「大学入試センター試験」の版間の差分

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全教科・全科目で設問の解答を[[マークシート]]に記入する方式となっており、記述式の設問はない。各科目ごとに決められている[[高等学校]]の[[学習指導要領]]に沿って出題される。すべての受験生を対象にしているため、[[教科書]]にある例題のような出題も多く、対策さえしていれば比較的容易に高得点がマークできる試験である。ただし、それゆえ多くの受験生が高得点になるため、少しのミスが後々の受験に大きな影響を与えることもあるので注意が必要である。
全教科・全科目で設問の解答を[[マークシート]]に記入する方式となっており、記述式の設問はない。各科目ごとに決められている[[高等学校]]の[[学習指導要領]]に沿って出題される。広範な受験生を対象にしているため、[[教科書]]にある例題のような出題も多く、対策さえしていれば比較的容易に高得点を取れる試験である。


[[1979年]]から[[1989年]]までの間、[[国公立大学]]の入学志望者を対象とした「大学共通一次試験」(共通一次)が実施されていた。これは、入学試験問題において奇問・難問の出題をなくしたり、歴史などの重箱の隅をつついたりするような設問をなくし、一定の学力基準を測るものとして導入されたものである。しかし、実際にはこういった設問を完全に排除することができず、[[1990年]]から、国立大学の共同利用機関である[[大学入試センター]]の実施する「大学入試センター試験」に変更し、[[私立大学]]も試験成績を利用できるようにするなど、試験自体を流動性のあるものに改めた。[[2006年]]には英語科のリスニング試験が、世界で初めてICプレイヤーを利用したリスニング試験として実施され、機械に関するトラブルも含めて話題となった。
[[1979年]]から[[1989年]]までの間、[[国公立大学]]の入学志望者を対象とした「大学共通一次試験」(共通一次)が実施されていた。これは、入学試験問題において奇問・難問の出題をなくしたり、歴史などの重箱の隅をつついたりするような設問をなくし、一定の学力基準を測るものとして導入されたものである。しかし、実際にはこういった設問を完全に排除することができず、[[1990年]]から、国立大学の共同利用機関である[[大学入試センター]]の実施する「大学入試センター試験」に変更し、[[私立大学]]も試験成績を利用できるようにするなど、試験自体を流動性のあるものに改めた。[[2006年]]には英語科のリスニング試験が、世界で初めてICプレイヤーを利用したリスニング試験として実施され、機械に関するトラブルも含めて話題となった。
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国公立大学においては(一部の推薦選抜などを除き)出願資格を「センター試験で本学が指定した教科・科目を受験した者」と規定している。生徒の学力低下の懸念から、ほとんどの国公立大学ではセンター試験で5 (6) 教科7科目の受験が必須である。[[文系]]では外国語、国語、数学2科目、地理歴史、公民、理科1科目が、[[理系]]では外国語、国語、数学2科目、地理歴史または公民、理科2科目が主流となっている。また私立大学の参加も年々増加している。私大の場合、センター試験の入学者選抜への利用方法は各大学が個別に設定している。
国公立大学においては(一部の推薦選抜などを除き)出願資格を「センター試験で本学が指定した教科・科目を受験した者」と規定している。生徒の学力低下の懸念から、ほとんどの国公立大学ではセンター試験で5 (6) 教科7科目の受験が必須である。[[文系]]では外国語、国語、数学2科目、地理歴史、公民、理科1科目が、[[理系]]では外国語、国語、数学2科目、地理歴史または公民、理科2科目が主流となっている。また私立大学の参加も年々増加している。私大の場合、センター試験の入学者選抜への利用方法は各大学が個別に設定している。


平均点はおおよそ6割程度になるように作成されているが、年度や科目によっては、想定以上のずれが生じることは避けられない。その場合は、翌年度の同一科目の難易度を、前年度に比べ逆にしてバランスを保とうとしているようである。つまり、ある年度の問題の難易度が低かった場合(平均点が高かった場合)、翌年度は難易度が上がり(平均点が下がり)、難易度が高かった場合(平均点が低かった場合)はその逆になる。このため、受けようとする科目の過去数年間にわたる平均点の推移を把握しておくことで、出題難易度をある程度は予測できるのである。
平均点はおおよそ6割程度になるように作成されているが、年度や科目によっては、想定以上のずれが生じることがある<!--その場合は、翌年度の同一科目の難易度を、前年度に比べ逆にしてバランスを保とうとしているようである。つまり、ある年度の問題の難易度が低かった場合(平均点が高かった場合)、翌年度は難易度が上がり(平均点が下がり)、難易度が高かった場合(平均点が低かった場合)はその逆になる。このため、受けようとする科目の過去数年間にわたる平均点の推移を把握しておくことで、出題難易度をある程度は予測できるのである。(何らかの出典に基づいた議論とすべきだと思います。)-->


試験会場は、様々な大学高校に設定されている。なお、試験1日目の前日の金曜日は「設営準備日」として試験会場の建物とその周辺が関係者以外立入禁止となる場所が多い。
試験会場は、様々な大学高校に設定されている。なお、試験1日目の前日の金曜日は「設営準備日」として試験会場の建物とその周辺が関係者以外立入禁止となる場所が多い。


試験が行われる1月中旬は[[冬|厳冬期]]に当たるため、[[雪]]により[[公共交通機関]]のダイヤに混乱が生じた場合には開始時刻を遅らせるなどの措置が取られることが多い。なお、センター試験が実施される2日間は全国的に大雪になったりぐずついたりすることが多く、「センター試験の日は雪の[[特異日]]」とも言われているが、首都圏では降雪が大々的に報道されているだけで、統計的には平年とさほど変わらないのが事実である。
試験が行われる1月中旬は[[冬|厳冬期]]に当たるため、[[雪]]により[[公共交通機関]]のダイヤに混乱が生じた場合には開始時刻を遅らせるなどの措置が取られることが多い。なお、センター試験が実施される2日間は全国的に大雪になったりぐずついたりすることが多く、「センター試験の日は雪の[[特異日]]」とも言われているが、首都圏では降雪が大々的に報道されているだけで、統計的には平年とさほど変わらないのが事実である。

2009年8月17日 (月) 14:59時点における版

大学入試センター試験(だいがくにゅうしセンターしけん、National Center Test for University Admissions)とは、独立行政法人大学入試センターによって例年1月13日より後の最初の土曜日・日曜日の2日間にわたって行われる日本の大学の共通入学試験である。国公立大学共通一次試験大学共通一次試験と改められ、さらに改称し現在に至る。

正式名称は大学入学者選抜大学入試センター試験であるが、一般にはセンター試験と呼ぶ場合が多く、大学入試センター自身もセンター試験と称しているため、本項では一般的な呼称である「大学入試センター試験」として記述する。また受験生の間では「センター」「セ試」で通じる場合が多い。また大学入試の願書等でDNCと記載されることもある。

概要

受験生に配布された問題冊子

全教科・全科目で設問の解答をマークシートに記入する方式となっており、記述式の設問はない。各科目ごとに決められている高等学校学習指導要領に沿って出題される。広範な受験生を対象にしているため、教科書にある例題のような出題も多く、対策さえしていれば比較的容易に高得点を取れる試験である。

1979年から1989年までの間、国公立大学の入学志望者を対象とした「大学共通一次試験」(共通一次)が実施されていた。これは、入学試験問題において奇問・難問の出題をなくしたり、歴史などの重箱の隅をつついたりするような設問をなくし、一定の学力基準を測るものとして導入されたものである。しかし、実際にはこういった設問を完全に排除することができず、1990年から、国立大学の共同利用機関である大学入試センターの実施する「大学入試センター試験」に変更し、私立大学も試験成績を利用できるようにするなど、試験自体を流動性のあるものに改めた。2006年には英語科のリスニング試験が、世界で初めてICプレイヤーを利用したリスニング試験として実施され、機械に関するトラブルも含めて話題となった。

国公立大学においては(一部の推薦選抜などを除き)出願資格を「センター試験で本学が指定した教科・科目を受験した者」と規定している。生徒の学力低下の懸念から、ほとんどの国公立大学ではセンター試験で5 (6) 教科7科目の受験が必須である。文系では外国語、国語、数学2科目、地理歴史、公民、理科1科目が、理系では外国語、国語、数学2科目、地理歴史または公民、理科2科目が主流となっている。また私立大学の参加も年々増加している。私大の場合、センター試験の入学者選抜への利用方法は各大学が個別に設定している。

平均点はおおよそ6割程度になるように作成されているが、年度や科目によっては、想定以上のずれが生じることがある。

試験会場は、様々な大学・高校に設定されている。なお、試験1日目の前日の金曜日は「設営準備日」として試験会場の建物とその周辺が関係者以外立入禁止となる場所が多い。

試験が行われる1月中旬は厳冬期に当たるため、により公共交通機関のダイヤに混乱が生じた場合には開始時刻を遅らせるなどの措置が取られることが多い。なお、センター試験が実施される2日間は全国的に大雪になったりぐずついたりすることが多く、「センター試験の日は雪の特異日」とも言われているが、首都圏では降雪が大々的に報道されているだけで、統計的には平年とさほど変わらないのが事実である。

この他に、共通一次試験の場合と同様、1994年1995年成人の日(当時は1月15日)に試験が実施されていた。

沿革

  • 1988年12月:試行テストを実施
    • センター試験を新たに利用する私立大学のうち、今回の試行テストに参加した大学・学部を受験する当時の高校3年生が受験者(モニター)となり、センター試験の受験予定者(当時の高校2年生)向けのものではなかった。
    • 私立大学の関係者が、どのように試験を実施するのかを確認することに加え、試行テストの成績と実際の入試結果との比較調査を行うためであった。ただし、合否判定の資料にならないよう、成績は翌年4月以降に各大学へ通知された。
    • 試行テストは2日間にわたって実施され、1日目は国語・社会・数学A・数学Bの3教科10科目、2日目は外国語・理科A・理科B・理科Cの2教科8科目がそれぞれ実施された。
  • 1990年大学共通一次試験を改称し「大学入試センター試験(第1回)」を実施
  • 1997年学習指導要領の改定に伴い、試験内容を一部改定
    • 外国語に「中国語」を導入
    • 「国語」を「国語I」「国語I・II」に分割
    • 社会グループを地理歴史グループと公民グループに分割
    • 新科目である「世界史A」「世界史B」「日本史A」「日本史B」「地理A」「地理B」をそれぞれ導入、「倫理、政治・経済」を「倫理」「政治・経済」に分割
    • 数学AグループとBグループを数学 (1) グループと (2) グループに改称
    • 新科目である「数学I」「数学I・数学A」をそれぞれ導入(数学 (1) グループ)
    • 「簿記会計I・II」を「簿記」に変更、新科目である「情報関係基礎」を導入(数学 (2) グループ)
    • 理科Aグループ・Bグループを、それぞれ理科 (1) グループ・ (2) グループに改称(Cグループは廃止)
    • 新科目である「総合理科」「物理IA」「物理IB」「生物IA」「生物IB」「化学IA」「化学IB」「地学IA」「地学IB」をそれぞれ導入
      (1997年度・1998年度は旧課程履修者のため、旧数学I・旧数学II・理科Iも平行して実施)
  • 1999年:旧数学I・旧数学II・理科Iを廃止
  • 2002年:外国語に「韓国語」を導入
  • 2004年短期大学の利用が開始、生物IA・生物IBを理科 (1) グループから理科 (3) グループに移行
  • 2006年:学習指導要領の改定に伴い、試験内容を一部改定
    • 外国語のうち、英語リスニング試験を正式導入(配点50点・試験時間30分)
    • 「国語I」「国語I・II」を「国語」に統合
    • 簿記」を「簿記・会計」に変更、「工業数理」を「工業数理基礎」に変更(数学 (2) グループ)
    • 「総合理科」を廃止し、「理科総合A」(物理・化学分野)「理科総合B」(生物・地学分野)に分割
      (2006年度に限り旧課程履修者のため、物理IA・化学IA・生物IA・地学IA・総合理科も平行して実施)
  • 2007年:物理IA・化学IA・生物IA・地学IA・総合理科を廃止

問題作成から試験実施までの流れ

センター試験は、大学入試センターの「教科科目第一委員会」に所属する、国公私立の大学教員などを中心とした約400人が問題を作成している。出題科目の作業部会と点字問題の作成部会の計24部会が設置されており、委員の任期は2年で、毎年約半数ずつ交代する仕組みとなっている。

出来上がった問題は、大学入試センターの「教科科目第二委員会」に所属している、第一委員会での委員経験のある、国公私立の大学教員や学識経験者などの約100人によって点検される。出題科目ごとに計21の点検部会が置かれており、ここでは構成や内容、解答、用字・用語などの点検が行われる。続いて、国公私立の大学教員や学識経験者などで構成される「教科科目第三委員会」で形式や表現、各科目間での整合性、重複などの点検が行われる。また、点検協力者として、難易度や出題範囲が学習指導要領から逸脱していないかを確認するため、少数ではあるが高校の教員も参加している。

点検が行われた問題は印刷に回され、24時間厳重に警備されている保管倉庫に一旦保管される。その後、試験数日前に全国約700の会場に送られて、当日まで厳重に保管される。ここまでの過程で、全体で数千人が関わってくる。なお、問題用紙の試験場までの輸送も特別な専用車を用いて、警備員常駐で輸送されている。また、大学入試センターは警察庁や各都道府県の警察に対して、試験問題の輸送時における警備協力の要請を行っている[1]

大学入試センターは、機密事項であることを理由に、問題冊子がどこで印刷されているかを公表していない。大学入試センターの関連文書では「印刷関係業者」とだけ記載されている。

問題自体は、本試験用・追試験用の2セットが毎年作成されるのに加え、問題の漏洩に備えた「緊急対応用試験問題」が準備されている[1]。実際に本試験として使われるものは直前に決定され、本試験で使われなかったものが追試験に回される。緊急対応用試験問題に関しては、毎年作成されるわけではなく、一度作成したものを修正・再印刷して保管されている。また、共通一次試験時代に模擬試験三大予備校など)と国語の出典が一致したことがあったため、問題作成者も模擬試験の検査をし、出典が重なっていた場合は問題を差し替えている。そのため、現在では模試と実際の試験問題の出典が一致することはなくなった。しかし、講習会などで使われている教材までは目が行き届かないようで、理科や地歴公民などで似たような問題が出されることが多々あり、その場合にはそれぞれの予備校のWebサイトで報告される。

実施日程

センター試験においても各大学が実施する入学試験と同様に、厳格に出願方法などが定められている。志願者は大学入試センターが配布している「受験案内」(無料)を参照しながら出願から受験までの段階を踏むこととなる。「受験案内」はセンター試験を利用する大学で配布されているほか、テレメールでも取り寄せることができる。なお、志願する時点で高校3年生の者(いわゆる卒業見込者 = 現役生)は志願票送付から受験票の受け取りまでを全て在学する高等学校に任せなければならない。ここが一般の大学入試とは大きく異なる点である。しかし、高校が生徒から預った志願票を大学入試センターに提出せず放置したために受験できなくなる例も見られるなど、高校を通して手続きを行うシステムには問題もある。大学入試という受験生の人生を左右するところであるから、高校が介入せず受験生本人が自ら出願手続きを行なえるように制度を改めるべきだとの意見もある。

本試験までの流れ

検定料の払込:9月上旬~10月中旬
期間内に受験案内に添付された払込書を利用して、郵便局銀行などの窓口で払い込む。このとき、払込書の裏面に記載されている指定金融機関で払い込むと、手数料が無料となる。受験の区分によって料金は2種類に分けられており、2科目以下の受験では12,000円、3科目以上の受験では18,000円となっている。成績開示希望の場合は別途手数料800円がかかる。
出願:10月上旬
志願票に必要事項を記入し、検定料払込の際に窓口で受け取る「検定料受付証明書」を貼り付けた上で、大学入試センターに送付する。ただし卒業見込者は学校単位で送付する。例年、生年月日の記入漏れや記入間違いが1,000件以上発生しており、自分の性別を間違えて志願票に記入してしまうケースも多く、大学入試センターは注意を促している。
登録内容の確認:10月下旬~11月上旬
大学入試センターより志願票内容を確認する「大学入試センター確認はがき(出願受理通知)」が志願者宛に届く。ただし卒業見込者は学校単位で届くので、個人宛に届くことはない。
受験票の送付:12月上旬~12月中旬
登録された内容を基に受験票が送付される。ただし卒業見込者は学校単位で届く。受験票には各大学別の試験に必要な成績請求票、成績開示変更届に加え、写真票が付属しており、受験日までに2枚の同一証明写真を貼り付けておく必要がある。写真票は試験当日に回収され、本人照合に使用される。
本試験受験:1月の第3土曜日・日曜日(1月13日以降の最初の土曜日及び翌日の日曜日)
受験票に示されている指定の受験会場で受験する。受験会場は出願期間が終了し、志願者が確定した段階で決定される。卒業見込者は在学している学校から近い会場、その他の受験者は志願票に書かれた住所から近い会場が選ばれ、志願者自身が変更することはできない。なお、志願者の地理的な分布や、受験会場の収容人数、トイレの個数など様々な条件が考慮されるため、必ずしも最も近い会場になるとは限らない。
  • 本受験終了後の流れ
本試験正解などの発表:1月の第3土曜日・日曜日(それぞれの日の試験終了後の夜から)
平均点などの中間発表:本試験終了から3日後(水曜日)
得点調整の有無の発表:本試験終了から5日後(金曜日)
追試験:本試験1週間後の土曜日・日曜日
本試験当日に病気や事故などの理由で受験できなかった受験生、もしくは本試験でトラブルに見舞われた受験生で、再試験を希望した受験生を対象にして実施される。本試験を受験できなかった受験生は「追試験」、本試験を受験したうえで、改めて受験する受験生は「再試験」として受験する。あらかじめ大学入試センターが「対象者」として認定した受験生のみ受験できるが、国公立大学の二次試験や私立大学の入学試験などとの兼ね合いから、受験を辞退する対象者もいる。なお、事前に大学入試センターが受験希望の有無を対象者に対して聴取するが、受験希望を申請していなくても、当日会場に行けば受験することができる。再試験は本試験と同じ受験会場で、追試験は東京都もしくは京阪神地方の会場で受験する。なお、追試験の方が本試験よりも難度が高いことが多い。再試験を受験した場合、本試験の結果は破棄される。なお、2006年度からは、追試験の問題が非公表になった(追試験受験者に配布された問題用紙も、試験終了時にすべて回収される)ため[2]、教育関係者などは国の「情報公開制度」を利用し問題を閲覧している。この制度を利用することにより、大手予備校などにおいては、冬季講習会においてその年の追試験問題を配布することがある。2007年6月以降、各出版社が出した2008年度受験用センター試験過去問題集のうち、青本白本では2006年度の追試験の問題が掲載された。一方、赤本黒本では掲載されなかった。さらに、2008年6月以降、各出版社が出した2009年度受験用センター試験過去問題集では、青本・白本・赤本・黒本の全てに、2006年度の追試験の問題が掲載された。一方、青本・白本・黒本に2007年度の追試験の問題が掲載されたが、赤本では掲載されなかった。
平均点などの最終発表:2月7日
成績通知表の送付:4月16日以降
2002年度から導入された「成績開示」によって行われる。出願時に成績開示を希望し、別途手数料800円を支払った受験者のみに対して行われており、すべての大学入試が完了した後で各科目の成績が印刷された用紙が書留郵便で郵送される。大学入試センターは4月下旬までに送付するとしている。国語は各分野別(近代以降の文章・古文・漢文)に、英語は筆記とリスニングが別になっている。なお、成績開示は取りやめることもできるが、手数料の返還はない。

試験形式

ほぼ全ての科目で、設問に対して与えられた選択肢の中から、受験者が正解と思うものの数字を選択し、それを解答用紙(マークシート)の指定された解答欄に鉛筆でマークする(塗りつぶす)、というものである。

外国語(英語リスニング試験を含む)・国語・地理歴史・公民の問題では、各問いに解答番号が「1」から連続して振られており、表示された番号と同じ解答番号の解答欄にマークする。理科や数学の一部も同様であるが、マークシートの解答欄は大問ごとに区切られ、解答番号も大問ごとに「1」から振られている。最初(第1問)から取り組む必要はないが、マークのズレを起こしやすいため注意が必要である。

数学における解答方式

数学(「工業数理」の一部および「簿記」「情報関係基礎」を除く)の解答方式は例外的で、一部の問いを除き、問題文中にある「ア」「イウ」といった枠で囲まれた文字に当てはまる数字や符号を直接マークする形式をとっている。誘導形式が多く、解けない問題があると、その先はできないことがある。また共通一次時代にあった、いわゆる「ダミー」は無いために、自分で出した数値と問題用紙の桁数が違うとその数値は誤答ということになる。決められた区域内の文字のマークが正解とすべて一致しないと得点にはならない。

  • 例1:第1問の問題文中でaの最小値は [アイウ]と書かれた部分に対し「-54」と答えたい場合、問題番号1の解答欄「ア」にある (-) をマークし、同様に解答欄「イ」の (5)、解答欄「ウ」の (4) をそれぞれマークする。
  • 例2:問題文中で f(a+3) = [エオカ] / [キ] と書かれた部分に対し と答えたい場合、解答欄「エ」の (-)、「オ」の (2)、「カ」の (a)、「キ」の (3) をマークする。
    なお、分数を含む形で解答する場合は、既約分数で答えなければならないことになっているので、上の例で と答えた場合、数学的に同じ値であっても不正解となる。また、正負の符号は必ず分子に付けることとなっている。
  • 例3:問題文中で OA = [ク] √[ケ] と書かれた部分に対し と答えたい場合、解答欄「ク」の (6)、解答欄「ケ」の (2) をマークする。
    なお、根号を含む形で解答する場合は、根号の中に現れる自然数が最小となる形で答えなければならないことになっているので、上の例で と答えた場合、数学的に同じ値であっても不正解となる。
  • 例4:問題文中でOD = [コサシ]と書かれた部分に対し「2BC」と答えたい場合、解答欄「コ」の (2)、解答欄「サ」の (B)、解答欄「シ」の (C) をマークする。なお、合同相似条件ベクトルのような頂点の対応関係や向きを考慮する必要がある場合を除いては、BCとしてもCBとしてもどちらでも正解になる。
    なお、このように図形上の点を答えさせる場合は、『ただし、[サシ] については、 (A) から (G) までの適切な記号を入れよ。』との記述があることが多い。
  • 例5:問題文中の [ス] に関して『ただし、[ス] については、当てはまるものを、次の (0)(4) から一つ選べ。』と指示があり、この部分に対し (2) を選びたい場合、解答欄「ス」の (2) をマークする。
  • 極めて技術的な解答方法として、解が小さい順から[アイウ][エ][オカ]とある時、[アイウ]は必ず負の解であり、[オカ]は二桁の解となる。このように実際の学力とは別に解答が導き出せるため、解答方法として果たして適切な方法であるかは疑問ともいわれている。

科目選択

地歴科の平均点の推移
公民科の平均点の推移

全科目は9グループに分類されており、この分類は同一日時に行われる科目の群と一致する。受験者は各グループからは1科目ずつ(すなわち、最大9科目)しか受験できない。出願する大学により指定された科目は受験する必要があるが、必要のない科目は受験しなくてもよい。出願時に受験する科目を指定しなければいけないが、これはあくまでも印刷部数のおおまかな数を把握するためであり、どの科目を受験するかは、試験当日に決定することができる。ただし、2教科以下の受験で出願している場合は、その教科数を超えて受験することはできない。また、試験時間中に急遽変更することもできるが、選択教科マーク欄のマークミスが発生しやすいため、注意が必要である。

なお、

  • 「外国語」グループにおける「英語」以外の科目(ドイツ語・フランス語・中国語・韓国語)
  • 「数学 (2)」グループにおける「工業数理基礎」「簿記・会計」「情報関係基礎」

の選択を希望する受験者は、出願時に「別冊子試験問題の配布希望」欄に配布を希望する教科を申請しなければならない。希望しなかった受験者には、試験当日に上記科目の問題冊子は配布されない。

センター試験では、高校での履修の有無などによる科目の受験制限はない。また、多くの大学では理科や地歴公民を必要数以上受験した場合、高得点のものを採用するため、とりあえず受験してみる、といった受験者もいる。 しかし、大学によっては、「選択解答できる者は、高等学校において履修した者に限る」といった受験制限をしている場合(「地理歴史のA科目」「工業数理基礎」「簿記・会計」「情報関係基礎」など)があるため、募集要項などで確認する必要がある。

なお、センター試験開始当初の学習指導要領における「現代社会」「理科I」(いずれも全学科で必修)は大半の大学が普通科・理数科に在籍していた人の選択を認めていなかった。

マークシートに受験した科目をマークしていなかったり、複数の科目にマークしたりした場合は理由を問わず0点となる。2007年度からは科目選択欄の横に「チェック欄」が付けられ、マークミスを防止する仕組みが整えられた。なお、「国語」と「英語(リスニング)」は1科目しかないため受験科目のマーク欄はない。また、「外国語」において別冊子の配布を希望しなかった場合は、受験科目のマークをしなかった場合であっても「英語」として採点される。

受験特別措置

疾病・負傷や身体障害等のため、解答方法、試験室、座席、所持品などについて、特別の措置を希望する受験生は、出願時に申請することができる。受験特別措置は申請に基づき審査され、受験可否とともに判断される。個別に「受験特別措置決定通知書」が送付される。

日常生活において使用している補聴器、松葉杖、車椅子等を持ち込む場合は、申請が必要である。

出願後の不慮の事故等で、受験特別措置を申請することもできる。ただし、申請する理由が出願後に発生した場合に限られる。志願者本人又は代理人が、受験票に記載の「問い合わせ大学」に、受験票と医師の診断書(形式任意)を持参、大学にある申請書に必要事項を記入し、申請する。出願時の申請と同様、大学入試センターで審査の上、特別措置が決定する。

特別措置の例

  • 試験時間の延長(1.3倍、1.5倍)
  • 試験室を1階に設定
  • 洋式トイレに近い試験室を設定
  • 座席を、前列、出入口近く、窓際に設定
  • 別室での受験
  • 点字または文字解答用紙の使用
  • 代筆解答、チェック解答
  • 拡大文字問題冊子の配布
  • 手話通訳者、介添者の配置
  • 照明器具、拡大器具の配置
  • リスニング時のヘッドホン貸与
  • リスニング試験の免除

特別措置を希望する場合

「早い時期に」下記の行動が必要、とされている。

  • 大学入試センター事業第1課またはホームページから受験案内(別冊)を入手する。
  • 志望大学との事前の相談(入学後の大学生活に配慮が必要か、など)。

個別の大学入試への影響

国公立・私立問わず、各大学入試・選抜試験における受験特別措置について、要項に「大学入試センター試験における身体障害者受験特別措置方法に準ずる」と記載する大学があり、大学入試センター試験の基準が、判断基準として採用されている場合がある。

得点調整

得点調整方法

センター試験の本試験において、同一グループの科目間で20点以上の平均点差が生じ、これが問題の難易差に基づくものと認められる場合には、「得点調整」と呼ばれる統計的処理が行われる。適用対象グループは、「地理歴史のB科目(3科目)」「公民」「理科のI科目(4科目)」の3つのみである。

センター試験終了約1週間後に行われる平均点中間発表の際に予告された上で実施される。対象となる受験者と対象とならない受験者間での公平性の観点から、平均点差のすべてを調整するのではなく、調整後も平均点差が15点となるように調整される。この15点の差は、通常起こりうる平均点の変動範囲である。

得点調整は各グループごとに「分位点差縮少法」という方式を使って行われる。分位点差縮少法とは、得点調整の対象となる科目のうち、最も平均点の高い科目と最も平均点の低い科目の得点の累積分布を比較し、図の縦軸の受験者数の累積割合 (%) が等しい点(等分位点)の差(分位点差)を一定の比率で縮小する方法である。また、平均点が最大と最小以外の科目についても、素点の平均点差が同一の比率で縮小されるように調整される。縮小の比率は、15点÷(最も平均点の高い科目の平均点 - 最も平均点の低い科目の平均点)と計算される。

しかし、実際に調整が行われることは極めてまれであり、センター試験の歴史の中でも数回しか行われていない。1998年度には上記のルールに従い、地理歴史において、日本史の得点を地理に近づける形で調整が行われた。また、共通一次時代の1989年度には、物理・生物があまりに低く化学が非常に高かったので調整が行われたが、これについては分位点差縮少法ではなかったため、0点でも50点近くにまで調整されたこともあり、批判が多く出された。ひどい例の場合、受験番号を記入して座っていただけで数十点獲得した受験生もいた。また89年度の場合、設定予告なしで行われたため、制度としても問題があるものだった。

国語の出題傾向

1990年度から2009年度までの評論の出題傾向として自然科学、芸術、人間の五感について多く出題されており、分野がある程度限定されているといえる。そのため、多くの受験生は過去問を繰り返し解くことによってある程度までは点数を上げることが出来る。教育者が作成する問題のためか、教育について主題とされる評論文は出題されていない。

古文は出題に適した文章は、ほとんど過去に出題されているため近い将来、過去問と重複する問題が出題される可能性が高い。

外国語の難易度と点数の扱い

外国語科の平均点の推移

センター試験では開始当初、共通一次試験と同じく英語ドイツ語フランス語の3ヶ国語のみ試験を行っていた。その後、1997年度からは中国語が、2002年度からは韓国語がそれぞれ導入されている。

英語以外の外国語は、外国系日本人や帰国生徒などのそれらの言語をいわば母国語または母語としていた人が多く受験しているため、英語に比べ押し並べて平均点が高い。特に韓国語と中国語の平均点は毎年、英語などと比べて数十点高い。これは朝鮮学校生徒や在日華僑などが受験生の中に多いためと推測される。事実、得点分布を見ると、ある集団だけが突出して高得点のところに集中している。外国語において得点調整が行われないことから、試験における公正さの観点でこれを疑問視する声が上がっており、得点調整を行うべきとの意見もある。一方で、平均点を英語など他科目に合わせようとするあまり「韓国語(中国語)を高校3年間だけ勉強した程度の学生が受ける問題にしては難しすぎる」という批判が高校教員の間で少なからず起こっている。

私立大学では学部を問わず、センター試験での英語以外の外国語の得点が認められる場合が多い。ただし、韓国語のみ認められない場合などもある。 国公立大学については、ドイツ語・フランス語は、学部を問わず認められることが多い。中国語も、比較的選択可能な大学は多い。

なお、外国語の試験で英語にリスニングが導入された結果、英語の総合得点(素点)が250点満点となるため、他の外国語の200点満点と50点の差が生じる。差分の調整方法は各大学によって異なる。以下にいくつかの例を示す。

  • 筆記とリスニングの合計250点満点を0.8倍して、200点満点に換算する方法
  • 筆記とリスニングの各得点を調整し、合計すると200点満点になるように換算する方法
    例:筆記200点満点を180点満点に換算、リスニング50点満点を20点満点に換算した後合算する。
  • 筆記のみ200点満点の点数と、筆記とリスニングの合計250点満点を0.8倍して200点満点に換算したものとを比較し、得点の高い方を英語の得点として採用する方法
  • リスニングの得点を考慮せず、筆記の得点のみ参考とする方法
  • 差分を調整せず、そのまま250点満点とする方法

入試における利用

大学により、最終判定におけるセンター試験の利用法は異なるが、大きくいくつかの系統にまとめることができる。

センター試験単独判定型
センター試験の結果のみで合否を判定するタイプ。私立大学で一般入試(大学独自の問題による入試)と並行して行われる場合が多い。国立大学の後期試験でも、センター試験だけで合否を決めている例もある。
センター試験 + 二次試験型
センター試験の結果と二次試験(大学によっては、小論文・面接等も課される)の結果を合計して合否を判定するタイプ。ほとんどの国公立大学はこれに当てはまる。センター試験の点数による第一段階選抜(いわゆる「足切り」)が行われる場合がある。
センター試験(傾斜配点)+ 二次試験型
センター試験のうち、一部の科目のみを点数として採用して、かつ各教科の本来の点を75%~25%程度に圧縮し、そこに二次試験の結果を合計して合否を判定する。京都大学筑波大学などが好んで採用している。
センター試験独立利用型
センター試験の結果を第一段階選抜にのみ利用し、最終的な合否の判定は二次試験の結果のみで行うタイプ(京都大学理学部など)。

大学入試に関する詳しい情報については、大学受験を参照のこと。

試験結果

受験生は各大学に出願する前に自身のセンター試験での成績を知ることができない。そのため、解答時に問題用紙に自身の解答をメモしておき、後日、新聞などで発表される正解・配点と照合して自身の成績を推定する、いわゆる「自己採点」を行う。解答に「△(部分点)」はなく「○(正解)」か「×(誤答)」しかないので、これが唯一の情報源になるのだが、自分の解答を正確に控えておかなかったり、マークミスなどを犯していると、自己採点の点数と実際の得点が違うということが起こり、受験校を決める上で致命的なミスにつながることもある。

なお、現在では、採点結果を大手予備校に送ることにより、ある大学の志望者の中における成績の位置を知ることのできるシステムも整備されている。予備校は試験終了翌日の夜までに全国の高校・予備校・書店から申込者の自己採点結果を回収し、コンピュータシステムを使いデータを分析する。そして、試験終了から4日後には申込者に分析結果を配布するのである。予備校では、このデータ分析に加えて各高校などに配布する成績資料も同時に作成しなければいけないため、この時期は繁忙を極めている。なお、受験者の多くは複数の予備校に自己採点の結果を送るため、予備校ごとに順位や合格判定の結果に大きな差が出ることはあまりない。代表的なものでは、代々木ゼミナールセンターリサーチ河合塾センター・リサーチバンザイシステム)、駿台予備学校ベネッセコーポレーションデータネットなどが挙げられる。

センター試験と「マークミス」

2006年5月25日、大学入試センターは1984年度以降23年間、解答用紙のマークシートに受験番号などをマークし忘れた受験生の答案でも0点にせずに、受験者を割り出して採点していた事実を明らかにした。

受験番号のマーク漏れなどがあると、電算処理でエラーが出て採点できない。センター試験の解答用紙は、模擬試験などでよく用いられる冊子型にはなっておらず、試験ごとに解答用紙が配布される仕組みになっている。そのためセンターでは、解答用紙に割り振られたコードや番号から受験者を割り出すことができないため、解答用紙に記入された名前や、座席順などから受験生を割り出し、手作業で受験番号を入力してきた。受験番号のマークミスなどがあった際の措置について、センターの公式サイトでは「個人が特定できた場合に限り、採点します」と説明していたが、実際には全員を救済してきた。一方、受験案内では「受験番号が正しくマークされていない場合は、採点できないことがあります」とだけ記している。

共通一次試験は受験番号の記入ミスを、1979年度から5年間は採点せず一律0点としていた。しかし、「一発勝負の重要な試験であまりに酷だ」との声が上がり、センター内に委員会を設けて検討した結果、救済することを決めたのである。センターでは「高校3年間の学習到達度を測るという趣旨も考慮し、解答とは異なる部分のミスに限定して教育的配慮をした」と説明している。

この救済措置について当時、文部科学大臣を務めていた小坂憲次は、「何年も受験のためにがんばってきた努力を、たった1つのマークミスですべてを失わせるのは、受験者の大半が現役生であることを考えるとあまりにも酷過ぎる」と、センターの対応に理解を示した。一方で文科省は「大学受験生を大人とみて自己責任を負わせるべきなのか、それとも子どもと見て手を差しのべるべきなのか、判断が難しい」とコメントしている。

なお、2007年以降の試験については救済について明示されるようになった。受験科目が複数ある教科(外国語を除く)については、採点者が受験者の回答科目を半ば推測的に判断することになるため、受験科目欄の塗り忘れを救済していない。ただし外国語は、別冊子配付希望を出していない受験生に限り「英語」とみなして採点を行う。同様の理由で、大問ごとに解答欄が設けてある科目(数学など)の解答欄を間違えた場合など、答案に直接関係のある部分のマークミスについては、実際にマークされた内容のまま採点が行われる。一方、答案に直接関係しない「試験会場コード」「受験番号」のマーク漏れ・マークミスは、個人が特定できた場合に限り救済が行われる。[3]

とはいえ受験場では受験科目欄のマークミスがないように何度も注意を喚起するように試験官用マニュアル(試験官が当日会場で受験生に注意事項などを伝達する台詞を書いた台本のようなもの)に記載されており、事実それに従って何度もの注意喚起がなされているのも事実である。

英語(リスニング)について

受験生ひとりに一台ずつ配られたICプレーヤー
あらかじめイヤホンが差し込まれた状態で配布されたICプレーヤー(開封前の様子)

導入までの経緯とその後

2006年度から「外国語」で英語を選択した受験生には、「英語(リスニング)」の受験が必要となった。これは、「高校生は読み書きだけでなく、実用的な英語を身につけてほしい」という大学側の要望がある。当初は各会場のスピーカーで音声を流す案も検討されたが、設備面の問題や条件を均質にする配慮から、メモリーに録音された音声を再生するICプレーヤーによる「個別音源方式」に決まった。ICプレーヤーによるリスニング試験は世界初である。ただし、特殊なスピーカーを使用すれば、各試験会場の条件を均質化することができる、との意見もある。

当初、大学入試センターは、ICプレーヤーについて、「メーカーが出荷前に1台ごとに振動検査を行い、電池も新品を入れているため、途中で動かなくなる事態は考えられない」「プレーヤーは腰の高さから落として動作を確認しており、故障はまずない」と自信満々な姿勢を示していた。しかし、教育関係者などは、英語がセンター試験で受験者数がかなり多いことから、50万台以上の機械を使う試験で、1台も故障せず、1人の受験生も操作ミスをしないということが、果たしてあるだろうかとの疑問を呈していた。

2004年9月26日には、リスニング試験の「試行テスト」がセンター試験を利用する大学を会場として行われた(全国503大学・508会場)。受験対象となったのは、2006年に現役受験生となった当時の高校2年生で、希望者の中から抽選された約4万人が受験した。試行テストは、本番で試験を円滑に行うため、大学側に実施の手順に慣れてもらうことや、ICプレーヤーの性能確認(聞こえや作動具合、ヘッドホンイヤホンの違い)などが主な目的であった。なお、試行テストの試験結果は受験者には通知されなかった。この試行テストでは、ICプレーヤーによる大きなトラブルは発生せず、「個別音源方式で円滑な試験実施は可能」と大学入試センターは判断した。

しかし、教育関係者の個別音源方式に対する不安は現実のものとなり、2006年度のリスニング試験では、東京など20都府県の試験会場で、ICプレーヤーの故障などが発生したとされて、再テストが行われるというトラブルが相次いで発生した。約1100人の内1人にトラブルがあったとされ、三大予備校が実施したリスニング試験の模擬試験に比べるとトラブルの発生率が高かった。リスニング試験が実施された1月21日の夜には、大学入試センターの記者会見が開かれたものの、反省の弁だけであってセンター側からの謝罪はなく、当時の事業部長は、「トラブルの申告をしたすべての受験生に対して、再テストを受験させることに決めていた」「性善説に立っている」と発言した。しかし、その後当時の文部科学大臣が陳謝する事態にまで発展してしまった。主なトラブルとしては、電源を入れても音声が聞こえない、試験途中で音声が聞こえなくなる、操作をしていないのに音量が変化する、などがあげられる。トラブルの多くは操作方法のミスや勘違いであるため事前に大学入試センターのWebサイトで操作を確認できるようにしている。

2007年度は、前年度のトラブルを反省し、イヤホンを最初から装着するなどの対策を行ったが、227大学で少なくとも351人から「音声が聞き取りにくい」などとICプレーヤーの不具合があり、少なくとも381人が再テストを行った。

2008年度も2006年、2007年と同様の形式で実施された。2007年度より人数は減ったものの相変わらずICプレーヤーの不具合を訴える受験生がおり、175人が再試験となった。2009年度には再び増加して253人が再試験対象となり、うち249人が再試験を受けた。

実施形式

80分の筆記試験後に行われ、解答時間30分・配点は50点となっている。ICプレーヤーは再生機能しかなく、巻き戻しや一時停止などはできない仕組みとなっている。

問題開始前や、各大問(第1問など)の合間には「~ページを開いてください」という音声が流れるが、これはあくまでも試験者に対して、問題が始まる旨を知らせるだけであって、必ずしも従う必要はない。また、次のページに問題が移る場合でも、同じ大問であれば「~ページを開いてください」という音声は流れないため、注意が必要である。問題音声が終了した後に、解答をマークシートにまとめて転記する時間は用意されていない。各設問ごとにマークする必要がある。ただし、問題音声が終了しても、試験監督者から解答をやめるよう指示があるまで、マークシートへのマークやマークの確認を行うことができる。各試験会場では、この問題音声終了から解答終了までの時間が一律に決められていないため、今後のマニュアル化が望まれている。

なお、約2,000円相当のICプレーヤーは、試験終了後希望する者は持ち帰ることができる。また、受験生が持ち帰らなかったICプレーヤーは、試験会場の大学で保管されているほか、希望する高校などに配布されて再利用されている。

ICプレーヤー特需

2005年の日本国内でのデジタルオーディオプレーヤーの市場は約250万台となっている。この数字に対して、センター試験では約50万台ものICプレーヤーが使用されているほか、予備校や模擬試験などで使用されるものも含めると、相当な数の市場となることが見込まれている。代々木ゼミナールでは、松下電器産業(現・パナソニック)と模擬試験で使用するICプレーヤーのリース契約を結んでおり、30万台のICプレーヤーを調達した。使用後のICプレーヤーをクリーニングする費用も含め、3年間で20億円に及ぶ。また、駿台予備学校河合塾進研ゼミでは、ICプレーヤーの調達費用の負担を軽減させるため、3者共同でソニーからICプレーヤーを調達した。この需要により、ICプレーヤーを製造しているパナソニックとソニーは特需に沸いたという。今後も受験産業での需要が見込めることから、大きな市場に成長することが予想されている。

なお、ICプレーヤーに使われているICカードはパナソニックとソニーでそれぞれSDカードメモリースティックが採用されている。

再テストと救済措置

個別音源方式でトラブルが発生した場合、試験監督者は機械の不具合なのか、それとも試験者の虚偽申告なのかを判断することができない。そのため、大学入試センターはすべての受験者からの申告を信用し、例外なく再テストが受験できるようにしている。

再テストでは、音声が中断してから以降の設問のみを答えられる、と決められている。しかし、試験終了後にプレーヤーの不具合を申し出ても、再テストを受けることはできない。また、大学入試センターは、テスト中に大きな音が発生しても、監督者からの指示がない限り、そのまま回答を続けるよう説明している。加えて、くしゃみなどの、周囲の受験者が発する音によってテストに影響が出たとしても、イヤホンで試験が実施されていること、音声は2回繰り返して再生されること、音量はテスト中に自由に調節できることなどを理由に、救済措置は行わない姿勢を示している。

ICプレーヤー

2006年度
停止後に再度再生をするためには、電池の抜き差しなどの「リセット」が必要であった。電池の残量が不足していても、一時的に作動した。本体の塗装は、前面・後面ともに白色だった。基板は2枚使用されていた。
2007年度
問題音声の再生が終了してから5分が経過すれば、電池の抜き差しをしなくとも再度電源を入れ、再生することが可能になった。本体の塗装は、前面が白色・後面が緑色だった。全てのボタン操作に2秒程度の長押しを必要とするようになったため、その注意を促すために、本体には「光るまで長く押す」との表示がなされた。電池の残量が不足している場合、ランプが点滅し作動できないようになった。配布の際、ホコリの付着を防ぐために音声メモリーが個別に包装されていた。イヤホンプラグも金メッキされ、既に本体に接続された状態で配布された。使用されている基板は1枚で、前年度よりもサイズが小さくなった。
2008年度
2007年度の音声メモリーを再生することが可能である。ただし、2008年度の音声メモリーを2007年度のICプレイヤーに差し込んでも、ランプが点滅し再生することはできない。本体の塗装は、前面が白色・後面が青色だった。電池蓋に凹みが設けられ、取り外しが簡単に出来るようになった。
2009年度
本体の塗装は、前面が白色・後面が黄色だった。以外は2008年度と同様。
各年度共通
試験で使用されたメモリーは読み取り専用で、新たに情報を書き込むことはできない。また、メモリーの中に入っている試験用の音声も、試験用のICプレーヤーでしか再生できないような仕組みとなっている。これは、試験音声の改竄を防ぐためであると考えられる。メモリーにはQRコードではなくData Matrixコードという二次元コードが付けられている。本体裏側に差し込んである絶縁シートを引き抜くと、電流が流れる仕組みである。スイッチを切ってある状態でも電流は流れる。
製造メーカー
大学入試センターは、機密事項であることや情報の漏洩を防ぐことを理由に、ICプレイヤーがどこのメーカーのものであるかを公表していない[4]。大学入試センターの関連文書では「製造関係業者」とだけ記載されている。しかし、2006年度から2009年度までは音声メモリーがメモリースティックであること(2010年度はSDカードに変更)、ソニー製の電池が使われていること、中の基板がミツミ電機製であることなどから、ソニーが大学入試センターと契約を結び、ミツミ電機に製造を委託しているのではないかと考えられている。

機械使い捨てに対する賛否

地球環境や資源保護の観点から、ICプレイヤーを使い捨てにしていることを問題視する専門家もいる。しかし、ICプレイヤーを繰り返し使用する場合と、使い捨てにする場合とではコストの面で大きな違いが出てくる。業者への輸送経費や、電池交換・動作確認・清掃などを考えても、直接受験料として受験生の負担になるコスト増は避けたいとの大学入試センターの意向が見られる。なお、韓国大学修学能力試験では、以前は問題をFM放送を使って各試験会場に送信し、それぞれの校内放送で一斉に聞かせるという形式をとっていた。しかし、受信などでトラブルが発生したため、現在では問題が録音されているカセットテープを校内放送を使って一斉に聞かせる形式に切り替わっている。音量や音質についてのトラブルで、一部の会場で一時停止が行われるが、日本のような大規模なトラブルは発生していない。また、アメリカ大学進学適性試験では、ポータブルCDプレーヤーを受験者個人で用意させ、問題CDを聞かせるという形式をとっている。以前はカセットプレーヤーを持参させた。

聴覚障害者への対応

重度な難聴である受験者は、医師診断書や学校での学習状況報告書などの必要書類を大学入試センターに申請し、センターの専門委員会(医師も参加)で審査を受けたうえで認められると、リスニング試験の免除を受けられる。また、聴覚に障害がある受験者は、「ヘッドホンでの受験(持参・貸与)」「補聴器を外しイヤホンでの受験」「補聴器のコネクタにコードを接続しての受験」などの特別措置を受けることができる。加えて、イヤホンが耳に合わない受験者は、医師の診断書を添えて志願すると、小型イヤホンの使用やスピーカーによる受験などの特別措置を受けられる。

なお、リスニング試験の受験を免除された受験生については、志望大学に通知される成績票で「リスニングを免除した」旨が記載される。この場合、点数の取り扱いについては各大学の募集要項に記載されている。

日程・出題科目

2009年度の実施日程と出題科目は以下の通り。全6教科33科目。志望する大学の学部(または学科)が指定した科目を選択して受験する。ただし、例外として外国語では、「英語(筆記)」を受験する場合、志望する大学の学部・学科が「英語(リスニング)」を指定していなくても、リスニング試験を受験しなくてはならない。また、国語において、志望する大学の学部・学科が指定する特定の分野のみ解答する場合でも、試験時間は変わらない。

第1日

2009年1月17日本試験実施

  • 公民: 各100点満点、試験時間60分
  • 地理歴史: 各100点満点、試験時間60分
  • 国語: 200点満点(近代以降の文章100点、古文50点、漢文50点)、試験時間80分
    • 国語
  • 外国語(筆記): 各200点満点、試験時間80分
  • 外国語(リスニング): 50点満点、試験時間60分(機器等説明時間30分、問題解答時間30分)
    • 英語
      外国語(筆記)で「英語」を選択する受験生は必ず受験しなくてはならない。ただし、重度の難聴者については免除される。また、「英語」以外の外国語を選択した者は受験できない。

第2日

2009年1月18日本試験実施

  • 理科 (1): 各100点満点、試験時間60分
  • 数学 (1): 各100点満点、試験時間60分
    • 数学I
    • 数学I・数学A
  • 数学 (2): 各100点満点、試験時間60分
    • 数学II
    • 数学II・数学B
      数学Bについては、数列ベクトル統計とコンピュータ、数値計算とコンピュータから2題を選択して解答する。
    • 工業数理基礎
    • 簿記会計
    会計については、会計の基礎、貸借対照表損益計算書財務諸表の活用、の4項目のうち、会計の基礎が出題される。
    • 情報関係基礎
      職業教育が主となっている農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉の8教科に設定されている情報に関する基礎的科目が出題される(農業科:「農業情報処理」、工業科:「情報技術基礎」、商業科:「情報処理」、水産科:「水産情報技術」、家庭科:「家庭情報処理」、看護科:「看護情報処理」、情報科:「情報産業と社会」、福祉科:「福祉情報処理」)。
  • 理科 (2): 各100点満点、試験時間60分
  • 理科 (3): 各100点満点、試験時間60分

追試験

  • 1998年度 1998年1月24日・25日に実施
  • 1999年度 1999年1月21日・22日に実施
  • 2000年度 2000年1月22日・23日に実施
  • 2001年度 2001年1月27日・28日に実施(受験対象者:258名)
  • 2002年度 2002年1月26日・27日に東京水産大学(受験対象者:138名)と大阪大学(91名)で実施
  • 2003年度 2003年1月25日・26日に東京商船大学(受験対象者:266名)と神戸大学(139名)で実施
  • 2004年度 2004年1月24日・25日に東京芸術大学(受験対象者:253名)、京都大学(119名)、お茶の水女子大学点字試験場1名)で実施
    • 雪害のため、北見工業大学で第1日目実施分のみ4名が再試験の対象となった。
  • 2005年度 2005年1月22日・23日に東京海洋大学(受験対象者:101名)と大阪大学(76名)で実施
  • 2006年度 2006年1月28日・29日に東京芸術大学(受験対象者:144名)と神戸大学(受験対象者:30名)で実施
    • 2会場計174名(追試験165名、再試験9名)が受験
    • 正規の試験時間が確保されなかったため、山陽学園大学で6名が国語のみ再試験の対象となった。
    • 停電のため福岡国際大学で1名が英語(リスニング)のみ再試験の対象となった。
    • ICプレーヤーの不具合等で6大学で9人が英語(リスニング)のみ再試験の対象となった。
  • 2007年度 2007年1月27日・28日に東京海洋大学(受験対象者:69名)と京都教育大学(46名)で実施
    • 正規の試験時間が確保されなかったため、滋賀大学で1名が英語(リスニング)のみ再試験の対象となった。
  • 2008年度 2008年1月26日・27日に東京芸術大学と大阪大学で実施
    • 自動消灯システムによる停電のため成蹊大学で72名が英語(リスニング)のみ再試験の対象となった。
    • 試験開始前に氏名や受験番号などを記入するよう指示していなかった徳島大学で1名が公民のみ再試験の対象となった。
    • 英語(リスニング)の再試験者は計102人となり、前年の16人を大きく上回った。
    • 本試験当日に病気や事故などの理由で受験できなかった161人が追試験の対象となった。

過去の問題とトラブル

試験自体に関するもの

  • 1997年度から、それまで「国語I・II」のみであった国語が、「国語I」と「国語I・II」の2科目に分割された。2科目は同一冊子の中で「国語I」「国語I・II」の順に印刷されていたが、両科目とも問題構成が同じだったため、本来「国語I・II」を解答すべきであった受験生が、違いに気づかずに「国語I」のみを解答してしまうといった事態が初年度に続出した。これ以降も同様の事態が度々起きているが、予備校などが実施する模擬試験ではこれに合わせて問題冊子を編集している。大多数の大学では、入試科目として「国語I・II」のみしか認めていなかったため、「国語I・II」のつもりで「国語I」を解答してしまった受験生は大幅に得点を失うこととなったが、これに関する救済措置は一切なされなかった。なお、「国語I」は2005年度を最後に廃止され、2006年度からは再び「国語」1科目に戻っている。
  • 国語と同様に、地理歴史や数学もともに複数の科目が同一冊子に編集されており、さらに途中まで問題が似ているために、解答科目を間違えてしまうといった事態が、近年でも数は少ないものの起きている。
  • 2000年度、センター試験本試験「英語 I・II」第 5 問でコンピューターゲームに関する英文が出題されたが、このゲームが「常軌を逸したクソゲー」であるという批判も出されている。これは半ばジョークの領域であるが、やはり上述の虫歯治療や天気図に関する英文と同様、専門家(この場合はゲーマー)による専門的立場からの批判の一環であろう。
    この問題文中で登場し、ゲームの攻略法について熱く語る Pat は後に 2003年度の問題にも登場し、ピクニックに行った際に、リュックサックにしまった虫よけスプレーの場所を友人に完全に間違って教えるなど、その滅茶苦茶なキャラクター性から2ちゃんねるなどで話題となった。また、2007年にはリスニングに登場したが、Patは女性になり、話す場面もなかった。
  • 2005年度、電子掲示板2ちゃんねる)に英語と国語の出題内容を示唆する書き込みがなされ、文部科学省は大学入試センターに対して内容流出の有無を含めた調査を要請したが、結局、書き込み自体は流出ではなく単なる偶然として処理された[5]
  • 2007年度、20日に実施された本試験の科目のうち、公民と地理歴史の模範解答が産経新聞電子版に、発表解禁前に約30分に渡って掲載された。
  • 2007年12月14日、大学入試センターは、2008年度のセンター試験で問題作成を担当している委員が、所有していたパソコンUSBメモリを盗まれたため、一部の問題を差し替えることを発表して謝罪した。試験実施の約1か月前という時期に、急きょ1教科分の冊子を丸ごと刷り直したのは、センター試験が始まって以来初めて。問題作成に当たった「教科科目第一委員会」に所属する大学教員が11月下旬、問題の検討過程で作成した資料を入れた私物のパソコンとUSBメモリをセンター外に持ち出し、盗まれた。試験問題に関する資料をセンター外へ持ち出さないよう、問題作成委員には周知徹底されているが、盗まれた委員は「自宅でよりよい問題を作りたかった」と話しているという。資料は1年以上前のものだったが、センターによると、実際の試験問題を推測される可能性があるという。パスワードがかけられており、現時点では資料の流出は確認されていない。試験自体は予定通り実施された。センターは「該当人物の特定や受験生の混乱を避けるため、差し替えられた問題や盗難の状況などは試験実施後まで公表しない」としている。報告を受けた文部科学省は、センターに対して再発防止を徹底するよう厳重注意した。
  • 毎年「試験が遅れて始まったのに定刻通りに終了した」「試験官のミスで定刻より若干早めに終了した」といった、試験時間の確保不足に関するトラブルが相次いでおり、近年でも数は少ないものの同様のトラブルが起きている。

試験内容に関するもの

  • 1997年度から実施された学習指導要領の改定に伴い、数学では旧課程履修者(浪人生)のために「旧数学I、旧数学II」、新課程履修者(現役生)のために「数学I・A、数学II・B」の2種類の試験科目が設けられた。
    現役生は新課程のみ選択可能であった。浪人生は旧課程・新課程のどちらかを選択可能であったが、履修範囲外の問題が出る新課程を選択する者は少なく、殆どは旧課程を選択した。
    しかし大学入試センターが公表した平均点は、数学I・Aは66.4点、旧数学Iは59.8点と約7点差、数学II・Bは63.9点、旧数学IIは42.2点と約22点差で、いずれも旧課程科目の方が平均点が低かった。通常は浪人生の方が同じテストでも10点近く平均点が高いことを考慮すると、実質的には数学Iで17点、数学IIでは32点と合計約50点もの差が生じていることとなり、学力の比較としての用を全く成さないほどの難易度の差があったことが判明した。
    その結果全国の浪人生や予備校などから抗議の声が上がったが、大学入試センターは「今後は難易度に差が生じないように配慮する」というコメントを発表しただけで、謝罪や具体的な対応は無く、却って試験同士の難易度の事前調整という基本的な事すら行っていなかったことを露呈する結果となった。文部省より二段階選抜の取りやめが行われたが二浪が多く生じた。このことは当時「浪人生の悲劇」と言われていた。
  • 1998年度の本試験「英語」第5問で虫歯治療に関する英文が出題されたが、その内容が現在の歯科技術に全く反するものであるとして、全国保険医団体連合会歯科協議会会長が大学入試センターに意見書を提出した。
  • 2001年度の本試験「英語」第6問の小説文が、三友社出版発行の高等学校英語教科書掲載の文章と出典が同じで、ストーリーも酷似していたことが指摘された[6]。ただし、この教科書がシェア0.25%(採択部数:4,000部)と少なかった上、当時は現在ほど入試倫理に関して各所がうるさくなかったためか、さほど大きな問題とはならなかった。
  • 2004年、東北大学教授の森田康夫が、センター試験の数学の問題は「計算力」で解けてしまうため「数学力」の判定にはならないという批判を朝日新聞に寄稿した。同教授の調査によれば、東北大学が独自に行う二次試験の数学の成績とセンター数学の成績に特に強い相関関係は見られなかったという。
  • 2004年度の本試験「世界史」において、「強制連行」などを確定的事実として扱っており、公正であるべきセンター試験がイデオロギー的に偏向しているという批判が「新しい歴史教科書をつくる会」によってなされ、同年7月には当時の受験生が原告となって大学入試センターを提訴するに至った[7]。さらに、藤岡信勝は過去のセンター試験の日本史・世界史の問題25年分を検証し、類似の問題点を含む出題が多数あることを指摘している。この影響もあってか、センター試験の出題者氏名公表の動きが強まった。なお、訴訟は2005年10月25日に原告請求を棄却する旨の判決が確定している。

2005年度の本試験

  • 「英語」第5問の天気図を素材とした問題で、気象学的にはあり得ない寒冷前線図が素材となっていると、気象予報士森田正光らが疑義を呈している[8]
    これは、前述の虫歯医療の英文と類似の問題点である。センター試験は、ほぼすべての大学受験生が共通に受験する試験という性格から、英語などの読解問題では、特定分野の知識を要求せず、一般常識と語学力のみで解答可能な作問を行う方針が望まれる。しかし、問題作成者(英語の場合は英語教員)が特定分野に素材を取った場合、その分野自体に関しては不案内であるため、常識から見ればさほど問題はなくても、専門分野の人から見ると問題点が見つかるといったケースが生じやすい。こうした背景には、語学教育における、実生活に近い教材を使おうとする方針もある。
  • 「国語I」第1問(現代文評論)で、大岡信抽象絵画への招待』が出典に用いられたが、この文章は高等学校国語教科書第一学習社『高等学校 現代文2』)に所収されていたほか、過年度にも様々な大学入試や模擬試験で既に使用された文章であった。大学入試センターは、問題作成時点でのチェックミスと発表、異例の記者会見を開き謝罪したが、チェック自体がきわめて杜撰なものであったことが後日指摘され、社会的非難を受けた。この件に関しても、大学入試センターは得点調整・再試験などの措置は一切講じていない。
  • 「国語I・II」第3問(古文)問4に関して、河合塾は「正解をひとつにしぼるのは困難」と指摘し、大学入試センターに対して公開質問状を提出した。問題は『日光山縁起』の一節で、5つの選択肢のうち正しいものを1つ選ぶものだが、選択肢(5)「不孝をわびたい」という心情を本文から読み取ることは困難であり、また選択肢(2)にあるとの対話とも読み取れるとしている。
    この問題の背景としては、近年のセンター試験古文は、高校の学習範囲ではない江戸近代などの文章(平安文法を逸脱しているもの)が多く、また、物語になると、表面からはとても読み取れないような深いことを聞いており、センター試験レベルの出題ではない、といった点が挙げられる[9]

2006年度の本試験

  • 「政治・経済」において、実教出版発行の教科書の日本と他国のGDP比較のグラフと類似のものが出たが、教科書に誤りがあったため間違えた受験生が発生した。しかし、救済措置は取られなかった。

2007年度の本試験

  • 世界史B」小問32に関して河合塾は、「フランスでは、普仏戦争プロイセン = フランス戦争)の敗北第三共和政が成立した」という文を正文として扱う問題があったのに対し、東京書籍『新選世界史B』(採択率:8.2%)と三省堂『世界史B』(同3.9%)では、第三共和政の開始を普仏戦争1870年として扱っており、学説的にも異同が見られることから、不適切な設問ではないかとする質問状を大学入試センターに送付した。これについて大学入試センターは21日、第三共和政が成立した時期については様々な説があるが、一般的には普仏戦争に成立したと考えられているとして、明らかな出題ミスではないと回答した。だが河合塾は同日、該当の教科書で履修した生徒に対して問題が不利益になったこと、普仏戦争の敗北と第三共和制成立の定義について再考してもらいたいとして、質問状を送付している。
  • 河合塾は、「化学I」第4問問4(加水分解後の物質より元のエステルの構造式を問う問題)についても、ギ酸フェーリング反応をせず、問題文中の記述「b 得られたカルボン酸は、フェーリング液を還元した」を正確に考えると正解がなく、深く学習をした受験生にとって不利益になったとして質問状を送付している。これに対して大学入試センターは26日、ギ酸とフェーリング液との反応については、通常のアルデヒドと同様に反応性を示すという文献と、ギ酸はフェーリング反応を示さないとの文献の2種類があるが、センター側による実験の結果、ギ酸がフェーリング液を還元することが確認されているため、正答は存在する、と回答している。
  • 愛知県の県立高等学校に勤務する非常勤講師から、「物理I」第1問問1(変圧器の原理を問う問題)において、通常の変圧器の計算方法から算出される「5ボルト」が正解とされているが、実際に問題内の図で示されている装置を用いて実験を行った場合、約1.8ボルトしか観測されず、明らかに出題ミスであるとの指摘があったが、センター側は「各科目ごと20人程度が問題作成に関係しており、次回の参集時に検討してもらう」として、それ以降の回答を行っていない。これは、物理の実験を日頃から行っている者であればすぐに気付くミスであり、今後、当問題がセンター試験の過去問として、事実として広く浸透してしまうことが危惧されている。

2008年度の本試験

  • 世界史A」第2問問9(原子力発電や核実験について正しい選択肢を4つのうちから1つ選ぶ問題)に関して河合塾は、「アメリカ合衆国スリーマイル島で、原子力発電所の事故が起こった」という選択肢を正答として扱う問題があったのに対し、岩波書店の「世界史年表第2版」や山川出版社の「世界史大年表第5版」では、誤答とされる選択肢「日本とアメリカ合衆国は、1963年部分的核実験停止(禁止)条約に調印した」について、日米ともに1963年に調印したとの記載があることから、4つある選択肢の中に正答が2つあるのではないかとする質問書を大学入試センターに送付した。河合塾は当初、日本が1964年に条約を批准したことから「誤答」としているのかもしれないが、選択肢にある「調印」は1963年であるため正しいはずだと主張していた。これについて大学入試センターは21日、両方の選択肢をともに正解とし、該当科目を受験した生徒に対して陳謝した。採点が完了している解答用紙については、採点をやり直すという。センター試験の出題ミスは2002年以来で、12件目となる。
  • 「英語」第5問Cにおいて、問題文が「次の漫画の内容に最も近いものを、下の(1)~(4)のうちから一つ選べ。」となっているにもかかわらず、選択肢が実際には右のページにあったことが22日に判明した。大学入試センターは、解答上は問題ないとして、特別な措置を取らない方針を示している。
  • 地理A」「地理B」の共通問題で校正ミスがあったことを、大学入試センターが22日に発表した。解答自体に影響はないため、センターは特別な措置を取らない方針を示している。出版社からの指摘で判明した。ミスがあったのは、中国・四国地方にある4都市の農業と経済に関する指標の中から、広島市の指標を選ばせる問題で、「農業産出額」の単位を「千万円」とすべきところを「億円」としていた。
  • 倫理、理科総合B、情報関係基礎の計3科目で、試験実施の際に受験生に対して問題の訂正が行われるなど、上記の出題ミス・校正ミスを含め、センター試験の点検体制の不備を指摘する声も上がっている。

英語(リスニング)に関するもの

英語のリスニング試験では、ICプレイヤーの不具合によるトラブルが開始年度から毎年報告されている。2006年度は451人、2007年度は381人、2008年度は175人の受験生が再テストを受けることになった。リスニング試験に関しての一定確率でのトラブルはセンター側としても想定済みの事態であり、試験当日における対応マニュアルなども試験監督者に渡されている。

その他、機器の不具合以外のトラブルで再試験が認められる例が何件か報告されている。

2009年度の本試験

  • 日本文理大学の受験生179人の教室内で、試験開始5分後に、受験生の足元のバッグに入っていた携帯電話の着信音が鳴りだした。試験監督者はバッグを会場の外へ持ち出したが、約30秒間鳴り続けた。大学入試センターは携帯電話の持ち主を除く残りの受験生全員の再試験を認めた。
    なお、この行為はセンター試験の受験の注意事項に書かれている「試験開始時間中に携帯電話や時計の音(着信・アラーム・振動音など)を鳴らすこと」の不正行為に該当する。試験開始前には口頭で受験の注意事項の説明があるため、この受験生は注意事項を守るのを怠っていたことになる。
  • 成蹊大学では、試験中に大学内の全教室で約5~30秒間停電した。これは節電のため自動的に消灯されるシステムによるもので、大学側がこのシステムを事前に解除しておくのを忘れた。停電している間教室はかなり暗くなったとみられるが、幸いパニックに陥る受験生はいなかったとされている。この大学で受験した855人が再試験の対象となった。
  • 横浜国立大学では、試験を行っている教室の近くに物品販売車が停車し、約5分間、客集めの為の音楽を流した。問題が聞き取れなかった可能性もあり、この教室にいた受験生1人の再試験を認めた。
  • 武庫川女子大学では、同大学で行われた英語リスニング試験について、障害者への特別措置として、別室で1人を受験させていたが、同大学の警備員が、試験室であることを知らずにこの部屋へ入り込み、受験生に誰何するトラブルが起こった。この部屋にいた受験生は、新たに再試験の対象となり、24日に再受験。同大学では、1月の中央大学での教授刺殺事件などを受け、警備を強化していたが、これが裏目に出た形となった。

今後の計画

過去問の再利用

センター試験では、前身である大学共通一次試験を含めて過去に出題した問題、いわゆる過去問を再度出題したことはない。これは、問題を解いた経験がある受験生と、その経験がない受験生とで不公平が生じるのを避けるためである。加えて、教科書に載せられた題材も出題しないことが慣習となっている。これも過去問と同様に、履修した経験で不公平が生じるのを避けるためである。

しかし、問題を作成する過程で、センター試験や他の大学の過去問、模擬試験、教科書などと題材が重複していないかを点検する作業に、膨大な時間と労力を割かれる状況が年々深刻化してきた。また一方で、センター試験の問題は、各大学が入試問題を作成するときに参考資料とすることが想定されているため、学習指導要領に基づいた良質な問題を出すことが求められており、年々少なくなる題材から良質な問題を作成することは限界に近付いていた。

このような状況を憂慮した大学入試センターは、文部科学省国立大学協会などと協議したうえで、過去問の活用を行う方針を固めている。良質な問題の収集と分析評価を行い、過去問を再利用するのである。導入時期は2010年度(現役生における、2009年4月に高校3年生となる者)からとしている。対象は主に国語や英語といった教科における「出典文」とされ、設問ではなく、文章や題材が再利用される予定である。受験生にとって、センター試験の過去問演習は、現在よりも一層重要度を増すと考えられている。

科目選択

2008年8月5日、大学入試センターは2012年度から、「地理歴史」と「公民」を統合して1教科とした上で、1996年度まで存在していた「倫理、政治・経済」を復活(既存の「倫理」と「政治経済」は存続)させることに加え、6科目を3グループに分けている「理科」のグループ制を廃止することを発表した[10]。変更後は、「地理歴史・公民」の10科目から最大2科目を、「理科」の6科目から最大2科目を選択する仕組みになる。ただし、同じ名称の科目(世界史Aと世界史Bなど)を同時に選択することはできない。

解答教科の事前登録制

センター試験では、出願時にあらかじめ受験する科目を指定しなければいけないが、これはあくまでも印刷部数のおおまかな数を把握するためであり、どの教科・科目を受験するかは試験当日に決めることができる。

大学入試センターは、2012年度から受験教科の事前登録制を導入する方針を固めている。現在の制度では、センターは教科ごとの正確な受験者数を把握することができないため、大量に問題冊子を印刷しなければならず、毎年億単位の印刷費の無駄を抱える一方で、一部の会場では問題冊子の不足も生じている。解答教科の事前登録制の導入は、これらの問題を解決するのが狙いとされている。なお、この事前登録制度の対象は「教科」であり、「科目」はこれまでと同様、試験当日に決めることができるという。

脚注

  1. ^ a b 第1期中期目標期間業務実績報告書大学入試センター
  2. ^ 大学入試センターは報道機関に対して、正式に追試験の問題非公表に関して発表していない。しかし、予備校や出版社、教育関係者のWebサイトに加え、センター試験過去問題集のページなどでは、問題が非公表になった旨が記載されている。ところが、時が経つにつれて、追試験の実施から1年あまり経過すると続々と出版物に掲載される傾向が明らかになってきている。これに関して、2009年度受験用の黒本の各問題集では『追試験問題は、大学入試センターの方針により試験実施の1年後に公表されるようになりました』との記述がなされている。
  3. ^ センター試験Q&A - 大学入試センター
  4. ^ もっとも、メーカー名の開示を求めた情報公開請求に対し、情報公開・個人情報保護審査会は採択されたメーカー名を開示するよう大学入試センターに求める答申を出している(答申番号平成18年度(独情)答申第46号)。
  5. ^ 2chのセンター試験問題“予言”で調査・2005年1月18日・ITmedia News
  6. ^ 読売新聞2001年1月27日
  7. ^ 大学入試センター試験問題新しい歴史教科書をつくる会
  8. ^ センター試験 英語の正解 理科なら×東京新聞2005年1月19日
  9. ^ 田村秀行『田村のセンター国語ポイント講義』栄光2002年、p.8
  10. ^ 『センター試験「地歴」「公民」統合』読売新聞・朝刊・2008年8月6日

関連項目

外部リンク