バベルの塔

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ピーテル・ブリューゲル『バベルの塔』
ギュスターヴ・ドレ『言語の混乱』

バベルの塔(バベルのとう、ヘブライ語מגדל בבל‎、英語:Tower of Babel)は、旧約聖書の「創世記」中に登場する巨大な

神話とする説が支配的だが、一部の研究者は紀元前6世紀のバビロンのマルドゥク神殿に築かれたエ・テメン・アン・キジッグラト(聖塔)の遺跡と関連づけた説を提唱する[1]

概要

バベルの塔の物語は旧約聖書の「創世記」11章にあらわれる。そこで語られるのは下記のような記述である。位置的にはノアの物語のあとでアブラハムの物語の前に置かれている。

旧約聖書の記述
11:1 全地は一の言語一の音のみなりき
11:2 茲に人衆東に移りてシナルの地に平野を得て其處に居住り
11:3 彼等互に言けるは去來甎石を作り之を善く爇んと遂に石の代に甎石を獲灰沙の代に石漆を獲たり
11:4 又曰けるは去來邑と塔とを建て其塔の頂を天にいたらしめん斯して我等名を揚て全地の表面に散ることを免れんと
11:5 ヱホバ降臨りて彼人衆の建る邑と塔とを觀たまへり
11:6 ヱホバ言たまひけるは視よ民は一にして皆一の言語を用ふ今旣に此を爲し始めたり然ば凡て其爲んと圖維る事は禁止め得られざるべし
11:7 去來我等降り彼處にて彼等の言語を淆し互に言語を通ずることを得ざらしめんと
11:8 ヱホバ遂に彼等を彼處より全地の表面に散したまひければ彼等邑を建ることを罷たり
11:9 是故に其名はバベル(淆亂)と呼ばる是はヱホバ彼處に全地の言語を淆したまひしに由てなり彼處よりヱホバ彼等を全地の表に散したまへり
翻訳
もともと人々は同じ1つの言葉を話していた。シンアルの野に集まった人々は、煉瓦アスファルトを用いて天まで届く塔をつくってシェム[2]を高く上げ、全地のおもてに散るのを免れようと考えた[3]。神はこの塔を見て、言葉が同じことが原因であると考え、人々に違う言葉を話させるようにした。このため、彼らは混乱し、世界各地へ散っていった

バベルの塔の物語は、「人類が塔をつくり神に挑戦しようとしたので、神は塔を崩した」という解釈が一般に流布している。しかし『創世記』の記述には「塔が崩された」とは書かれていない。ただし、以下のような文献にはこの解釈に沿った記述がある。

ヨセフスによる「ユダヤ古代誌」
ニムロデは、もし神が再び地を浸水させることを望むなら、神に復讐してやると威嚇した。水が達しないような高い塔を建てて、彼らの父祖たちが滅ぼされたことに対する復讐するというのである。人々は、神に服するのは奴隷になることだと考えて、ニムロデのこの勧告に熱心に従った。そこで彼らは塔の建設に着手した。……そして、塔は予想よりもはるかに早く建った
ラビ伝承
ノアの子孫ニムロデ(ニムロド)王は、神に挑戦する目的で、を持ち、天を威嚇する像を塔の頂上に建てた

原初史といわれ、史実性が疑わしいアブラハム以前の創世記の物語の中で、バベルの塔の物語は世界にさまざまな言語が存在する理由を説明するための物語であると考えられている。同時に「石の代わりに煉瓦を、漆喰の代わりにアスファルトを」用いたという記述から、古代における技術革新について述べ、人類の科学技術の過信への神の戒めについて語ったという解釈もある。

実現不可能な天に届く塔を建設しようとして、崩れてしまったといわれることにちなんで、空想的で実現不可能な計画を比喩的に「バベルの塔」という[4]

文化

西洋美術上の題材の一つであり、16世紀画家ピーテル・ブリューゲルギュスターヴ・ドレが描いた絵画が有名である。

タロットカードで最も悪い札とされる「XVI 塔」は、同じ「塔」という人工建造物、塔が破壊されるという扱い、塔から落ちる人間(人間の驕りに対する天罰という解釈)から、このバベルの塔がモチーフになっているといわれている[5]

フィクションにおけるバベルの塔

小説

映画・ドラマ

漫画・アニメ

ゲーム

音楽

脚注

  1. ^ いのちのことば社刊 新キリスト教辞典(著:宇田進)、みすず書房刊 聖書の考古学 ノアの箱舟とバベルの塔(著:アンドレ・パロ)。
  2. ^ ヘブライ語、慣習で「名」と訳されている。名誉・名声の意味も有る
  3. ^ 偽典の「ヨベル書」によれば、神はノアの息子たちに世界の各地を与え、そこに住むよう命じていた
  4. ^ 岩波書店発刊 広辞苑-第四版-2095頁、項目「バベルの塔」より。
  5. ^ 紀伊國屋書店刊 タロット大全-歴史から図像まで(著:伊泉龍一
  6. ^ 吹奏楽マガジン Band Power:レポート

関連項目