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韓国インターナショナル・サーキット

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韓国インターナショナルサーキット
概要
所在地 大韓民国の旗韓国全羅南道霊岩郡三湖邑三浦里
営業期間 2010年
収容人数 約12万人
主なイベント F1韓国グランプリ
コース設計者 ヘルマン・ティルケ
コース長 5.621km
コーナー数 18
ラップレコード 1分39秒605 (2011年)
セバスチャン・ベッテル
レッドブル (F1)
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韓国インターナショナルサーキット(Korean International Circuit)は、大韓民国全羅南道霊岩郡三湖邑三浦里にあるサーキット。2010年10月24日に開催された2010年韓国グランプリより使用開始[1]。通称は霊岩(ヨンアム)サーキット。

概要

2007年10月、建設に着手、2009年4月10日、本格着工。施工者はSK建設。干拓地であり、海の至近である。全羅南道が推進する西南海岸観光レジャー都市開発(Jプロジェクト)の初事業となっている。 2010年のF1世界選手権より初開催となった韓国グランプリの開催地であり初年度には“3日間のレース期間中は大きな問題も発生せず,初開催にもかかわらず円滑なレース運営を成し遂げた点”が評価され「最高水準の韓国国際サーキットで初のグランプリを開催したことを認める」とFIAから賞賛の言葉と共にベストプロモーター賞を授与された[2][3][4]

2011年からはスーパー耐久の開催も予定されていたが、同年3月に発生した東北地方太平洋沖地震の影響でレース日程が大幅に変更されたため「レース車両の輸送が時間的に困難」との理由で中止された[5]

建設の遅れ

2010年7月完成予定であったが建設工事が大幅に遅れた。遅れの原因としては例年より多く雨が降ったため、干拓地の排水作業や地盤改良工事に手間取ったことが挙げられている[6]

これにより、10月22日の開催に迫る韓国GPに対する影響が懸念され、その旨を多くのマスメディアが報道した。これらの疑念を晴らすべく9月4日に「Circuit Run 2010」と題して走行会(デモ走行)が行われた。レッドブルのマシンを用意し、それに搭乗したドライバーはカルン・チャンドックであった[7]。行なわれたデモ走行の時点でも多くの箇所が工事中のまま[8] であり、サーキットのアスファルトはかろうじて全面舗装されているものの、3層のうち1層目しか舗装が行われていなかった。縁石も未設置であり、ランオフエリアのアスファルト舗装やタイヤバリアも設置されていなかった。仮設スタンドなどの設置も行われていなかった[9][7]。通常レースに使用されるスリックタイヤではなくウェットタイヤを使用しており、全力走行もしなかった。

その為、通常数ヶ月前には完了するFIAによる最終検査[10]は9月21日に予定されていたが[11]、その後主催者は9月28日まで延期を求め[12]、最終的には日本GPの翌日であり、韓国GP開催の10日前にあたる10月11日に最終検査を延期した[13]

開催直前までグランプリ検査が延期される事は極めて異例であり、FIAが制定する新サーキット建設及び、レースの開催についてのレギュレーション第3条の4項によると、最終的な立入検査は90日以内に行う必要があるとされ、60日以内には路面に関する全ての作業を終えてなければならないとされる[10]。 なお、レース開催10日前に緊急路面舗装工事を完了させたケースは1985年ベルギーGPスパ・フランコルシャン)がある。このケースではフリー走行中に路面が剥がれてしまい、危険性を訴える為にドライバー全員でボイコットを行った結果、決勝レースは予選の3ヵ月後に延期となった[14]。 直近で90日査察が間に合わなかったサーキットの例としてはバーレーン・インターナショナル・サーキットヤス・マリーナ・サーキットがある。

10月12日、最終査察にFIAのチャーリー・ホワイティングが訪問し、F1開催が可能なサーキットとして承認した事を発表した[15]。但し、未建設施設が残っている事を韓国グランプリ主催者側も認めた[16]

建設中の事故

急ピッチで作業が進められていたサーキット建設現場では9月29日にホームストレート上のクレーン車が倒れ、グランドスタンドを破壊するという事故が発生した。被害は比較的小規模であった[17][18]。他にもメインスタンドを工事中の作業員が15mの高さから落下し、重傷を負うという事故が発生している[19]

F1開催後の変更箇所

F1韓国GP開幕後も、10月22日のフリー走行でドライバーから危険個所の指摘(ピットレーン入口、路面より低い16コーナー縁石)があり、翌日23日の予選に向けて夜間緊急コース改修が行われた[20]。その他にピットの白線の一部を消す工事も行っている。又、前述の通り急ピッチの工事を行った為に路面排水の捌けが非常に悪く、2010年10月24日の初回韓国GP決勝日において雨が降った影響でレース開始を大きく遅らせる必要もあった為、今後の排水工事の必要性など安全性の向上の為に次回開催までにいくつかの課題も残っている。

韓国GP開催後、主催者側にまだ至らない部分が多々あった事を認め、今後はサーキット以外に駐車場等を含めたインフラ整備を行い、次回開催に向けて準備を進めるよう宣言した[21]

コース

ヘルマン・ティルケが率いるティルケエンジニアリングがデザインに携わる。グランプリ用コースは全長5,621mで反時計回り、2コーナー先の直線区間は1,200mを誇る。上部(グランプリ用コースで3コーナーから11コーナー)のみが常設サーキットで全長は全長3,045m。14コーナー以降の下部は将来的には港湾となりヨットなどが停留できるようになる予定。

高・中・低速コーナーにロングストレートを散りばめたレイアウトは評価が高く、ティルケがデザインしたトラックの中では最高レベルの出来とされる[22]。序盤はストレートが続く高速セクション。中盤は中速コーナーが続き、後半はウォールが近いテクニカルセクションとなる。11~13コーナーのS字から14.15コーナーの90度ターンの連続切り返し地帯はミスが多く、2010年はポイントリーダーのマーク・ウェバーがS字から14コーナーの入り口で外側の縁石に大きくはみ出しスピン。そのまま15コーナー外側のウォールに激突し後続のニコ・ロズベルグを巻き込む大クラッシュとなった。

アクセス

至近の空港は務安国際空港金浦国際空港と定期便で結ばれていたが、現在は運休中。サーキットすぐ側に木浦空港があるが、2007年の務安国際空港の開港により民間利用は廃止されている。船舶による移動手段としては博多港から高速船ビートル釜山港に向かい、ここからバスを使用して移動する手法もあり、九州からは比較的短時間でサーキットまで行く事も可能。

初開催時の問題

宿泊施設問題
木浦市街に近いものの、主要な国際空港から400km以上離れているため、F1関係者は車で4時間移動しなければならないなど、長時間の陸上移動が必要である。サーキット周辺には、外国人に対応できる観光ホテルが極めて少なく、関係者の多くが、ラブホテルを兼ねた韓国人向け宿泊施設に宿泊することになった。スクーデリア・フェラーリでさえ例外ではなくこうした宿泊施設に宿泊することとなり、(唯一アロンソ、マッサの両名は観光ホテルであるホテル・ヒュンダイに宿泊できた)、英国放送協会のBBCのジャーナリストや日本人F1解説者の今宮純も同様のホテル宿泊を余儀なくされた。世界中のジャーナリストが同じような経験を余儀なくされ、イタリアのメディアでは「F1チームがセックスモールに押し込められた」と報じられた、さらにはこれらのホテルは日中は時間制である為、多くのVIPやジャーナリストにさらなる衝撃を与えたばかりか、一部のメディアでは借り切ったはずの部屋が“部屋の主が留守の間に”(短時間)別の利用者に二重利用されていると報じられた(ホテル側は事実を否定)。英国名門チームであるマクラーレンやウイリアムズはラブホテルを逃れており”セックスモールに押し込められた"他所の関係者を散々冷やかしていたという。[23][24]
サーキット施設不備問題
F1初開催となった2010年10月24日の韓国GPもサーキット施設の不備で開催が危ぶまれ、特に前日23日から降り続く雨によって決勝当日は路面に水が張った状態となり、多くのドライバーが最悪の状況と諭した[25]。これは突貫工事で路面を舗装したことによってアスファルトの油分が抜け切れない状況での降雨が重なり、油分と水分が混ざり合った状況の為に非常に滑りやすい路面となった為であり、又、かなり工期を急いだ為に通常サーキットで行われる排水処理の工事まで手が回らなかった為とも言われている。このせいで最初の4周以降は雨がやんでいるのにも係わらず、40周以上は酷い水飛沫が上がる重度のウェットコンディションとなり24台中9台がクラッシュした。
また縁石については路面に紅白のペンキを塗っただけの箇所が多く、その部分は脆くなっている為にマシンが通る度に凹み、縁石上を攻めるとタイヤが宙に浮く現象が発生した。これによりヒスパニア・レーシング・チームの山本左近のマシンが溝となった部分にタイヤを乗せてしまい、ドライコンディションにも係わらず予選でスピンを起こしている。
さらには、国際F3スーパープリが11月に開催される予定であったが、開催をキャンセルした[26]。理由は移動式スタンドの強度不十分を理由とした危険性を判断した為であった[27]。また、工期の遅延や建設費用が予定していたよりも膨れ上がってしまった事から、このままでは2011年に開催されるレースで興行的な成功が見込めないと判断された事が原因となり、1月に臨時開催された株主総会会長職を務めていたチャン・ユンチョが解任され、後任に元駐スイス韓国大使であるパク・ウォンファが就任した[28]
マーシャル習熟度不足
SC走行中に緑旗を振ったり(本来は追い越し禁止の黄旗が振られる状況)、セバスチャン・ベッテルのマシンがクラッシュし炎上しても歩いて向かう等(結局ベッテルは自分一人で消火作業をした)、マーシャルの習熟度不足が浮き彫りになった。またクラッシュしたマシンをクレーンで運ぶ際にコース外の土をまき散らしながら走る一幕もあり、上記のマーシャル習熟度不足と合わせ安全管理意識の低さを露呈させた。

周辺

KAVOは韓国インターナショナルサーキットを中心とした大規模な都市計画を打ち出している。この都市計画は2021年までにサーキット一帯をモータースポーツと観光を主体とした都市に発展させる構想であり、総額16億7000万ドル(約1357億円)の事業と言われる。尚、都市計画化工事は2011年後半に施工開始を予定している[30]

参考文献

  • " ANNEXE O AU CODE SPORTIF INTERNATIONAL / APPENDIX O TO THE INTERNATIONAL SPORTING CODE "[1] - Procedures for the Recognition of Motor Racing Circuits Article 3.4 (モータースポーツサーキットの手続きと認定 第3条の4項)国際自動車連盟のレギュレーションより (一部翻訳) 28.Sep 2010 19:41(UTC)

脚注

  1. ^ 正式にはその前座戦となるヒュンダイ・シリーズが最初のレース。
  2. ^ 「3日間のレース期間中は大きな問題も発生せず、初開催にもかかわらず円滑なレース運営を成し遂げた点が評価された」とあるが、メディアによっては「コース舗装から最短期間で開催されたレース」と風評されている。
  3. ^ “ドタバタ韓国GP、しかし『ベスト・プロモーター賞』”. FMotorsports F1. (2010年12月12日). http://fmotorsports.cocolog-nifty.com/f107/2010/12/gp-cce0.html 2011年1月7日閲覧。 
  4. ^ 声明のなかで「最高水準の韓国国際サーキットで初のグランプリを開催したことを認める」と、ベストプロモーター賞の根拠を明らかにしている。 オートスポーツweb - 2010/12/12 配信
  5. ^ スーパー耐久シリーズ2011 開催日程変更に関するお知らせ - スーパー耐久機構・2011年3月24日
  6. ^ “Korea races to have track ready - SuperSport - Motorsport”. http://www.supersport.com/motorsport/formula1/news/100915/Korea_races_to_have_track_ready 2010年9月15日閲覧。 
  7. ^ a b “動画:韓国インターナショナルサーキット F1車載カメラ”. F1 Gate.com ( + youtube). (2010年9月7日). http://f1-gate.com/korea_gp/f1_9033.html 2010年9月7日閲覧。 
  8. ^ “Results for search of photos matching "yeongam".”. AllAroundPhilly.com. (2010年9月4日). http://hosted.ap.org/dynamic/external/search.hosted.ap.org/wireCoreTool/Search?type=Photo&output_format=PARA&query=yeongam&SITE=JRC&SECTION=HOME 2010年9月7日閲覧。 
  9. ^ “カルン・チャンドック、韓国インターナショナルサーキットを語る”. F1 Gate.com. (2010年9月4日). http://f1-gate.com/chandhok/f1_9013.html 2010年9月4日閲覧。 
  10. ^ a b “ANNEXE O AU CODE SPORTIF INTERNATIONAL / APPENDIX O TO THE INTERNATIONAL SPORTING CODE”. FIA. (2010年7月7日). http://argent.fia.com/web/fia-public.nsf/836F796BA4CA12B2C1257759005F6B46/$FILE/10.07.07_Annexe%20O%202010%20.pdf 2010年9月28日閲覧。 
  11. ^ “F1:霊岩に及第点「面白いレースになりそう」”. 朝鮮日報. (2010年-09-06). http://www.chosunonline.com/news/20100906000009 2010年9月7日閲覧。 
  12. ^ “F1韓国GP主催側 「なんとしてもトラックを完成させる」”. F1 Gate.com. (2010年-09-16). http://f1-gate.com/korea_gp/f1_9175.html 2010年9月28日閲覧。 
  13. ^ “F1韓国GP主催者 「急いで完成させる」”. F1 Gate.com. (2010年-09-28). http://f1-gate.com/korea_gp/f1_9342.html 2010年9月28日閲覧。 
  14. ^ “特集:幻のレース”. ESPN F1. (2010年-09-22). http://ja.espnf1.com/f1/motorsport/story/28926.html 2010年9月28日閲覧。 
  15. ^ “韓国インターナショナルサーキットをFIAが承認”. ESPN F1. (2010年10月12日). http://ja.espnf1.com/korea/motorsport/story/30985.html 2010年10月12日閲覧。 
  16. ^ “F1韓国GP側、会場が未完成であることを認める”. F1 Gate.com. (2010年10月13日). http://f1-gate.com/korea_gp/f1_9538.html 2010年10月13日閲覧。 
  17. ^ “F1韓国GP、サーキット建設現場で事故発生”. F1 トップニュース. (2010年10月1日). http://www.topnews.jp/2010/10/01/news/f1/races/koria-gp/24250.html 2011年2月15日閲覧。 
  18. ^ “Unfall bei den Bauarbeiten in Yeongam”. Motorsport TOTAL. (2010年9月29日). http://www.motorsport-total.com/f1/bilder/cat.php?c=10yeongamlok3 2010年10月3日閲覧。 
  19. ^ “영암 F1경기장서 20대 추락사고 - 1등 인터넷뉴스 조선닷컴”. (2010年10月13日). http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2010/10/13/2010101301582.html 2010年10月13日閲覧。 
  20. ^ “F1韓国GP、コースを緊急改修”. F1トップニュース. (2010年10月23日). http://www.topnews.jp/2010/10/23/news/f1/races/koria-gp/25859.html 2010年10月23日閲覧。 
  21. ^ “F1韓国GP 「2011年にはさらに良いショーを」”. F1 Gate.com. (2010年10月25日). http://f1-gate.com/korea_gp/f1_9702.html 2010年10月26日閲覧。 
  22. ^ “F1ドライバー、韓国のトラックを称賛するが最後は本音コメントに”. F1通信. (2010年10月22日). http://blog.livedoor.jp/markzu/archives/51704176.html 2010年11月4日閲覧。 
  23. ^ 初の韓国GPは“マジカル・ミステリー・ツアー”だった!?”. 今宮純オフィシャルブログ (2010年10月31日). 2011年2月15日閲覧。
  24. ^ “F1韓国GPの「ラブホテル問題」を現地メディアも批判”. F1 トップニュース. (2010年10月25日). http://www.topnews.jp/2010/10/25/news/f1/races/koria-gp/26146.html 2011年2月15日閲覧。 
  25. ^ “F1韓国GP、雨で赤旗中断”. F1 Gate.com. (2010年10月24日). http://f1-gate.com/korea_gp/f1_9683.html 2011年1月17日閲覧。 
  26. ^ “韓国F1サーキット、F3レースをキャンセル”. F1 Gate.com. (2010年11月4日). http://f1-gate.com/korea_gp/f1_9812.html 2011年1月17日閲覧。 
  27. ^ “韓国でF3のレース中止”. ESPN F1. (2010年11月4日). http://ja.espnf1.com/korea/motorsport/story/32822.html 2011年1月17日閲覧。 
  28. ^ “KAVO、チャン会長を解任”. ESPN F1. (2011年1月15日). http://ja.espnf1.com/korea/motorsport/story/38173.html 2011年1月17日閲覧。 
  29. ^ “月出山国立公園”. K.N.P. 韓国国立公園公式サイト(日本語版). http://japanese.knps.or.kr/Knp/Wolchulsan/Introduce.aspx?MenuNum=1&Submenu=02 2010年10月20日閲覧。 
  30. ^ “韓国、F1サーキットを中心とした都市建設を計画”. F1 Gate.com. (2010年10月19日). http://f1-gate.com/korea_gp/f1_9595.html 2010年10月20日閲覧。 

外部リンク

座標: 北緯34度44分 東経126度25分 / 北緯34.733度 東経126.417度 / 34.733; 126.417