女と男のいる舗道

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女と男のいる舗道
Vivre sa vie: Film en douze tableaux
監督 ジャン=リュック・ゴダール
脚本 ジャン=リュック・ゴダール
原案 マルセル・サコット判事
エドガー・アラン・ポー
製作総指揮 ピエール・ブロンベルジェ
出演者 アンナ・カリーナ
音楽 ミシェル・ルグラン
ジャン・フェラ
撮影 ラウール・クタール
編集 アニエス・ギュモ
製作会社 レ・フィルム・ド・ラ・プレイヤード
配給 フランスの旗 パンテオン・ディストリビュシオン
日本の旗 ヘラルド
公開 フランスの旗 1962年9月20日
日本の旗 1963年11月19日
上映時間 84分
製作国 フランスの旗 フランス
言語 フランス語
製作費 6.5万米ドル
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女と男のいる舗道』(おんなとおとこのいるほどう、仏語 Vivre sa vie: Film en douze tableaux、「自分の人生を生きる、12のタブローに描かれた映画」の意)は、1962年(昭和37年)製作・公開、ジャン=リュック・ゴダール監督によるフランスの長篇劇映画である。

概要[編集]

ゴダールの長篇劇映画第4作である。『女は女である』(1961年)についでアンナ・カリーナが出演したゴダール作品の第3作、カリーナとの結婚後第2作である。マルセル・サコット判事が上梓した『売春婦のいる場所』(1959年)の記述をヒントに、ゴダールがオリジナル脚本を執筆した。エドガー・アラン・ポーの短篇小説『楕円形の肖像』(1842年)も織り込まれている。

エミール・ゾラナナ』初版、1880年

カリーナの役名は「ナナ・クランフランケンハイム」、姓は当時アルザス地域圏バ=ラン県にあった片田舎の村の名称、名は、エミール・ゾラの小説『ナナ』(1880年)の主人公と同じである[1]。ナナの髪型は、ゲオルク・ヴィルヘルム・パープスト監督の『パンドラの箱』(1929年)に登場するルイーズ・ブルックスen:File:Louise Brooks in Pandora's Box.jpg)を模したショートボブであり、本作の暴力的なアンチハッピーエンディングも、同作の影響下にある。ジャン・ドゥーシェは、溝口健二監督の遺作『赤線地帯』(1955年)の影響なしには本作は存在しないと指摘する[2]。ラストショットのロケ地はパリ13区エスキロル街17番地、レストラン・デ・ステュディオ前である。

ナナは第1タブローで別れた夫ポールと近況を交換するが、ポールを演じるのは、ゴダールとは、互いが『カイエ・デュ・シネマ』誌での批評家時代からの盟友でドキュメンタリー映画の監督アンドレ・S・ラバルトである。ラバルトは、ゴダールの『勝手にしやがれ』、『子どもたちはロシア風に遊ぶ』(1993年)、『JLG/自画像』(1995年)にも出演している。ナナがほのかに恋をする若い男を演じるペテ・カソヴィッツは、ブダペスト出身のユダヤ人でドキュメンタリー映画の監督である。『憎しみ』(1995年)の監督マチュー・カソヴィッツの父で、同作にも出演している。ただし、ポーの『楕円形の肖像』を読み上げる声は、ゴダール本人が吹き替えている。ルイジを演じるエリック・シュランベルジェも、ヌーヴェルヴァーグの映画作家たちと同世代のスイスの映画監督である。ジュークボックスの前にいる男を演じるジャン・フェラは作曲家で、本作の挿入歌を演奏している。兵士を演じるジャン=ポール・サヴィニャックは本作の助監督、けが人を演じるラズロ・サボはゴダール組の常連俳優である。アルベール・カミュアンドレ・ブルトンと親交のあった哲学者ブリス・パランが、ナナと哲学を論じあう碩学として登場しているが、ゴダールの哲学の恩師である。

有名なのは、ナナが場末の映画館で、カール・テオドール・ドライヤーの『裁かるゝジャンヌ』(1928年、en:File:PassionJoanOfArc.png)を観て涙を落とすショット(en:File:Mylifetolive.jpg)である。のちにゴダールは、本作からちょうど40年が経過した2002年(平成14年)、10分の短篇映画『時間の闇の中で』の終り間際に、同ショットを直接モンタージュする。

1962年、イタリアヴェネツィアで行なわれたヴェネツィア国際映画祭で、本作は金獅子賞にノミネートされコンペティションで正式上映された。結果、ゴダールは、パジネッティ賞および審査員特別賞の2賞を同時に獲得した。

構成[編集]

タブロー Les Tableaux
  1. とあるビストロ - ナナはポールを棄ててしまいたい - 下にある機械
    un bistrot - Nana veut abandonner Paul - l'appareil à sous
  2. レコード屋 - 2,000フラン - ナナは自分の人生を生きている
    le magasin de disques - deux milles francs - Nana vit sa vie
  3. コンシェルジュ - ポール - 裁かるゝジャンヌ - あるジャーナリスト
    la concierge - Paul - la passion de Jeanne d'Arc - un journaliste
  4. 警察 - ナナの反対尋問
    la police - interrogatoire de Nana
  5. 外の大通り - 最初の男 - 部屋
    les boulevards extérieurs - le premier homme - la chambre
  6. イヴェットと会う - 郊外のとあるカフェ - ラウール - 外での銃撃
    rencontre avec Yvette - un café de banlieue - Raoul - mitraillade dehors
  7. 手紙 - またラウール - シャンゼリゼ
    la lettre - encore Raoul - les Champs-Elysées
  8. 午後 - 金銭 - 化粧室 - 快楽 - ホテル
    les après-midi - l'argent - les lavabos - le plaisir - les hôtels
  9. 若い男 - ルイジ - ナナは自分が幸せなのか疑問に思う
    le jeune homme - Luigi - Nana se demande si elle est heureuse
  10. 舗道 - あるタイプ - 幸福とは華やかなものではない
    le trottoir - un type - le bonheur n'est pas gai
  11. シャトレ広場 - 見知らぬ男 - ナナは知識をもたずに哲学する
    place du Châtelet - l'inconnu - Nana fait de la philosophie sans le savoir
  12. また若い男 - 楕円形の肖像 - ラウールは再びナナを売る
    encore le jeune homme - le portrait ovale - Raoul revend Nana

ストーリー[編集]

1960年代初頭のフランス、パリのとあるビストロ。ナナ・クランフランケンハイム(アンナ・カリーナ)は、別れた夫ポール(アンドレ・S・ラバルト)と、近況の報告をしあい、別れる。ナナは、女優を夢見て夫と別れ、パリに出てきたが、夢も希望もないまま、レコード屋の店員をつづけている。

ある日、舗道で男(ジル・ケアン)に誘われるままに抱かれ、その代償を得た。ナナは昔からの友人のイヴェット(ギレーヌ・シュランベルジェ)と会う。イヴェットは売春の仲介をしてピンハネして生きている。ナナにはいつしか、娼婦となり、知り合った男のラウール(サディ・ルボット)というヒモがついていた。ナナは無表情な女になっていた。

バーでナナがダンスをしているとき、視界に入ってきたひとりの若い男(ペテ・カソヴィッツ)。ナナの心は動き、若い男を愛しはじめる。そのころラウールは、ナナを売春業者に売り渡していた。

ナナが業者に引き渡されるとき、業者がラウールに渡した金が不足していた。ラウールはナナを連れて帰ろうとするが、相手は拳銃を放つ。銃弾はナナに直撃した。ラウールは逃走、撃ったギャングも逃走する。ナナは舗道に倒れ、絶命した。

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

ノンクレジット

関連事項[編集]

関連書籍[編集]

エドガー・アラン・ポー『ポオ小説全集 - 4 探美小説』所収、谷崎精二訳、春秋社、1998年9月 ISBN 4393450345
エミール・ゾラナナ』、川口篤 / 古賀照一訳、新潮文庫、2006年12月 ISBN 4102116044

[編集]

  1. ^ allcinemaサイト内の「女と男のいる舗道」の項に記述を参照。
  2. ^ Jean Douchet and Cédric Anger, French New Wave, ed. : Hazan, 1999, ISBN 1564660575.

外部リンク[編集]

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