くらま (護衛艦)
太平洋を航行中の「くらま」
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艦種 | ヘリコプター搭載護衛艦(DDH) | |
発注 | 1976年 | |
起工 | 1978年2月17日 | |
進水 | 1979年9月20日 | |
就役 | 1981年3月27日 | |
定係港 | 佐世保 | |
性能諸元 | ||
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排水量 | 基準:5,200トン | |
満載:6,800トン | ||
全長 | 159m | |
全幅 | 17.5m | |
深さ | 11.0m | |
吃水 | 5.5m | |
機関 | 石川島播磨FWD2 2胴水管型缶 | 2缶 |
石川島播磨 2胴衝動型蒸気タービン(35,000ps) |
2基 | |
推進器 | 2軸 | |
速力 | 31ノット以上 | |
定員 | 360名 | |
兵装 | 73式54口径5インチ単装速射砲 | 2門 |
高性能20mm機関砲(CIWS) | 2基 | |
GMLS-3 ※GMLS Mk.25 から換装 |
1基 | |
74式アスロック8連装発射機 | 1基 | |
68式3連装短魚雷発射管HOS-301 | 2基 | |
艦載機 | HSS-2A/B / SH-60J/SH-60K 哨戒ヘリコプター |
3機 |
C4I | AN/USC-42 ※AN/WSC-3 SATCOMから換装 | |
MOFシステム (NORA-1, NORQ-1 SATCOM) | ||
海軍戦術情報システム (OYQ-3B CDS+リンク 11/14) | ||
OYQ-101 ASWDS | ||
TDS-2 目標指示装置 | ||
72式射撃指揮装置1型A (GFCS) | 2基 | |
81式射撃指揮装置2型-12 (MFCS) ※WM-25から換装 |
1基 | |
レーダー | OPS-12 3次元対空レーダー | 1基 |
OPS-28 対水上レーダー | 1基 | |
OPS-22 航海レーダー | 1基 | |
ソナー | OQS-101艦首ソナー | 1基 |
SQR-18(V)1 曳航ソナー | 1基 | |
電子戦・ 対抗手段 |
NOLQ-1 ESM/ECM | |
OLR-9B RWR | ||
Mk 36 SRBOC | ||
AN/SLQ-25 曳航式音響デコイ |
くらま(ローマ字:JS Kurama, DDH-144)は、海上自衛隊の護衛艦。しらね型護衛艦の2番艦。艦名は京都府の鞍馬山に因み、旧海軍の鞍馬型巡洋戦艦(伊吹型)「鞍馬」、雲龍型航空母艦「鞍馬」に続き日本の艦艇としては3代目。
艦歴
「くらま」は、昭和51年度計画5200トン型ヘリコプター搭載護衛艦2404号艦[1]として、石川島播磨重工業東京第1工場で1978年2月17日に起工し、1979年9月20日に進水、1981年3月27日に就役、同日付、第2護衛隊群隷下に第52護衛隊が新編され、護衛艦「はるな」とともに編入、佐世保に配備された。
本艦は、海上自衛隊艦艇で初めてCIWS(近接防空火器; 機種はアメリカ製のファランクス)を装備して、対艦ミサイルからの個艦防御能力を強化した。また、長距離で潜水艦を探知できる戦術曳航ソナーも初装備されており、搭載ヘリと連携して、敵潜水艦が接近する前に探知・撃破することを可能としている。本艦での実績をもとに、ファランクスCIWSや戦術曳航ソナーは、その後に建造された海上自衛隊の汎用護衛艦にも採用され、標準的な装備となった。
1982年10月13日、佐世保港においてボイラー爆発事故を起こしている[2]。
1983年3月30日、第52護衛隊が廃止となり、第2護衛隊群直轄艦となる。
1983年及び1991年、米国派遣訓練に参加。
1984年、1986年、1992年、1994年、2000年に環太平洋合同演習 (RIMPAC)に参加。
1990年7月1日から31日にかけて「あさぎり」、「やまぎり」、「たちかぜ」とともにグアム島方面海上実習(外洋練習航海)に参加。
1996年7月26日から30日にかけてロシア海軍300周年記念式典参加のため、自衛艦として初めてロシアウラジオストックを訪問した。
1998年7月24日から29日にかけて護衛艦「やまぎり」、補給艦「はまな」とともに再びウラジオストックを訪問、7月26日に実施されたロシア太平洋艦隊観艦式に参加した。また、7月29日、30日にかけてウラジオストック東方の日本海において初の日露共同訓練が実施され、これに参加した。
2000年2月25日から3月31日にかけて「やまぎり」、「あさかぜ」とともに外洋練習航海に参加。
2001年11月9日、テロ対策特別措置法に基づく情報収集任務により、護衛艦「きりさめ」、補給艦「はまな」と共にインド洋に派遣され、2002年2月まで任務に従事し、3月16日に帰国した。
2003年8月から2004年4月までの間、三菱重工長崎造船所で長期修理が施され、短SAM管制用射撃指揮装置はWM-25から国産の81式射撃指揮装置2型-12(FCS-2-12)に、発射機は国産のGMLS-3に換装され、合わせてミサイルはRIM-7Mとなった。 これらはいずれも2001年8月に除籍された護衛艦「たかつき」に搭載されていたものを移載したものである。
2004年11月10日から12日にかけて「ゆうだち」と共に漢級原子力潜水艦領海侵犯事件(海上警備行動発令)に対処するため出動。
2005年1月14日、スマトラ島沖地震救援のため国際緊急援助隊派遣法に基づいて編成された陸・海・空自衛隊の一員として、先行出発した輸送艦「くにさき」と補給艦「ときわ」に続いて佐世保から出港した。
2008年3月26日、護衛隊改編により第2護衛隊群2護衛隊に編入。
2012年6月21日から22日にかけて、「DDG-174 きりしま」、「DD-103 ゆうだち」、アメリカ合衆国海軍空母「CVN-73 ジョージ・ワシントン」ほか数隻、大韓民国海軍の艦艇数隻と共に朝鮮半島南方海域にて日米韓共同訓練を実施する[3]。同年10月14日に行われた観艦式では、野田佳彦首相を乗艦させて参加した[4]。
2015年10月18日の観艦式にて観閲艦を務め、安倍晋三首相が乗艦した。2017年の退役が予定されているため、最後の観艦式参加となる予定である。
既に就役から30年以上が経過しており、後継として、いずも型護衛艦2番艦「かが」(24DDH)が建造されている。2015年8月27日に進水し、現在艤装工事が行われている。就役は2017年の見込み。
現在、定係港は佐世保である。
衝突事故
2009年10月27日19時56分頃[5]、関門海峡において大韓民国籍コンテナ船「カリナ・スター」に衝突された。この事故で乗員6名が負傷、本艦は艦首を損傷・出火したが、10時間半後に鎮火に成功した。この事故により揚錨部(アンカー巻上げ部)も含む艦首部分がほぼ全壊し単独航行は難しい状態になった。「カリナ・スター」側に負傷者はなかった[6][7]。
この事故では、護衛艦くらまおよび誘導していたとする海上保安庁・関門海峡海上交通センターの責任問題が大きく報道されたが、海上保安庁による後の調査によれば、カリナ・スターの韓国人船長が事故について虚偽の供述をしていたことが明らかとなっている。AIS等による航跡の解析などにより、コンテナ船は事故直前まで減速せず、貨物船の後方わずか20-30メートルの距離まで近づき追突寸前となった。そのため左に急旋回し、前方から航行してきたくらまに衝突した。この事故で門司海保は船長の供述が翻ったことから、事故の主因はコンテナ船にあったと断定した[8]。
事故後は佐世保に自力で帰港していたが、付近で護衛艦を修理のできる造船所が限られることから11月9日に随意契約による修理を発注し2010年初頭から長崎市に所在する三菱重工長崎造船所で修理され、同年6月9日に修理が完了した。この事故での損害は約9億4,000万円と見込まれている[9]。
乗組員による不法侵入事件
2014年5月24日 - 尖閣諸島などを想定し奄美大島沖で行われていた離島上陸・奪回訓練[10]に参加していた、「くらま」の25歳の海士長を住居侵入罪の現行犯で逮捕。奄美署によると海士長は容疑を認めており、24日の午前9時45頃に奄美大島の瀬戸内町にある自動車整備工場に不法侵入していた所を、経営者の男性が見つけ取り押さえて奄美署に通報した。23日まで行われた訓練に海士長も参加しており、24日からは移動撤収予定だった[11]。
歴代艦長
代 | 氏名 | 在任期間 | 出身校・期 | 前職 | 後職 | 備考 |
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1 | 鈴木外海彦 | 1981.3.27 - 1982.1.24 | くらま艤装員長 | 第3海上訓練指導隊司令 | ||
2 | 吉村健思 | 1982.1.25 - 1983.12.19 | 防大3期 | あまつかぜ艦長 | かとり艦長 | |
3 | 中村英昭 | 1983.12.20 - 1985.12.19 | 防大5期 | たちかぜ艦長 | かとり艦長 | |
4 | 谷 撤彦 | 1985.12.20 - 1987.3.15 | 防大6期 | 横須賀地方総監部 防衛部第3幕僚室長 |
海上自衛隊第1術科学校 教育第2部長 |
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5 | 寺西 弘 | 1987.3.16 - 1989.3.16 | まつゆき艦長 | 横須賀基地業務隊補充部付 | 就任時2等海佐 1988.1.1、1等海佐 | |
6 | 両角良彦 | 1989.3.17 - 1991.3.19 | 佐世保地方総監部 管理部総務課長 |
ときわ艦長 | 2等海佐 | |
7 | 福田 武 | 1991.3.20 - 1992.12.20 | 第3海上訓練指導隊砲術科長 | はまな艦長 | 2等海佐 | |
8 | 林 勝彦 | 1992.12.21 - 1994.8.29 | 防大 | 海上幕僚監部人事教育部 教育課教材班長 |
ときわ艦長 | 2等海佐 |
9 | 山下公正 | 1994.8.30 - 1995.12.17 | 防大11期 | たちかぜ艦長 | さがみ艦長 | 就任時2等海佐 1995.7.1、1等海佐 |
10 | 成影 努 | 1995.12.18 - 1997.3.25 | 防大14期 | 海上自衛隊幹部学校教官 | とわだ艦長 | 就任時2等海佐 1996.1.1、1等海佐 |
11 | 佐藤鉄夫 | 1997.3.26 - 1998.8.2 | 防大15期 | 自衛艦隊司令部幕僚 | 第2海上訓練指導隊付 →98.9.30かしま艦長 |
就任時2等海佐 1997.7.1、1等海佐 |
12 | 寺田世紀男 | 1998.8.3 - 2000.9.19 | あさかぜ艦長 | 海上自衛隊幹部学校 | 就任時2等海佐 1999.1.1、1等海佐 | |
13 | 清原 洋 | 2000.9.20 - 2002.7.31 | 防大16期 | 護衛艦隊司令部幕僚 | 佐世保地方総監部監察官 | 就任時2等海佐 2001.1.1、1等海佐 |
14 | 井上則明 | 2002.8.1 - 2004.7.6 | 自衛艦隊司令部幕僚 | 海上自衛隊第1術科学校 教育第3部長 |
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15 | 種生茂美 | 2004.7.7 - 2006.1.9 | 佐世保海上訓練指導隊付 | 佐世保地方総監部監察官 | ||
16 | 松浦正幸 | 2006.1.10 - 2007.3.27 | 防大21期 | 佐世保地方総監部監察官 | 余市防備隊司令 | |
17 | 黒松 久 | 2007.3.28 - 2008.9.30 | 防大26期 | 佐世保地方総監部防衛部 第3幕僚室長兼第5幕僚室長 |
かしま艦長 | |
18 | 柏原正俊 | 2008.10.1 - 2009.12.20 | 防大28期 | 第4護衛隊群司令部幕僚 | 統合幕僚学校 教育課第1教官室学校教官 |
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19 | 佐々木輝幸 | 2009.12.21 - 2011.12.8 | 防大29期 | 海上幕僚監部 総務部総務課総務班長 |
かしま艦長 | |
20 | 小沢輝男 | 2011.12.9 - 2013.12.2 | 防大32期 | 第4護衛隊群司令部幕僚 | 統合幕僚学校教育課教務班長 | |
21 | 遠藤昭彦 | 2013.12.3 - 2015.7.23 | 防大33期 | 海上幕僚監部人事教育部 教育課学校班長 |
護衛艦隊司令部 →2015.8.27かが艤装員長 |
|
22 | 水田英幹 | 2015.7.24 - | 防大32期 | いなづま艦長 |
脚注
- ^ “DSI 現有艦艇一覧”. DSI 日米国防組織情報. 2008年12月12日閲覧。 - 2010年1月より閲覧有料化
- ^ 『世界の艦船』1983年1月号p.200
- ^ 日米韓共同訓練について(PDF文書)
- ^ “護衛艦など48隻参加 相模湾で海自観艦式”. MSN産経フォト. (2012年10月15日)
- ^ “海自護衛艦衝突:関門海峡で韓国コンテナ船と 両船から炎”. 毎日jp (2009年10月27日). 2009年10月27日閲覧。
- ^ “護衛艦と韓国籍民間船が衝突、炎上 関門海峡で”. MSN産経 (2009年10月27日). 2009年10月27日閲覧。
- ^ “護衛艦「くらま」鎮火、衝突から10時間半後”. YOMIURI ONLINE (2009年10月28日). 2009年10月28日閲覧。
- ^ “関門衝突事故「追突避けようと旋回」韓国船長「管制に従う」翻す”. 西日本新聞. 2010年1月23日閲覧。
- ^ “護衛艦くらま、三菱長船で修理へ 10月に韓国船と衝突”. 長崎新聞 (2009年12月25日). 2009年12月25日閲覧。
- ^ 離島奪還能力を強化奄美で上陸訓練 産経新聞2014年5月23日
- ^ 離島訓練の自衛官、住居侵入容疑で逮捕 鹿児島・奄美 朝日新聞2014年5月24日
参考文献
- 石橋孝夫『海上自衛隊全艦船 1952-2002』(並木書房、2002年)
- 『世界の艦船 増刊第66集 海上自衛隊全艦艇史』(海人社、2004年)
- 『世界の艦船』第750号(海人社、2011年11月号)
登場作品
- 『異聞・ミッドウェー海戦―タイムパトロール極秘ファイル』
- 豊田有恒の短編集小説。その中の1作に、表題と同じ「 異聞・ミッドウェー海戦」がある。1987年。
- 歴史改変を目論む未来人によって、本艦が、ミッドウェー海戦の最中にタイムスリップするというストーリー。速射砲・CIWS・ミサイルによって、米軍機を次々と撃墜していく。
- 本作中のくらまは、追加装備としてASM-1を艦対艦ミサイル化したものを装備しており、これでアメリカ空母を撃沈しようとするが、直前にタイムパトロールによって元の時代へと戻される。
- 『ニセコ要塞1986』
- 荒巻義雄の仮想戦記小説。
- 物語中盤、石狩湾への上陸侵攻を目論むスミノフ軍機動部隊を阻止すべく、IBM遊撃打撃艦隊の一艦として参加するも対艦ミサイルの命中により撃沈。