イエス・サード・アルバム

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イエス・サード・アルバム
イエススタジオ・アルバム
リリース
録音 1970年10月 - 11月 at Advision Studios
ジャンル プログレッシブ・ロック
時間
レーベル アトランティック・レコード
プロデュース イエス、エディ・オフォード
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 4位(イギリス)[1]
  • 40位(アメリカ)[2]
  • イエス アルバム 年表
    時間と言葉
    (1970年)
    イエス・サード・アルバム
    (1971年)
    こわれもの
    (1971年)
    ミュージックビデオ
    「Yours Is No Disgrace」 - YouTube
    「I've Seen All Good People」 - YouTube
    テンプレートを表示

    イエス・サード・アルバム』(The Yes Album)は、イギリスプログレッシブ・ロック・バンド、イエスが1971年に発表した3作目のアルバム。

    解説[編集]

    本作が制作された時期に、あらゆる面でイエスの基盤が出来上がったといえる。彼らは前作『時間と言葉』の制作が終了した直後の1970年4月に、デビュー以来初めてのメンバー・チェンジを行ない、ギタリストスティーヴ・ハウを迎えた。そして前作の制作にエンジニアとして参加したエディ・オフォードをバンドとの共同プロデューサーに迎え、更にビジネス面での後押しを強化しする為に敏腕のブライアン・レーンをマネージャーに迎えた。ハウはイエス・サウンドに大きな影響を与え、オフォードはスタジオ・ワークでの重要な役割を担って「第6のメンバー」と呼ばれた。

    本作は、イエスの基盤が出来上がったことを象徴するかのように、作者が「イエス」とされた「ユアズ・イズ・ノー・ディスグレイス」で幕を開ける。この曲の基本構造は同じテーマの繰り返しであるが、それをアカペラ、疾走感のあるロック、ウォーキング・ベースジャズっぽく、アコースティック・ギターフォークというように様々な色彩をもって聴かせ、10分近い長さを感じさせない。この曲はベトナム戦争に赴く若者達を思って書かれたものである。

    続くハウのお披露目となったアコースティック・ギター・ソロ「クラップ」はライブ録音で、彼が敬愛してやまないナッシュビル・ギターの名人チェット・アトキンスの影響を素直に表現したカントリーピッキングの技巧が聴ける。彼は、アトランティック・レコードが題名をThe Clapと印刷して、それを訂正せずに広めてしまった、と嘆いている[注釈 1][3]

    初の組曲形式を取った「スターシップ・トゥルーパー」は、ジョン・アンダーソンクリス・スクワイアの曲[注釈 2]を結合させ、ハウの壮大な3コード・ソロ[注釈 3]をエピローグに添えた大作。

    アイヴ・シーン・オール・グッド・ピープル」は、トラディショナルな「ユア・ムーヴ(邦題:心の光)」[注釈 4]とワイルドなシャッフルの「オール・グッド・ピープル」という、極端な対照をなす二部構成の組曲。イエスの代表曲の一つで、コンサートでの人気曲でもある。「ユア・ムーヴ」はシングル・カットされスマッシュ・ヒットとなった。

    「ア・ヴェンチャー」はトニー・ケイがピアノ・ソロを聴かせる小品で、後年のライブでも殆ど演奏されていない。

    「パペチュアル・チェンジ」は変拍子対位法などの技巧が盛り込まれている。それと同時にジャズの影響も色濃く感じさせる。

    本作はイギリスで4位[1]、アトランティック・レコードの本拠地アメリカでもトップ40に入るヒットとなった[2]。前2作の不発で窮地に立たされていたイエスは、本作で起死回生の成果をあげて、契約の続行と活動の場を大きく広げるチャンスを手にした。彼らは本作の発表に合わせたツアーを行なった後の1971年8月、より複雑で高度な技術を要するプログレッシブ・ロックを演奏するためにケイを解雇して[注釈 5]、後任にリック・ウェイクマンを迎えた。

    収録曲[編集]

    A面
    1. ユアズ・イズ・ノー・ディスグレイス - "Yours Is No Disgrace" (イエス)
    2. クラップ - "Clap" (ハウ)
    3. スターシップ・トゥルーパー - "Starship Trooper"
      1. ライフ・シーカー - "Life Seeker" (アンダーソン)
      2. ディシルージョン - "Disillusion" (スクワイア)
      3. ワーム - "Würm" (ハウ)
    B面
    1. アイヴ・シーン・オール・グッド・ピープル - "I've Seen All Good People"
      1. ユア・ムーヴ - "Your Move" (アンダーソン)
      2. オール・グッド・ピープル - "All Good People" (スクワイア)
    2. ア・ヴェンチャー - "A Venture" (アンダーソン)
    3. パペチュアル・チェンジ - "Perpetual Change" (アンダーソン、スクワイア)

    リミックス盤[編集]

    2014年 リミックス盤発売[CD/DVD-Audio・CD/Blu-rayデジパック仕様]。"2014 ステレオミックス(24bit/96khz)"、"5.1chサラウンドミックス(24bit/96khz)"が制作され、オリジナルステレオミックス(24bit/192khz)・別ヴァージョン・シングルエディット・ライブ等の音源が収録されている[4]

    レコーディング・メンバー[編集]

    アディショナル・ミュージシャン[編集]

    • コリン・ゴールドリング (Colin Goldring) - リコーダー ※「ユア・ムーヴ〜心の光〜」

    脚注[編集]

    出典[編集]

    注釈[編集]

    1. ^ 「拍手」を意味するclapに定冠詞をつけると、俗語で「淋病」の意味になる。
    2. ^ スクワイアの曲は彼が以前に書いた "For Everyone" の改作である。この曲は1990年代に発表された『BBCセッション1969〜1970 サムシングス・カミング』に収録された。
    3. ^ ハウがイエスに加入する前に在籍したボーダストで作曲した "Nether Street" という曲に基づいた。
    4. ^ ハウはヴァチャリアというポルトガル・ギターを演奏している。
    5. ^ 公式発表では、ケイはオルガンピアノに固執してメロトロンモーグ・シンセサイザーなどの新しい楽器の導入に反対して自ら脱退した、とされた。

    参考文献[編集]

    • Morse, Tim (1996), Yesstories: Yes in Their Own Words, St. Martin's Press, ISBN 0-312-14453-9