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「ニコチン依存症」の版間の差分

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'''ニコチン依存症'''(ニコチンいそんしょう、ニコチンいぞんしょう、[[w:Nicotine dependence|Nicotine dependence]])とは、[[薬物依存症]]の一つである。[[ニコチン]]はナス科植物の一部、特に[[タバコ]]に多く含まれている依存性物質であり、[[ニコチン]]を摂取しやすいように加工された[[紙巻きたばこ]]などのタバコ商品の常習的な[[喫煙]]を継続した結果、[[薬物依存症]]と習慣依存と[[認知の歪み]]によって、自らの意思で[[禁煙]]をする事が困難になった[[精神疾患]]を指す。
'''ニコチン依存症'''(ニコチンいそんしょう、ニコチンいぞんしょう、[[w:Nicotine dependence|Nicotine dependence]])とは、[[薬物依存症]]の一つである。[[ニコチン]]はナス科植物の一部、特に[[タバコ]]に多く含まれている{{要出典|範囲=依存性物質であり、[[ニコチン]]を摂取しやすいように加工された[[紙巻きたばこ]]などのタバコ商品の常習的な[[喫煙]]を継続した結果、[[薬物依存症]]と習慣依存と[[認知の歪み]]によって、自らの意思で[[禁煙]]をする事が困難になった[[精神疾患]]を指す|date=2017年12月}}。ニコチンは、依存性や乱用の可能性のある物質としては規制されていない<ref name="PMDA:ニコチネル">[http://www.info.pmda.go.jp/ogo/K0808000012_06_01 一般用医薬品 禁煙補助剤 ニコチネル ミント]</ref>
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{{Main2|急性ニコチン中毒|ニコチン}}


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=== ニコチンの作用による依存 ===
=== ニコチンの作用による依存 ===
動物実験などの知見から、[[ニコチン]]は明らかな依存性を持つ。
{{要出典|範囲=動物実験などの知見から、[[ニコチン]]は明らかな依存性を持つ|date=2017年12月}}

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{{see also|ニコチン#薬理作用}}
{{see also|ニコチン#薬理作用}}
ニコチンは、神経伝達物質である[[アセチルコリン]]に分子構造が類似し、ニコチン性アセチルコリン受容体([[受容体|レセプター]]とも)に作用することで、中枢神経のドパミン神経系、特に脳内[[報酬系]]を活性化する。そのため、摂取後に一時的に快の感覚や覚醒作用を得られる。このような報酬系を介した薬理作用は、[[覚醒剤]]など依存性を有する他の薬物と共通である。{{要出典範囲|ニコチン摂取を続けると、ニコチン受容体がダウンレギュレーション(受容体の数が減ること)を起こし、ニコチンを外部から摂取しないと神経伝達が低下した状態となる|date=2013年9月}}。自覚的には不安症状やイライラ感など不愉快な気分を生じる。
{{要出典|範囲=ニコチンは、神経伝達物質である[[アセチルコリン]]に分子構造が類似し、ニコチン性アセチルコリン受容体([[受容体|レセプター]]とも)に作用することで、中枢神経のドパミン神経系、特に脳内[[報酬系]]を活性化する。そのため、摂取後に一時的に快の感覚や覚醒作用を得られる。このような報酬系を介した薬理作用は、[[覚醒剤]]など依存性を有する他の薬物と共通である。ニコチン摂取を続けると、ニコチン受容体がダウンレギュレーション(受容体の数が減ること)を起こし、ニコチンを外部から摂取しないと神経伝達が低下した状態となる。自覚的には不安症状やイライラ感など不愉快な気分を生じる|date=2017年12月}}
{{see also|依存症#耐性と離脱症状}}
{{see also|依存症#耐性と離脱症状}}
これがニコチン離脱症状であり、ニコチンの血中濃度の半減期が30分程度であることから、自覚的には不安症状やイライラ感など不愉快な気分を生じ、摂取方法が喫煙の場合には1時間ほどで、自覚的に[[ニコチン]]への渇望として喫煙への欲求が生じる。
{{要出典|範囲=これがニコチン離脱症状であり、ニコチンの血中濃度の半減期が30分程度であることから、自覚的には不安症状やイライラ感など不愉快な気分を生じ、摂取方法が喫煙の場合には1時間ほどで、自覚的に[[ニコチン]]への渇望として喫煙への欲求が生じる。
ニコチン依存による離脱症状は、一般に禁煙開始後3日以内がピークとなり、その後徐々に消失していく。
ニコチン依存による離脱症状は、一般に禁煙開始後3日以内がピークとなり、その後徐々に消失していく|date=2017年12月}}


=== タバコの喫煙による依存 ===
=== タバコの喫煙による依存 ===
一般的には、[[ニコチン]]の摂取方法はナス科植物[[タバコ]]に含まれる[[依存性]]の強い[[薬物]]である[[ニコチン]]の摂取を吸引しやすい商品とされた[[タバコ]]商品の[[喫煙]]であり、[[紙巻きたばこ]]などの喫煙による。紙巻きたばこ1本の喫煙によって吸収させる[[ニコチン]]量は指定された方法で測定された数値を商品パッケージに記載で、(実際の摂取量と異なるが)0.1mgから2mgである。数本の喫煙体験により摂取された[[ニコチン]]により、離脱症状の感じる程度となる。常習的な喫煙により、[[薬物依存症]]と習慣依存と認知の歪によって、多く喫煙者が自らの意思で[[禁煙]]をする事が困難になる。俗にニコチン中毒、タバコ中毒、喫煙中毒と云われる状態は'''ニコチン依存症'''と言う[[精神疾患]]である。
{{要出典|範囲=一般的には、[[ニコチン]]の摂取方法はナス科植物[[タバコ]]に含まれる[[依存性]]の強い[[薬物]]である[[ニコチン]]の摂取を吸引しやすい商品とされた[[タバコ]]商品の[[喫煙]]であり、[[紙巻きたばこ]]などの喫煙による。紙巻きたばこ1本の喫煙によって吸収させる[[ニコチン]]量は指定された方法で測定された数値を商品パッケージに記載で、(実際の摂取量と異なるが)0.1mgから2mgである。数本の喫煙体験により摂取された[[ニコチン]]により、離脱症状の感じる程度となる。常習的な喫煙により、[[薬物依存症]]と習慣依存と認知の歪によって、多く喫煙者が自らの意思で[[禁煙]]をする事が困難になる。俗にニコチン中毒、タバコ中毒、喫煙中毒と云われる状態は'''ニコチン依存症'''と言う[[精神疾患]]である|date=2017年12月}}


研究用診断基準には、急性中毒・有害な使用・依存症候群・離脱状態についても記載されている。
{{要出典|範囲=研究用診断基準には、急性中毒・有害な使用・依存症候群・離脱状態についても記載されている|date=2017年12月}}


[[喫煙]]による'''ニコチン依存症'''は、[[精神医学]]において物質依存([[依存症]])の一種であると認められている。<ref>[[世界保健機関|WHO]]による疾病の分類基準である国際疾病分類第10版(ICD-10)にも「F17.2 タバコ使用&lt;喫煙&gt;による精神および行動の障害 依存症候群」として分類されている</ref>。
[[喫煙]]による'''ニコチン依存症'''は、[[精神医学]]において物質依存([[依存症]])の一種であると認められている。<ref>[[世界保健機関|WHO]]による疾病の分類基準である国際疾病分類第10版(ICD-10)にも「F17.2 タバコ使用&lt;喫煙&gt;による精神および行動の障害 依存症候群」として分類されている</ref>。


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== 管理 ==
== 管理 ==
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ニコチン依存症の治療は禁煙外来にて行う。主に精神面で禁煙支援をするカウンセリング療法と、身体的[[ニコチン]]の依存状態からニコチンを抜くニコチン置換療法(ニコチンガム・ニコチンパッチを使用)または非ニコチン製剤(バレニクリン)などによる禁煙法を併用する。[[健康保険制度]]の適用の禁煙治療は、'''ニコチン依存症'''の診断により、呼気一酸化炭素濃度測定器による測定と、患者自らが禁煙を望むことやニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)にて喫煙状態の設問に答え該当者が対象となる。
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未成年者や喫煙量の少ない喫煙者はニコチン依存症の状態でも、禁煙を希望しても、保健の適用となりにくい条件である。
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日本において、[[中央社会保険医療協議会]]により正式な[[疾患]]と認められ、2006年4月から'''ニコチン依存症'''患者の[[病院]]での禁煙治療が[[健康保険制度]]の適用となった。これにより禁煙治療における患者負担額が大幅に軽減されることとなり、禁煙外来などが新設されるケースもある。<ref>[http://www.j-circ.or.jp/kinen/anti_smoke_std/ 禁煙治療のための標準手順書 日本循環器学会 禁煙推進委員会 2010年4月]、日本循環器学会、日本肺癌学会、日本癌学会、日本呼吸器学会</ref>
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[[電子たばこ]]のカートリッジは、[[薬事法]]により[[ニコチン]]の含有は許されないし、商品の説明に[[ニコチン]]を含まないことを明記しているが、ニコチンの含有が確認されている。<ref>[http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20100818_1.html 国民生活センター 電子たばこの安全性を考える]調査結果発表2010年8月18日</ref>[[ニコチン]]を含まない電子たばこも販売されている。


生産者が故意に入れなければ存在しない依存性の強い薬物である[[ニコチン]]の含有製品について、微量でも、安易な使用や、興味本位の使用や、非喫煙者・未成年者の使用はニコチン依存症になる可能性がある。
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== 疫学 ==
== 疫学 ==

2017年12月23日 (土) 12:29時点における版

ニコチン依存症
概要
分類および外部参照情報
ICD-10 F17.0, T65.2
DiseasesDB 30389
MedlinePlus 002510

ニコチン依存症(ニコチンいそんしょう、ニコチンいぞんしょう、Nicotine dependence)とは、薬物依存症の一つである。ニコチンはナス科植物の一部、特にタバコに多く含まれている依存性物質であり、ニコチンを摂取しやすいように加工された紙巻きたばこなどのタバコ商品の常習的な喫煙を継続した結果、薬物依存症と習慣依存と認知の歪みによって、自らの意思で禁煙をする事が困難になった精神疾患を指す[要出典]。ニコチンは、依存性や乱用の可能性のある物質としては規制されていない[1]

原因

縦軸:依存性:上に行くほど依存性の可能性の高い物質。横軸:右に行くほど活性量と致死量が近い。[2]
アメリカ国立薬物乱用研究所(NIDA)の評価[3](1994年) 最大:6  最小:1
依存薬物 依存性 禁断性 耐性 切望感 陶酔性
ニコチン 6 4 5 3 2
ヘロイン 5 5 6 5 5
コカイン 4 3 3 6 4
アルコール 3 6 4 4 6
カフェイン 2 2 2 1 1
大麻 1 1 1 2 3

ニコチンの作用による依存

動物実験などの知見から、ニコチンは明らかな依存性を持つ[要出典]

霊長類におけるニコチンの静脈内自己投与を確立させることは困難である[4]。静脈内自己投与は、薬物の乱用や依存を予測するための最も有効な手法であり、煙草の規制を進めるために研究が継続されている[5]

ニコチンは、神経伝達物質であるアセチルコリンに分子構造が類似し、ニコチン性アセチルコリン受容体(レセプターとも)に作用することで、中枢神経のドパミン神経系、特に脳内報酬系を活性化する。そのため、摂取後に一時的に快の感覚や覚醒作用を得られる。このような報酬系を介した薬理作用は、覚醒剤など依存性を有する他の薬物と共通である。ニコチン摂取を続けると、ニコチン受容体がダウンレギュレーション(受容体の数が減ること)を起こし、ニコチンを外部から摂取しないと神経伝達が低下した状態となる。自覚的には不安症状やイライラ感など不愉快な気分を生じる[要出典]

これがニコチン離脱症状であり、ニコチンの血中濃度の半減期が30分程度であることから、自覚的には不安症状やイライラ感など不愉快な気分を生じ、摂取方法が喫煙の場合には1時間ほどで、自覚的にニコチンへの渇望として喫煙への欲求が生じる。 ニコチン依存による離脱症状は、一般に禁煙開始後3日以内がピークとなり、その後徐々に消失していく[要出典]

タバコの喫煙による依存

一般的には、ニコチンの摂取方法はナス科植物タバコに含まれる依存性の強い薬物であるニコチンの摂取を吸引しやすい商品とされたタバコ商品の喫煙であり、紙巻きたばこなどの喫煙による。紙巻きたばこ1本の喫煙によって吸収させるニコチン量は指定された方法で測定された数値を商品パッケージに記載で、(実際の摂取量と異なるが)0.1mgから2mgである。数本の喫煙体験により摂取されたニコチンにより、離脱症状の感じる程度となる。常習的な喫煙により、薬物依存症と習慣依存と認知の歪によって、多く喫煙者が自らの意思で禁煙をする事が困難になる。俗にニコチン中毒、タバコ中毒、喫煙中毒と云われる状態はニコチン依存症と言う精神疾患である[要出典]

研究用診断基準には、急性中毒・有害な使用・依存症候群・離脱状態についても記載されている[要出典]

喫煙によるニコチン依存症は、精神医学において物質依存(依存症)の一種であると認められている。[6]

タバコ喫煙に対して依存症の状態である者が「喫煙でリラックスできる」と表現する状態は、ニコチンの薬物としての作用と、離脱症状を喫煙によって一時的に緩和している状態と表現されている。それらの体験は報酬系に作用して認知に歪を生じさせ、習慣依存を増強する。ニコチンの身体依存による離脱症状は、一般に禁煙開始後3日以内がピークとなり、その後徐々に消失していく。その後でもなかなか禁煙ができないのは、この心理的依存・習慣依存の影響も大きいといわれる。保健適用の禁煙外来治療は12週間であるが、その後も何らかのきっかけが禁煙を失敗させることがある[要出典]

管理

ニコチン依存症の治療は禁煙外来にて行う。主に精神面で禁煙支援をするカウンセリング療法と、身体的ニコチンの依存状態からニコチンを抜くニコチン置換療法(ニコチンガム・ニコチンパッチを使用)または非ニコチン製剤(バレニクリン)などによる禁煙法を併用する。健康保険制度の適用の禁煙治療は、ニコチン依存症の診断により、呼気一酸化炭素濃度測定器による測定と、患者自らが禁煙を望むことやニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)にて喫煙状態の設問に答え該当者が対象となる[要出典]

未成年者や喫煙量の少ない喫煙者はニコチン依存症の状態でも、禁煙を希望しても、保健の適用となりにくい条件である[要出典]

日本において、中央社会保険医療協議会により正式な疾患と認められ、2006年4月からニコチン依存症患者の病院での禁煙治療が健康保険制度の適用となった。これにより禁煙治療における患者負担額が大幅に軽減されることとなり、禁煙外来などが新設されるケースもある。[7]

喫煙者の本人の意思による禁煙努力

禁煙ニコチンガム、禁煙パイプ、電子たばこなどニコチン依存症向けの禁煙グッズが多く存在している。

電子たばこのカートリッジは、薬事法によりニコチンの含有は許されないし、商品の説明にニコチンを含まないことを明記しているが、ニコチンの含有が確認されている。[8]ニコチンを含まない電子たばこも販売されている。

生産者が故意に入れなければ存在しない依存性の強い薬物であるニコチンの含有製品について、微量でも、安易な使用や、興味本位の使用や、非喫煙者・未成年者の使用はニコチン依存症になる可能性がある[要出典]

疫学

使用人口に対する依存症になった人の割合[要ページ番号][9](1999年)
依存薬物 依存
タバコ 32%
ヘロイン 23%
コカイン 17%
アルコール 15%
抗不安剤(鎮痛剤や睡眠剤を含む) 9%
大麻 9%

喫煙者の約七割がニコチン依存症であり(約四割が無自覚)、その中の過半数が将来自身が肺癌になる可能性が高いことを自覚している。ニコチン依存症の多くが禁煙を希望し、実際に禁煙を試みてみたものの失敗して喫煙を継続している。[10][11] 依存性はコカイン並みで喫煙者の7割がニコチン依存症であるため、禁煙外来に訪れる前に本人だけの1回から2回の禁煙失敗経験を示す。[12]

近年、国内外の幾つかの研究グループによって、タバコ依存症に陥りやすくし、その結果、肺癌になりやすくする遺伝子の存在が明らかになっている。米国M.D.アンダーソンがんセンターによると両親共にタバコ依存症を招く遺伝子を持つ喫煙者はそうでない喫煙者と比べて80%も肺癌になる可能性が高いとの調査報告がある。

未成年者のニコチン依存症

未成年者喫煙禁止法によって未成年の喫煙および喫煙機会を与えることは禁止されており、学校教育で禁煙指導しているが、社会の喫煙に対する姿勢によって、防止ができていない。

2004年 中学生・高校生 喫煙率
毎日喫煙 % 中1 中2 中3 高1 高2 高3
0.4% 1.3% 2.2% 4.7% 8.2% 13%
0.2% 0.5% 1.2% 1.7% 3.3% 4.3%

喫煙の動機は「好奇心」や「何となく」が多く、たばこは自動販売機や小売店で容易に入手している。未成年の喫煙行動は友人、親、兄姉、教師などの喫煙と密接な関係がある。[13]

2010年10月横浜市の調査では中学生の1.5%が常習喫煙者であり、保護者の7割が容認していることを示す。 山田巧教育長は「低年齢での喫煙習慣は、重大な健康被害をもたらすのみならず、少年非行の入り口として健全育成の観点から大きな課題がある」「常習者対象の禁煙指導プログラムを策定し、保護者と共同で禁煙支援の取り組みを推進する」と述べた。[14]

喫煙開始年齢が低いほど依存を形成しやすい傾向がある[15]。また、喫煙開始年齢が低いほど健康に与える影響や後年の発癌率も高いことが知られており、未成年の喫煙防止が大変重要である。

未成年者が喫煙した場合、若ければ若いほどニコチン依存症に陥る可能性が高いばかりでなく、大人以上にタバコから受ける害悪が大きい。[16][17]

脚注

  1. ^ 一般用医薬品 禁煙補助剤 ニコチネル ミント
  2. ^ Robert S., Gable. “Acute Toxicity of Drugs Versus Regulatory Status”. In Jeffeson M. Fish. Drugs and society : U.S. public policy. Rowman & Littlefield. pp. 149-162. ISBN 0-7425-4245-9. http://books.google.co.jp/books?id=xpZhjBuDkuwC 
  3. ^ Relative Addictiveness of Drugs
  4. ^ “The Reinforcing Effects of Nicotine in Humans and Nonhuman Primates: A Review of Intravenous Self-Administration Evidence and Future Directions for Research”. Nicotine Tob. Res. 17 (11): 1297–310. (2015). doi:10.1093/ntr/ntv002. PMID 25673111. https://academic.oup.com/ntr/article/17/11/1297/1071512. 
  5. ^ “Nicotine self-administration research: the legacy of Steven R. Goldberg and implications for regulation, health policy, and research”. Psychopharmacology (Berl.) 233 (23-24): 3829–3848. (2016). doi:10.1007/s00213-016-4441-4. PMC 5588156. PMID 27766371. https://link.springer.com/article/10.1007/s00213-016-4441-4. 
  6. ^ WHOによる疾病の分類基準である国際疾病分類第10版(ICD-10)にも「F17.2 タバコ使用<喫煙>による精神および行動の障害 依存症候群」として分類されている
  7. ^ 禁煙治療のための標準手順書 日本循環器学会 禁煙推進委員会 2010年4月、日本循環器学会、日本肺癌学会、日本癌学会、日本呼吸器学会
  8. ^ 国民生活センター 電子たばこの安全性を考える調査結果発表2010年8月18日
  9. ^ Marijuana and Medicine: Assessing the Science Base (1999) Institute of Medicine(全米科学アカデミー医学研究所
  10. ^ 7割がニコチン依存症 喫煙実態調査で判明 共同通信社、2005年。
  11. ^ 喫煙者の4割、ニコチン依存症の自覚なし・ファイザー調べ 日経産業新聞、2008年5月16日
  12. ^ ダイヤモンド・オンライン 2010年12月13日(月) 監修 有岡宏子(国立国際医療研究センター病院第二総合診療科医長)
  13. ^ 未成年の喫煙 平成8,12,16年度 厚生労働省 最新タバコ情報 統計情報
  14. ^ 市立中生徒1・5%、毎日喫煙…親も7割容認 2010年12月9日 読売新聞
  15. ^ 平成10年度 喫煙と健康問題に関する実態調査 たばこ依存症判定
  16. ^ 宮城県/健康推進課/たばこ対策/未成年者とたばこ 宮城県健康推進課たばこ対策室、2008年3月27日。
  17. ^ 未成年に喫煙させない環境をつくりましょう : 神奈川県 神奈川県、2006年6月12日。

関連項目

外部リンク