バックブリーカー

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バックブリーカーBackbreaker)は、プロレス技の一種もしくは、そこから派生した技の総称である。日本名は背骨折り(せぼねおり)。

概要[編集]

もともとは背骨から腰のあたりを痛めつける古典的なストレッチ技だが、現在ではあまり見られない[1]

しかし、派生技はとても多く、そちらの方が現在では多く見られる。そのため、それら派生技を総称としてバックブリーカーと呼ぶことも多い[1]。なお、派生技は大きく二つに分類される。基本型バックブリーカーと同様に、断続的に相手の背骨を自分の体の一部を支点にし反り上げて(または相手の体を揺すり続けることによって負荷をかけて)痛めつける型(断続型)と、相手の背中を自分の体の一部(主に膝)にたたき落とす事によって単発の衝撃を与えて背骨を傷めつける型(単発型)である。

なお、ロデリック・ストロングは多様なバックブリーカーを使用することで知られ、「バックブリーカーの名手」「ミスター・バックブリーカー」の異名を持つ。

かけ方[編集]

ここでは、元々のバックブリーカー(基本型のバックブリーカー)のかけ方を説明する。

元来のバックブリーカーは、自らの片をマットに着いた状態で、その膝の上に相手を仰向けに乗せ、膝頭を相手の背中に当て、そこを支点に相手の体を両手で押さえつけて反り上げるという技である[1]

後述の派生技で、もっともこの形に近いのは、ジャイアント・バックブリーカーである。他にボウ・アンド・アロー・バックブリーカーやサーフボード・ストレッチなども膝を支点に相手の背中を反らせる点で近い形である。単発型の派生技では、いずれも膝に背中をぶつけて衝撃を与える形であり、単発と断続の違いはあるが膝を利用する点で共通する。

派生技[編集]

断続型[編集]

アルゼンチン・バックブリーカー[編集]

ターザン後藤によるアルゼンチン・バックブリーカー。

アルゼンチン式背骨折りとも呼ばれる。自分の肩の上に相手を仰向けに乗せ、あごと腿をつかむ。自分の首を支点として、背中を弓なりに反らせることによって背骨を痛めつける技である。創始者はアントニオ・ロッカエアプレーンスピンをかけようとした際、相手が暴れて逃げようとして身体が逆方向(仰向け)になったため、固定させようとあごと腿をつかんだところ、相手がそのままギブアップしてしまったというアクシデント的に完成された技であるという。当初は「ロッカ・スペシャル」と呼ばれていたが、ロッカがアルゼンチン出身であるために、この名が定着した。

ザ・デストロイヤーアントン・ヘーシンクも使い手。タイガー・ジェット・シンもこの技でアントニオ猪木を破ったことがある(1975年6月26日、NWFヘビー級選手権試合)。かける側の腰にも大きな負担がかかるため、彼らを除いては後述のカナディアン式と並んで主にパワーファイターが使用しており、日本人選手では豊登坂口征二中西学井上雅央岡林裕二、外国人選手ではアート・トーマスビッグ・ジョン・クインビル・ワットブラックジャック・マリガンなどが得意技とした。レックス・ルガートーチャー・ラックTorture Rack / 拷問台)の名称で使用していた。ロッカと同じくアルゼンチン出身の星誕期も得意技にしている。

カナディアン・バックブリーカー[編集]

カナダ式背骨折りとも呼ばれる。がぶりの体勢から、相手の胴を両手をクラッチして相手の背中が肩にくるようにして担ぎ上げる。クラッチは解かずに、そのまま上下に揺さぶることで背骨を反らせてダメージを与える。

カナダ出身レスラーのユーコン・エリック・ホルムバック英語版が創始者。もともと木こりであった彼は、作業中に丸太をかつぎあげる体勢を、そのままプロレス技に応用したという。

後にブルーノ・サンマルチノが絶対的な必殺技として用いたため、広く知れ渡るようになった。ディック・ハットンもこの技を用い、力道山からギブアップを奪った実績がある。

他の使い手には、ジョー・ルダックマイク・シャープ・ジュニアトム・マギーなどのカナダ出身選手やアンドレ・ザ・ジャイアント、日本人選手では豊登坂口征二ストロング小林矢野通などがおり、ハットンを除いてはパワーファイターが使う技として認知されている。

この技の体勢から後方に投げるとサンダーファイヤー、パワーボムの要領で落とすとサンダーファイヤー・パワーボムになる。いずれも大仁田厚の得意技(大仁田は全日本プロレス在籍時にカナディアン・バックブリーカーをよく用いていた)。

ハイジャック・バックブリーカー[編集]

飛行機強奪式背骨折りとも呼ばれる。カナダ式のように相手を仰向けに上方へ担ぎ上げたあと、自分の両腕で相手の両上腕部をクラッチして、相手を背中合わせに吊し上げて脊椎にダメージを与える。この時に、より前方に相手を担ぎ上げて、自らの頭を相手の背中に押し当ててさらにダメージを大きくすることもある。また、カナダ式同様に自分の体を上下へ揺らしたり、回転して相手を振り回したりして、その衝撃でダメージを増加させる場合も多い。

ドン・レオ・ジョナサンマスクド・スーパースターシッド・ビシャスなどの大型選手が使用した。日本プロレス時代のアントニオ猪木は、コブラツイスト卍固めを相手にかける前に、この技で背骨へダメージを与えておくことが多かった。レイザー・ラモン(スコット・ホール)は、この技の体勢から相手を前方に投げ捨てるパワーボムレイザーズ・エッジ(アウトサイダーズ・エッジ)と称して用いた[2]

ジャイアント・バックブリーカー[編集]

巨人式背骨折りとも呼ばれる。ジャイアント馬場が考案したコブラクラッチとバックブリーカーの複合ストレッチ技。スタンディングでコブラクラッチを極め、その状態のまま相手の体を仰向けに倒しつつ自らの片膝を曲げながらマットにしゃがみ、相手の背中や腰を片膝頭に押しつけながらコブラクラッチで締め上げる。馬場の他、太陽ケア渕正信などの馬場の弟子達がよく使用。

ボー・アンド・アロー・バックブリーカー[編集]

弓矢式背骨折りとも呼ばれる。うつ伏せにマットに倒れている相手の背中に自らの両膝を当て、さらに相手の頭部と片足を両手で、それぞれ掴み、その状態のまま自分は背中からマットへ寝転がると同時に相手の体を反転させて持ち上げて、自らの曲げた両膝に相手の背中を押しつけながら相手の頭部と片足を手で下方向へ締め上げてダメージを与える。ホースト・ホフマンのオリジナル技[3]。他の使用者はアントニオ猪木、西村修つくしなど。また、全盛期のアンドレ・ザ・ジャイアントも得意技としていた。新日本プロレスに来日していた頃のハルク・ホーガンは猪木との幾度の対戦からこの技を盗み、古舘伊知郎をして「脱出不可能の超人背骨折り地獄」と言わしめた。

ボウ・バックブリーカー[編集]

弓式背骨折りとも呼ばれる。ルチャリブレの古典技。マットにたおれている相手を横向きにして、自らの片膝を背中に押しつけつつ相手の頭部と足を引っ張る。日本ではミル・マスカラス1978年の全日本プロレス来日時に公開している。漫画『キン肉マン』では、プリンス・カメハメが得意技の一つとして使用していた。

サーフボード・ストレッチ[編集]

波乗り式背骨折りとも呼ばれる。座っている相手に対して、あるいは稀に立っている相手に対して、背後に立ち、相手の両手首を、それぞれ自分の腕で掴んで背中側に引っ張り、同時に自分の片足裏あるいは片膝を相手の背面に当てて、そのまま相手の体を反らせて背骨にダメージを与える技。背骨折りの応用技で、ルチャリブレに源流を持つ古典的ストレッチ技[1]

レイネーラ[編集]

人工衛星式背骨折りとも呼ばれる。レイ・メンドーサが開発したジャベ。相手の首元と両脚を掴み、自身の体と交差するように背面で持ち上げて、横回転しながら背中・腰部を絞め上げる技。菅原拓也バッキンガム・バックブリーカーも同型技。

ゴリー・スペシャル[編集]

ゴリー・ゲレロが開発した複合背骨折りで、相手を背中合わせにして上方へ担ぎ上げたあと、相手の左足首を自分の右太腿へ、相手の右足首を自分の左太腿に引っ掛け、さらにハイジャック・バックブリーカーの要領で相手の右手首を左手で、相手の左手首右手で掴み、その状態で相手を内方向に締め上げることで背中と肩関節へダメージを与える。この技もカナダ式同様に自分の体を上下へ揺らして、その衝撃でよりダメージを増加させる場合も多い。父ゴリーからこの技を受け継いだチャボ・ゲレロは「完璧に決まったら脱出不可能、選択はギブアップかレフェリー・ストップしかない」と豪語していた。ボウ・バックブリーカーと共に漫画『キン肉マン』で、プリンス・カメハメが「トリプル・ビーフ・ケーキ」(三つの肉爆弾)の一つとして使用していた。

単発型[編集]

シュミット式バックブリーカー[編集]

シュミット式背骨折りとも呼ばれる。ボディ・スラムのように立っている相手の正面から、頭部と股間を両腕でそれぞれ抱えて、そのまま上方へ担ぎ上げる。その後、自ら片膝を立ててマットへ座り込むと同時に相手の背中を膝頭の上に落して、ダメージを与える。日本ではハンス・シュミットが初めて公開したことから、この名がついている[4]。他国ではバックブリーカー・ドロップと呼び、略されて単にバックブリーカーと呼ぶこともある[1]

代表的な使用者としてはジン・キニスキーがおり、最大の必殺技としていた。ニコライ・ボルコフは頭上まで相手をリフトアップして、そのまま膝に叩きつけるハイアングル式を用いた[5]ジミー・スヌーカスーパーフライ・スプラッシュ武藤敬司ムーンサルト・プレスを放つ前の繋ぎ技として使用。豊登、ストロング小林、イワン・コロフ、マスクド・スーパースターも多用していた。

ペンデュラム・バックブリーカー[編集]

振子式背骨折りとも呼ばれる。サイドバスターのように、立っている相手の頭部(あるいは上半身)を片腕で抱え込みながら腋に抱え、同時にもう片方の腕で相手の片足を抱えて上方へ持ち上げる。そして自らの片膝を曲げながらマットに座り込み、同時に相手の背中を膝頭に落してその衝撃でダメージを与える。相手をロープに振って返ってきたところを、自分の背中を見せつつキャッチして決める方法もある。

日本では坂口征二やキラー・カーン桜田一男などが得意としていた。木村健悟もジュニアヘビー時代は多用していた。海外ではハーリー・レイスネイル・グアイマイク・ジョージブレット・ハートなどが主な使い手だった。特にレイスはヘッドロックスリーパー・ホールドをかけられた際の返し技に使うことも多かった[6]

ワンハンド・バックブリーカー[編集]

片腕式背骨折り呼ばれる。バックドロップの状態で抱えあげてからクラッチを解き、片膝立ちになりつつ、空中で水平にした相手の身体を背面から自分の片膝の上に落とす。相手の体を上方に持ち上げてから最終的には片手で相手を抱えるようになることから、この名称がついた。創始者はビル・ロビンソンであり、ダブルアーム・スープレックスと並ぶフィニッシュ・ムーブとしていた。

ペンデュラム・バックブリーカー同様にヘッドロックへの返し技として使用されることが多いが、自分からかける場合も多い。ペドロ・モラレスペドロ・スペシャル藤波辰爾ドラゴン・バックブリーカーと称して同じ技を使っていた。アルゼンチン式の使い手である中西学や井上雅央は、アルゼンチン式への布石としてこの技を使うときがある。

バックドロップと同様に「両腕で胴を抱えるタイプ」と、「片腕で胴を、もう片方で片膝を抱えるタイプ(抱え込み式)」の2種類がある。ロビンソンはワンハンド・バックブリーカーという名称には不満があったようで、月刊デラックスプロレスでのインタビューで「叩きつける瞬間がワンハンドになるだけで、それまでの動作は両手で行っているのが写真でもお分かりいただけると思います。しいて呼ぶならロビンソン式バックブリーカーと呼んでほしいですね」と言っていたが、ワンハンド・バックブリーカーの呼び名で定着した。

仕掛けるタイミングの難しい技であり、パワーはもとよりテクニックが要求される。また、膝に負担がかかる技でもある。ロビンソンはジャイアント馬場、キラー・トーア・カマタアブドーラ・ザ・ブッチャーなどの重量級レスラーを相手にワンハンド式を決めたことがあるが、そのために膝を負傷している[7]

ケブラドーラ・コン・ヒーロ(風車式バックブリーカー)[編集]

ケブラドーラ・コン・ヒーロで相手を自分の膝に落とす直前。

風車式背骨折りとも呼ばれる。走ってくる相手に対して、正面からやや身体を倒しつつ自分の左手を相手の左の脇の下に、右手を右の脇の下に入れる。相手の走る勢いをそのまま回転させる方向に置き換え、身体を270度旋回させて落下させる。その際、自らは片膝を立てながらマットに座り込み、相手の背中を膝に落してダメージを与える。スピード感にあふれる技のひとつで、フィニッシュには至らないことが多いが試合の状況を変化させる際に用いられるルチャリブレの技。WWEのセザーロは相手がリープ・フロッグをしたところを空中でキャッチして、この技を仕掛ける。ちなみにケブラドーラ・コン・ヒーロとはスペイン語で「回転させながら破壊」という意味。アニバルが日本に持ち込んだ技。

主な使用者は、大原はじめ、タイガーマスク獣神サンダー・ライガーエディ・ゲレロ鈴木鼓太郎三沢光晴カズ・ハヤシみなみ鈴香シン・カラなど。

なお、回転を加えなければペンデュラム式となり、相手を膝の上に叩き付けるのではなく、そのまま肩の上まで持ち上げて、勢いをつけて浴びせ倒すとティルト・スラム、さらに肩まで持ち上げた後に自らも旋回しつつ勢いをつけて浴びせ倒すとターボドロップI(ジム・スティールの得意技)となる。

獣神バックブリーカー[編集]

獣神サンダーライガーが使用したアルゼンチン・バックブリーカーの態勢からマットに膝をつき、背中・腰・首に衝撃を与える技。元々はザ・コブラが使用していたアルゼンチン・バックブリーカー・ドロップ。コブラの場合、背が高く自分が尻餅をつく形で放っていたため、落差・相手へのダメージも大きかった。

オレンジ・バックブリーカー[編集]

小橋建太のオリジナル技。ドラゴン・スリーパーの状態で抱えあげてから、そのまま膝を打ち付ける。背中というより首に衝撃を与える技。

トレイン・レック[編集]

Aトレインのオリジナル技。カナディアン・バックブリーカーの態勢からマットに尻餅をつき、背中ないし腰に衝撃を与える技。

バック・クラッカー(バック・スタバー)[編集]

マット・ストライカーのオリジナル技。相手の背後から両肩に飛びつき両膝を相手の背中に押し当てて後方に倒れ込み、マットに打ちつけられた衝撃で相手の背中にダメージを与える技。CIMAスーパードロルにも同型のバリエーションが存在する。カリートアルベルト・デル・リオ中邑真輔プリンス・デヴィットなどが使用している。WWEなどではバックスタバーの名で使用する選手も多い。開発者であるストライカーは、ラングブロアーという名称で使用しており、プロレスリングZERO-ONE参戦時においては、ストライクと呼称されていた。

牛殺し[編集]

後藤洋央紀のオリジナル技。フィッシャーマンズ・スープレックスの状態で抱え上げたあと、相手を反転させながら前方へ投げ落とし、同時に自らの片膝を立てながら座り込み、相手の背中を膝頭にぶつけてその衝撃でダメージを与える。猛牛の異名をとる天山広吉を病院送りにしたことから名付けられた。

パワーボム式バックブリーカー[編集]

リッキー・マルビンが考案した技で、パワーボムのように担ぎ上げて落とすときにリングに両膝を立てて寝転び、そのまま相手の背中を両膝の上に叩き落とす。トマソ・チャンパがフィニッシャーとして使用している。

アイリッシュ・カース[編集]

WWEで活躍するシェイマスの得意技。ロックボトムの要領で相手を持ち上げ、相手をクラッチしている側の膝を突き出して、その上に相手を叩きつける。

インバーテッド・ヘッドロック・バックブリーカー[編集]

WWEで活躍するランディ・オートンの得意技。相手と背中合わせになった状態で首に腕を巻きつけ、勢いよく膝から着地する際、背中に乗せた相手の体をのけ反らせて首や背中にダメージを与える。攻勢に転じるときに繰り出すが、足を責められている時は自らのダメージを悪化させてしまう場面も見られる。

世界三大バックブリーカー[編集]

世界三大バックブリーカーという言葉があり、どの技を指すかは諸説ある。多くは、アルゼンチン式とカナディアン式が入っている。しかし残り一つはいろいろと挙げられている。

元々この言葉自体、実況アナウンサーや雑誌の記者や評論家などがその場の勢いで言ったものが多く、三大バックブリーカーを選ぶ基準(威力、知名度、使用頻度、歴史、考案者など)すら曖昧である。

以下は一部を列挙する。

  • アルゼンチン、カナディアン、ハイジャック
  • アルゼンチン、カナディアン、ジャイアント
  • アルゼンチン、カナディアン、シュミット式
  • アルゼンチン、カナディアン、ボー・アンド・アロー
  • アルゼンチン、カナディアン、(基本型の)バックブリーカー

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e 流智美著『これでわかった! プロレス技』(1995年、ベースボール・マガジン社
  2. ^ The 50 coolest maneuvers of all time (13) Scott Hall’s Razor’s Edge”. WWE.com. 2017年6月12日閲覧。
  3. ^ 『THE WRESTLER BEST 1000』P51(1996年、日本スポーツ出版社
  4. ^ 『THE WRESTLER BEST 1000』P289(1996年、日本スポーツ出版社)
  5. ^ 『THE WRESTLER BEST 1000』P242(1996年、日本スポーツ出版社)
  6. ^ 月刊プロレス 1982年9月号 P130でのハーリー・レイスの、この技の解説より(ベースボール・マガジン社)
  7. ^ ビル・ロビンソンのワンハンド・バックブリーカー”. ミック博士の昭和プロレス研究室. 2017年6月12日閲覧。

関連項目[編集]