勝利への脱出

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勝利への脱出
Escape to Victory
監督 ジョン・ヒューストン
脚本 ジェフ・マグワイヤ
エヴァン・ジョーンズ
ヤボ・ブロンスキー
製作 マリオ・カサール
ゴードン・マクレンドン
アンドリュー・G・ヴァイナ
出演者 シルヴェスター・スタローン
マイケル・ケイン
マックス・フォン・シドー
ペレ
ボビー・ムーア
オズワルド・アルディレス
音楽 ビル・コンティ
撮影 ゲリー・フィッシャー
編集 ロベルト・シルヴィ
配給 パラマウント映画
公開 アメリカ合衆国の旗 1981年7月30日
日本の旗 1981年12月19日
上映時間 110分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
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勝利への脱出』(英語: Escape to Victory)は、ジョン・ヒューストン監督による1981年アメリカ映画である。第二次世界大戦の最中、ドイツの捕虜となっていた連合軍兵士とドイツ代表との間で行われることになったサッカーの国際試合と、その背後で進められる脱走計画をテーマにしている[1]

概要[編集]

1942年8月に第二次世界大戦下のウクライナで行われた、ディナモ・キエフの選手を中心に編成された「FCスタルト」対ドイツ空軍の兵士により編成された「フラッケルフ」との親善試合(死の試合英語版 )をモデルとしている[1][2]。史実では2試合が行われ5-1、5-3とスタルトの勝利に終わるが、面目を潰されたドイツ軍は報復としてスタルトの選手達をバビ・ヤールなどの強制収容所スィレーツィ強制収容所英語版)へ送り、多くの選手達が処刑されている[1][3]

この試合をモデルとした映画にはハンガリー1962年に公開された『地獄のハーフタイム英語版[4]』(ハンガリー語: Két félidö a pokolban ケート・フェーリデ・ア・ポコルバン)があり[2]、こちらの作品は史実の結末に近い内容となっている[1]

サッカーの王様ことペレ1966 FIFAワールドカップ優勝メンバーのボビー・ムーアといった往年のスター選手や、1978 FIFAワールドカップ優勝メンバーのオズワルド・アルディレスといった現役選手達が多数出演した。ペレは作品内のサッカーシーンにおいてテクニカル・アドバイザーを担当した[5]。これらのスター選手の他に連合国軍チームにはイプスウィッチ・タウンFCの選手[5]、ドイツ代表チームにはニューヨーク・コスモスの2軍選手達[6]がエキストラとして出演した。

俳優陣ではシルベスター・スタローンマイケル・ケインの2名が実際の試合に選手として出場し、スタローンはアメリカンフットボール経験者という設定[7]ゴールキーパー、ケインはイングランド代表ウェストハム・ユナイテッドFCの名選手だったとの設定[6]でセンターバックを務めた。当初の構想では試合のクライマックスとなるシーンで主役の一人であるスタローンが決勝ゴールを決めることになっていたが、この案はゴールキーパーというポジションの性質上、非現実的であるとして見送られた[5]

試合会場は1938 FIFAワールドカップ決勝会場のスタッド・オランピック・ドゥ・コロンブという設定[6]だが、撮影はハンガリーで行われ、時代背景を考慮して、照明設備などの近代的な設備の整っていないブダペスト市内のスタジアムが使用された[5]

ストーリー[編集]

1943年、第二次世界大戦最中のドイツ南部のゲンズドルフ捕虜収容所。暇を持余し空地でサッカーに興ずる連合国軍捕虜達の姿を見て、ドイツ軍情報将校フォン・シュタイナーはドイツ代表対連合国軍捕虜チームとの親善試合を思いつく。

捕虜のリーダーの一人、コルビー大尉はこの提案を受け入れメンバーの人選に入るが、上官達は裏では試合を利用した大規模な脱走を計画し、コルビーに対しこの計画に加わるよう強く勧めていた。その後、ドイツ軍上層部はこの試合を利用したプロパガンダを企画し、試合会場はドイツ軍による占領下にあったフランスパリと決定する。

選手の中にはトリニダード・トバゴ出身のテクニシャンのルイス・フェルナンデスも加わり猛特訓を開始する。一方、米軍捕虜のハッチは外部のレジスタンス組織と連絡を取るためにいち早く収容所を脱走するが、連絡係として再び収容所へと舞い戻り、試合にはゴールキーパーとして出場する。

試合は5万人の観客を集めて行われるが連合国チームは審判から不利な判定を受け、中心選手のルイスが相手のファールにより負傷するなど劣勢のまま1-4のスコアで前半を終える。その一方でハーフタイムの間に下水道を使っての脱走の手筈が整うが、コルビーをはじめ多くの選手はサッカー選手としての名誉と誇りを重視しこれを拒む。脱走へと気持ちがはやるハッチだが、コルビーやルイスらの説得に応じて後半戦に挑むことになる。

後半に入り連合国はカルロスやテリーらを軸に反撃に転じ1点差に詰め寄ると、ルイスのオーバーヘッドキックにより4-4の同点とする。連合国の妙技に貴賓席で観戦するシュタイナーは歓喜し拍手を送るが、ドイツ関係者は怪訝そうな顔でそれを見つめる。

一方、終了間際になるとペナルティエリア内で連合国に反則があったとしてドイツにペナルティーキックが与えられる。不可解な判定に対して観客からはブーイングが起こるが、やがてラ・マルセイエーズの歌声へと変わり、ドイツのキックをハッチが阻止すると歓喜に包まれる。興奮した観客はピッチへとなだれ込み連合国の選手を祝福するが選手らは、この混乱に乗じてパリ市内へと脱走を図るのだった。

キャスト[編集]

俳優
氏名 配役 備考
イギリスの旗 マイケル・ケイン ジョン・コルビー イギリス軍大尉、連合軍チーム選手
アメリカ合衆国の旗 シルベスター・スタローン ロベルト・ハッチ アメリカ軍軍曹、連合軍チーム選手
スウェーデンの旗 マックス・フォン・シドー カール・フォン・シュタイナー ドイツ軍少佐
ドイツの旗 アントン・ディフリング 実況アナウンサー 同左
イギリスの旗 ジョージ・マイケル 収容所長 同左
ドイツの旗 アーサー・ブラウス ルッツ ドイツ軍将校
ドイツの旗 ミヒャエル・ヴォルフ ラング ドイツ軍将校
イギリスの旗 ゲイリー・ウォルドホーン ミュラー ドイツ代表コーチ
イギリスの旗 ダニエル・マッセイ ウォルドロン イギリス軍大佐、捕虜のリーダー
イギリスの旗 ティム・ピゴット=スミス ローズ イギリス軍大尉、情報収集委員
イギリスの旗 ジュリアン・ カリー シャーロック イギリス軍、脱走作戦委員
イギリスの旗 クライヴ・メリソン 偽造屋 イギリス軍大尉
イギリスの旗 モーリス・ローヴ パイリー イギリス軍
カナダの旗 キャロル・ロール ルネ レジスタンス組織メンバー
モロッコの旗 アミドゥ アンドレ レジスタンス組織メンバー
サッカー選手
氏名 配役 備考
ブラジルの旗 ペレ ルイス・フェルナンデス 連合軍チーム
イングランドの旗 ボビー・ムーア テリー・ブレイディ 連合軍チーム
スコットランドの旗 ジョン・ウォーク アーサー・ヘイズ 連合軍チーム
アルゼンチンの旗 オズワルド・アルディレス カルロス・レイ 連合軍チーム
ポーランドの旗 カジミエシュ・デイナ パウル・ヴォウチェク 連合軍チーム
デンマークの旗 セーレン・リンドステッド エリック・ボルグ 連合軍チーム
ベルギーの旗 ポール・ヴァン・ヒムスト ミシェル・フィルー 連合軍チーム
イングランドの旗 マイク・サマービー シド・ハーマー 連合軍チーム
ノルウェーの旗 ハルヴァル・トーレセン グンナー・ヒルソン 連合軍チーム
イングランドの旗 ラッセル・オスマン ダグ・クルー 連合軍チーム
アイルランド共和国の旗 ケヴィン・オキャラハン トニー・ルイス 連合軍チーム
オランダの旗 コ・プリンス ピーター・ファン・ベック 連合軍チーム
アメリカ合衆国の旗 ワーナー・ロス バウマン ドイツ代表主将
イングランドの旗 ローリー・シヴェル シュミット ドイツ代表GK

日本語吹き替え[編集]

役名 俳優 日本語吹き替え
フジテレビ
ロベルト・ハッチ  シルヴェスター・スタローン 佐々木功
ジョン・コルビー マイケル・ケイン 瑳川哲朗
カール・フォン・シュタイナー マックス・フォン・シドー 中村正
ウォルドロン ダニエル・マッセイ 大木民夫
レニー キャロル・ロール 宗形智子
ルイス・フェルナンデス ペレ 麦人
役不明又はその他 青野武
伊藤惣一
阪脩
納谷六朗
仁内建之
嶋俊介
平林尚三
村松康雄
安田隆
城山堅
藤城裕士
石森達幸
千田光男
徳丸完
大山高男
石丸博也
滝沢久美子
鈴置洋孝
郷里大輔
山本千鶴
三浦素直
翻訳 飯嶋永昭
演出 伊達康将
調整 丹波晴道
効果 遠藤堯雄
桜井俊哉
制作 東北新社
初回放送 1982年10月9日
ゴールデン洋画劇場[注 1]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 当時では異例の劇場公開(1981年12月)から半年でのTV放送

出典[編集]

  1. ^ a b c d ゲールハルト・フィッシャー、ウルリッヒ・リントナー著、田村光影 他訳 『ナチス第三帝国とサッカー-ヒトラーの下でピッチに立った選手達の運命』 現代書館2006年、194-196頁。ISBN 978-4768469194
  2. ^ a b Vinnie Jones keen for David Beckham to slip into Bobby Moore's shoes for an Escape to Victory remake”. the guardian (2010年3月23日). 2014年3月21日閲覧。
  3. ^ The Game of Death: playing soccer with the Nazis”. National Centre for History Education. 2014年3月21日閲覧。
  4. ^ 所蔵ビデオ一覧 (PDF)”. ハンガリー文化センター. 2014年3月21日閲覧。
  5. ^ a b c d ペレ著、伊藤淳訳 『ペレ自伝』 白水社2008年、308-309頁。ISBN 978-4560026304
  6. ^ a b c 「サッカーファン待望の正月映画 勝利への脱出」『サッカーマガジン』1982年1月号。
  7. ^ 畑暉男 『20世紀アメリカ映画事典』 カタログハウス、2002年、1521頁。ISBN 978-4905943501

外部リンク[編集]