アッラーフ
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アッラーフ(اللّه Allāh)は、アラビア語でアブラハムの宗教(ユダヤ教・キリスト教・イスラーム教)の唯一神に対する呼称のひとつ。アッラーまたはアラーとも。
イスラーム以前のアラビア半島においては多くの神々が信仰されており、元来アッラーはその至高神の呼称に過ぎなかった。ムハンマド後のイスラームにおいては万物を創造し、かつ滅ぼすことのできる造物主こそが唯一とされ、その超越性が強調される。イスラームの聖典クルアーン(コーラン)にはアッラーフの絶対性と全知全能性が記されている。
一部で「アラーの神」なる表記がされるが、“アラー(アッラーフ)”で神そのものを表すのでこれは誤り(キリスト教関連の話題が内容に出てくる書籍に多い)であり、その神という翻訳もあまりふさわしいとはいえない。日本語に受容されてきた神は、自然や物体、動物をも神と見なし、絵画や彫像もあり、「神」という言葉を絶対唯一のアラー(ヤハウェ、ゴッド)に適応するのは日本語に於いて確実な理解がなされにくい要因である。創世記にはアッラーフ(ヤハウェ、ゴッド)が自らに似せて人を造ったとあるが、似ているのは性質なのか、現象なのか、何がどう似ているかが明示されておらず、またアッラーフに可視性はなく、人間のような姿かたちの像を持つ天照大神とは意味合いも次元もずれがある。
現在の宇宙空間の以前に、旧宇宙空間もしくは別の何かが存在していたことは定かではないが、宇宙空間を創造したのがアッラーフ(ヤハウェ、ゴッド)である。またアッラーフ(ヤハウェ、ゴッド)が宇宙空間の外側、あるいは4次元以上の空間へ、どのように介入しているかは明確にされていない。
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[編集] イスラーム教に於けるアッラーフ
アッラーフがクルアーンを授けたとされるムハンマドは、アッラーフより派遣された大天使ガブリエルのアッラーフからの受託をアラビア語で語った使徒であり、最後で最大の預言者とされる。これは飽くまでもアッラーフから被造物である人類のために人類のなかから選ばれた存在に過ぎない。また、そもそもアッラーフ自体が「生みもせず、生まれもしない」絶対固有であるため、キリスト教神学のイエス・キリスト像のようにムハンマドに対して「アッラーフの子」と見なすような信仰的・神学的位置付けもされていない。
イスラーム教ではアッラーフは、生みも生まれもしないとされ、親も子供もいない[1]。(「言え、」という部分は大天使ガブリエルがムハンマドに、「言え、」と命じているのである。)また、全知全能で唯一絶対であり、すべての超越である。そして、「目無くして見、耳無くして聞き、口無くして語る」とされ、姿形を持たない、意思のみであるため、絵画や彫像に表すことはできない。イスラーム教がイメージを用いた礼拝を、偶像崇拝として完全否定しているのも、このためである。
イスラームの教えは先行するユダヤ教・キリスト教を確証するものであるため、アッラーフはユダヤ教・キリスト教のヤハウェ(ゴッド)と同一である、とされる[2]。したがってアッラーフは世界を六日間で創造したと同時に、最後の日には全人類を復活させ審判を行う、終末をつかさどる。
ただし、一切を超越した全能のアッラーフが休息などするはずが無い[3]、という観点から、創造の六日間の後にアッラーフが休息に就いたことを否定するなど違いはある。これはイスラームがユダヤ教やキリスト教を同じ「啓典の宗教」として尊重しながらも、それらの教えに人為的改変あり、と見なしてきたことの顕著な例でもある。創世記を参照すると、アッラーフは能力が無いために休息したのではなく、疲れたから休息したのでもなく、ただ、休息したのである。クルアーンのそれは人為的改変ではなく、単に人為的解釈による誤りで、本質的にはクルアーン(コーラン)は旧約聖書、新約聖書の、さらに新しい続編の聖書であり、アッラーフ(ゴッド、ヤハウェ)は絶対である。クルアーン(コーラン)が現在の形になったのはムハンマドの死後であり、アッラーフが遣わせた大天使ガブリエルからムハンマドに言わせた言葉が現在のクルアーンに、完全に再現されているとは考えにくい。
[編集] アラビア語ならびに他宗教に於けるアッラーフ
アラビア語においては、アッラーフはアブラハムの一神教といわれるユダヤ教、キリスト教、イスラーム教の共通の唯一絶対を指す。ちなみにアラブ地域の聖書ではヤハウェを「アッラーフ」と表記している。例えば、東方正教会のアンティオキア総主教庁、東シリア教会(ネストリウス派)、西シリア教会(単性論)などでは、創造主を「アッラーフ」と訳している。しかしながらマレーシアではイスラム教徒以外が用いることが制限されており、同国でカトリック系新聞『ヘラルド』が掲載した際には、政府から使用禁止が命じられた。
ジャーヒリーヤと呼ばれた古代アラブの多神教においては、「アッラーフ」は神々のうちの一柱として信仰されていた。イスラーム発祥当時のアラビアにいたユダヤ教徒・キリスト教徒も聖書のヤハウェ(ゴッド)をさして「アッラーフ」と呼んでいた[4]。イスラーム登場後のアラビアにおいては「唯一の崇拝の対象」を意味する言葉となった。
ただし、考古学的見地では、ヤハウェ(ゴッド)とイスラーム教の唯一神アッラーフは別の起源であり、イスラーム教の唯一神アッラーフは、630年以前は、カアバ神殿に祭祀されていた最高神である。イスラーム教でいう「ジャーヒリーヤ(無明)時代」(アニミズム時代)に、カアバ神殿に祭祀されていた360の神々の最高神がアッラーフとされていた。アッラーフの下には、アッラート、マナート、アル・ウッザーの3女神が付き従っていたという。これらの女神はアラブの部族神であり広く信仰されていた。月からの隕石とされていた。この黒曜石が、アッラーフの神体とされたのである。もちろん、偶像崇拝を禁じるイスラーム教では、信仰及び崇拝の対象になっていないが、唯一の例外として、ハッジ(メッカへの巡礼)においてこの石に触れることができれば大変な幸運がもたらされるとされている。ちなみに現在は、カアバ神殿の東南角に丁重に嵌め込まれている。アラブ世界のこのような状況にあってアッラーフは、大天使ガブリエルを遣いムハンマドにアッラーフの唯一絶対性を語らせたのである。
[編集] 語源
「アッラーフ」の語源については二つの説が有力である。両説とも、英語の The God(または God)、フランス語の Le Dieu(または Dieu)に相当する普通名詞が特殊化し固有名詞化した、という説である。
- 「崇められるもの」を意味する普通名詞の「イラーフ(إله ilāh)」に定冠詞「アル(ال al)」を付けた「アル・イラーフ(الإله)」が短縮されたものである、という説。19世紀末にドイツの聖書学者ユリウス・ヴェルハウゼン(Julius Wellhausen)が唱えた。この説はムスリム(イスラーム教徒)に受けがよく[要出典]、今日しばしば見聞きする解釈である。また、「イラーフ(إله ilāh)」の綴りは声門閉鎖音である「 ء (ハムザ)」を打たない場合、アラビア語の語法では定冠詞「アル(ال al)」が付くと語頭の「ア(a)」の音価を持つ「ا」は欠如することとなる(これをハムザトゥ・ル・ワスルと呼ぶ)。この結果が「アッラーフ(ألله Allâh)」であるとも考えられる。
- シリア語(アラム語の方言)で神を表す「アラーハー(alāhā)」が訛ったもの、という説。非ムスリム系学者に支持されている説である[要出典]。また、考古学的にもこの説が支持されている[要出典]。また、アラム語と同系とされるヘブライ語で神を示すエロアーハー(Eloah, אלוה)も同語源と考えられる。
[編集] 脚注
- ^ クルアーン第112章1-4節。“言え、「かれはアッラー、唯一の御方であられる。アッラーは自存され、御産みなさらないし、御生まれになられたのではない、かれに比べ得る何もない。」”
- ^ クルアーン第4章163-164節、クルアーン第46章12節
- ^ クルアーン第2章255節
- ^ 井筒俊彦『イスラーム生誕』中央公論社〈中公文庫〉、1990年、208頁
[編集] 関連項目
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