポーランド立憲王国とが結ばれた。運河は南東部がポーランドに、北西部がベラルーシに位置しており、国境を越える遺産となっている[22][23]
ピェニヌィ山脈のドゥナイェツ川渓谷英語版
ドゥナイェツ川渓谷
マウォポルスカ県 2006年 自然遺産 ポーランド南部のピェニヌィ国立公園英語版にあるドゥナイェツ川渓谷は、特有の地質地形学的特徴を持っている。この地域には多くの固有種が生息しており、その生物多様性は高い[24]
カルパチア山脈とヨーロッパ地域の古代及び原生ブナ林*
ポトカルパチェ県 2019年 (ix) 、自然遺産 この遺産には既に12ヶ国の遺産が登録されているが、ポーランドを含む10ヶ国の遺産が拡大登録される予定である。これらの森林はヨーロッパブナの歴史と進化を示しており、ポーランドでは、ビエシュチャディ国立公園英語版が暫定リストに登録されている[25]
近代都市グディニャ—計画都市構築の一例
グディニャの街
ポモージェ県 2019年 (ii) (iv) (v) 、文化遺産 第一次世界大戦後、グダニスク自由都市となり、ポーランド政府はグダニスクの港の権益を得ることができなくなった。新たな港の建設地として、当時人口1200人のグディニャの村が選定されると、村は急速に発展し、計画的な都市構築が行われた。1939年にはグディニャの人口は120000人に達し、新生ポーランドの近代化と海洋進出の象徴となった[26]
ドゥシュニキ=ズドルイの製紙工場英語版
製紙博物館の建物
ドルヌィ・シロンスク県 2019年 (iii) (iv) 、文化遺産 ドゥシュニキ=ズドルイ英語版の製紙工場は、ヨーロッパで現存・稼働する最も古い製紙工場の一つである。16世紀に建造されたこの製紙工場は、17世紀には所有者に富と繁栄をもたらした。1968年、工場は博物館となり、現在 (推薦時) でも伝統的な手漉きの紙が作られている[27]


関連項目

出典

  1. ^ The World Heritage Convention”. UNESCO World Heritage Centre. 2016年8月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年9月21日閲覧。
  2. ^ a b c Poland”. UNESCO World Heritage Centre. 2020年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月18日閲覧。
  3. ^ Poland and UNESCO Heritage List”. visitpoland.com. 2020年10月29日閲覧。
  4. ^ Historic Centre of Kraków”. UNESCO World Heritage Centre. 2020年11月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  5. ^ Wieliczka and Bochnia Royal Salt Mines”. UNESCO World Heritage Centre. 2005年11月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  6. ^ World Heritage Committee Removes Old City of Dubrovnik and Wieliczka Salt Mine from its List of Endangered Sites”. UNESCO World Heritage Centre (1998年12月1日). 2020年10月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  7. ^ Sites in Germany and Italy bring to 19 the number of sites inscribed on the World Heritage List this year”. UNESCO World Heritage Centre (2013年6月23日). 2021年5月24日閲覧。
  8. ^ Auschwitz Birkenau, German Nazi Concentration and Extermination Camp (1940–1945)”. UNESCO World Heritage Centre. 2019年11月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  9. ^ World Heritage Committee approves Auschwitz name change”. UNESCO World Heritage Centre (2007年6月28日). 2020年10月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  10. ^ Białowieża Forest”. UNESCO World Heritage Centre. 2020年9月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月30日閲覧。
  11. ^ Historic Centre of Warsaw”. UNESCO World Heritage Centre. 2017年3月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  12. ^ Old City of Zamość”. UNESCO World Heritage Centre. 2020年9月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  13. ^ Castle of the Teutonic Order in Malbork”. UNESCO World Heritage Centre. 2020年11月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  14. ^ Medieval Town of Toruń”. UNESCO World Heritage Centre. 2020年10月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  15. ^ Kalwaria Zebrzydowska: the Mannerist Architectural and Park Landscape Complex and Pilgrimage Park”. UNESCO World Heritage Centre. 2020年10月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  16. ^ Wooden Churches of Southern Lesser Poland”. UNESCO World Heritage Centre. 2020年10月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  17. ^ Muskauer Park / Park Mużakowski”. UNESCO World Heritage Centre. 2020年6月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  18. ^ Centennial Hall”. UNESCO World Heritage Centre. 2007年2月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  19. ^ Krzemionki Prehistoric Striped Flint Mining Region”. UNESCO World Heritage Centre. 2020年10月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  20. ^ Tentative Lists”. UNESCO World Heritage Centre. 2016年4月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月7日閲覧。
  21. ^ Gdansk—Town of Memory and Freedom”. UNESCO World Heritage Centre. 2020年10月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  22. ^ Augustow Canal”. UNESCO World Heritage Centre. 2020年6月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  23. ^ The Augustów Canal (Kanal Augustowski)”. UNESCO World Heritage Centre. 2020年6月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  24. ^ The Dunajec River Gorge in the Pieniny Mountains”. UNESCO World Heritage Centre. 2020年10月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  25. ^ Ancient and Primeval Beech Forests of the Carpathians and Other Regions of Europe (Poland)”. UNESCO World Heritage Centre. 2020年4月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  26. ^ Modernist Centre of Gdynia — the example of building an integrated community”. UNESCO World Heritage Centre. 2020年11月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。
  27. ^ Paper Mill in Duszniki-Zdrój”. UNESCO World Heritage Centre. 2020年11月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月29日閲覧。


外部リンク