ハルヴァ

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ハルヴァ
PistHalva.jpg
バルカン半島風のタヒーナ・ベースのピスタチオ入りハルヴァ
アラビア語 حَلاوة (ḥalāwa)
ヘブライ語 חלבה
トルコ語 helva
ペルシア語 حلوا (ḥalvā)
ウイグル語 ھالۋا (halwa)
クルド語 helaw
ヒンディー語 हलवा
アルメニア語 հալվա
ギリシャ語 χαλβάς
ブルガリア語・ロシア語 халва
マケドニア語 алва
ポーランド語 chałwa
ルーマニア語 halva
エストニア語 halvaa
英語 halva

ハルヴァ は、穀物胡麻野菜、または果物油脂砂糖を加えて作られる菓子。東はバングラデシュから西はモロッコまで、アラブ人の文化が影響を及ぼした地域に広く見られ、冠婚葬祭にまつわる様々な行事で重要な役割を果たすことが多い。ほとんどのレシピにはバターまたはギーが含まれるが、逆に一部では植物油を使う。ピスタチオ胡桃アーモンド松の実などのナッツ類やレーズンデーツなどのドライフルーツは必須ではない。

バングラデシュからイランにかけてはプディング状のハルヴァがほとんどだが、それ以西では固形の菓子もハルヴァー(ハルワー)と呼ばれる。プディング状のハルヴァは、バターが入っているため温かいうちに食べるのが一般的である。

カルダモンに加えて、"halava"にはナツメグシナモンサフランローズウォーターで味付けがなされることがある。

ユダヤ人のつづり方である"halvah"は、時によっては、硬く、ゴマの味が濃厚なユダヤ人の製法(下のレシピを参照)を特に指して使われることがある。

ハルヴァの起源[編集]

古代メソポタミアアッカド地方には、小麦粉胡麻油蜂蜜で作るムッタクー(muttaqu)という菓子があった。シュメール人の菓子「ギリラム(Giliram)」や「ミルスー(Mirsu)」には、すでにナツメヤシの実のハルヴァ(ハルワ)の原型が見られる。

アッバース朝時代には、今日のハルヴァと良く似た「ハビース(Khabīs)」(「混ぜたもの」の意)という菓子があった。様々な種類のハビースが穀物の粉、でんぷん、ナッツ、甘味料(ナツメヤシの実、ナツメヤシの実のシロップ、蜂蜜、砂糖)から作られた。今日の中東のハルヴァ(ハルワ)同様、あるものは柔らかく、またあるものは固く仕上げられた。10世紀の料理研究家イブン・サッヤール・アル=ワッラク(Ibn Sayyar al-Warraq)は著書「キターブ・アッ=タビーハ Kitāb al-Tabīkh(料理の書)」の中で、ナツメヤシの実、バター、砂糖で作るハ=イス(Ha’is)またはヘイス(Hays)という菓子をマッカ(メッカ)の巡礼の携帯食として強くすすめている。また、でんぷんとアラビアガムのハルワの製法が見られる。

アラブ人のハルヴァ[編集]

アラビア語の発音には、「ハルワ」「ハラワ」「ヒルワ」「ハラウィ」などのバリエーションが見られる。ちなみにアラビア語でハラウェーヤート(Halawēyāt)といえば、デザート全般を指す単語である。「ハルワ」と呼ばれる菓子には、プディング状のハルワと固形の菓子のハルワの2種類があるが、明確な区分はないようである。

マシュリク[編集]

胡麻のハルワ(ハラウィ・シムソミーイェ Halawi Simsomīyeh)の他、アンズのハルワ(ハラワ・ミシュミシュ Halawa Mishmish)、ナツメヤシの実のハルワ(ハラワ・タムル Halawa Tamr)、フレッシュチーズセモリナのハルワ(ハラワ・ビル=ジブン Halawa bil-Jibn、ハラワ・アル=ジブン Halawat al-Jibn)などがある。

マグリブ[編集]

リビアスモモリンゴメロン、干しぶどうバター、蜂蜜、クスクスで作る果物のハルワ(ハラワ・ビル=ファワーキ Halawah bil-Fawāki)、モロッコの揚げた胡麻入りクッキーを蜂蜜に浸したハルワ・シェバキア(Halwa Shebakia)、カラメル化した砂糖で胡麻を固めたハルワ・シザーム(Halwa Cizame)、ココナッツフレークを用いたヒルワ・コーコー (Hilwat Koko) などがある。

イラク[編集]

ナツメヤシの実で作るハラワ・アッ=タムル(Halawat al-Tamur)、極細のパスタで作るハラワ・シャリーヤ(Halawat Sha’riyyah)、炒った小麦粉とバターで作るハラワ・タヒーン(Halawat Tahīn)、米粉で作るハラワ・ティンマン(Halawat Timman)、にんじんで作るハラワ・ジザル(Halawat Jizar)などがある。

イェメン[編集]

ブルグールで作るハルワ(ヒルワ・アッ=ダキーク Hilwat-ad-Daqīq)がある。

イスラエルのハルヴァ[編集]

練り胡麻タヒーナ: Tehina)で作るハルヴァが最も有名。チョコレートでコーティングしたものもあり、チーズケーキなど洋菓子の素材にも用いられる。イスラエルは移民国家だけに、他の地域の伝統的なハルヴァも作られている。

胡麻のハルヴァ レシピ[編集]

  • タヒーナ練りゴマ) 400 g
  • タヒーナの油とバター あわせて 2カップ弱
  • セモリナ または 小麦粉 5カップ
  • 蜂蜜 5/4カップ
  • ゴマ 5/8カップ

油とバターを熱し、セモリナあるいは小麦粉に混ぜ、常にかき混ぜながらキツネ色になるまで弱火で熱する。ここで、タヒーナを加える。料理用温度計を用いて、蜂蜜を112℃まで熱する。蜂蜜とゴマを粉に混ぜ、よくかき混ぜる。油を塗った型に入れ、固まり次第切り分ける。

トルコのハルヴァ[編集]

炒った小麦粉とバターのヘルヴァ(ウン・ヘルヴァス Un Helvası)とセモリナのヘルヴァ(カシュク・ヘルヴァス Kaşık Helvasıまたはイルミク・ヘルヴァス İrmik Helvası)が有名。

男の子の割礼など様々な祝い事のために作られる他、葬式があった日の夕方には、女性の遺族や遺族の友人が祈りの言葉を唱えながらヘルヴァを用意し、隣人にふるまう習慣があり、ヘルヴァを受け取った人は死者の冥福を祈る。

灯明祭(カンディル・ゲチェレリ Kandil Geceleri)を祝うために、ヘルヴァを用意することがある。都市部には、一年のうちで最も寒いとされる40日間(12月22日から1月30日まで)には、友達を家に招待してヘルヴァを食べ(ビョレク七面鳥など、ヘルヴァ以外の料理も用意する)、詩を朗読するという、「ヘルヴァ話会」(ヘルヴァ・ソフベトレリ Helva Sohbetleri)という習慣がある。

スレイマン1世の時代、王宮に新たに建てられた巨大な賄い所は「ヘルヴァハネ」(ハルヴァの家)と呼ばれた。

ウイグルのハルワ[編集]

東トルキスタン中国新疆ウイグル自治区)のウイグル人は、羊の脂、小麦粉、砂糖で作るペースト状のハルワを食べる。ウイグル語で格差を恨むに、「知事はハルワを食べ、孤児は棒で打たれる(ھالۋىنى ھېكىم يەر تاياقنى يىتتىم)」というものがある。

アルメニアのハルヴァ[編集]

炒った小麦粉のヘルヴァ(アリューロヴ・ヘルヴァ Aliurov Helva またはウーン・ヘルヴァ Ūn Helva)、セモリナのヘルヴァ(イムリグ・ヘルヴァ Imrig Helva), フレッシュチーズとセモリナのヘルヴァ(バニーロヴ・ヘルヴァ Banīrov Helva)などがある。名称もトルコのヘルヴァとよく似たものが多い。

ギリシャのハルヴァ[編集]

胡麻ペーストのハルヴァは「八百屋のハルヴァ」と呼ばれ、バターが入っていないため四旬節に食べる。テッサロニキではこれを焼きリンゴに詰めることがある。

テッサリアファルサラはシロップに浸したセモリナとバターのハルヴァが有名であるが、ハルヴァ・ファルサロン(Halva Falsalon)という、固いカラメルのかかったコーンスターチのハルヴァも作られている。

セモリナ、オリーブ油、シロップ、ナッツで作るハルヴァス・シミグダレニオス(Halvas Simigdalenios)またはハルヴァス・ポリティコス(Halvas Politikos「イスタンブル生まれの人のハルヴァ」の意)という名のハルヴァは簡単に作れるため、急な来客をもてなすのに重宝する。また、このハルヴァを四旬節の前にくる「霊の土曜日(プシコサヴァタ Psychosavata)」に教会や墓地に持って行き、司祭の祝福を受けてから亡くなった親族を偲んで友人や隣人に分ける。

テッサロニキのアルーマニア人は、チーズ作りが盛んな春から夏にかけてミズィトラチーズMizithra)と卵黄を火にかけて溶かし、砂糖、薄力粉、バターを加えた「羊飼いのハルヴァ」(ツォパニコス・ハルヴァス Tsopanikos Halvas)を作るが、これはエーゲ海東部のギリシャ人や小アジア出身のギリシャ人が作るフウスメリ(Housmeri)という菓子とも似ている。フウスメリは冬まで保存でき、来客があった際にはシロップを作ってかけてすすめる。

セモリナとオリーブ油のハルヴァ レシピ[編集]

  • オリーブ油 5/4カップ
  • セモリナ 2.5カップ
  • 砂糖 3 3/4カップ
  • 水 5カップ
  • 輪切りレモン 1/2個分
  • シナモン 1本
  • 刻みアーモンド
  • ゴマ

セモリナとアーモンドを油で色がつくまで熱する。その間に、砂糖を水に入れ砂糖が溶けるまで熱し、レモンとシナモンを加える。これをセモリナにすばやくかき混ぜながら加える。熱くなるまでこれを熱し、ケーキの型に入れる。ゴマで飾り、常温で食べる。

イランのハルワ[編集]

炒った小麦粉とバター、サフランで作るハルワは、故人の没後3日間、7日目と14日目の夕方に作られ、遺族、友人と貧者に分けられる。

ニンジンのハルワ(ハルワーイェ・ハヴィージ حلوای هویج Halwā-ye Havīj)は、太陽の復活を祝う冬祭りシャベ・ヤルダー شب یلدا Shab-e Yaldā、冬至に相当)に作られる。ハルワは体に熱を与える食品(ガルミー گرمی garmī)と考えられているため、冬の寒さを中和すると信じられているからである。他に、ぶどうのハルワもある。

平皿に平らに盛りつけてからスプーンで幾何学的な模様をつけ、ピスタチオなどで飾る。

ペルシャ風セモリナのハルワ レシピ[編集]

  • セモリナ 250 g
  • 砂糖 200 g
  • 植物油 200 g
  • 湯 5/4カップ
  • ローズウォーター 5/8カップ
  • サフラン 小さじ1/2
  • 炒って砕いたアーモンド

油を中火で熱し、セモリナを加え、香りがするまで10分ほど強火で炒め、火から離す。砂糖を湯に溶かし、ローズウォーターとサフランを入れすばやくかき混ぜながら、炒めたセモリナに加える。炒って砕いたアーモンドで飾る。

アフガニスタンのハルヴァ[編集]

穀物(小麦粉、米粉、セモリナなど)で作るハルヴァが最も伝統的だが、にんじんやテーブルビートのハルヴァも作られる。穀類のハルヴァは祝いごとの機会に作るが、葬儀の際やナズル(Nazr نذر 、願いがかなったとき、巡礼から戻ったときなど、ナーンや菓子を隣人にふるまってへの感謝を表す習慣)にも作られる。ナッツは入れた方が望ましい。

代表的なものに、全粒粉(アーター、チャパーティーを作る粉)で作るハルワーエ・アールディー(حلوای آردی Halwā-ye Ārdī)、米粉で作るハルワーエ・ビリンジー(حلوای برنجی Halwā-ye Birinjī)、 セモリナで作るハルワーエ・アールディーエ・スージー(حلوای آردی سوجی Halwā-ye Ārdī-ye Sūjī)、にんじんで作るハルワーエ・ザルダク(حلوای زردک Halwā-ye Zardak)などがある。

インドのハルヴァ[編集]

ハルヴァは、主に北インドで食後のデザート、間食、ブランチ(昼食を兼ねる遅めの朝食)の一品として親しまれている菓子である。結婚式やパーティによく作られるセモリナのハルヴァ(スージー・ハルワー Sūji Halwaあるいは ラワー・ハルワー रवा हलवा Rawā Halwā)の他、よく知られているものにニンジンのハルヴァ(ガージャル・ハルワー गाजर हलवा Gājar Halwā)とセモリナとヒヨコ豆粉のハルヴァ(スージー・ベーサン・ハルワー सूजी बेसन हलवा Sūji Bēsan Halwā またはモーハン・ボーグ मोहन भोग Mōhan Bhōg)があるが、この他にも南瓜山芋冬瓜などもハルヴァの材料になる。油脂にはギーが好まれる。

セモリナのハルヴァ レシピ[編集]

  • 牛乳 220cc
  • 水 220cc
  • 砂糖 1カップ弱(甘くする場合は5/4カップ)
  • セモリナ 5/4カップ
  • バター 又は 澄ましバター(ギー) 1カップ弱(US: 1 1/2 sticks)
  • カルダモン 小さじ1/2
  • ナツメグ 小さじ1/4 (好みで)
  • 炒って砕いたピスタチオ(好みで)

バターあるいは澄ましバターを中火で溶かし、セモリナを加え、香ばしい香りがするまで10分ほど強火で炒める。その間、別の鍋で牛乳と水、砂糖を火にかけ、カルダモンを混ぜる。火を止め、炒めたセモリナに、泡が立つようにすばやくかき混ぜながら加える。

型に入れるかあるいは鍋に入れたまま冷やし、その後にいくつかにわける。常温になってから食べる。好みで炒って砕いたピスタチオを飾る。

バングラデシュのハルヴァ[編集]

バングラデシュには、シャベ・バラート(Shab-e Barat 「運命の夜」)の翌朝、米粉の平焼きパンに色々なハルワをつけて食べる習慣がある。クズウコン穀類の粉、ダール(小粒の類)の粉、人参、瓜のハルワの他、一風変わったものでは卵のハルワ(ディメル・ハルワ Dimer Halwa)、のハルワもある。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

アラブ諸国(中近東・北アフリカ)[編集]

  • Chirinian, Linda. Secrets of Cooking. Lionheart, New Canaan, CT, 1987.
  • Limet, Henri. The cuisine of Ancient Sumer. Biblical Archaeologist 50, 3 Sept. 1987: 132-140.
  • Levey, Martin. Chemistry and Chemical Technology in Ancient Mesopotamia. Amsterdam, 1959.
  • Marks, Copeland. The Great Book of Couscous. Donald I. Fine, New York, 1994.
  • Nasrallah, Nawal. Delights from the Garden of Eden. First Books Library, 2003.
  • Roden, Claudia. The New Book of Middle Eastern Food. Knopf, New York, 2000. ISBN 0-375-40506-2
  • Salloum, Habeeb. Classic Vegetarian Cooking from the Middle East and North Africa. Interlink, 2000, Brooklyn, NY, USA. 2000
  • Uvezian, Sonia. Recipes and Remembrances from an Eastern Mediterranean Kitchen. The Siamanto Press, Northbrook, IL, USA. 1999
  • Al-Warraq, Ibn Sayyar. Kitab Al-Tabikh. Ed. Kaj Ohrnberg and Sahban Mroueh. Studia Orientalia. The Finnish Oriental Society 60, Helsinki, 1987.

イスラエル[編集]

  • Nathan, Joan. The Foods of Israel Today. Knopf, New York, 2001.

トルコ[編集]

  • Algar, Ayla Esen. The Complete Book of Turkish Cooking. Kegan Paul International, London, 1985.
  • Algar, Ayla Esen. Classical Turkish Cooking. Harper Collins, New York, 1991.

ウイグル[編集]

  • 新疆大学中国語文系編, 『維漢詞典』, 新疆人民出版社, ウルムチ, 1982

アルメニア[編集]

  • Uvezian, Sonia. The Cuisine of Armenia. Siamanto, Northbrook, IL, USA.

ギリシャ[編集]

  • Kochilas, Diane. The Glorious Foods of Greece. William Morrow, New York, 2001.
  • Kremezi, Aglaia. The Foods of Greece. Stewart, Tabori, and Chang, New York, 1999.

イラン[編集]

  • Najmieh Batmanglij. New Food of Life. Mage, Washington D.C., 2001.

アフガニスタン[編集]

  • Saberi, Helen. Afghan Food and Cookery. Hippocrene, New York, 2000.

インド・バングラデシュ[編集]

  • Banerji, Chitrita. Bengali Cooking. Serif, London, 1997.
  • Devi, Yamuna. Lord Krishna's Cuisine. Dutton, New York, 1987.

[編集]

  1. ^ 著作の『旅行者の朝食』(文藝春秋 - 2002年4月 ISBN 4-16-358410-2、文春文庫(文藝春秋) - 2004年10月 ISBN 4-16-767102-6)収載の「トルコ蜜飴の版図」にハルヴァのおいしさそれを探索したこと、V.ポフリョーブキン(ru:Похлёбкин, Вильям Васильевич)の絶筆『料理芸術大辞典・レシピ付き』(Кухня векаモスクワ 2000)に1ページの記載があったと記述あり。