砂かけ婆 (ゲゲゲの鬼太郎)

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境港市水木しげるロードに設置された砂かけ婆のブロンズ像

砂かけ婆(すなかけばばあ)は水木しげる漫画『ゲゲゲの鬼太郎』(旧題:『墓場の鬼太郎』)の主人公・鬼太郎の仲間の妖怪のひとり。砂かけばばあ砂かけばばぁ等と表記されている場合もある。

公式設定では大和国奈良県)出身とされている。近畿地方の広範囲に出没し、京都地方の伝承では竹藪などに住み、通りかかる人に突如砂を投げつけて驚かすとされる。

キャスト

概要

白髪に和装、大きな目が特徴の老婆の妖怪。鬼太郎と行動を共にする仲間であると同時に、親同然に慕われている保護者的な役割を担う。顔や目に砂のような斑点があり、アマビエの弁によると肌は見た目通りザラザラした感触がするという。

年齢はアニメ第3作によると2800歳。神功皇后の時代の三韓征伐にお供したこともあるという。(ただし、107話では1200歳。[9]映画版ウエンツ瑛士田中麗奈の出演を考慮し、原作・アニメより更に高齢になっている。

戦闘時には様々な効果を付与した砂をかける他、強烈なビンタで戦う。戦闘以外では妖怪医術や占いも得意である。アニメ第2作19話『釜なり』では、髪の毛をアンテナのように伸ばし、目玉おやじのテレパシーを受信するという技も披露した。

短気で怒りっぽいところがあるが根は優しい人情家で、若い妖怪たちからの信頼も厚い。正義感が強く、他人を救うためには自身の危険を厭わず行動する。正義側の妖怪ではあるが、人間に対して好意的な感情を持っておらず、人間嫌いであることを公言している。アニメ第2作33話『悪魔ブエル』、第5作34話『妖怪横丁の地獄流し』など、人間を欲深く危険な存在として蔑視するエピソードも多い。ただし、原作『鬼太郎の世界おばけ旅行』や実写映画版では人間の子供に優しい面も見せている。好物はコウモリの肝[10]、笹の葉[11]タケノコ[11]

普段は妖術の研究に勤しむ傍ら、妖怪アパートを経営している(後述)。アパートには子泣き爺をはじめ多くの妖怪が住んでおり、原作の週刊少年サンデー連載時には、鬼太郎親子を含むほとんどの仲間が住人だった。様々な事情で住処を失った妖怪を保護する場所にもなっている。金銭面に非常にがめついため、住人の家賃の取り立てに関しては容赦がない。なお家賃は決して安くはないようだが、住人たちに現物徴収を提案した際には西表島にある星砂(かわうそ)で5年分、傘コレクションの中で気に入った品(傘化け)で3年分を帳消しにしている。呼子に対しては「日頃から何かと世話になっている」と言って許しており、まだ若く金の稼ぎ口の少ない妖怪たちには甘いところもある。

古代から生き続けているため、年長者である目玉おやじや子泣き爺と親しい。人間界で起きた妖怪ブームに乗り、子泣き爺と一緒にテレビで妖怪漫才をやっていた時期があるという。アニメ第5作では鬼太郎とその仲間たちが暮らす妖怪横丁が登場し、目玉おやじと同等の発言力を持つサブリーダー的な描写が目立つようになった。第4作では、より古風で妖怪の誇りを持っている様子が見られる(第62話「怪奇!ばけ猫騒動」では、「妖怪が車に乗るようになったら世も末」と発言している)。

原作初登場は「妖怪大戦争」(貸本「地獄の散歩道」で名は出ているが姿は判別できない)、アニメ初登場は第1作・第7話「ゆうれい電車」(姿形が全く違うのでこれは別個体であろう)。原作とアニメ第1作での「妖怪大戦争」(第10・11話)では西洋妖怪との闘いで戦死(原作では魔女達に連行された後に遺体で見つかり死因不明、アニメ第1作では吸血鬼数体に殺された)したが、その後、第24話「白山坊」で何事もなかったように復活、準レギュラーとして活躍する。

遠い親戚として、中央アジアの砂妖怪エキセル(『鬼太郎の世界おばけ旅行』)やドイツ砂男(1980年代『最新版』)が登場しているが、2名とも鬼太郎と敵対する破目になっている(砂男の襲来時は砂かけ婆は不在)。

妖術・技

高齢である事も重なってか、決して身体能力に優れている訳ではない。第4作62話では子泣き爺が可能な走行中のトラックへの飛び乗りが、自力では飛び乗れない等おそらく仲間内では最も低い(一方、第4作67話など高い運動能力と持久力を発揮する場面もあり、第85話「魔境・土蜘蛛の山!」で、相手妖怪の視界から一瞬の間に消えている)。だが、長年を生きてきた知恵と経歴を持つエキスパートであり、戦闘においても多彩な技と経験を活かす(第4作によれば朝廷の遠征に随伴した事もあるらしい)。披露してきた技や道具類は鬼太郎に次ぐほどで、薬草など広範囲の知恵にも精通(術式や道具類は鬼太郎よりも多く使用)。妖怪に関する知識も仲間内では目玉おやじに次いで優れている。第5作では、様々な効能を持つ砂を趣味と実益も兼ねて収集しており、独自に武器やサポート用として作成している。第5作では、直接体から砂を撒くよりも壺を携帯して、大量の砂を勢いよく噴射する様子も多い。

砂かけ

伝承からの得意技。

砂の出所はシリーズや場面によって地面、袂、手、髪、、袋など様々。設定上ではの下に砂を噴出する管があるとされ、髪の毛も筒状の「砂まき機関銃」となっている[11]。当初は目潰し程度だったが、本作の展開に伴い後述の様な多彩な技を現していく。下記のほかにも、アニメ第5作や『妖怪千物語』では、様々な性質の砂(磨き砂、眠り砂、岩塩砂、吸水砂、赤い火炎砂、発煙砂、電気や火力を増長させる「竜の息」を調合した砂など)を調合している。

たつまきおこし
砂をまきながら回転して真空状態を作り出し、竜巻を起こす。「妖怪大統領」で、老化作用のある玉手箱の煙を吹き飛ばした。この時は彼女自身も煙で老化していた為、使用後はエネルギーを使い果たして動けなくなってしまい、回復には1年間を要すると言われた。
アニメでは、自身は回転せずに砂撒きのみで砂竜巻を起こす場面もある。アニメ初使用は第1作第30話「悪魔ベリアル」で、ベリアルの起こした雲や霧を吹き飛ばした。同作第37話では地面へ渦巻状に撒いた砂を、敵の妖気を辿って竜巻と化して飛ばしている。同作第39話「妖怪軍団」では、南方妖怪アカマタの吐く粘液を跳ね返し[9]、更に砂に鬼太郎の霊力を合せる事でアカマタを岩状に固めて倒した。
アニメ第5作第33話でも一反木綿を振り回す事で、これらしき技を放っている。
妖気封じ(ようきふうじ)
アニメ第1作第37話で使用。地面や床へ砂を撒いて円を描き、妖術で操られた者はその円内にいる限り術による支配を免れる。
防火砂(ぼうかずな)
胃から大量の砂を吐き出して火を消し止める。「蝋人形妖怪」では火達磨にされた鬼太郎を救った。
砂封じ(すなふうじ)
一度付いたら落ちないと言う妖怪砂を機関銃の様に吹き付ける。この砂を浴び続けると敵は石の様に固まり、最後には崩れ去って砂になってしまう。分離する相手の再結合を封じる事も可能。アニメ第3作で、中国妖怪チーの配下や八百八狸、串ざし入道の操るむくろに使用。
砂太鼓(すなだいこ)
先祖伝来の秘宝。壺の様な形で、口を鼓の様に打つと強烈な砂嵐を起こす。莫大なエネルギーを消耗するのでめったに使用しない。原作「煙羅煙羅」での登場より前に「月曜ドラマランド」の実写版で使用されたのが初使用で、ビデオドラマ「魔笛エロイムエッサイム」、実写映画二作目でも使用されている。
大砂塵(だいさじん)
アニメ第3作第107話で使った捨て身技。自身を砂粒に分解して大竜巻と化す。煙羅煙羅を巻き込み、その煙状の体の粒子を吸い付け諸共にタール状になった。
砂袋(すなぶくろ)
「鬼太郎国盗り物語」で2つ使用。
第4話「おどろ砂」では鬼太郎親子に敗れたおどろ砂を封じ込める器にし、千年は破れないと言う。
第12話「ゴーストカー」では用事があって同行できない為、2つ目の袋を猫娘に持たせる。必要な時に念じながら口紐を解けば砂を放ち、ゴーストカーの呪気を晴らすのに使用。
砂結界(すなけっかい)[9]
アニメ第4作第109話「雪山の怪異・のびあがり」で使用。砂を撒いて周囲を竜巻状の結界で包み込み、敵妖怪の接近を阻む。どんな妖怪もこの内部に入り込む事はできないとの事だが、津波雪崩には効果が薄い。

占い

妖怪玉(ようかいだま)
アニメ第3作で使った、水晶玉の様な物。探す相手の妖気を辿り、居場所や現状を映し出す。
解毒の煙[9]
「白山坊」で使用。橋本花子の髪と爪をイモリの粉と共に囲炉裏で焚き、その煙を読み取ることで花子の父・正吉と白山坊との契約を探り当てた。

妖怪医術

縫合
腹に穴を開けられたり、バラバラに裂けたりした妖怪の体を糸で縫い合わせて復元する。
妖怪接着剤
アニメ第3作第2話「鏡じじい」で使用。鬼太郎が合わせ鏡に閉じ込められた上、その鏡を割られたが、この接着剤で破片を繋ぎ合わせた。さらに後述の妖怪エキスを吹きかけ、鬼太郎を元に戻した。
妖怪エキス(ようかいエキス)[9]
同じくアニメ第3作第2話「鏡じじい」で使用。瓶入りの液体。鬼太郎が閉じ込められた鏡に対し、この液を口に含んで吐きかけ、鬼太郎を復活させた。
妖怪生命液(ようかいせいめいえき)[9]
アニメ第3作第20話「半魚人の恋」で使用。壺入りの液体。真珠に変えられた鬼太郎を元の姿に戻した。
眠り薬
「蛇人ゴーゴン」では強力な眠り薬を持参しており、鬼太郎の毛先に付けて髪の毛針を撃たすことでゴーゴンに注射して眠らせた。
アニメ第3作第22話「いじわる妖怪天邪鬼」では眠り草[9]にイモリの粉とカエルの血の粉を混ぜて煎じた茶を天邪鬼に飲ませ、眠らせた。
若返りマッサージ(わかがえりマッサージ)
アニメ第3作第44話「あの世からの使者 死神」で使用。死神の力で老化してしまった鬼太郎を元に戻した。原作「死神」では山彦が使った。第46話「妖怪大統領こうもり猫」では自身も老化してしまったため、これを使うことはできなくなった。

その他の技・道具

妖怪接着剤(ようかいせっちゃくざい)[9]
先述の通り、アニメ第3作第2話で使用。バラバラに砕けた鏡を元通りに修復した。
妖怪風船ガム[9]
アニメ第3作第46話「妖怪大統領こうもり猫」で使用。これを膨らませた風船に人間を入れると、妖怪でない常人でもあの世へ行き来することができる。
封印の壺
アニメ第4作では妖怪を封印する壺が頻繁に使われ、その殆どを砂かけが用意した。妖狐用、化け猫用など、妖怪の種類によって違う壺が使われる。
妖怪天眼鏡(ようかいてんがんきょう)
アニメ第4作第27話「吸魔! 妖怪野づち」で使用。虫眼鏡状の道具で、野づちの体内の構造を見抜いた。
おばばパラシュート
同じく「吸魔! 妖怪野づち」で使用した技。着物の両袖を広げ、パラシュートとして空から飛び降りる。
妖力波
自ら練った妖力を発射する技で、主に仲間の強化やエネルギーの補充などサポート的な意味合いが強い。鬼太郎以外の他のファミリーの面子同様に、積極的に攻撃や防御には使っていない。

アニメにおける変遷

第1作

第1作では登場のたびに顔が変わり(合計4パターン存在する)、衣服も異なるなどデザインが定着していない様子がみられた。目の周りの隈のような部分がつながって、の顔のようになっていたこともある。第2作に近いデザインでの初出は第29話「鏡合戦」。第1作での登場回数は13回と決して多くはないものの、砂に加えて医学占いなどの術で仲間をサポートするといった、後の基本設定となるシーンがすでに見られる[9]

第2作

第2作では後にお馴染みとなる、妖怪アパートの大家としての設定が登場[9]。出番が大幅に増え、レギュラーキャラクターとしてほぼ定着した。目の色は赤に近い褐色。

第3作

妖怪医術や占いなど、砂関連以外の術も多く使うようになった。また第107話では「生まれた時から婆で色恋は他人事(この話で子泣き爺に告白されるまで)」と発言した。鬼太郎の母親代わりという立場がより強調されている。本作より着物の帯が柄模様となる[9]。目の色が白に近いピンク色に変更され、他シリーズに比べ人間に近い外見である。

第4作

若い時代に恋愛経験があったという設定に変わり、昔の恋人や若返りをタネに敵妖怪に惑わされる場面も多く見られた。第21話では目玉おやじによる500歳を超えているという台詞がある。妖怪アパートの住人に料理を振舞うなど、世話好きな一面も見られる[9]厚化粧して女子高生になったり、芸者姿(ねずみ男と共に)になったりとお笑い要素も増えた。子泣き爺とはピンチになるとお互いを褒め合い、その場を押し付けようとするのがお約束。第46話「妖怪大裁判(前編)」では、鬼太郎が濡れ衣を着せられた裁判の際夜行さんに「鬼太郎の母親代わりみたいなもの」と評されたため、証人と認められなかったことがある。最終回「絶体絶命!死神の罠」では鬼太郎に鬼太郎の母をモデルにして作った人形を手渡した。目の色は第3作同様に白に近いピンク色だが、蒼白な肌、髪が白髪ではないなどイメージはかなり異なる。着物の色は白。

第5作

今作でも妖怪横丁でアパート(妖怪長屋)を経営している。老朽化が進んでおりリフォームを検討しているが、住人の家賃滞納が深刻で実現は遠いようである。今作では鬼太郎親子の世話は専ら猫娘が務めているため、長屋の大家兼身元引受人としての仕事に専念している。昔は幼かった頃の鬼太郎の面倒を見ていたようだが、鬼太郎も60年以上生きて立派に成長したため、他シリーズに比べ世話を焼く描写は少ない。むしろ長屋住人をまとめる寮母としての要素が強く、その1人であるかわうそ曰く「口うるさいけどいなくなったら困る、母ちゃんみたいな存在」。わがままなトラブルメーカーのアマビエに厳しくも優しく接しており、アマビエも砂かけ婆を「おばば」と呼び慕っている。今作では鬼太郎が事実上1人で事件を解決する話が多いため、第4作以前に比べると出番は減少した。砂を調合する実益も兼ねて各地の砂を収集する趣味があり、長屋住人も家賃代わりに砂の採取をしばしば手伝わされている。薬を調合する技能も基本的には砂状の物に特化され、他の薬に関しては役割を井戸仙人や夜行さんに譲る形になっている。南国情緒に憧れ、「妖怪ポリネシアンセンター」なる施設を訪ねたがる発言を何度かしている。妖怪四十七士の奈良県代表。 赤い目、紫色の着物と第2作を彷彿とさせる外見になった。

他作品でのキャラクター

『ゲゲゲの鬼太郎』とは別の水木しげるの短編作品『砂かけばばあ』にも砂かけ婆が登場する。本作では、醜い顔の青年から美男子になりたいという願いを聞き入れ、1年後に自分の婿になるという条件のもとに、秘薬を調合して彼を美男子に変えるが、彼が約束を破ったため、異様な顔に変えてしまう。外見は『鬼太郎』の砂かけ婆と同様だが、本作では砂をかける能力は披露していない[12]。尚、この短編は2013年に『水木しげるのゲゲゲの怪談』内で実写ドラマ化された。

水木しげる原作のドラマ『河童の三平 妖怪大作戦』にも、砂かけのおばば(「砂かけのお婆」表記もあり、予告などごく稀に「砂かけ婆」と呼ばれる場合もある)として登場している。人間世界の妖怪の纏め役で、千里眼を持ち、妖怪世界の生き字引など、鬼太郎でのキャラクターとほとんど変わらないが、ほとんど戦闘に参加しない為、砂をかける能力を披露しておらず、蜘蛛の巣状の糸で相手を捕縛する能力をみせたことがある。

脚注

  1. ^ ゲゲゲの鬼太郎(第2作)東映アニメBBプレミアム内) 2008年5月11日閲覧
  2. ^ ゲゲゲの鬼太郎4東映アニメーション内) 2008年5月11日閲覧
  3. ^ ゲゲゲの鬼太郎 (同上) 2008年5月11日閲覧
  4. ^ ゲゲゲの鬼太郎3 (同上) 2008年5月11日閲覧
  5. ^ DVD『月曜ドラマランド ゲゲゲの鬼太郎』 東映ビデオ、2007年。
  6. ^ DVD『妖怪奇伝ゲゲゲの鬼太郎 魔笛エロイムエッサイム』 東映ビデオ、2007年。
  7. ^ 『「悪魔くん」「河童の三平 妖怪大作戦」完全ファイル』青林堂 ISBN 4-7926-0364-1
  8. ^ 映画「ゲゲゲの鬼太郎」公式サイト 「作品情報」→「キャラクター&キャスト」 2008年5月11日閲覧
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m 田神健一・奥津圭介・中村亜津沙編 『アニメ版 ゲゲゲの鬼太郎 完全読本』 講談社、2006年、26-27頁。ISBN 4-062-13742-9
  10. ^ 水木しげる電子書籍版 鬼太郎大全集 19 世界お化け旅行(2)』 水木プロダクション、31頁。
  11. ^ a b c 水木しげる 『水木しげる 鬼太郎大百科』 小学館、2004年、47頁。ISBN 4-092-20322-5
  12. ^ 水木しげる 『妖怪たちの物語 妖怪ワンダーランド2』 筑摩書房ちくま文庫〉、2007年、211-218頁。ISBN 4-480-03062-X

関連項目

外部リンク